直流回路23【電験3種 理論】温度係数のある抵抗の並列合成の変化率を求める!令和4年度下期 A問題7 完全解説

電験3種 理論科目 電気回路(直流回路) 令和4年度下期 A問題7 2本の抵抗を並列にして加熱!合成抵抗の変化率

今回は令和4年度下期 理論科目 A問題7を解説します。20 ℃でR1 [Ω]、温度係数α1 [℃−1]の抵抗器Aと、R2 [Ω]、温度係数0の抵抗器Bを並列接続し、20 ℃から21 ℃になったときの並列抵抗の変化率(r21−r20)/r20を求めます。

温度差はΔT=21−20=1 ℃です。したがってAはR1{1+α1ΔT}=R1(1+α1)、Bはα2=0なのでR2のままです。r21/r20を先に作ると、共通因子R1R2が消えて整理しやすくなります。

目次

令和4年度下期 理論科目 A問題7:問題文と選択肢

電気技術者試験センター公表の公式問題は図のない文字式問題です。R1とR2はいずれも20 ℃での抵抗値で、求める変化率の分母はr20です。選択肢では分子がα1R1かα1R2か、分母末尾がα1R1かα1R2かを正確に見分けます。

電験3種 理論科目 直流回路 令和4年度下期 A問題7 問題文
令和4年度下期 理論科目 A問題7 問題文

電験3種 理論科目 【電気回路(直流回路)】 令和4年度下期 A問題7

 20℃における抵抗値がR1〔Ω〕、抵抗温度係数がα1〔℃-1〕の抵抗器Aと、20℃における抵抗値がR2〔Ω〕、抵抗温度係数がα2=0〔℃-1〕の抵抗器Bが並列に接続されている。その20℃と21℃における並列抵抗値をそれぞれr20〔Ω〕、r21〔Ω〕とし、(r21−r20)/r20を変化率とする。この変化率として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)α1R1R2/(R1+R212R1) (2)α1R2/(R1+R21R1) (3)α1R1/(R1+R21R1)
(4)α1R2/(R1+R21R2) (5)α1R1/(R1+R21R2)

出題のポイント:変化率は「比を作ってから1を引く」

差を直接計算しようとすると、\(r_{21}-r_{20}\) は分数の引き算になって通分が煩雑です。そこで先に比 \(r_{21}/r_{20}\) を作ると、共通因子 \(R_1R_2\) がきれいに約分されて式が一気に軽くなります。あとは1を引くだけで変化率になります。$$\frac{r_{21}-r_{20}}{r_{20}}=\frac{r_{21}}{r_{20}}-1$$

もう一つの要点は温度差が1 ℃であること。20 ℃から21 ℃なので \(\Delta T=1\)、係数は \(1+\alpha_1\times1=1+\alpha_1\) とシンプルになります。そして変化するのはAだけ——Bは温度係数が0なので \(R_2\) のまま動きません。

20℃と21℃の抵抗器A・Bの並列回路を並べ、AだけがR1からR1かける1プラスアルファ1へ変化し、BはR2のままであることを示すGPT Image 2の出題ポイント図
温度差は1 ℃です。21 ℃ではAだけがR₁(1+α₁)へ変化し、温度係数0のBはR₂のままです。

問題の解説:比を作って1を引く

使う公式:抵抗の温度変化と並列合成
$$R(T)=R_{20}\bigl[1+\alpha(T-20)\bigr],\qquad r=\frac{R_AR_B}{R_A+R_B}$$

※温度係数が0の抵抗は温度が変わっても値が変わりません(金属巻線ではなく、マンガニンなど温度特性の良い材料を想定した設定)。

STEP1 両温度の並列合成抵抗を書く

$$r_{20}=\frac{R_1R_2}{R_1+R_2}$$
❶ 20 ℃
そのままの値で並列合成
$$r_{21}=\frac{R_1(1+\alpha_1)\,R_2}{R_1(1+\alpha_1)+R_2}$$
❷ 21 ℃
AだけがR₁(1+α₁)に変化

STEP2 比を作って共通因子を消す

割り算にすると分子の \(R_1R_2\) が約分されます。

$$\frac{r_{21}}{r_{20}}=\frac{(1+\alpha_1)(R_1+R_2)}{R_1+R_2+\alpha_1R_1}$$
❸ 比
R₁R₂が消えてすっきり
20℃の並列抵抗r20、21℃の並列抵抗r21を求め、比r21割るr20で共通因子を消して変化率へ進む3段階を示すGPT Image 2のポイント解説図
r₂₁−r₂₀を直接計算するより、まずr₂₁/r₂₀を作ると共通因子R₁R₂が消え、式を整理しやすくなります。

STEP3 1を引いて変化率にする

同じ分母の分数として1を引きます。分子を展開すると、ほとんどの項が消えます。

$$\frac{(1+\alpha_1)(R_1+R_2)-(R_1+R_2+\alpha_1R_1)}{R_1+R_2+\alpha_1R_1}$$
❹ 1を引く
分母をそろえる
$$=\frac{R_1+R_2+\alpha_1R_1+\alpha_1R_2-R_1-R_2-\alpha_1R_1}{R_1+R_2+\alpha_1R_1}$$
❺ 展開
R₁・R₂・α₁R₁ が全部消える
$$=\frac{\alpha_1R_2}{R_1+R_2+\alpha_1R_1}$$
❻ 完成
分子に残るのは α₁R₂

ここが最大のひっかけです。温度で変化したのは \(R_1\) のほうなのに、分子に残るのは \(\alpha_1R_2\)——相手側の抵抗が顔を出します。「変化した側の文字が残るはず」という思い込みで(3)や(5)を選ばないよう注意してください。

答え変化率 \(=\dfrac{\alpha_1R_2}{R_1+R_2+\alpha_1R_1}\) → 選択肢(2)
変化率r21割るr20マイナス1を展開し、分子にアルファ1R2だけが残って正確な変化率と正答2を得る過程と極限検算を示すGPT Image 2の問題解説図
分子を展開するとα₁R₂だけが残り、変化率はα₁R₂/(R₁+R₂+α₁R₁)。公式正答は(2)です。

選択肢に具体的な数値を入れて検算する

文字式は自分で数値を決めて代入するのが最も確実です。\(R_1=10\;\Omega\)、\(R_2=40\;\Omega\)、\(\alpha_1=0.004\;{}^\circ\mathrm{C}^{-1}\) として、実際に並列合成を計算すると \(r_{20}=8.000000\)、\(r_{21}=8.025580\)、変化率は 0.00319744 です。この値と各選択肢を照合します。

選択肢R₁=10, R₂=40, α₁=0.004 での値判定
(1)α₁R₁R₂/(R₁+R₂+α₁²R₁)0.03199990×(100倍ずれ)
(2)α₁R₂/(R₁+R₂+α₁R₁)0.00319744
(3)α₁R₁/(R₁+R₂+α₁R₁)0.00079936×(1/4)
(4)α₁R₂/(R₁+R₂+α₁R₂)0.00318979×(惜しいが分母が違う)
(5)α₁R₁/(R₁+R₂+α₁R₂)0.00079745×

(4)は正解と0.2%しか違いません。α₁が小さいので分母の \(\alpha_1R_1\) と \(\alpha_1R_2\) の差はごくわずかだからです。近い値の選択肢がある問題では、数値代入だけでは決着しないことがある——このときは式変形をきちんと追って、分母に残るのが \(\alpha_1R_1\)(変化した側)であることを確認する必要があります。

極限で式の妥当性を確かめる

得られた式が正しそうかは、極端な場合を代入すると分かります。

条件物理的な意味式の値妥当性
α₁ = 0Aも温度で変化しない0○ 変化率が0になるのは当然
R₂ → 0Bが短絡。合成抵抗は0に固定0○ Aが何をしても合成は0のまま
R₂ → ∞Bが開放。合成=Aそのものα₁○ Aの変化率がそのまま出る

3つとも物理的な予想と一致しました。特にR₂→∞ で α₁ になるのが決定的です。Bを切り離せば合成抵抗はAそのものなので、変化率はAの変化率=α₁ でなければなりません。(3)や(5)にこの極限を入れると \(\alpha_1R_1/\infty=0\) となり、明らかに誤りだと分かります。文字式は極限でふるいにかける——これは数値代入より強力な検証法です。

本番で使える時間短縮テクニック

⏱️ 本番での進め方
① 変化率は比を作ってから1を引く。差を直接計算しない
② 温度差は21−20=1 ℃。20をそのまま入れない
③ 文字式の選択肢は極限(0、∞)で振るう。数値代入より速く確実なことが多い
④ 惜しい選択肢(本問の(4))があるときは、分母に残るのがどちらの文字かを式変形で確認する

温度係数・文字式の出題履歴

同じ考え方を使う直流回路の問題です。あわせて解くと解法が定着します。

年度記事問われ方
令和4年度下期 A問題7本問(直流回路23)温度係数のある抵抗の並列合成の変化率
平成23年度 A問題5直流回路54温度係数のある抵抗の並列合成の変化率(同型)
令和5年度上期 A問題7直流回路20温度上昇で電流がどう変化するか
令和2年度 A問題5直流回路29材質と断面積が異なる電線の抵抗を比較
平成25年度 A問題5直流回路49並列回路から未知抵抗Rxの式

💡 覚え方
変化率は\(r_{21}/r_{20}-1\)。比にすると \(R_1R_2\) が消える。答えの分子は変化しなかった側の \(R_2\)、分母には変化した側の \(\alpha_1R_1\) が残る。

⚠️ よくある間違い
温度変化するのは \(R_1\) ですが、分子に残るのは \(\alpha_1R_2\) です(変化した側の文字が残ると思い込まない)。α₁が小さいからと分母を \(R_1+R_2\) に近似すると、厳密式の選択肢と合わなくなります。

まとめ

温度差ΔT=21−20=1 ℃
20 ℃r20=R1R2/(R1+R2)
21 ℃A:R1(1+α1)、B:R2
r21/r20=(1+α1)(R1+R2)/(R1+R2+α1R1)
変化率α1R2/(R1+R2+α1R1)
極限検算α1=0またはR2→0で0、R2→∞でα1
正答(2)

▼あわせて解きたい関連問題
・抵抗温度係数の関連問題:【理論】令和5年度上期A問題7

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