今回は平成23年度 理論科目 A問題4を解説します。1辺aの正方形コイル(中心O1でH1)と直径aの円形コイル(中心O2でH2)に同じ電流Iを流したときの、磁界の比H1/H2を求める問題です。
円形コイルは直径a、すなわち半径R=a/2なのでH2=I/(2R)=I/aです。正方形は各辺についてr=a/2、θ1=θ2=45°を参考式へ代入し、同じ向きの磁界を4辺分加えてH1=2√2I/(πa)とします。比は2√2/π≒0.90です。
平成23年度 理論科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、平成23年度に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題4
電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 平成23年度 A問題4
図1のように、1辺の長さがa〔m〕の正方形のコイル(巻数:1)に直流電流I〔A〕が流れているときの中心点O1の磁界の大きさをH1〔A/m〕とする。また、図2のように、直径a〔m〕の円形のコイル(巻数:1)に直流電流I〔A〕が流れているときの中心点O2の磁界の大きさをH2〔A/m〕とする。このとき、磁界の大きさの比H1/H2の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、中心点O1、O2はそれぞれ正方形のコイル、円形のコイルと同一平面上にあるものとする。参考までに、図3のように、長さa〔m〕の直線導体に直流電流I〔A〕が流れているとき、導体から距離r〔m〕離れた点Pにおける磁界の大きさH〔A/m〕は、H=I/(4πr)(cosθ1+cosθ2)で求められる(角度θ1とθ2の定義は図参照)。
(1)0.45 (2)0.90 (3)1.00 (4)1.11 (5)2.22

出題のポイント:「直径 \(a\)」なので半径は \(a/2\)
問題文は「直径 \(a\) の円形コイル」と書いています。半径ではありません。\(R=a/2\) を代入することを忘れると、答えが2倍ずれます。
正方形のほうは参考式が与えられているので、素直に代入するだけです。中心から辺までの距離が \(a/2\)、両端を見込む角がどちらも45°——この2つの値を読み取れるかどうかが勝負になります。

円形コイルの磁界 \(H_2\)
ここが最大の落とし穴
きれいな形になる
\(H_2=I/a\) という簡単な形になります。直径を \(a\) にしてあるのは、この形をきれいにするためでしょう。半径を \(a\) と読み違えると \(H_2=I/(2a)\) となり、比が2倍ずれます。
正方形コイルの磁界 \(H_1\)
1辺ずつ参考式を当てはめて、4辺ぶんを足します。4辺とも中心に同じ向きの磁界を作るので、単純に4倍できます。
| 読み取る量 | 値 | 理由 |
| 中心から辺までの距離 \(r\) | \(a/2\) | 正方形の中心から辺までは1辺の半分 |
| 見込む角 \(\theta_1,\;\theta_2\) | どちらも45° | 中心から辺の両端を見ると45°ずつ |
\(\cos45^\circ=\dfrac{\sqrt2}{2}\) を2つ足すと \(\sqrt2\)
すべて同じ向き
\(r=a/2\) を \(r=a\) と読み違えると、\(H_1\) が半分になり、比が0.45(選択肢(1))になってしまいます。「中心から辺まで」であって「中心から頂点まで」ではない点にも注意してください。
比を取る
純粋な数値になる
\(I\) も \(a\) も消えて、\(2\sqrt2/\pi\) という定数だけが残ります。コイルの大きさや電流に関係なく、形状だけで決まる比ということです。


誤答の正体:読み違いが選択肢に用意されている
| 誤り方 | 何を間違えるか | 値 | 選択肢 |
| 正方形で \(r=a\) とする | 中心から辺までを \(a\) と誤る | 0.45 | (1) |
| 比を逆に取る | \(H_2/H_1=\pi/(2\sqrt2)\) | 1.11 | (4) |
| 上の2つを両方やる | — | 2.22 | (5) |
| 正しい計算 | — | 0.90 | (2) ◎ |
(1)0.45 と(5)2.22 は、ちょうど正解の半分と2.5倍にあたります。読み取りのミスがそのまま選択肢になっているので、図から \(r\) と \(\theta\) を読むときは慎重に。
⚠️ よくある間違い
「直径」と「半径」の読み違えは、この問題に限らず頻出です。問題文で「直径」「半径」の語に丸をつける——それだけで防げます。本問では「直径 \(a\)」なので \(R=a/2\) です。
深掘り:正方形と円で磁界がほぼ同じになる理由
答えが0.90 という「1に近い値」になったことに注目してください。正方形コイルと円形コイルで、中心の磁界は1割ほどしか違いません。
理由は「差し渡しが同じだから」です。1辺 \(a\) の正方形も、直径 \(a\) の円も、中心から辺(または円周)までの最短距離は \(a/2\)——導体が中心を取り囲む「距離感」がほぼ同じなのです。
| 形状 | 中心までの最短距離 | 導体の全長 | 中心の磁界 |
| 正方形(1辺 \(a\)) | \(a/2\) | \(4a\) | \(2\sqrt2I/(\pi a)=0.90I/a\) |
| 円(直径 \(a\)) | \(a/2\) | \(\pi a\approx3.14a\) | \(I/a\) |
正方形のほうが導体は長い(\(4a\) 対 \(3.14a\))のに、磁界は弱い——これは正方形の角に近い部分が中心から遠く、寄与が小さいからです。円はすべての部分が中心から等距離なので、無駄がありません。
この「円が最も効率的」という性質は一般的に成り立ちます。同じ長さの導体で最も強い中心磁界を作るには、円形に巻くのが最適——コイルが円形をしているのは、これが理由のひとつです。
💡 覚え方
「正方形も円もだいたい同じ、ただし円がわずかに強い」と覚えておけば、答えが0.9前後になることが予想できます。2.22 や 0.45 という値が出たら、どこかで2倍ずれていると気づけます。
⏱️ 本番での進め方
❶ 「直径」に丸をつける。\(R=a/2\) を最初に書いてしまう。
❷ 正方形は \(r=a/2\)、\(\theta=45^\circ\)。図から素直に読み取る。
❸ 4辺は同じ向き。単純に4倍でよい。
❹ 答えは0.9前後と予想しておく。大きく外れたら読み違いを疑う。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| 円形コイル | 直径a、R=a/2、H2=I/a |
| 正方形の1辺 | r=a/2、θ1=θ2=45°、H辺=√2I/(2πa) |
| 正方形全体 | H1=4H辺=2√2I/(πa) |
| 比 | H1/H2=2√2/π=0.900316… |
| 答え | (2) 0.90 |
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