今回は平成23年度 理論科目 A問題5を解説します。温度係数α1の抵抗器Aとα2=0の抵抗器Bを並列接続し、20 ℃から21 ℃へ変化したときの合成抵抗の変化率(r21-r20)/r20を求めます。温度差を明示した厳密な式で導き、数値・コンダクタンス・極限で検算します。
ΔT=21-20=1 ℃とし、無次元量x=α1ΔTを置きます。21 ℃でAはR1(1+x)に変化し、BはR2のままです。α1の符号は指定されていないため、正と決めつけて「増える」とはせず、並列抵抗の比を正確に整理します。
平成23年度 理論科目 A問題5:問題文と選択肢
電気技術者試験センター公表の平成23年度公式問題PDF(理論・問5、PDF 7ページ、冊子表示-4-、管理記号T1-R007)と公式解答PDFを照合して進めます。下の再構成画像はサイト独自の見出しを加えていますが、問題文、記号、単位、変化率の定義、五つの式選択肢は公式内容と一致するため保持しています。

電験3種 理論科目 【抵抗温度係数・並列合成抵抗】 平成23年度 A問題5
20〔℃〕における抵抗値がR1〔Ω〕、抵抗温度係数がα1〔℃-1〕の抵抗器Aと、20〔℃〕における抵抗値がR2〔Ω〕、抵抗温度係数がα2=0〔℃-1〕の抵抗器Bが並列に接続されている。その20〔℃〕と21〔℃〕における並列抵抗値をそれぞれr20〔Ω〕、r21〔Ω〕とし、(r21−r20)/r20を変化率とする。変化率として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)α1R1R2/(R1+R2+α12R1) (2)α1R2/(R1+R2+α1R1) (3)α1R1/(R1+R2+α1R1)
(4)α1R2/(R1+R2+α1R2) (5)α1R1/(R1+R2+α1R2)
出題のポイント:変化率は「比を作ってから1を引く」
差 \(r_{21}-r_{20}\) を直接計算しようとすると、分数の引き算になって通分が煩雑です。先に比 \(r_{21}/r_{20}\) を作ると共通因子 \(R_1R_2\) がきれいに約分され、あとは1を引くだけで変化率になります。$$\frac{r_{21}-r_{20}}{r_{20}}=\frac{r_{21}}{r_{20}}-1$$
もう一つの要点は温度差が1 ℃であること。20 ℃から21 ℃なので \(\Delta T=1\)、係数は \(1+\alpha_1\times1\) とシンプルになります。ただし式を立てるときは \(x=\alpha_1\Delta T\) という無次元量を置くのが安全です。αの単位は ℃⁻¹ なので、ΔTを掛けて初めて無次元になり、「1+x」という足し算が成立します。
そして変化するのはAだけ。Bは温度係数が0なので \(R_2\) のまま動きません。なおα₁の符号は問題文で指定されていないので、「必ず増える」と決めつけないでください(金属なら正ですが、本問はそこまで限定していません)。

問題の解説:比を作って1を引く
STEP1 両温度の並列合成抵抗を書く
そのままの値で並列合成
AだけがR₁(1+x)に変化
STEP2 比を作って共通因子を消す
R₁R₂が約分されて消える
分母との差がはっきりする

STEP3 1を引いて変化率にする
分子に残るのは xR₂ だけ
選択肢の表記に対応
ここが最大のひっかけです。温度で変化したのは \(R_1\) のほうなのに、分子に残るのは \(\alpha_1R_2\)——相手側の抵抗が顔を出します。逆に分母の温度項は \(\alpha_1R_1\)(変化した側)。この「分子と分母で入れ替わる」構造が本問の核心です。

選択肢に具体的な数値を入れて検算する
文字式は自分で数値を決めて代入するのが最も確実です。\(R_1=10\;\Omega\)、\(R_2=40\;\Omega\)、\(\alpha_1=0.004\) として実際に並列合成を計算すると、\(r_{20}=8.000000\)、\(r_{21}=8.025580\)、変化率は 0.00319744 です。
| 選択肢 | 式 | R₁=10, R₂=40, α₁=0.004 での値 | 判定 |
| (1) | α₁R₁R₂/(R₁+R₂+α₁²R₁) | 0.03199990 | ×(10倍ずれ) |
| (2) | α₁R₂/(R₁+R₂+α₁R₁) | 0.00319744 | ○ |
| (3) | α₁R₁/(R₁+R₂+α₁R₁) | 0.00079936 | ×(1/4) |
| (4) | α₁R₂/(R₁+R₂+α₁R₂) | 0.00318979 | ×(惜しいが分母が違う) |
| (5) | α₁R₁/(R₁+R₂+α₁R₂) | 0.00079745 | × |
(4)は正解と0.2%しか違いません。α₁が小さいので分母の \(\alpha_1R_1\) と \(\alpha_1R_2\) の差はごくわずかだからです。近い値の選択肢があるときは数値代入だけでは決着しません——式変形を追って、分母に残るのが変化した側の \(\alpha_1R_1\) であることを確認する必要があります。
極限で式の妥当性を確かめる
得られた式が正しそうかは、極端な場合を代入すると分かります。数値代入で決着しない(4)も、これなら一撃で落とせます。
| 条件 | 物理的な意味 | 式の値 | 妥当性 |
| α₁ = 0 | Aも温度で変化しない | 0 | ○ 変化率0は当然 |
| R₂ → 0 | Bが短絡。合成抵抗は0に固定 | 0 | ○ Aが何をしても合成は0のまま |
| R₂ → ∞ | Bが開放。合成=Aそのもの | α₁ | ○ Aの変化率がそのまま出る |
決定的なのはR₂→∞ で α₁ になることです。Bを切り離せば合成抵抗はAそのものなので、変化率はAの変化率=α₁ でなければなりません。(3)や(5)にこの極限を入れると \(\alpha_1R_1/\infty=0\)、(4)は \(\alpha_1R_2/(\alpha_1R_2)=1\) となり、いずれも誤りだと分かります。
もう一つ興味深いのは、Bが並列にある分だけ変化率がA単独より小さくなることです。温度で変わらないBが「重し」になって全体の変化を抑える——実務でも、温度特性の良い抵抗を並列に入れて温度依存性を下げる手法があります。
この問題は令和4年度下期の再出題です
本問(平成23年度 A問題5)とまったく同じ問題が、令和4年度下期 A問題7として出題されています(直流回路23)。約11年ぶりの再登場で、選択肢の並びまで同一です。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① 変化率は比を作ってから1を引く。差を直接計算しない
② 温度差は21−20=1 ℃。\(x=\alpha\Delta T\) と無次元量を置くと単位で迷わない
③ 文字式の選択肢は極限(0、∞)で振るう。数値代入より速く確実なことが多い
④ 惜しい選択肢があるときは、分母に残るのがどちらの文字かを式変形で確認する
温度係数・文字式の出題履歴
同じ考え方を使う直流回路の問題です。あわせて解くと解法が定着します。
| 年度 | 記事 | 問われ方 |
| 平成23年度 A問題5 | 本問(直流回路54) | 温度係数のある抵抗の並列合成の変化率 |
| 令和4年度下期 A問題7 | 直流回路23 | 同一問題(選択肢の並びまで同じ) |
| 令和5年度上期 A問題7 | 直流回路20 | 温度上昇で電流がどう変化するか |
| 令和2年度 A問題5 | 直流回路29 | 材質と断面積が異なる電線の抵抗を比較 |
| 平成25年度 A問題5 | 直流回路49 | 並列回路から未知抵抗Rxの式 |
💡 覚え方
変化率は\(r_{21}/r_{20}-1\)。比にすると \(R_1R_2\) が消える。答えの分子は変化しなかった側の \(R_2\)、分母には変化した側の \(\alpha_1R_1\) が残る。
⚠️ よくある間違い
温度変化するのは \(R_1\) ですが、分子に残るのは \(\alpha_1R_2\) です。厳密には \(R_1(1+\alpha_1\Delta T)\) で、ΔT=1 ℃を省略しないこと。α₁の符号は指定されていないので「必ず増える」と決めつけないように。
まとめ
| 温度差 | ΔT=1 ℃、x=α1ΔT |
| r20 | R1R2/(R1+R2) |
| r21 | R1(1+x)R2/{R1(1+x)+R2} |
| 変化率 | xR2/(R1+R2+xR1) |
| 公式表記・正答 | α1R2/(R1+R2+α1R1)、(2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・同一問題(令和4年度下期)の解説:【理論】令和4年度下期A問題7

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