直流回路29【電験3種 理論】断面積と材質が異なる電線の抵抗を比較する!令和2年度 A問題5 完全解説

電験3種 理論科目 電気回路(直流回路) 令和2年度 A問題5 太さも材質も違う電線!抵抗が大きいのはどれ?

今回は令和2年度 理論科目 A問題5を解説します。長さ1 kmで材質と断面積が異なる4本の電線A〜D(鉄・アルミニウム・銀・銅)について、直流抵抗RA〜RDを計算し、大きい順を選びます。抵抗率だけでなく、断面積との比まで見ることがポイントです。

電線名Aとの混同を避けるため、断面積をS〔m2〕と書きます。一様な電線の抵抗はR=ρL/Sです。今回はL=1 km=103 mが共通なので、ρ/Sの大小がそのまま抵抗の大小になります。さらにLを掛け、各抵抗をΩ単位で確定します。

目次

令和2年度 理論科目 A問題5:問題文と選択肢

電気技術者試験センター公表の問題を確認します。4本はいずれも長さ1 kmで、各電線は等断面・等質です。問題文の抵抗率ρと断面積をそのまま使い、単位をそろえて比較します。

電験3種 理論科目 直流回路 令和2年度 A問題5 問題文
令和2年度 理論科目 A問題5 問題文

電験3種 理論科目 【電気回路(直流回路)】 令和2年度 A問題5

 次に示す、A、B、C、Dの四種類の電線がある。いずれの電線もその長さは1kmである。この四つの電線の直流抵抗値をそれぞれRA〔Ω〕、RB〔Ω〕、RC〔Ω〕、RD〔Ω〕とする。RA〜RDの大きさを比較したとき、その大きさの大きい順として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、ρは各導体の抵抗率とし、各電線は等断面・等質であるとする。

 A:断面積が9×10-5m2の鉄(ρ=8.90×10-8Ω·m)/B:断面積が5×10-5m2のアルミニウム(ρ=2.50×10-8Ω·m)/C:断面積が1×10-5m2の銀(ρ=1.47×10-8Ω·m)/D:断面積が2×10-5m2の銅(ρ=1.55×10-8Ω·m)

(1)RA>RC>RD>RB (2)RA>RD>RC>RB (3)RB>RD>RC>RA
(4)RC>RA>RD>RB (5)RD>RC>RA>RB

出題のポイント:抵抗率と断面積、両方を見ないと順位は決まらない

電線の抵抗は \(R=\rho L/S\)。抵抗率ρに比例し、断面積Sに反比例します。この問題の狙いは、「銀は抵抗率が最も小さいから、銀の電線がいちばん流しやすいはずだ」という思い込みを崩すことです。

実際、本問の銀(C)は抵抗率 \(1.47\times10^{-8}\) と4本の中で最小ですが、断面積も \(1\times10^{-5}\;\mathrm{m^2}\) と最小——他の電線の1/2〜1/9しかありません。分母が小さすぎて、分子の小ささを打ち消してしまうのです。材質の良さは細さで簡単に帳消しになる、というのが実務的な教訓でもあります。

4本とも長さが1 kmで共通なので、順位を決めるだけなら \(\rho/S\) を比べれば十分です。

電線の抵抗R=ρL/Sについて、抵抗率ρ・長さL・断面積Sの関係と、長さが同じならρ/Sを比較することを示すGPT Image 2の出題ポイント図
電線の抵抗はR=ρL/S。4本の長さが共通なら、抵抗率だけでなく断面積も含めたρ/Sを比較します。

問題の解説:指数をまとめてから係数だけで割り算する

使う公式:導体の抵抗
$$R=\rho\frac{L}{S}$$

※ρ〔Ω·m〕=抵抗率(材質で決まる)、L〔m〕=長さ、S〔m²〕=断面積。単位も (Ω·m)×m÷m² = Ω で合います。

STEP1 指数部分を先に処理する

本問はうまくできていて、指数がきれいに1になります。ρはすべて \(\times10^{-8}\)、Sはすべて \(\times10^{-5}\)、そして \(L=10^3\) なので、

$$\frac{10^{-8}\times10^{3}}{10^{-5}}=10^{-8+3+5}=10^{0}=1$$
❶ 指数だけ計算
指数はすべて打ち消し合う

つまり「ρの係数 ÷ Sの係数」がそのまま抵抗値〔Ω〕になります。電卓なしで暗算できる形です。

STEP2 4本の抵抗を計算する

電線材質ρ の係数S の係数R = ρ係数 ÷ S係数 [Ω]
A8.9090.989
Bアルミニウム2.5050.500
C1.4711.470(最大)
D1.5520.775
令和2年度理論A問題5の電線AからDについて、抵抗率・断面積・ρ/S・長さ1 kmでの実抵抗値を一覧比較し、C、A、D、Bの順を示すGPT Image 2のポイント解説図
L=1000 mを掛けると、A=0.989 Ω、B=0.500 Ω、C=1.47 Ω、D=0.775 Ωです。

STEP3 大きい順に並べる

$$R_C=1.470>R_A=0.989>R_D=0.775>R_B=0.500\;[\Omega]$$
❷ 順位
銀が最大、アルミが最小
答え\(R_C>R_A>R_D>R_B\) → 選択肢(4)
抵抗率と断面積の指数が長さ1 kmによって相殺される計算、4本の実抵抗値、C、A、D、Bの順、正答4を示すGPT Image 2の問題解説図
指数部分は10^-8×10^3÷10^-5=10^0。係数の割り算から4本の抵抗値を求め、正答(4)を確定します。

選択肢を計算値と照合する

計算した4つの抵抗値(C=1.470、A=0.989、D=0.775、B=0.500 Ω)を使って、各選択肢の並びが正しいかを確かめます。

選択肢主張する順序実際の値との照合判定
(1)RA>RC>RD>RBA(0.989) < C(1.470) なので先頭から誤り×
(2)RA>RD>RC>RB最大のC が3番目になっている×
(3)RB>RD>RC>RA最小のB を先頭に置いており全体が逆×
(4)RC>RA>RD>RB1.470 > 0.989 > 0.775 > 0.500 ✓
(5)RD>RC>RA>RBD(0.775) < C(1.470) なので先頭が誤り×

選択肢の末尾に注目すると時短できます。(3)以外はすべて末尾がRB——つまり「アルミが最小」は出題者も前提にしています。であれば先頭(最大)がどれかだけ決めれば、(1)(2)はAが先頭、(4)はC、(5)はD、と3択に絞れます。Cの \(1.47/1=1.47\) を1つ計算するだけで(4)に決まります。

なぜ材質より断面積が効くのか

4本の抵抗率は最大の鉄(8.90)と最小の銀(1.47)で約6倍の開きがあります。一方、断面積は最大の鉄(9)と最小の銀(1)で9倍の開き。断面積のばらつきのほうが大きいので、順位を支配してしまうわけです。

実際の送配電でも同じことが起きます。銅よりアルミのほうが抵抗率は約1.6倍大きいのですが、アルミは軽いので同じ重さならずっと太くできる——だから架空送電線にはアルミ(鋼心アルミより線=ACSR)が広く使われています。材質だけでなく断面積・重量・コストを合わせた総合判断で電線が選ばれる、という電力分野の実務にそのままつながる論点です。

本番で使える時間短縮テクニック

⏱️ 本番での進め方
① \(R=\rho L/S\) のρは分子・Sは分母。片方だけで判断しない
② 長さが共通ならρ/S だけを比べればよい(Lは掛けなくても順位は変わらない)
指数を先にまとめると暗算できる。本問は指数が全部消えて係数の割り算だけになる
④ 順序を選ぶ問題は選択肢の共通部分を見て、争点(先頭は誰か)だけ計算する

抵抗率・導体の抵抗の出題履歴

同じ考え方を使う直流回路の問題です。あわせて解くと解法が定着します。

年度記事問われ方
令和2年度 A問題5本問(直流回路29)材質と断面積が異なる4本の電線の抵抗を比較
令和5年度上期 A問題7直流回路20温度上昇で抵抗値が変わると電流はどうなるか
令和4年度下期 A問題7直流回路23温度係数のある抵抗の並列合成の変化率
平成23年度 A問題5直流回路54温度係数のある抵抗の並列合成の変化率

💡 覚え方
\(R=\rho L/S\)。ρは分子、Sは分母。長さ共通なら ρ/S を比較。本問は指数が全部消えるので係数の割り算だけで C=1.47 > A=0.989 > D=0.775 > B=0.500。

⚠️ よくある間違い
抵抗率だけで判断しない(銀は抵抗率最小でも断面積が最小なので抵抗は最大)。断面積は分母なので太いほど抵抗は小さくなります。1 km=10³ mの換算も忘れずに。

まとめ

電線材質ρ/S〔Ω/m〕R〔Ω〕
A0.989×10-3約0.989
Bアルミニウム0.500×10-30.500
C1.47×10-31.47
D0.775×10-30.775
大きい順・正答RC>RA>RD>RB …(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・抵抗率・電線の抵抗の関連問題:【理論】令和5年度上期A問題7

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