磁気・電磁力47【電験3種 理論】レール上を動く導体棒に生じる誘導電流を向き付きで求める!平成22年 A問題3 完全解説

電験3種 理論科目 電磁気(磁気・電磁力) 平成22年度 A問題3 レール上を滑る導体棒!誘導電流はどっち向きに何A?

今回は平成22年度 理論科目 A問題3を解説します。0.6m間隔の平行導線に10Ωの抵抗をつなぎ、磁束密度B=6×10-2Tの磁界中を導体棒PQが速度v=4m/sで動くとき、抵抗に流れる電流I(向き付き)を求める問題です。

誘導起電力の大きさはe=BLv、電流の大きさはI=e/Rで求めます。符号は向きを確認してから付けます。棒が右へ動くと紙面手前向きの磁束が増えるため、誘導電流は時計回りです。したがって左側の抵抗では下から上へ流れ、問題図の矢印と同じ正方向になります。

目次

平成22年度 理論科目 A問題3:問題文と選択肢

まずは、平成22年度に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

電験3種 理論科目 磁気・電磁力 平成22年度 A問題3 問題文
平成22年度 理論科目 A問題3 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題3

電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 平成22年度 A問題3

 紙面に平行な水平面内において、0.6〔m〕の間隔で張られた2本の直線状の平行導線に10〔Ω〕の抵抗が接続されている。この平行導線に垂直に、図に示すように、直線状の導体棒PQを渡し、紙面の裏側から表側に向かって磁束密度B=6×10-2〔T〕の一様な磁界をかける。ここで、導体棒PQを磁界と導体棒に共に垂直な矢印の方向に一定の速さv=4〔m/s〕で平行導線上を移動させているときに、10〔Ω〕の抵抗に流れる電流I〔A〕の値として、正しいのは次のうちどれか。ただし、電流の向きは図に示す矢印の向きを正とする。また、導線及び導体棒PQの抵抗、並びに導線と導体棒との接触抵抗は無視できるものとする。

10Ωの抵抗に流れる電流I〔A〕の値として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ(電流の向きは図に示す矢印の向きを正とする)。

(1)−0.0278 (2)−0.0134 (3)−0.0072 (4)0.0144 (5)0.0288

図 0.6m間隔の平行導線と抵抗10Ω、磁界B中を速度vで動く導体棒PQ(問題図)
図 0.6m間隔の平行導線と抵抗10Ω、磁界B中を速度vで動く導体棒PQ(問題図)

出題のポイント:大きさは簡単。勝負は「符号」

大きさの計算は \(e=BLv\) と \(I=e/R\) だけ——2行で終わります。本問の勝負どころは、電流の向きが問題図の矢印と同じか逆かです。

選択肢5つのうち3つが負の値です。大きさが合っていても符号を間違えると不正解——レンツの法則で向きを丁寧に追う必要があります。

運動起電力とオームの法則
$$e=BLv\qquad I=\frac{e}{R}$$

\(L\) は磁界を横切る導体の長さ——本問では平行導線の間隔0.6 m です。導体棒の全長ではありません。

レール間隔0.6メートル、抵抗10オーム、手前向き磁界中を右へ動く導体棒PQと、時計回りの誘導電流を示す回路図
e=BLv=0.144V、I=e/R=0.0144A。電流は時計回りなので、抵抗では問題図の矢印と同じ上向きです。

大きさを求める

$$e=BLv=6\times10^{-2}\times0.6\times4=0.144\;\mathrm{V}$$
❶ 誘導起電力
\(L\) は導線の間隔
$$I=\frac{e}{R}=\frac{0.144}{10}=0.0144\;\mathrm{A}$$
❷ 電流
導線と棒の抵抗は無視できる

\(6\times10^{-2}\times0.6=3.6\times10^{-2}\)、これに 4を掛けて \(0.144\)——暗算でも出せます。選択肢に0.0144 と 0.0288 があるので、大きさだけなら2択に絞れます。

符号を決める:レンツの法則を3段階で

向きの判定は必ず3段階で進めてください。途中を飛ばすと間違えます

$$\text{❶ 棒が動くと、回路が囲む面積が【増加】}$$
変化を把握
紙面手前向きの磁束が増える
$$\text{❷ 増加を妨げる向きの磁束を作ろうとする}$$
レンツの法則
紙面の奥向きの磁束
$$\text{❸ 右ねじで電流の向きを決める}$$
右ねじの法則
回路を時計回りに流れる

回路が時計回りなら、左側にある抵抗では下から上へ流れますこれが問題図の矢印と同じ向き——したがって符号は正です。

「面積が増えるのか減るのか」を最初に確認するのがコツです。棒が磁界を横切りながら、囲む面積を広げていく方向に動いている——ここが出発点になります。

右向き速度vと手前向き磁界Bから正電荷がPからQへ動くこと、およびレンツの法則で時計回り電流となることを示す図
v×Bは棒の上端Pから下端Q向き。ループ全体では時計回りとなり、左側抵抗の電流は下から上へ流れます。
答え\(I=+0.0144\;\mathrm{A}\) → 選択肢(4)
平成22年度理論A問題3の運動起電力0.144ボルトと電流プラス0.0144アンペアを3段階で計算する図
起電力、電流の大きさ、符号を順に確認すると、I=+0.0144Aで公式正答は(4)です。

誤答の正体:符号と2倍のミス

誤り方値〔A〕選択肢何を間違えたか
符号を逆にする−0.0144選択肢になしレンツの法則の判定ミス
2倍にする0.0288(5)起電力を2倍に数えるなど
正しい計算+0.0144(4) ◎

興味深いのは、−0.0144 という選択肢が用意されていないことです。(1)−0.0278、(2)−0.0134、(3)−0.0072 はいずれも大きさも違います——「符号だけ間違えた人」を拾う肢がないのです。

これは受験者にとって有利な設計です。0.0144 という値が出た時点で、正の(4)を選ぶしかありません大きさの計算に自信があれば、符号で悩む必要は実質ないということになります。

⚠️ よくある間違い
\(L\) に導体棒の全長を使ってしまうミスに注意してください。起電力を生むのは「回路の一部として磁界を横切る部分」だけ——本問では平行導線の間隔0.6 m です。棒が導線からはみ出していても、その部分は回路に入っていないので関係ありません。

深掘り:この回路が発電機そのもの

この構成は「単極発電機」の最も単純な形です。導体棒を動かすと起電力が生じ、抵抗に電流が流れて電力が消費されます

$$P=I^2R=(0.0144)^2\times10=2.07\times10^{-3}\;\mathrm{W}$$
抵抗で消費される電力
$$F=BIL=6\times10^{-2}\times0.0144\times0.6=5.18\times10^{-4}\;\mathrm{N}$$
棒に働く力(制動力)
電流が流れると、棒には運動を妨げる力が働く
$$P_{\text{機械}}=Fv=5.18\times10^{-4}\times4=2.07\times10^{-3}\;\mathrm{W}$$
棒を動かすのに要する仕事率
電気的な消費電力と一致 ◎

機械的な仕事率と電気的な消費電力がぴったり一致しますこれがエネルギー保存則の現れです。棒を動かすのに必要な力の正体は、レンツの法則による制動力——電流を取り出すほど重くなります

発電所の発電機も、原理はこれと同じです。電力需要が増えると発電機が重くなり、タービンにより多くの蒸気が必要になりますこの1問が、電力システム全体の基礎になっていると言えます。

💡 覚え方
「\(e=BLv\) → \(I=e/R\) → \(F=BIL\) → \(P=Fv\)」——4つの式が一巡して、機械的仕事と電気的仕事が一致します。この流れを一度たどっておくと、発電機の理解が一気に深まります。

⏱️ 本番での進め方
❶ \(L\) は導線の間隔。棒の全長ではない。
❷ 大きさを先に出す。0.0144 か 0.0288 かで2択に絞れる。
❸ 向きは3段階:面積の増減 → 妨げる磁束 → 右ねじで電流。
❹ 符号の付いた選択肢に注意。大きさが合っていても符号で落とす問題がある。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

まとめ

有効長L=レール間隔=0.6m
起電力e=BLv=0.144V
回路抵抗R=10Ω(その他は無視)
電流の大きさI=e/R=0.0144A=14.4mA
向き時計回り、抵抗では上向き(正)
公式正答(4) +0.0144A

▼あわせて解きたい関連問題
・運動導体の起電力の関連問題:【理論】令和4年度上期A問題4

📚 次に解くべき関連問題
【理論】平成26年度A問題4(磁気・電磁力39)
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