今回は平成24年度 理論科目 A問題4を解説します。20cm間隔の2本の無限長直線導体で、一方に10Aを流したとき1m当たり1×10-6Nの力が働いたときの、他方の導体の電流Iを求める問題です。
単位長さ当たりの力をf=F/ℓ〔N/m〕とすると、平行導体間ではf=μ0I1I2/(2πd)です。20 cmを0.20 mに直し、この式を未知電流Iについて解きます。μ0=4π×10-7 H/mのπは分母の2πと約分できます。
平成24年度 理論科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、平成24年度に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 平成24年度 A問題4
真空中に、2本の無限長直線状導体が20〔cm〕の間隔で平行に置かれている。一方の導体に10〔A〕の直流電流を流しているとき、その導体には1〔m〕当たり1×10-6〔N〕の力が働いた。他方の導体に流れている直流電流I〔A〕の大きさとして、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、真空の透磁率はμ0=4π×10-7〔H/m〕である。
問題文は力の大きさだけを示しているため、電流が同方向か逆方向かは特定できません。ただし、求めるのも電流の大きさなので、引力・斥力の別は計算に不要です。
(1)0.1 (2)1 (3)2 (4)5 (5)10
出題のポイント:\(\mu_0/(2\pi)=2\times10^{-7}\) を覚えておく
平行導体間の力の式は、\(\pi\) が約分されてきれいな形になります。\(\mu_0=4\pi\times10^{-7}\) を \(2\pi\) で割ると \(2\times10^{-7}\)——この値を覚えておけば、\(\pi\) を書く必要すらありません。
本問で唯一の落とし穴は単位換算です。間隔が20 cm と書かれています。0.20 m に直さないと、答えが10倍ずれて選択肢(2)に着地します。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題4
解説:式を \(I\) について解く
20 cm → 0.20 m
\(2\times10^{-7}\times10\div0.20=1\times10^{-5}\)
検算:\(2\times10^{-7}\times10\times0.1\div0.20=1\times10^{-6}\;\mathrm{N/m}\) ✓ 与えられた値と一致します。
問題文は「その導体には」と、力を受けた側を特定して書いていますが、作用反作用の法則により、2本の導体が受ける力は同じ大きさです。どちらの導体について考えても、式は同じになります。


誤答の正体:単位換算を忘れると(2)に着地する
| 誤り方 | 使った距離 | 得られる \(I\) | 選択肢 |
| 20 cm を 2 m と誤る | 2 m | 1 A | (2) |
| 20 cm を 20 m と誤る | 20 m | 10 A | (5) |
| 正しい計算 | 0.20 m | 0.1 A | (1) ◎ |
選択肢が0.1・1・2・5・10 と1桁刻みで並んでいるのは、単位換算のミスをそのまま拾うためです。cm を m に直す一手を、計算の最初に済ませておくのが確実な対策になります。
⚠️ よくある間違い
\(\mu_0=4\pi\times10^{-7}\) をそのまま式に入れて \(2\pi\) で割り忘れると、答えが \(2\pi\) 倍ずれます。最初から \(2\times10^{-7}\) という形で覚えておくのが安全です。
深掘り:この式がアンペアの定義だった
2019年まで、アンペアはこの力によって定義されていました。「1 m 離した2本の無限長平行導線に等しい電流を流し、1 m あたり \(2\times10^{-7}\;\mathrm{N}\) の力が働くときの電流が1 A」という定義です。
\(I_1=I_2=1\;\mathrm{A}\)、\(d=1\;\mathrm{m}\)
\(\mu_0=4\pi\times10^{-7}\) という「不思議な値」の正体がここにあります。アンペアをこう定義した結果として、\(\mu_0\) がこの値に決まったのです。\(4\pi\) が付いているのは、球の表面積 \(4\pi r^2\) との整合を取るためです。
現在の定義は変わり、電気素量を基準とする方式になりました。そのため\(\mu_0\) は厳密には \(4\pi\times10^{-7}\) ではなくなりましたが、差は \(10^{-10}\) 程度で、電験の計算では従来どおり使って問題ありません。
実務では短絡電磁力として重要です。力は電流の2乗に比例するので、短絡時に数十kAが流れると、母線には1 m あたり数百Nの力がかかります。支持がいしや金具の強度は、この計算に基づいて決められます。
⏱️ 本番での進め方
❶ 単位を最初に直す。20 cm → 0.20 m。ここで10倍ずれる人が多い。
❷ \(2\times10^{-7}\) を使う。\(\mu_0\) と \(2\pi\) を別々に書かない。
❸ 検算する。求めた \(I\) を代入して \(1\times10^{-6}\) に戻るか。
❹ 力の向きは不要。大きさを聞かれているので引力・斥力の別は無関係。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| 既知量 | f=1×10-6 N/m、I1=10 A、d=0.20 m |
| 公式 | f=μ0I1I/(2πd) |
| 磁界による検算 | B1=1×10-5 T、f=IB1 |
| 逆算 | I=10-6/10-5=0.1 A |
| 答え | (1) |
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