今回は平成23年度 理論科目 A問題3を解説します。磁界中に置かれた直線導体に働く電磁力について、フレミングの法則・力が最大/零になる条件・電流との比例関係を答える空欄補充問題です。
直線導体に働く電磁力はフレミング左手で向きを判定し、ベクトル式ではF=Iℓ×Bです。大きさF=BIℓsinθより、電流と磁束密度が同方向なら零、直角なら最大となり、B・ℓ・θが一定なら電流Iの1乗に比例します。
平成23年度 理論科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、平成23年度に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題3
電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 平成23年度 A問題3
次の文章は、磁界中に置かれた導体に働く電磁力に関する記述である。電流が流れている長さL〔m〕の直線導体を磁束密度が一様な磁界中に置くと、フレミングの(ア)の法則に従い、導体には電流の向きにも磁界の向きにも直角な電磁力が働く。直線導体の方向を変化させて、電流の方向が磁界の方向と同じになれば、導体に働く力の大きさは(イ)となり、直角になれば、(ウ)となる。力の大きさは、電流の(エ)に比例する。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 左手 最大 零 2乗 (2) 左手 零 最大 2乗 (3) 右手 零 最大 1乗 (4) 右手 最大 零 2乗 (5) 左手 零 最大 1乗
出題のポイント:\(F=BIL\sin\theta\) の1本ですべて埋まる
4つの空欄は、公式 \(F=BIL\sin\theta\) を書き出すだけで全部決まります。\(\sin\theta\) を見れば(イ)(ウ)が、\(I\) の次数を見れば(エ)が——迷う要素はほとんどありません。
唯一注意が必要なのは(ア)の左手・右手です。力を求めるのだから左手——ここを間違えると、他が全部合っていても不正解になります。問題文に「電磁力」と書いてあるのが手がかりです。

空欄を1つずつ埋める
(ア)フレミングの 左手 の法則
力を求めるので左手です。右手は発電機(起電力を求める)用——問題文が「導体には……電磁力が働く」と言っているので、求めるのは力です。
左手の指の対応は、親指=力、人差し指=磁界、中指=電流。「電・磁・力」の順に中指・人差し指・親指と覚えるのが定番です。
(イ)電流と磁界が同じ向きなら力は 零
\(\theta=0^\circ\) なので \(\sin0^\circ=0\)——力はまったく働きません。
これは直感に反するので、よく狙われます。「電流も磁界もあるのだから力が働きそう」と思ってしまうのですが、電流が磁力線に沿って流れているときは、磁力線を1本も切らないので力が生じないのです。
(ウ)直角なら力は 最大
\(\theta=90^\circ\) で \(\sin90^\circ=1\)——\(F=BIL\) が最大値です。最も多く磁力線を切る配置にあたります。
| 電流と磁界のなす角 | \(\sin\theta\) | 力 \(F\) |
| 0°(平行) | 0 | 0(零) |
| 30° | 0.500 | \(0.50\,BIL\) |
| 45° | 0.707 | \(0.71\,BIL\) |
| 60° | 0.866 | \(0.87\,BIL\) |
| 90°(直角) | 1 | \(BIL\)(最大) |
角度を変えると力は連続的に変化します。0°でゼロ、90°で最大——その間は \(\sin\theta\) に従って滑らかにつながります。電動機のトルクが回転角によって変わるのも、この関係が背景にあります。
(エ)力は電流の 1乗 に比例
\(F=BIL\sin\theta\) で \(I\) は1乗です。2乗ではありません。
「2乗」に引っかかるのは、ジュール熱 \(Q=I^2Rt\) や平行電流間の力 \(F\propto I^2\) の印象が残っているからでしょう。平行電流の力が2乗になるのは、2本の電流の積だからです。本問は外部から与えられた磁界の中に1本の導体を置いているので、電流は1回しか出てきません。


選択肢の消し方:惜しい肢が2つある
| (ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | 判定 | |
| (1) | 左手 | 最大 × | 零 × | 2乗 × | 3か所誤り |
| (2) | 左手 | 零 | 最大 | 2乗 × | (エ)だけ誤り(惜しい) |
| (3) | 右手 × | 零 | 最大 | 1乗 | (ア)だけ誤り(惜しい) |
| (4) | 右手 × | 最大 × | 零 × | 2乗 × | 全部誤り |
| (5) | 左手 | 零 | 最大 | 1乗 | ◎ 正解 |
(2)と(3)が1か所違いの惜しい肢です。(2)は「2乗」、(3)は「右手」——この2点さえ確実に押さえれば正解にたどり着けます。
組合せ問題では、まず自信のある空欄から埋めて肢を絞るのが定石です。この問題なら(イ)(ウ)は \(\sin\theta\) から即決できるので、まずそこで(1)(4)を消し、残る3つを(ア)(エ)で判定します。
⚠️ よくある間違い
「電流と磁界が平行なら力は零」は直感に反するため、本試験で繰り返し狙われます。磁力線に沿って流れる電流は、磁力線を切らない——「切る」というイメージで覚えておくと、平行でゼロになることが腑に落ちます。
深掘り:この力が実際に使われている場面
\(F=BIL\) は、電動機のトルクを決める最も基本的な式です。電動機の設計では、磁束密度 \(B\) を大きくし、導体の長さ \(L\) を稼ぎ、電流 \(I\) を流せるだけ流す——という方向で性能を上げていきます。
| 大きくしたい量 | 実際の手段 | 限界となる要因 |
| 磁束密度 \(B\) | 強力な磁石、界磁電流を増やす | 磁気飽和 |
| 電流 \(I\) | 太い導体、冷却を強化 | 発熱(\(I^2R\) 損) |
| 導体長 \(L\) | 巻数を増やす、機体を長くする | 大きさ・重さ・コスト |
どれも上限があります。磁束密度を上げようとすれば鉄心が飽和し、電流を増やせば発熱で焼損します。電動機の設計は、この3つの妥協点を探す作業だといえます。
スピーカーも同じ原理です。磁石の隙間に置いたボイスコイルに音声電流を流すと、\(F=BIL\) に従って振動板が動きます。電流の波形がそのまま力の波形になる(1乗に比例する)からこそ、音が忠実に再現できるのです。もし2乗に比例していたら、音は歪んでしまいます。
💡 覚え方
「1乗に比例する」ことには実用上の意味があると理解しておいてください。電流を2倍にすれば力も2倍——この素直な比例関係が、電動機の制御やスピーカーの忠実な再生を可能にしています。
⏱️ 本番での進め方
❶ \(F=BIL\sin\theta\) を余白に書く。(イ)(ウ)(エ)はこれで全部決まる。
❷ 力なら左手、起電力なら右手。(ア)はこれだけ。
❸ 平行なら零。直感に反するので意識して覚える。
❹ \(I\) は1乗。2乗になるのは平行電流間の力やジュール熱。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| 向き | F=Iℓ×B、フレミング左手(人差し指B・中指I・親指F) |
| 平行・反平行 | θ=0°・180°、F=0 |
| 直角 | θ=90°、F=BIℓで最大 |
| 電流との関係 | F∝I、1乗に比例 |
| 空欄/答え | 左手・零・最大・1乗、答え(5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・電磁力・フレミングの関連問題:【理論】令和2年度A問題3

コメント