今回は令和6年度下期 理論科目 A問題2を解説します。地球を、真空中にある半径6.37×106mの導体球と見なしたときの静電容量を求める計算問題です。孤立導体球の静電容量の公式を覚えていれば一瞬で解けます。
孤立した導体球(半径r)の静電容量はC=4πε0rで表されます。半径に比例するだけのシンプルな公式です。値を代入して計算します。
令和6年度下期 理論科目 A問題2:問題文と選択肢
「コンデンサ=2枚の電極」というイメージだと戸惑いますが、球1つにも静電容量があります。相手は無限遠——だから半径だけで決まります。まずは問題文を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度下期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題2
電験3種 理論科目 【電磁気(静電界)】 令和6年度下期 A問題2
地球を、真空中にある半径6.37×106mの導体球と見なしたとき、地球の静電容量の値〔F〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、真空の誘電率をε0=8.85×10-12F/mとする。
(1)7.08×10-4 (2)4.45×10-3 (3)4.51×103 (4)5.67×104 (5)1.78×105〔F〕
出題のポイント:孤立導体球の静電容量は半径だけで決まる
「コンデンサ=2枚の電極」というイメージが強いと、球1つに静電容量があることに戸惑います。しかし電荷を蓄えて電位が上がるものには、すべて静電容量があります。
| 孤立導体球(本問) | 平行平板コンデンサ | |
| 公式 | \(C=4\pi\varepsilon_0 r\) | \(C=\varepsilon S/d\) |
| 相手の電極 | 無限遠(存在しない) | 対向する板 |
| 決まるもの | 半径だけ | 面積と間隔 |
| 半径・寸法の効き方 | 1乗 | 面積は2乗、間隔は反比例 |
「対向電極がないから容量もゼロ」ではありません。球に電荷Qを与えれば電位Vが上がる——その比 \(Q/V\) が静電容量です。相手は無限遠(電位0の基準)だと考えます。

公式を導いてみる——覚えていなくても作れる
この公式は電位の式から2行で導けます。丸暗記が不安なら、導き方を押さえておくと安心です。
球の外側は中心に点電荷があるのと同じ
Qが約分で消える
Qが消えるのがポイントです。静電容量は「どれだけ電荷を与えたか」によらず、形だけで決まる量——だから「容量」と呼ばれます。
なお球の外側の電界は、全電荷が中心に集まった点電荷と同じになります(ガウスの法則から導けます)。だから電位も点電荷と同じ式になり、球の表面(\(r\))での値を使えばよいのです。
問題の解説:公式に代入するだけ
STEP1 4πε₀ を先に計算しておく
1.11×10⁻¹⁰ と覚えておくと速い
この値を覚えておく価値は高いです。クーロンの法則の \(1/(4\pi\varepsilon_0)=8.99\times10^9\) と対で押さえておくと、静電界の計算が速くなります。
STEP2 半径を代入する
指数は \(-10+6=-4\)
係数は \(1.112\times6.37=7.08\)
指数の足し算で暗算できます。\(10^{-10}\times10^{6}=10^{-4}\)、係数は \(1.11\times6.37\approx7.1\)。選択肢の桁を見れば、この時点で答えが決まります。


誤答の正体:桁が大きく散らされている
選択肢の値がどんな計算から出るかを調べました。再現できたものとできないものがあります。
| 選択肢 | 値 [F] | その値が出る計算 | 判定 |
| (1) | 7.08×10⁻⁴ | \(4\pi\varepsilon_0 r\) ★正解 | ○ |
| (2) | 4.45×10⁻³ | 正解の \(2\pi\) 倍。自然な取り違えでは再現できず | × |
| (3) | 4.51×10³ | \(4\pi\varepsilon_0 r^2=\varepsilon_0\times(\text{球の表面積})\) | × |
| (4) | 5.67×10⁴ | 自然な取り違えでは再現できず | × |
| (5) | 1.78×10⁵ | 自然な取り違えでは再現できず | × |
(3)は明確な意味を持つ誤答です。\(4\pi r^2\) は球の表面積なので、\(\varepsilon_0\times4\pi r^2\) は平行平板の公式 \(C=\varepsilon S/d\) に球の表面積を入れ、\(d=1\) としたものに相当します。「コンデンサといえば \(\varepsilon S/d\)」という反射で解くと、ここに着地します。
半径を2乗するかどうかで、答えは \(6.37\times10^6\) 倍も変わります。\(7.08\times10^{-4}\) と \(4.51\times10^3\)——実に7桁の差です。公式に \(r\) が1乗で入るのか2乗で入るのかは、桁を見れば分かるということでもあります。
(2)(4)(5)は、いくつもの式を試しても再現できませんでした。桁を散らして、当てずっぽうで選んでも当たらないようにするための選択肢と考えられます。逆に言えば、きちんと計算すれば必ずどれかにぴったり一致するということです。
桁の感覚:地球ですら1 mFに満たない
計算結果の \(7.08\times10^{-4}\;\mathrm{F}\)=約708 μF。地球ほど巨大な導体球でも、市販の電解コンデンサ1個程度しかありません。
| 導体球 | 半径 | 静電容量 |
| 地球 | 6.37×10⁶ m | 7.08×10⁻⁴ F(708 μF) |
| 半径1 mの球 | 1 m | 1.11×10⁻¹⁰ F(111 pF) |
| 半径1 cmの球 | 0.01 m | 1.11×10⁻¹² F(1.11 pF) |
孤立導体の静電容量はきわめて小さい——これが実感できると、なぜ実際のコンデンサが「薄い誘電体を挟んで2枚の電極を極端に近づける」構造をとるのかが分かります。
dを小さくするほど容量が増える
平行平板では間隔dを小さくすれば容量をいくらでも大きくできます。数μmの誘電体を挟めば、手のひらサイズで数千μFが実現できる——孤立球の111 pF/mとは比較になりません。「近づけること」が容量を稼ぐ鍵なのです。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① 孤立導体球は \(C=4\pi\varepsilon_0 r\)(半径の1乗)。平行平板の \(\varepsilon S/d\) と混同しない
② \(4\pi\varepsilon_0\approx1.11\times10^{-10}\) を覚えておくと代入が一瞬
③ 対で \(1/(4\pi\varepsilon_0)\approx8.99\times10^9\)(クーロンの法則)も押さえる
④ 指数だけ先に計算して桁を出す。\(10^{-10}\times10^{6}=10^{-4}\)
⑤ 公式を忘れたら\(V=Q/(4\pi\varepsilon_0r)\) から \(C=Q/V\) で導ける
💡 覚え方
「孤立球はr(1乗)、平板はS/d」。孤立球の相手は無限遠なので、寸法は半径だけ。\(4\pi\varepsilon_0\approx1.11\times10^{-10}\) とセットで暗記すれば、代入して指数を足すだけで答えが出ます。
⚠️ よくある間違い
平行平板の \(C=\varepsilon S/d\) を持ち出すのが最頻出のミスで、球の表面積 \(4\pi r^2\) を代入すると選択肢(3)に着地します。孤立球には対向電極も間隔dも存在しません。また半径を2乗すると7桁ずれるので、桁が大きく違う選択肢を選んだら公式を疑ってください。
この問題は過去問と完全に同じ内容で再出題されています
本問は平成18年度 理論科目 A問題1と同一の問題です。半径・誘電率・5つの選択肢の数値も正答(1)も同一で、本問は「地球を導体球と見なす」という枠づけが付いているだけです。
電験3種では数年おきに同じ問題がそのまま再出題されます。特に「孤立導体球の静電容量」という定番テーマは繰り返し問われるため、過去問演習の効果が非常に高い分野です。
ただし選択肢の番号で覚えるのは危険です。再出題の際に並び順が変わることもあります。解き方の手順ごと身につけてください。
あわせて解いておきたい記事:平成18年度 理論科目 A問題1
まとめ
| 孤立導体球の公式 | C=4πε0r |
| 4πε0 | ≒1.11×10-10 |
| 半径 r | 6.37×106m |
| 静電容量 C | 7.08×10-4F …(1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・導体球・静電容量の関連問題:【理論】令和7年度上期A問題2

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