今回は平成25年度 理論科目 B問題17を解説します。空気中の半径r=0.01mの金属球について、(a)電荷Qを帯びたときの球表面の電界の強さの式、(b)空気の絶縁破壊(3×106V/m)に達するときの最大電荷Qを求める問題です。
金属球の余剰電荷は実際には球表面に分布しますが、球外の電界は、中心に同じ総電荷Qを置いた点電荷の電界と数学的に等価です。球表面直外ではE=Q/(4πε0r2)となります。(b)は、この電界を問題で与えられた空気の絶縁破壊電界に等しいとおき、Q=E×4πε0r2から最大電荷を計算します。
平成25年度 理論科目 B問題17:問題文と選択肢
(a)は式を覚えていなくても単位を確認するだけで正解が1つに絞れます。(b)は絶縁破壊の条件から電荷を逆算するだけです。まずは問題文を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成25年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 B問題17
電験3種 理論科目 【電磁気(静電界)】 平成25年度 B問題17
空気中に半径r〔m〕の金属球がある。次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし、r=0.01〔m〕、真空の誘電率をε0=8.854×10-12〔F/m〕、空気の比誘電率を1.0とする。
(a)この金属球が電荷Q〔C〕を帯びたときの金属球表面における電界の強さ〔V/m〕を表す式として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)Q/(4πε0r2) (2)3Q/(4πε0r3) (3)Q/(4πε0r) (4)Q2/(8πε0r) (5)Q2/(2πε0r2)
(b)空気の絶縁破壊の強さを3×106V/mとして、金属球表面における電界の強さが空気の絶縁破壊の強さと等しくなるようなQ〔C〕の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)2.1×10-10 (2)2.7×10-9 (3)3.3×10-8 (4)2.7×10-7 (5)3.3×10-6
出題のポイント:(a)は単位を見るだけで答えが決まる
(a)は球表面の電界の式を選ぶ問題です。式を覚えていなくても、単位を確認するだけで正解が1つに絞れます。
求めるのは電界=V/m。5つの選択肢の単位を調べました。
| 選択肢 | 式 | 整理すると | 単位 | 判定 |
| (1) | \(Q/(4\pi\varepsilon_0r^2)\) | \(\mathrm{C}/(\mathrm{F\cdot m})\) | V/m | ◎ 電界 |
| (2) | \(3Q/(4\pi\varepsilon_0r^3)\) | \(\mathrm{C}/(\mathrm{F\cdot m^2})\) | V/m² | × 電界にならない |
| (3) | \(Q/(4\pi\varepsilon_0r)\) | \(\mathrm{C/F}\) | V | × これは電位 |
| (4) | \(Q^2/(8\pi\varepsilon_0r)\) | \(\mathrm{C^2/F}\) | J | × これはエネルギー |
| (5) | \(Q^2/(2\pi\varepsilon_0r^2)\) | \(\mathrm{C^2}/(\mathrm{F\cdot m})\) | J/m | × これは力の次元 |
単位が V/m になるのは(1)だけです。特に(3)は電位の式——分母の \(r\) が1乗か2乗かの違いで、まったく別の量になります。
(4)(5)は \(Q^2\) が入っている点で見抜けます。電界は電荷に比例する量なので、2乗になることはありません。\(Q^2\) が現れるのはエネルギーや力です。

なぜ球の外は「中心の点電荷」と同じになるのか
金属球の電荷は実際には表面に分布しています。それなのに、なぜ中心に点電荷を置いた式が使えるのでしょうか。
球と同心の球面(半径R)を考える
面積 \(4\pi R^2\) を掛けるだけ
内部の分布によらない
ガウスの法則は「閉曲面の内側にある電荷の総量」しか見ません。電荷が中心に集まっていようと表面に広がっていようと、球対称でありさえすれば外部の電界は同じ——これがポイントです。
逆に球の内部では話が違います。導体内部にガウス面を取ると、囲まれた電荷は0(電荷は表面にある)——だから内部の電界は0です。「中心に点電荷がある」という描像は球の外側でだけ成り立つ数学的な等価だと押さえてください。
(b) の解説:絶縁破壊の条件から逆算する
STEP1 定数をまとめる
1.11×10⁻¹⁰ と覚えておくと速い
STEP2 代入する
ここを忘れると100倍ずれる
指数は \(-10-4+6=-8\)


(b) の誤答:半径の2乗を忘れると2桁ずれる
| 誤り方 | 計算 | 得られるQ | 選択肢との対応 |
| \(r\) を2乗し忘れ | \(4\pi\varepsilon_0rE\) | \(3.34\times10^{-6}\) | (5) に一致 |
| \(r=0.1\;\mathrm{m}\) と読み違え | \(4\pi\varepsilon_0(0.1)^2E\) | \(3.34\times10^{-6}\) | (5) に一致 |
| 正しい計算 | \(4\pi\varepsilon_0r^2E\) | \(3.34\times10^{-8}\) | (3) に一致 |
2つの異なるミスが、どちらも(5)に着地するのが興味深いところです。「2乗を忘れる」と「半径を10倍で読む」は、結果として同じ100倍のずれを生みます。
選択肢(5)は「100倍大きい」値——桁を1つ2つ間違えたときの受け皿として用意されています。指数の計算を最後に確認する習慣が防御になります。
この値が実務で意味すること
求めた \(3.3\times10^{-8}\;\mathrm{C}\)(33 nC)は、半径1 cmの球が空気中で保持できる電荷の上限です。
この電荷での球の電位を計算すると、\(V=Q/(4\pi\varepsilon_0r)=3.3\times10^{-8}/(1.1126\times10^{-10}\times0.01)=3\times10^4\;\mathrm{V}\)——約30 kVです。
これは「1 cmの球には30 kVまでしかかけられない」ことを意味します。電界の限界(3 kV/mm)× 半径(10 mm)= 30 kVと考えても同じ——小さいものほど高電圧に耐えられないのです。
| 半径 | 保持できる最大電荷 | そのときの電位 |
| 1 cm(本問) | 33 nC | 30 kV |
| 10 cm | 3.3 μC | 300 kV |
| 1 m | 330 μC | 3000 kV |
高電圧機器の電極が丸く大きく作られているのはこの理由です。とがった部分や小さな球では電界が集中し、低い電圧でも放電が始まってしまいます。コロナリングやシールドリングは「見かけの半径を大きくする」ための部品です。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① 式を選ぶ問題はまず単位で絞る。電界なら V/m
② \(Q\) の1乗が電界、\(Q^2\) はエネルギーか力
③ 電界は \(r^2\)、電位は \(r\)——分母の次数で区別
④ \(4\pi\varepsilon_0\approx1.11\times10^{-10}\) を暗記しておく
⑤ 半径の2乗を忘れない——2桁ずれて誤答の受け皿に落ちる
💡 覚え方
「電界は2乗、電位は1乗」。分母の \(r\) の次数だけが違います。絶縁破壊を判定するのは電界——単位がV/mであることからも分かります。
⚠️ よくある間違い
電位の式 \(Q/(4\pi\varepsilon_0r)\) を選ぶのが(a)最頻出のミスです。単位を書けば[V]と分かり、電界ではないと気づけます。(b)では半径の2乗を忘れると100倍ずれて選択肢(5)に着地します。
まとめ
| (a)表面電界 | E=Q/(4πε0r2) …(1) |
| (b)条件 | E=3×106V/m |
| (b)最大電荷 | Q=E×4πε0r2 |
| (b)答え | ≒3.3×10-8C …(3) |
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