今回は平成28年度 理論科目 A問題8を解説します。電気に関する法則(オーム・クーロン・ジュール・フレミング・レンツ)の記述(1)〜(5)のうち、正しいものを1つ選ぶ問題です。
正しいのはレンツの法則です。誘導電流がつくる磁束は、元の磁束そのものではなく磁束の変化を妨げる向きになります。他の記述は、比例・反比例またはフレミング右手の指の対応を逆にしたものです。
平成28年度 理論科目 A問題8:問題文と選択肢
まずは、平成28年度に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成28年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題8
電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 平成28年度 A問題8
電気に関する法則の記述として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) オームの法則は「均一の物質から成る導線の両端の電位差をVとするとき、これに流れる定常電流IはVに反比例する」という法則である。
(2) クーロンの法則は「二つの点電荷の間に働く静電力の大きさは、両電荷の積に反比例し、電荷間の距離の2乗に比例する」という法則である。
(3) ジュールの法則は「導体内に流れる定常電流によって単位時間中に発生する熱量は、電流の値の2乗と導体の抵抗に反比例する」という法則である。
(4) フレミングの右手の法則は「右手の親指を磁界の向き、人差し指を導体が移動する向きに向けると、中指の向きは誘導起電力の向きと一致する」という法則である。
(5) レンツの法則は「電磁誘導によってコイルに生じる起電力は、誘導起電力によって生じる電流がコイル内の磁束の変化を妨げる向きとなるように発生する」という法則である。
出題のポイント:「正しいものを選ぶ」問題。比例・反比例の入れ替えを見抜く
この問題は「誤っているもの」ではなく「正しいもの」を選びます。設問の指示を読み違えると、正解を4つ見つけて混乱することになります。まず設問文に印をつけてから読み始めてください。
誤りの作り方は驚くほど単純です。(1)(2)(3)は「比例」と「反比例」を入れ替えただけ、(4)はフレミング右手の指の対応を入れ替えただけ。それぞれの法則を式で1本書けば、一瞬で判定できます。

各記述の判定
| 法則 | 記述の内容 | 判定 | 正しくは | |
| (1) | オーム | \(I\) は \(V\) に反比例 | × | \(I=V/R\) なので比例 |
| (2) | クーロン | 電荷の積に反比例、距離の2乗に比例 | × | 積に比例、2乗に反比例(2か所とも逆) |
| (3) | ジュール | 熱量は電流の2乗と抵抗に反比例 | × | \(Q=I^2Rt\) なので比例 |
| (4) | フレミング右手 | 親指=磁界、人差し指=導体の移動 | × | 親指=運動、人差し指=磁界 |
| (5) | レンツ | 誘導電流が磁束の変化を妨げる向き | ◎ | 正しい |
(1)(3)は式を書けば即座に判定できます。\(I=V/R\) で \(V\) は分子なので比例、\(Q=I^2Rt\) で \(I^2\) も \(R\) も分子なので比例——どちらも「反比例」としているので誤りです。
(2)は2か所とも逆という徹底ぶりです。クーロンの法則は「積に比例、距離の2乗に反比例」。これを両方ひっくり返してあります。片方だけ確認して安心しないことが大切です。


レンツの法則の急所:「磁束」ではなく「磁束の変化」
(5)の記述で最も重要なのは、「磁束の変化を妨げる」という表現です。「磁束を妨げる」ではありません——この一語が抜けていたら誤りになります。
| 磁束の状態 | 誘導電流が作ろうとする磁束 | 結果 |
| 増えている | 減らす向き(逆向きの磁束) | 増加を妨げる |
| 減っている | 増やす向き(同じ向きの磁束) | 減少を妨げる |
| 一定 | 何も起きない | 誘導起電力はゼロ |
磁束が減っているときは、同じ向きの磁束を作ろうとします。つまり「常に逆向き」ではありません。変化の向きに応じて、作る磁束の向きも変わるのです。
この法則はエネルギー保存則の現れです。もし変化を助ける向きに電流が流れたら、わずかな変化が際限なく増幅され、エネルギーが無から生まれてしまいます。だから必ず「妨げる」向きでなければなりません。
⚠️ よくある間違い
「磁束そのものを妨げる」と書かれた記述は誤りです。定常的な磁束が貫いていても、変化していなければ誘導起電力は生じません。コイルは「変化」にだけ反応する——ここが電磁誘導の本質です。
深掘り:フレミング左手と右手を取り違えない
(4)で問われたフレミングの右手の法則は、発電機の法則です。左手(電動機)と混同しやすいので、対比で整理しておきます。
| 左手の法則 | 右手の法則 | |
| 用途 | 電動機(電気→力) | 発電機(力→電気) |
| 与えるもの | 電流 | 運動 |
| 得られるもの | 力 | 起電力 |
| 親指 | 力 \(F\) | 運動 \(v\) |
| 人差し指 | 磁界 \(B\) | 磁界 \(B\) |
| 中指 | 電流 \(I\) | 起電力 \(e\) |
どちらも人差し指は磁界です。親指と中指の中身が入れ替わるだけ——「与えるものと得られるものが逆」と理解しておけば、その場で復元できます。
本問の(4)は「親指=磁界」としている点が誤りです。親指は運動の向き、人差し指が磁界——指の対応を入れ替えるのは定番のひっかけなので、記述問題では必ず1本ずつ確認してください。
💡 覚え方
「発電機は動かす、電動機は動く」——右手は運動を「与える」ので親指が運動、左手は力を「得る」ので親指が力。親指がその法則の主役だと考えると覚えやすくなります。
⏱️ 本番での進め方
❶ 設問文を確認する。「正しいもの」か「誤っているもの」か。この問題は前者。
❷ 各法則を式で1本書く。比例・反比例は分子か分母かで即決。
❸ 2か所ひっくり返す肢に注意。片方だけ確認して安心しない。
❹ レンツは「変化」を妨げる。この一語があるかを確認する。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
深掘り:5つの法則を式で覚え直す
本問のような記述問題では、日本語のまま正誤を判断しようとすると迷います。式を1本書いてから読むのが最短ルートです。ここでは5つの法則を式とセットで整理しておきます。
| 法則 | 式 | 何と何が比例/反比例か |
| オーム | \(I=\dfrac{V}{R}\) | \(I\) は \(V\) に比例、\(R\) に反比例 |
| クーロン | \(F=k\dfrac{Q_1Q_2}{r^2}\) | 電荷の積に比例、距離の2乗に反比例 |
| ジュール | \(Q=I^2Rt\) | 電流の2乗・抵抗・時間に比例 |
| フレミング右手 | \(e=Blv\) | 親指=運動、人差し指=磁界、中指=起電力 |
| レンツ | \(e=-N\dfrac{d\varPhi}{dt}\) | 負号が「変化を妨げる」を表す |
式さえ書ければ、比例か反比例かは「分子か分母か」を見るだけです。分子にあれば比例、分母にあれば反比例——この機械的な判定で(1)(2)(3)が処理できます。
ジュールの法則で注意したいのは、電流だけが2乗である点です。抵抗と時間は1乗——「電流の2乗」という印象が強いため、抵抗も2乗だと勘違いする人がいます。\(Q=I^2Rt\) と書いてしまえば間違えません。
記述問題を速く正確に処理するコツ
電験3種では、こうした「記述の正誤を問う問題」が毎年複数出ます。計算問題より短時間で処理できるので、ここを確実に取れると時間的な余裕が生まれます。
| やること | 理由 |
| 設問文に印をつける | 「正しいもの」か「誤っているもの」かを取り違えない |
| 各肢の横に式を書く | 日本語で悩まず、分子・分母で機械的に判定できる |
| 1つの肢で2か所以上を確認 | 本問(2)のように2か所ひっくり返す作り方がある |
| 判定した肢に○×を書く | 見直しのとき、どこまで確認したかが分かる |
とくに「1つの肢に誤りが2か所」という作り方には注意が必要です。本問の(2)は「積に反比例」「距離の2乗に比例」と両方を逆にしてあります。前半だけ見て「あ、逆だ」と判断しても結論は同じですが、逆に前半が正しい肢では、後半に誤りが隠れている可能性があります。
⚠️ よくある間違い
「正しいものを選べ」の問題で、最初に見つけた誤りの肢を選んでしまう——これは焦っているときに実際に起きるミスです。設問文を読み終えた瞬間に、余白へ大きく「正」または「誤」と書いておくと防げます。
まとめ
| (1)オーム | 比例(反比例は誤) |
| (2)クーロン | 積比例・距離2乗反比例(逆は誤) |
| (3)ジュール/(4)フレミング | 比例/親指=運動(誤) |
| (5)レンツ/答 | 磁束変化を妨げる→正、答(5) |
▼あわせて解きたい関連問題
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