直流回路37【電験3種 理論】定常状態のコイル・コンデンサに蓄えられるエネルギー総和を求める!平成29年度 A問題6 完全解説

電験3種 理論科目 電気回路(直流回路) 平成29年度 A問題6 定常状態のコイルとコンデンサ!蓄えた総エネルギーは?

今回は平成29年度 理論科目 A問題6を解説します。R1、R2、L1、L2、C1、C2からなる回路にE=100 Vを加え、直流定常状態で4個のリアクタンス素子に蓄えられるエネルギーの総和〔J〕を求めます。等価回路、各素子の定常値、エネルギー計算の順に整理します。

直流定常状態では、理想コイルを短絡、理想コンデンサを開放として回路の電流と電圧を求めます。ただし、コイル電圧0 Vでも電流があれば磁気エネルギーを蓄え、コンデンサ電流0 Aでも電圧があれば電気エネルギーを蓄えます。各素子に対応するIまたはVを取り違えないことが重要です。

目次

平成29年度 理論科目 A問題6:問題文と選択肢

電気技術者試験センター公表の公式問題PDF(理論 問6)と公式解答PDFを確認しながら進めます。下の問題文画像・選択肢・回路図は元のまま保持しています。

電験3種 理論科目 直流回路 平成29年度 A問題6 問題文
平成29年度 理論科目 A問題6 問題文

電験3種 理論科目 【電気回路(直流回路)】 平成29年度 A問題6

 R1=20Ω、R2=30Ωの抵抗、インダクタンスL1=20mH、L2=40mHのコイル及び静電容量C1=400μF、C2=600μFのコンデンサからなる図のような直並列回路がある。直流電圧E=100Vを加えたとき、定常状態においてL1、L2、C1及びC2に蓄えられるエネルギーの総和の値〔J〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)0.12 (2)1.20 (3)1.32 (4)1.40 (5)1.52〔J〕

図 E=100V、L₁・L₂・R₁・R₂・C₁・C₂からなる直並列回路(問題図)
図 E=100V、L₁・L₂・R₁・R₂・C₁・C₂からなる直並列回路(問題図)

出題のポイント:短絡・開放は「回路計算のための置き換え」にすぎない

直流定常状態でコイルを短絡、コンデンサを開放に置き換える——これは覚えている人が多い操作です。ところが本問の落とし穴は、その先にあります。「短絡=エネルギー0」ではないのです。

素子定常状態の置き換えその理由でもエネルギーは
コイル L短絡(電圧0 V)\(v_L=L\dfrac{di}{dt}\)、電流が一定なので0 V電流が流れていれば \(\frac12LI^2\) を蓄える
コンデンサ C開放(電流0 A)\(i_C=C\dfrac{dv}{dt}\)、電圧が一定なので0 A電圧がかかっていれば \(\frac12CV^2\) を蓄える

ここにきれいな対称性があります。コイルは電圧が0でも電流で蓄え、コンデンサは電流が0でも電圧で蓄える。「0になるほうの量」と「エネルギーを決める量」が、素子ごとに逆になっているのです。

だから解答手順は必ず2段階になります。①置き換えた等価回路で電流と電圧を求める → ②元の回路に戻って各素子のIとVを割り当てる。②を飛ばすと、どの素子に何ボルトかかっているか分からなくなります。

直流定常状態でコイルは短絡だが2Aでエネルギーを蓄え、コンデンサは開放だが40V・60Vでエネルギーを蓄えることを示す出題のポイント図
定常状態ではコイルを短絡、コンデンサを開放として回路計算します。その後、コイルは電流、コンデンサは電圧から蓄積エネルギーを求めます。

問題の解説:等価回路 → 各素子への割り当て → エネルギー

使う公式:蓄積エネルギーの2式
$$W_L=\frac{1}{2}LI^2\;[\mathrm{J}],\qquad W_C=\frac{1}{2}CV^2\;[\mathrm{J}]$$

コイルは電流、コンデンサは電圧。入れる量を取り違えると単位が合いません。

STEP1 定常等価回路で電流を求める

L₁・L₂を短絡線に、C₁・C₂を切り離すと、残るのは100 Vに20 Ωと30 Ωが直列という最も単純な回路です。

$$I=\frac{E}{R_1+R_2}=\frac{100}{20+30}=2\;[\mathrm{A}]$$
❶ オームの法則
この2 Aが回路唯一の電流

L₁もL₂もこの直列経路の上にあるので、どちらのコイルにも同じ2 Aが流れます。

STEP2 各素子に電流・電圧を割り当てる

ここが本問の山場です。元の回路に戻って、C₁とC₂がそれぞれどこにつながっているかを見ます。

$$V_{C1}=I R_1=2\times20=40\;[\mathrm{V}]$$
❷ C₁はL₁-R₁枝と並列
L₁の電圧は0 Vなので、R₁の電圧がそのままC₁にかかる
$$V_{C2}=I R_2=2\times30=60\;[\mathrm{V}]$$
❸ C₂はL₂-R₂枝と並列
同様にR₂の電圧がC₂にかかる

節点で確認すると分かりやすいです。電源の+側をA=100 V、中間の節点をB、−側を0 Vとすると、\(B=100-40=60\;\mathrm{V}\)。C₁はA-B間で \(100-60=40\;\mathrm{V}\)、C₂はB-0間で60 V。2つを足すと100 Vになるので、割り当てが正しいことが確かめられます。

100V電源、R1が20オーム、R2が30オームの定常等価回路で2A、C1の40V、C2の60Vと各L・Cの定常値を示す図
定常等価回路はR1+R2の直列です。電流2 A、A-B間40 V、B-0 V間60 Vから、各コイル電流と各コンデンサ電圧を決めます。

STEP3 4素子を個別に計算して合計する

$$W_{L1}=\tfrac12\times20\times10^{-3}\times2^2=0.04\;[\mathrm{J}]$$
❹ コイル1
mH→Hの換算を忘れない
$$W_{L2}=\tfrac12\times40\times10^{-3}\times2^2=0.08\;[\mathrm{J}]$$
❺ コイル2
Lが2倍なのでWも2倍
$$W_{C1}=\tfrac12\times400\times10^{-6}\times40^2=0.32\;[\mathrm{J}]$$
❻ コンデンサ1
μF→Fの換算を忘れない
$$W_{C2}=\tfrac12\times600\times10^{-6}\times60^2=1.08\;[\mathrm{J}]$$
❼ コンデンサ2
これが全体の7割を占める
素子定常値蓄積エネルギー全体に占める割合
L₁=20 mH2 A・0 V0.04 J2.6 %
L₂=40 mH2 A・0 V0.08 J5.3 %
C₁=400 μF0 A・40 V0.32 J21.1 %
C₂=600 μF0 A・60 V1.08 J71.1 %
合計1.52 J100 %
答え総和 \(W=0.04+0.08+0.32+1.08=1.52\;[\mathrm{J}]\) → 選択肢(5)
L1・L2・C1・C2の蓄積エネルギー0.04J・0.08J・0.32J・1.08Jを計算し総和1.52Jと正答5を示す解答図
コイル合計0.12 J、コンデンサ合計1.40 J、4素子の総和は1.52 Jです。公式正答は(5)です。

誤答の正体:5つの選択肢はすべて「数え落とし」で作られている

各選択肢がどの素子をどう数えると出るかを実際に計算して確かめました。すべてが実在する勘違いに対応します。

選択肢W [J]その値が出る数え方判定
(1)0.12コイルだけを数えた(0.04+0.08)。「コンデンサは電流0だから蓄えない」という誤解×
(2)1.20C₁を数え落とした(0.12+1.08)。C₁の40 Vに気づかなかった場合×
(3)1.32C₁とC₂の電圧を入れ替えた(C₁に60 V、C₂に40 V):0.72+0.48+0.12×
(4)1.40コンデンサだけを数えた(0.32+1.08)。「コイルは電圧0だから蓄えない」という誤解×
(5)1.52正解:4素子すべてを個別に計算

(1)と(4)が対になっているのが秀逸です。(1)は「コンデンサは電流0だから0 J」、(4)は「コイルは電圧0だから0 J」——正反対の誤解が、それぞれ別の選択肢として用意されています。どちらも「短絡・開放=エネルギー0」という同じ根の誤解です。

さらに(3)は電圧の割り当てミス。C₁とC₂に何ボルトかかるかを回路図で確認せず、大きいCに大きい電圧を当てはめると1.32 Jになります。

なお、両方のコンデンサに電源電圧100 Vを代入すると \(0.12+2.0+3.0=5.12\;\mathrm{J}\) となり、どの選択肢にも当てはまりません。「近い値がない」と気づいた時点で、割り当てを見直すサインです。

なぜC₂が全体の7割を占めるのか

エネルギーの内訳を見ると、C₂だけで1.08 J=全体の71 %です。この偏りには理由があります。

コンデンサのエネルギーは電圧の2乗に比例します。C₂はC₁の1.5倍の容量ですが、電圧も1.5倍(60 V対40 V)。したがって \(1.5\times1.5^2=3.375\) 倍——容量比だけを見て「1.5倍」と思うと、実際の3.4倍と大きくずれます。

$$\frac{W_{C2}}{W_{C1}}=\frac{C_2V_2^2}{C_1V_1^2}=\frac{600\times60^2}{400\times40^2}=\frac{2\,160\,000}{640\,000}=3.375$$
❽ 比で確認
容量比1.5×電圧比の2乗2.25

一方コイル側は合わせても0.12 Jで、全体の8 %にすぎません。mHとμFという単位の桁と、電流2 A・電圧数十Vという値の桁が、この差を生んでいます。「桁が違う項は概算で切り捨ててよいか」を判断する材料にもなります——本問では選択肢の間隔が0.12 J程度なので、コイルを切り捨てると(4)に着地してしまい、切り捨ては許されません。

本番で使える時間短縮テクニック

⏱️ 本番での進め方
① まず「Lは短絡・Cは開放」で等価回路を描く。ここは機械的に
必ず元の回路に戻って、各C・各Lにかかる電圧・流れる電流を割り当てる
③ コンデンサの電圧は並列につながっている抵抗の電圧(コイルの電圧は0だから)
電圧の和が電源電圧になるか(40+60=100 V)を1秒で確認
⑤ 4素子分すべて足す。1つでも抜けると必ず別の選択肢に着地する設計になっている

💡 覚え方
「コイルは電流、コンデンサは電圧」——L-I、C-Vと2文字ずつで覚えます。定常状態で0になるのは、その裏側(Lの電圧、Cの電流)。0になる量とエネルギーを決める量は、必ず逆です。

⚠️ よくある間違い
最も多いのは「短絡・開放にしたからエネルギーも0」という誤解で、選択肢(1)と(4)がそれを狙っています。次に多いのが両方のコンデンサに電源電圧100 Vを代入するミス。C₁は40 V、C₂は60 Vで、足して100 Vになることを図で確認してください。

この問題は過去問と完全に同じ内容で再出題されています

本問は令和6年度下期 理論科目 A問題5同一の問題です。抵抗値・インダクタンス・静電容量・電源電圧・5つの選択肢の数値と並び順まで、すべて同一です。

電験3種では数年おきに同じ問題がそのまま再出題されます。特に過渡現象の定番テーマは繰り返し問われるため、過去問演習の効果が非常に高い分野です。

ただし「答えは(5)」のように選択肢番号で覚えるのは危険です。再出題の際に並び順が変わることもあります。解き方の手順ごと身につけてください。

あわせて解いておきたい記事:令和6年度下期 理論科目 A問題5

まとめ

確認項目定常値・エネルギー
回路電流I=100/(20+30)=2 A
L1=20 mH2 A、0 V、0.04 J
L2=40 mH2 A、0 V、0.08 J
C1=400 μF0 A、40 V、0.32 J
C2=600 μF0 A、60 V、1.08 J
コイル合計0.12 J
コンデンサ合計1.40 J
総和・正答1.52 J、(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・定常状態のL・Cの関連問題:【理論】令和7年度上期A問題5

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