今回は平成28年度 理論科目 A問題3を解説します。長い線状導体の一部が点Pを中心とする半径rの半円形になっているとき、電流Iを流したときに点Pに生じる磁界の大きさH〔A/m〕をビオ・サバールの法則で求める問題です。
点Pを通る直線部分は、電流要素dℓと点Pへの位置ベクトルRが平行でdℓ×R=0となるため寄与しません。半円部分は中心角θ=π radなので、円弧の公式H=Iθ/(4πr)からH=I/(4r)となります。
平成28年度 理論科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、平成28年度に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成28年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題3
電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 平成28年度 A問題3
図のように、長い線状導体の一部が点Pを中心とする半径r〔m〕の半円形になっている。この導体に電流I〔A〕を流すとき、点Pに生じる磁界の大きさH〔A/m〕はビオ・サバールの法則より求めることができる。Hを表す式として正しいものを、次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
点Pに生じる磁界の大きさHを表す式として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)I/(2πr) (2)I/(4r) (3)I/(πr) (4)I/(2r) (5)I/r

出題のポイント:直線部分は「寄与ゼロ」、残るのは半円だけ
一見すると直線と半円の合成で面倒に見えますが、直線部分の寄与はきれいにゼロになります。実質は「半円だけの問題」です。

なぜ直線部分は寄与しないのか
直線部分は点Pを通る同一直線上にあります。したがって電流要素 \(d\boldsymbol{l}\) の向きと、そこから点Pへ向かうベクトル \(\boldsymbol{R}\) が平行(または反平行)です。
平行なベクトルの外積は必ず0
直線部分は何本あっても関係ない
「導体が長い」と書いてあっても惑わされないでください。長さがいくらであっても、点Pから見て真横(同一直線上)にある電流は磁界を作りません。
💡 覚え方
右ねじで考えても同じ結論になります。直線電流のまわりの磁界は電流を軸とする同心円なので、軸上(=電流の延長線上)では磁界がゼロです。点Pはまさにその軸上にあります。
半円部分の磁界:円弧の公式を使う
半径 \(r\)、中心角 \(\theta\)〔rad〕の円弧が中心につくる磁界は次の式で表せます。
180°=\(\pi\) rad
\(\pi\) が消えるのが半円の特徴
円形コイル1周なら \(I/2r\)、その半分だから \(I/4r\)——この理解で十分です。答えに \(\pi\) が残らないことも、選択肢を絞るヒントになります。


誤答の正体:3つの公式のどれを使うか
| 公式 | 式 | どんな配置か | 選択肢 |
| 無限長直線 | \(H=\dfrac{I}{2\pi r}\) | まっすぐな電流から距離 \(r\) の点 | (1) |
| 半円(本問) | \(H=\dfrac{I}{4r}\) | 中心角 \(\pi\) の円弧の中心 | (2) ◎正解 |
| \(2/\pi\) 倍の誤り | \(H=\dfrac{I}{\pi r}\) | — | (3) |
| 円形コイル1周 | \(H=\dfrac{I}{2r}\) | 円の中心 | (4) |
| — | \(H=\dfrac{I}{r}\) | — | (5) |
(1)と(4)が主要な罠です。(1)は「直線が長いから」と無限長直線の公式を使ってしまう誤り、(4)は「半分」を忘れて円形コイルの公式をそのまま使う誤りです。
⚠️ よくある間違い
\(\pi\) が残るかどうかで公式が見分けられます。直線の公式には \(\pi\) が残り(\(2\pi r\))、円弧・円の公式では \(\pi\) が約分されて消えます。答えの形を見た瞬間に、どちらの公式を使ったかが分かります。
3つの公式を1つの発想でつなぐ
すべてビオ・サバールの法則から出てきます。円のときだけ計算が簡単になる理由も、外積で説明できます。
| \(d\boldsymbol{l}\) と \(\boldsymbol{R}\) の関係 | 結果 | |
| 円弧の中心 | 常に垂直(半径と接線) | \(\sin\theta=1\) で計算が最も簡単 |
| 直線の延長上 | 常に平行 | 寄与ゼロ |
| 直線の側方 | 場所により角度が変わる | 積分が必要 → \(I/2\pi r\) |
本問は「常に垂直(半円)」と「常に平行(直線)」という、両極端だけで構成されています。だから積分せずに答えが出るのです。出題者が計算しやすいように配置を選んでいると気づけば、方針で迷いません。
⏱️ 本番での進め方
❶ まず直線部分を切り捨てる。点Pと同一直線上なら寄与ゼロ。図を見た瞬間に消す。
❷ 円弧は「全円の何割か」で考える。半円なら \(I/2r\) の半分で \(I/4r\)。
❸ \(\pi\) の有無で検算する。円弧なら \(\pi\) は消える。残っていたら直線の公式を使っている。
❹ 1/4円なら \(I/8r\)。中心角に比例するので、どんな角度でも同じ考え方で出せる。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| 直線部 | 同一直線上→磁界0 |
| 円全体 | I/(2r) |
| 半円 | その半分 |
| 答え | I/(4r) …(2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・円弧電流の磁界の関連問題:【理論】令和7年度下期A問題4

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