今回は平成18年度 理論科目 A問題1を解説します。真空中に半径6.37×106m(地球とほぼ同じ大きさ)の導体球があるとき、その静電容量〔F〕を求める計算問題です。
真空中の孤立導体球について、無限遠を電位0とすると、球表面の電位はV=Q/(4πε0R)です。静電容量の定義C=Q/VからC=4πε0Rとなり、半径に比例します。半径6.37×106mでも約7.08×10-4F、すなわち0.708mFです。
平成18年度 理論科目 A問題1:問題文と選択肢
「コンデンサ=2枚の電極」というイメージだと戸惑いますが、球1つにも静電容量があります。相手は無限遠——だから半径だけで決まります。まずは問題文を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題1
電験3種 理論科目 【電磁気(静電界)】 平成18年度 A問題1
真空中に半径6.37×106〔m〕の導体球がある。これの静電容量〔F〕の値として、最も近いのは次のうちどれか。ただし、真空の誘電率をε0=8.85×10-12〔F/m〕とする。
(1)7.08×10-4 (2)4.45×10-3 (3)4.51×103 (4)5.67×104 (5)1.78×105
出題のポイント:孤立導体球の静電容量は半径だけで決まる
「コンデンサ=2枚の電極」というイメージが強いと、球1つに静電容量があることに戸惑います。しかし電荷を蓄えて電位が上がるものには、すべて静電容量があります。
| 孤立導体球(本問) | 平行平板コンデンサ | |
| 公式 | \(C=4\pi\varepsilon_0R\) | \(C=\varepsilon S/d\) |
| 相手の電極 | 無限遠(存在しない) | 対向する板 |
| 決まるもの | 半径だけ | 面積と間隔 |
| 寸法の効き方 | 1乗 | 面積は2乗、間隔は反比例 |

公式を導いてみる——覚えていなくても作れる
この公式は電界の積分から3行で導けます。丸暗記が不安なら、導き方を押さえておくと安心です。
ガウスの法則から。点電荷と同じ形
\(1/\rho^2\) の積分は \(-1/\rho\)
Qが約分で消える
❸でQが消えるのがポイントです。静電容量は「どれだけ電荷を与えたか」によらず、形だけで決まる量——だから「容量」と呼ばれます。
「無限遠を電位0とする」という約束も重要です。孤立した導体には対向電極がないので、基準を無限遠に置くことで電位が定義できます。だから「相手の電極は無限遠」という言い方になります。
問題の解説:代入するだけ
STEP1 \(4\pi\varepsilon_0\) を先に計算する
1.11×10⁻¹⁰ と覚えておくと速い
この値は覚える価値が高いです。クーロンの法則の \(1/(4\pi\varepsilon_0)=9.0\times10^9\) と対で押さえておくと、静電界の計算が速くなります。
STEP2 半径を代入する
指数は \(-10+6=-4\)
係数は \(1.112\times6.37=7.08\)
指数の足し算で暗算できます。\(10^{-10}\times10^{6}=10^{-4}\)、係数は \(1.11\times6.37\approx7.1\)——選択肢の桁を見れば、この時点で答えが決まります。


誤答の正体:半径を2乗すると7桁ずれる
| 選択肢 | 値 [F] | その値が出る計算 | 判定 |
| (1) | 7.08×10⁻⁴ | \(4\pi\varepsilon_0R\) ★正解 | ○ |
| (2) | 4.45×10⁻³ | 正解の \(2\pi\) 倍。自然な取り違えでは再現できず | × |
| (3) | 4.51×10³ | \(4\pi\varepsilon_0R^2=\varepsilon_0\times(\text{球の表面積})\) | × |
| (4) | 5.67×10⁴ | 自然な取り違えでは再現できず(散らし) | × |
| (5) | 1.78×10⁵ | 自然な取り違えでは再現できず(散らし) | × |
(3)は明確な意味を持つ誤答です。\(4\pi R^2\) は球の表面積なので、\(\varepsilon_0\times4\pi R^2\) は平行平板の公式 \(C=\varepsilon S/d\) に球の表面積を入れ、\(d=1\) としたものに相当します。「コンデンサといえば \(\varepsilon S/d\)」という反射で解くと、ここに着地します。
半径を2乗するかどうかで、答えは \(6.37\times10^6\) 倍も変わります。\(7.08\times10^{-4}\) と \(4.51\times10^3\)——実に7桁の差です。逆に言えば、公式に \(R\) が1乗で入るのか2乗で入るのかは、桁を見れば分かるということでもあります。
桁の感覚:地球サイズでも1 mFに満たない
この半径 \(6.37\times10^6\;\mathrm{m}\) は地球の半径とほぼ同じです。それでも静電容量は約708 μF——市販の電解コンデンサ1個程度しかありません。
| 導体球 | 半径 | 静電容量 |
| 地球サイズ(本問) | 6.37×10⁶ m | 7.08×10⁻⁴ F(708 μF) |
| 半径1 mの球 | 1 m | 1.11×10⁻¹⁰ F(111 pF) |
| 半径1 cmの球 | 0.01 m | 1.11×10⁻¹² F(1.11 pF) |
孤立導体の静電容量はきわめて小さい——これが実感できると、なぜ実際のコンデンサが「薄い誘電体を挟んで2枚の電極を極端に近づける」構造をとるのかが分かります。
dを小さくするほど容量が増える
平行平板なら間隔dを小さくすれば容量をいくらでも大きくできます。数μmの誘電体を挟めば、手のひらサイズで数千μFが実現できる——孤立球の111 pF/mとは比較になりません。「近づけること」が容量を稼ぐ鍵なのです。
この問題は過去問と完全に同じ内容で再出題されています
本問は令和6年度下期 理論科目 A問題2と同一の問題です。半径・誘電率・5つの選択肢の数値も正答(1)も同一で、再出題版は「地球を導体球と見なす」という枠づけが付いているだけです。
電験3種では数年おきに同じ問題がそのまま再出題されます。特に「孤立導体球の静電容量」という定番テーマは繰り返し問われるため、過去問演習の効果が非常に高い分野です。
ただし選択肢の番号で覚えるのは危険です。再出題の際に並び順が変わることもあります。解き方の手順ごと身につけてください。
あわせて解いておきたい記事:令和6年度下期 理論科目 A問題2
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① 孤立導体球は \(C=4\pi\varepsilon_0R\)(半径の1乗)。平行平板の \(\varepsilon S/d\) と混同しない
② \(4\pi\varepsilon_0\approx1.11\times10^{-10}\) を覚えておくと代入が一瞬
③ 対で \(1/(4\pi\varepsilon_0)\approx9.0\times10^9\)(クーロンの法則)も押さえる
④ 指数だけ先に計算して桁を出す(\(10^{-10}\times10^{6}=10^{-4}\))
⑤ 公式を忘れたら\(V=Q/(4\pi\varepsilon_0R)\) から \(C=Q/V\) で導ける
💡 覚え方
「孤立球はR(1乗)、平板はS/d」。孤立球の相手は無限遠なので、寸法は半径だけ。\(4\pi\varepsilon_0\approx1.11\times10^{-10}\) とセットで暗記すれば、代入して指数を足すだけで答えが出ます。
⚠️ よくある間違い
平行平板の \(C=\varepsilon S/d\) を持ち出すのが最頻出のミスで、球の表面積 \(4\pi R^2\) を代入すると選択肢(3)に着地します。孤立球には対向電極も間隔dも存在しません。また半径を2乗すると7桁ずれるので、桁が大きく違う選択肢を選んだら公式を疑ってください。
まとめ
| 基準 | 真空中の孤立球、無限遠でV=0 |
| 球表面電位 | V=Q/(4πε0R) |
| 静電容量 | C=Q/V=4πε0R |
| 半径 | R=6.37×106m |
| 計算結果 | C≒7.08×10-4F=0.708mF → (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・孤立導体球の関連問題:【理論】令和6年度下期A問題2

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