今回は令和6年度下期 理論科目 A問題5を解説します。R₁・R₂の抵抗、L₁・L₂のコイル、C₁・C₂のコンデンサの直並列回路にE=100Vを加えたとき、定常状態でL₁・L₂・C₁・C₂に蓄えられるエネルギーの総和を求める問題です。
定常状態ではコイルは短絡・コンデンサは開放とみなせます。まず流れる電流を求め、各コイルの½LI²、各コンデンサの½CV²を計算して合計します。
令和6年度下期 理論科目 A問題5:問題文と選択肢
定常状態でコイルは短絡、コンデンサは開放——ここまでは定番です。しかし「短絡=エネルギー0」ではありません。この落とし穴を丁寧に外していきます。まずは問題文を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度下期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題5
電験3種 理論科目 【電気回路(過渡現象)】 令和6年度下期 A問題5
R₁=20Ω、R₂=30Ωの抵抗、インダクタンスL₁=20mH、L₂=40mHのコイル及び静電容量C₁=400μF、C₂=600μFのコンデンサからなる図のような直並列回路がある。直流電圧E=100Vを加えたとき、定常状態においてL₁、L₂、C₁及びC₂に蓄えられるエネルギーの総和の値〔J〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)0.12 (2)1.20 (3)1.32 (4)1.40 (5)1.52〔J〕

出題のポイント:短絡・開放は「回路計算のための置き換え」にすぎない
直流定常状態でコイルを短絡、コンデンサを開放に置き換える——ここまでは定番です。しかし本問の落とし穴はその先にあります。「短絡=エネルギー0」ではないのです。
| 素子 | 定常状態の置き換え | その理由 | でもエネルギーは |
| コイル L | 短絡(電圧0 V) | \(v_L=L\dfrac{di}{dt}\)、電流一定なので0 V | 電流があれば \(\frac12LI^2\) を蓄える |
| コンデンサ C | 開放(電流0 A) | \(i_C=C\dfrac{dv}{dt}\)、電圧一定なので0 A | 電圧があれば \(\frac12CV^2\) を蓄える |
ここにきれいな対称性があります。コイルは電圧が0でも電流で蓄え、コンデンサは電流が0でも電圧で蓄える。「0になる量」と「エネルギーを決める量」が素子ごとに逆になっているのです。
だから手順は必ず2段階です。①置き換えた等価回路で電流・電圧を求める → ②元の回路に戻って各素子にIとVを割り当てる。②を飛ばすと、どの素子に何ボルトかかっているか分からなくなります。

問題の解説:等価回路 → 割り当て → エネルギー
STEP1 定常等価回路で電流を求める
L₁・L₂を短絡線に、C₁・C₂を切り離すと、残るのは100 Vに20 Ωと30 Ωが直列という最も単純な回路です。
この2 Aが回路唯一の電流
L₁もL₂もこの直列経路上にあるので、どちらのコイルにも同じ2 Aが流れます。
STEP2 各コンデンサに電圧を割り当てる
ここが山場です。元の回路に戻って、C₁とC₂がどこにつながっているかを見ます。
L₁の電圧は0 VなのでR₁の電圧がそのままC₁に
同様にR₂の電圧がC₂に
検算:\(40+60=100\;\mathrm{V}\) ——電源電圧と一致します ✓ この確認を1秒入れるだけで、割り当てミスが防げます。

STEP3 4素子を個別に計算して合計する
mH→Hの換算を忘れない
Lが2倍なのでWも2倍
μF→Fの換算を忘れない
これが全体の7割
| 素子 | 定常値 | 蓄積エネルギー | 全体に占める割合 |
| L₁=20 mH | 2 A・0 V | 0.04 J | 2.6 % |
| L₂=40 mH | 2 A・0 V | 0.08 J | 5.3 % |
| C₁=400 μF | 0 A・40 V | 0.32 J | 21.1 % |
| C₂=600 μF | 0 A・60 V | 1.08 J | 71.1 % |
| 合計 | — | 1.52 J | 100 % |


誤答の正体:5つの選択肢はすべて「数え落とし」で作られている
各選択肢がどの素子をどう数えると出るかを実際に計算しました。すべてが実在する勘違いに対応します。
| 選択肢 | W [J] | その値が出る数え方 | 判定 |
| (1) | 0.12 | コイルだけ(0.04+0.08)。「Cは電流0だから蓄えない」という誤解 | × |
| (2) | 1.20 | C₁を数え落とした(0.12+1.08)。C₁の40 Vに気づかなかった | × |
| (3) | 1.32 | C₁とC₂の電圧を入れ替えた(C₁に60 V、C₂に40 V):0.72+0.48+0.12 | × |
| (4) | 1.40 | コンデンサだけ(0.32+1.08)。「Lは電圧0だから蓄えない」という誤解 | × |
| (5) | 1.52 | 正解:4素子すべてを個別に計算 | ○ |
(1)と(4)が対になっているのが秀逸です。(1)は「コンデンサは電流0だから0 J」、(4)は「コイルは電圧0だから0 J」——正反対の誤解が、それぞれ別の選択肢として用意されています。どちらも「短絡・開放=エネルギー0」という同じ根の誤解です。
(3)は電圧の割り当てミス。どちらのコンデンサに何ボルトかかるかを回路図で確認せず、容量の大きいほうに大きい電圧を当てはめると1.32 Jになります。
なぜC₂が全体の7割を占めるのか
エネルギーの内訳を見ると、C₂だけで1.08 J=全体の71 %です。この偏りには理由があります。
容量比1.5 × 電圧比の2乗2.25
コンデンサのエネルギーは電圧の2乗に比例します。C₂はC₁の1.5倍の容量ですが、電圧も1.5倍。したがって \(1.5\times1.5^2=3.375\) 倍——容量比だけを見て「1.5倍」と思うと、実際の3.4倍と大きくずれます。
一方コイル側は合わせても0.12 Jで全体の8 %。mHとμFという単位の桁差が効いています。ただし選択肢の間隔が0.12 J程度なので、コイルを「小さいから」と切り捨てると(4)に着地してしまいます。概算で省いてよい項ではありません。
この問題は過去問と完全に同じ内容で再出題されています
本問は平成29年度 理論科目 A問題6と同一の問題です。抵抗値・インダクタンス・静電容量・電源電圧・5つの選択肢の数値と並び順まで、すべて同一です。
電験3種では数年おきに同じ問題がそのまま再出題されます。特に過渡現象の定番テーマは繰り返し問われるため、過去問演習の効果が非常に高い分野です。
ただし「答えは(5)」のように選択肢番号で覚えるのは危険です。再出題の際に並び順が変わることもあります。解き方の手順ごと身につけてください。
あわせて解いておきたい記事:平成29年度 理論科目 A問題6
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① まず「Lは短絡・Cは開放」で等価回路を描く。ここは機械的に
② 必ず元の回路に戻って、各C・各Lに電圧・電流を割り当てる
③ コンデンサの電圧は並列につながっている抵抗の電圧(コイルの電圧は0だから)
④ 電圧の和が電源電圧になるか(40+60=100 V)を1秒で確認
⑤ 4素子分すべて足す。1つでも抜けると必ず別の選択肢に着地する設計
💡 覚え方
「コイルは電流、コンデンサは電圧」——L-I、C-Vと2文字ずつで覚えます。定常状態で0になるのはその裏側(Lの電圧、Cの電流)。0になる量とエネルギーを決める量は必ず逆です。
⚠️ よくある間違い
最も多いのは「短絡・開放にしたからエネルギーも0」という誤解で、選択肢(1)と(4)がそれを狙っています。次に多いのが両方のコンデンサに電源電圧100 Vを代入するミス。C₁は40 V、C₂は60 Vで、足して100 Vになることを図で確認してください。
まとめ
| 電流 | E/(R₁+R₂)=2A |
| コイル | 0.04+0.08J |
| コンデンサ | 0.32+1.08J |
| 答え | 総和1.52J …(5) |
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