今回は平成25年度 理論科目 A問題3を解説します。磁界及び磁束に関する記述(1)〜(5)のうち、誤っているものを1つ選ぶ問題です。
十分に長い2本の平行導体では、単位長さ当たりの力はF/ℓ=μI1I2/(2πd)で、導体間距離dの1乗に反比例します。同方向の電流なら吸引、反対方向なら反発です。選択肢(3)は反発とした点は正しいものの、「距離の2乗に反比例」とした点が誤りです。
ほぼ同じ問題が 【理論】令和5年度上期A問題4 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
平成25年度 理論科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、平成25年度に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成25年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題3
電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 平成25年度 A問題3
磁界及び磁束に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 1m当たりの巻数がNの無限に長いソレノイドに電流Iを流すと、内部に磁界H=NIが生じ、その大きさは寸法や内部の物質の種類に影響されない。
(2) 均一磁界中で磁界の方向と直角に置いた直線導体に電流を流すと、電流の大きさに比例した力が働く。
(3) 2本の平行な直線状導体に反対向きの電流を流すと、導体間距離の2乗に反比例した反発力が働く。
(4) フレミングの左手の法則では、親指の向きが導体に働く力の向きを示す。
(5) 磁気回路において、透磁率は電気回路の導電率に、磁束は電気回路の電流に対応する。
出題のポイント:「距離の何乗に反比例するか」が唯一の争点
5つの記述のうち、4つは基本どおりです。誤りは平行電流間の力を「距離の2乗に反比例」としている点——正しくは1乗に反比例します。
この問題が良問なのは、「反発力が働く」という部分は正しいところです。逆向きの電流なら確かに反発します。正しい記述と誤った記述が1つの文に混ざっているので、最後まで読まずに正しいと判断すると引っかかります。

距離の依存を整理する:点なら2乗、線なら1乗
| 組合せ | 式 | 距離への依存 |
| 点電荷どうしの力 | \(F=k\dfrac{Q_1Q_2}{r^2}\) | 2乗に反比例 |
| 点磁極どうしの力 | \(F=k_m\dfrac{m_1m_2}{r^2}\) | 2乗に反比例 |
| 平行電流どうしの力 | \(\dfrac{F}{l}=\dfrac{\mu_0I_1I_2}{2\pi d}\) | 1乗に反比例 |
| 直線電流がつくる磁界 | \(H=\dfrac{I}{2\pi r}\) | 1乗に反比例 |
「点」が相手なら2乗、「線」が相手なら1乗——この区別が本問の核心です。理由は広がっていく先の形にあります。点から出るものは球面(\(4\pi r^2\))に広がるので2乗、線から出るものは円筒の側面(\(2\pi r\times\)長さ)に広がるので1乗です。
クーロンの法則の感覚をそのまま持ち込むと間違えます。静電気の問題では「距離の2乗に反比例」が当たり前ですが、無限に長い直線が相手のときは1乗です。相手が点か線かを必ず確認してください。
各記述の判定
| 記述 | 判定 | 根拠 | |
| (1) | 無限長ソレノイド内部の \(H=NI\) は寸法や物質によらない | ◎ 正しい | \(H\) の式に \(\mu\) が現れない |
| (2) | 磁界と直角な導体に働く力は電流に比例 | ◎ 正しい | \(F=BIL\sin\theta\) |
| (3) | 逆向き平行電流には距離の2乗に反比例した反発力 | × 誤り | 1乗に反比例 |
| (4) | フレミング左手:親指が力の向き | ◎ 正しい | 親指=力、人差し指=磁界、中指=電流 |
| (5) | 透磁率↔導電率、磁束↔電流 | ◎ 正しい | \(R_m=l/(\mu A)\) と \(R=l/(\sigma A)\) |
(1)は引っかかりやすい記述です。「物質の種類に影響されない」と書かれると誤りに見えますが、\(H=nI\) という式に透磁率 \(\mu\) は現れません。鉄心を入れても磁界の強さ \(H\) は変わらず、変わるのは磁束密度 \(B=\mu H\) のほうです。
「磁界の強さ」と「磁束密度」の区別がここでも問われています。\(H\) はコイルと電流だけで決まり、\(B\) は材質で変わる——この対比を押さえていれば(1)は正しいと判断できます。


フレミングの2つの法則を確実に区別する
(4)で問われているフレミングの法則は、左手と右手で用途がまったく違います。混同したまま覚えていると、向きを問う問題で必ず落とします。
| 左手の法則 | 右手の法則 | |
| 用途 | 電動機(力を得る) | 発電機(起電力を得る) |
| 親指 | 力 \(F\) | 運動 \(v\) |
| 人差し指 | 磁界 \(B\) | 磁界 \(B\) |
| 中指 | 電流 \(I\) | 起電力 \(e\) |
どちらも人差し指は磁界です。変わるのは親指と中指の中身だけ——「左手は電流を与えて力を得る、右手は運動を与えて起電力を得る」と、入力と出力の関係で覚えると混同しません。
💡 覚え方
「電・磁・力」の順で 中指・人差し指・親指——左手はこの順です。「FBI」(親指Force・人差し指B・中指I)という覚え方もよく使われます。どちらか一方を確実に覚え、もう一方は「発電機のほう」と対比で引き出すのが実戦的です。
★この問題は過去問とまったく同じ内容で再出題されています
本問は【理論】令和5年度上期A問題4と完全に同一の問題です。5つの記述の文言も、選択肢の並びもすべて同じで、答えもどちらも(3)です。
電験3種では、基本法則を確認する記述問題がそのまま再出題されることがよくあります。問い方を変えようがないうえ、受験者に必ず知っておいてほしい内容だからです。この手の問題は確実に得点すべき問題と位置づけてください。
ただし選択肢の番号で覚えるのは危険です。同じ内容でも並び順が変わる例を、当サイトでは複数確認しています。「平行電流の力は距離の1乗に反比例」という中身で覚えてください。
あわせて解いておきたい記事:【理論】令和5年度上期A問題4
⏱️ 本番での進め方
❶ 「距離の何乗か」を真っ先に確認する。点なら2乗、線なら1乗。
❷ 文の後半まで読む。「反発力」は正しく「2乗」が誤り、という混合型。
❸ \(H\) と \(B\) の区別。\(H\) は物質によらず、\(B=\mu H\) は変わる。
❹ 左手と右手。人差し指はどちらも磁界。親指と中指が入れ替わる。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| (1) ソレノイド | H=NI(Hは理想条件で内部物質によらない) |
| (2) 電磁力 | F=BIℓsinθ、θ=90°なら電流Iに比例 |
| (3) 平行導体 | F/ℓ=μI1I2/(2πd)∝1/d |
| (4)(5) | 親指=力、μ↔σ・Φ↔I |
| 答え | (3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・平行導体・磁界の関連問題:【理論】令和5年度上期A問題4

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