今回は平成26年度 理論科目 A問題5を解説します。初期電荷0の3個のコンデンサに対してS₁・S₂を同時に閉じ、十分時間が経過した後のa点からみたb点の電圧V=Vb−Vaを求める問題です。
閉じた直後は充電の過渡電流が流れ、十分後にはコンデンサ電流が0になります。ただし、電流0だけではbの電位は決まりません。bが外部へ導通しない浮遊導体で、初期電荷が0であるため、b側極板の総電荷が0に保存されることを使います。
平成26年度 理論科目 A問題5:問題文と選択肢
電気技術者試験センター公表の公式問題PDF(理論 問5)と公式解答PDFを確認しながら進めます。下の問題文・選択肢・回路図は公式内容を再構成した既存画像で、元のまま保持しています。

電験3種 理論科目 【静電容量回路】 平成26年度 A問題5
図のように、コンデンサ3個を充電する回路がある。スイッチS₁及びS₂を同時に閉じてから十分に時間が経過し、定常状態となったとき、a点からみたb点の電圧の値〔V〕として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、各コンデンサの初期電荷は零とする。
(1)−10/3 (2)−2.5 (3)2.5 (4)10/3 (5)20/3

出題のポイント:どこにもつながっていない節点は「電荷の合計」で決まる
定常状態のコンデンサ回路では「電流が0」までは誰でも分かります。しかしこの問題は、電流0だけでは点bの電位が決まりません。bは3つのコンデンサの極板が集まっているだけで、電源にも大地にもつながっていない浮遊した導体だからです。
そこで登場するのが電荷保存則です。b側の3枚の極板とそれをつなぐ導線は、外界から電気的に切り離された1つの島。島の外へ電荷は出入りできないので、初期電荷が0なら、いつまで経っても合計は0のままです。$$q_1+q_2+q_3=0$$この1本の式が、点bの電位を決める唯一の手がかりになります。

問題の解説:b側の電荷を符号つきで足して0とおく
STEP1 基準を決めて、3枚の「向こう側」の電位を読む
点aを0 Vとします。電池記号は長い線が正極。上から順に、左板の電位と容量は次のようになります。
| コンデンサ | 静電容量 | b と反対側の極板の電位 |
| 上 | 10 μF | +20 V |
| 中央 | 20 μF | 0 V(点a と同電位) |
| 下 | 10 μF | −10 V |
STEP2 b側の3つの電荷を足して0とおく
すべて \(q=C(V_b-V_{\text{反対側}})\) の形にそろえます。下側は \(V_b-(-10)=V_b+10\) となる点に注意してください。
b側の極板電荷の合計=0
符号ミスが出やすいので丁寧に
点aから見て+2.5 V

STEP3 電荷を計算して保存則を確かめる
求めた \(V_b=2.5\;\mathrm{V}\) を戻して、3枚の電荷を実際に計算します。
| コンデンサ | 計算 | b側の電荷 [μC] |
| 上(10 μF) | 10 × (2.5 − 20) | −175 |
| 中央(20 μF) | 20 × (2.5 − 0) | +50 |
| 下(10 μF) | 10 × (2.5 + 10) | +125 |
| 合計 | −175 + 50 + 125 | 0 ✓ |

選択肢を電荷保存則に戻して検算する
各選択肢の \(V_b\) を \(10(V_b-20)+20V_b+10(V_b+10)\) に代入し、電荷の合計が0になるかを確かめます。0にならなければ、どこかから電荷が湧いたことになり物理的にあり得ません。
| 選択肢 | Vb [V] | b側の電荷の合計 [μC] | 判定 |
| (1) | −10/3 ≒ −3.33 | −233.3 | ×(電荷が足りない) |
| (2) | −2.5 | −200.0 | × |
| (3) | +2.5 | 0.0 | ○ |
| (4) | +10/3 ≒ +3.33 | +33.3 | ×(電荷が余る) |
| (5) | +20/3 ≒ +6.67 | +166.7 | × |
表の合計値は \(V_b\) に対して単調に増えるので、0を横切るのは1か所だけ。(2)の −2.5 V は符号を取り違えた場合の値で、「aから見たb」なのか「bから見たa」なのかを読み違えると引っかかります。問題文は「a点からみたb点の電圧」=\(V_b-V_a\) を聞いています。
なぜ「電流が0」だけでは解けないのか
定常状態でコンデンサに電流が流れないのは事実ですが、それは「電荷がもう動かない」と言っているだけで、いくつの電荷がどこに落ち着いたかまでは教えてくれません。抵抗回路なら電流が0ならその素子の電圧も0と決まりますが、コンデンサは電流0でも電圧を保持できます——それが蓄えるという働きだからです。
決め手になるのは「その導体島に、外から電荷が入ってこられたか」です。点bは3枚の極板と導線だけで構成され、電源にも接地にもつながっていません。スイッチを閉じる前後で島の外との電荷のやりとりは一切なく、初期値0がそのまま保存されます。浮遊節点を見たら電荷保存則——この対応を覚えておくと、コンデンサ回路の応用問題で強力な武器になります。
なお、得られた式 \(V_b=\dfrac{\sum C_kV_k}{\sum C_k}\) は容量を重みとした加重平均の形をしています。ミルマンの定理と同じ形ですが、こちらの根拠は電流則ではなく電荷保存則である点が本質的に異なります。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① コンデンサ回路でどこにもつながっていない節点を見つけたら電荷保存則
② 電荷はすべて同じ向き(注目側 − 反対側)で書く。向きを混ぜると符号が崩れる
③ 電池は長い線が正極。負電源の項は \(V_b-(-10)=V_b+10\) と符号に注意
④ 答えが出たら各電荷を計算して合計0を確認。30秒で検算できる
コンデンサ回路の出題履歴
同じ考え方を使う直流回路の問題です。あわせて解くと解法が定着します。
| 年度 | 記事 | 問われ方 |
| 平成26年度 A問題5 | 本問(直流回路45) | 定常状態の浮遊節点の電位(電荷保存) |
| 令和4年度上期 A問題6 | 直流回路25 | 直列充電したコンデンサを並列に繋ぎ直すと電圧は |
| 平成20年度 A問題5 | 直流回路61 | コンデンサの繋ぎ替えと電圧(同型) |
| 平成28年度 A問題7 | 直流回路41 | 各素子が耐圧を超えない最大電圧 |
| 平成29年度 A問題6 | 直流回路37 | 定常状態の蓄積エネルギー総和 |
💡 覚え方
浮遊節点は電荷保存則。\(q=C\Delta V\) を同じ向きにそろえて合計0とおくだけ。結果は容量を重みとした加重平均 \(V_b=\sum C_kV_k/\sum C_k\) になる。
⚠️ よくある間違い
「電流0」だけでは電位は決まりません(コンデンサは電流0でも電圧を保持します)。負電源の項の符号(\(V_b+10\))に注意。問われているのは \(V_b-V_a\) であって \(V_a-V_b\) ではありません。
まとめ
| 枝 | 左板電位・容量 | b側電荷 |
| 上 | +20 V・10 μF | −175 μC |
| 中央 | 0 V・20 μF | +50 μC |
| 下 | −10 V・10 μF | +125 μC |
| 検算 | −175+50+125=0 μC | |
| 電圧・正答 | V=Vb−Va=+2.5 V、(3) | |
▼あわせて解きたい関連問題
・コンデンサ回路・ミルマンの関連問題:【理論】令和4年度上期A問題6

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