今回は令和7年度下期 理論科目 A問題4を解説します。点Oを中心とする半径0.5mと1mの円形導線の1/4と、それらを連結する直線導線からなる扇形導線に16Aを流したときの、点Oの磁界の大きさH〔A/m〕を求める問題です。
点Oから見て半径方向に延びる直線部分では、電流要素dℓとOへの位置ベクトルが平行または反平行なので、点Oへの磁界の寄与は0です。中心角θの円弧が中心につくる磁界はH=Iθ/(4πr)で、1/4円弧ではH=I/(8r)です。内側と外側の円弧はOの周りを逆向きに流れるため、磁界の大きさは両者の差になります。
令和7年度下期 理論科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、令和7年度下期に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題4
電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 令和7年度下期 A問題4
図のように、点Oを中心とするそれぞれ半径0.5mと半径1mの円形導線の1/4と、それらを連結する直線状の導線からなる扇形導線がある。この導線に、図に示す向きに直流電流I=16Aを流した場合、点Oにおける磁界の大きさHの値〔A/m〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、扇形導線は同一平面上にあり、その巻数は一巻きである。また、導線の太さは無視できるものとする。
点Oにおける磁界の大きさH〔A/m〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)0.25 (2)0.5 (3)0.75 (4)1.0 (5)2.0

出題のポイント:直線部は寄与ゼロ、2つの円弧は引き算
扇形の導線のうち、点Oを通る直線部分(半径方向)は磁界に寄与しません。電流の向きと、点Oへ向かうベクトルが平行だからです。実質は2つの円弧だけの問題になります。
2つの円弧は、導線をたどると回る向きが逆です。内側の弧を進んだあと、外側の弧では逆回りに戻ってくる——だから磁界も逆向きになり、引き算になります。

2つの円弧を計算して差を取る
| 円弧 | 半径 | \(H=I/(8r)\) | 向き |
| 内側 | 0.5 m | \(16/(8\times0.5)=4.0\;\mathrm{A/m}\) | 一方の向き |
| 外側 | 1 m | \(16/(8\times1)=2.0\;\mathrm{A/m}\) | 逆向き |
内側のほうが強いので、合成の向きは内側の向き
半径が2倍違うと磁界は半分になります。したがって外側の寄与は内側のちょうど半分——差を取ると内側の半分が残るという関係になっています。
単位に注意してください。半径が0.5 m と1 m なので、\(8r\) はそれぞれ4と8 です。\(16\div4=4\)、\(16\div8=2\)——きれいな数字になります。


★重要:平成21年度と「同じ問題で答えの番号が違う」
平成21年度A問題4は、まったく同じ構成の問題です。扇形導線の形も、選択肢の並びも同じ——違うのは電流と半径の値だけです。
| 平成21年度 A問題4 | 本問(令和7年度下期 A問題4) | 変化 | |
| 電流 \(I\) | 8 A | 16 A | 2倍 |
| 内側の半径 | 1 m | 0.5 m | 1/2 |
| 外側の半径 | 2 m | 1 m | 1/2 |
| 内側の磁界 | 1.0 A/m | 4.0 A/m | 4倍 |
| 外側の磁界 | 0.5 A/m | 2.0 A/m | 4倍 |
| 答えの値 | 0.5 A/m | 2.0 A/m | 4倍 |
| 選択肢の並び | 0.25 / 0.5 / 0.75 / 1.0 / 2.0 | 同一 | 同じ |
| 正答番号 | (2) | (5) | 違う |
\(H\propto I/r\) なので、電流が2倍・半径が1/2 なら磁界は4倍になります。選択肢の並びはまったく同じなのに、正答番号が(2)から(5)へ移動しました。
⚠️ よくある間違い
「この扇形の問題は答えが(2)だった」と番号で覚えていた人は、確実に落とします。覚えるべきは「直線部はゼロ、円弧は引き算」という解き方であって、番号ではありません。
あわせて解いておきたい記事:【理論】平成21年度A問題4
誤答の正体
| 誤り方 | 計算 | 値〔A/m〕 | 選択肢 |
| 内側だけで計算 | \(16/(8\times0.5)\) | 4.0 | 選択肢になし |
| 外側だけで計算 | \(16/(8\times1)\) | 2.0 | (5) と同じ値になる偶然 |
| 足し算にしてしまう | \(4.0+2.0\) | 6.0 | 選択肢になし |
| 正しい計算 | \(4.0-2.0\) | 2.0 | (5) ◎ |
本問では「外側だけで計算」しても偶然2.0 になります。内側が外側のちょうど2倍だからです。たまたま正解にたどり着いても、理由が違えば次の問題で外します——必ず両方を計算して差を取ってください。
💡 覚え方
「全円 \(I/2r\) から出発して割合を掛ける」——本問なら \(16/(2\times0.5)=16\) と \(16/(2\times1)=8\) を出し、それぞれ1/4して 4.0 と 2.0。公式を暗記しなくても同じ答えになります。
⏱️ 本番での進め方
❶ 直線部分を消す。点Oを通る同一直線上なら寄与ゼロ。
❷ 全円の \(I/(2r)\) から出発。1/4円なら4で割る。
❸ 導線を指でたどる。内側と外側で回る向きが逆→引き算。
❹ 番号で覚えない。同じ形の問題が数値だけ変えて出る。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
深掘り:円弧の公式を「割合」で作り直す
円弧の公式 \(H=I\theta/(4\pi r)\) は形が覚えにくいのですが、「全円の何割か」で考えれば暗記が不要になります。
| 形状 | 中心角 | 全円に対する割合 | 磁界 |
| 全円 | \(2\pi\) | 1 | \(I/(2r)\) |
| 半円 | \(\pi\) | 1/2 | \(I/(4r)\) |
| 1/4円(本問) | \(\pi/2\) | 1/4 | \(I/(8r)\) |
| 1/3円 | \(2\pi/3\) | 1/3 | \(I/(6r)\) |
円形コイル中心の \(I/(2r)\) さえ覚えておけば十分です。本問なら \(16/(2\times0.5)=16\) と \(16/(2\times1)=8\) を出し、それぞれ1/4して 4.0 と 2.0——同じ答えにたどり着きます。
この「割合」の考え方が成り立つのは、円弧上のすべての点が中心から等距離だからです。どの部分も同じ効率で磁界に寄与するので、長さに正比例します。直線導体ではこうはいきません。
なぜ直線部分の寄与がゼロなのか
扇形の直線部分は半径方向にあります。点Oから見て、まっすぐ外へ伸びている——したがって \(d\boldsymbol{l}\) と \(\boldsymbol{R}\) が平行になり、寄与はゼロです。
右ねじで考えても同じ結論になります。直線電流のまわりの磁界は電流を軸とする同心円なので、軸上(=電流の延長線上)では磁界がゼロ——点Oはまさにその軸上にあります。
💡 覚え方
「中心を通る直線は効かない、円弧だけが効く」——扇形や渦巻き状の導線が出てきたら、まず直線部分を消してから円弧を数えるのが定石です。
まとめ
| 直線部分 | 半径方向でdℓ×r=0 → 寄与0 |
| 円弧の公式 | H=Iθ/(4πr)、θ=π/2ならH=I/(8r) |
| 内側円弧 | r=0.5 m → 4 A/m |
| 外側円弧 | r=1 m → 2 A/m |
| 向き | 右手の法則で互いに逆向き |
| 合成と答え | |4−2|=2.0 A/m → (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・円弧電流の磁界の関連問題:【理論】平成21年度A問題4

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