今回は平成26年度 理論科目 A問題2を解説します。負に帯電した帯電体Aを、帯電していない絶縁された導体Bに近づけたとき、導体Bの表面に現れる電荷の符号と、その現象の名称を答える空欄補充問題です。
帯電体を導体に近づけると、導体の近い側には帯電体と異符号、遠い側には同符号の電荷が現れます。この現象を静電誘導といいます。Aが負なので、近い側cは正、遠い側dは負です。
平成26年度 理論科目 A問題2:問題文と選択肢
帯電体を導体に近づけると何が起きるか——導体の中の自由電子がどちらへ逃げるかを追うだけで符号が決まります。まずは問題文を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題2
電験3種 理論科目 【電磁気(静電界)】 平成26年度 A問題2
次の文章は、静電気に関する記述である。図のように真空中において、負に帯電した帯電体Aを、帯電していない絶縁された導体Bに近づけると、導体Bの帯電体Aに近い側の表面c付近に(ア)の電荷が現れ、それと反対側の表面d付近に(イ)の電荷が現れる。この現象を(ウ)という。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)及び(ウ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (1) 正 負 静電遮へい (2) 負 正 静電誘導 (3) 負 正 分極 (4) 負 正 静電遮へい (5) 正 負 静電誘導

出題のポイント:自由電子がどちらへ逃げるかを追う
帯電体を導体に近づけたときに何が起きるか——導体の中の自由電子の動きを追うだけで、符号が決まります。
近い側が正、遠い側が負
「近い側は帯電体と異符号」——これが結論です。帯電体が負なら近い側は正、帯電体が正なら近い側は負になります。引き合う向きに電荷が現れると覚えると自然です。
導体B全体の電荷は0のままです。Bは接地されていない中性の導体なので、電子が内部を移動しただけ——出入りはありません。だからc側の正とd側の負は同じ量です。


似た用語を区別する——静電誘導・誘電分極・静電遮へい
空欄(ウ)は用語の選択です。紛らわしい3つを整理しておきます。
| 用語 | 対象 | 何が動くか | 起きること |
| 静電誘導(本問) | 導体 | 自由電子 | 電子が移動して表面に電荷が偏る |
| 誘電分極 | 誘電体(絶縁体) | 分子内の電荷がわずかにずれる | 自由電子はないので移動できない |
| 静電遮へい | 導体で囲った内部 | — | 外部の電界の影響を遮断する |
本問の対象は「導体」なので、答えは静電誘導です。もし絶縁体(誘電体)に近づけたなら誘電分極になります。
静電遮へいは「囲う」のが前提です。本問は導体Bを近づけただけで囲ってはいないので、該当しません。電子機器の金属ケースや同軸ケーブルの外部導体が静電遮へいの例です。
問題の解説:3つの空欄を埋める
| 空欄 | 問われていること | 答え | 根拠 |
| (ア) | 近い側cの電荷 | 正 | 自由電子が逃げて電子不足になる |
| (イ) | 遠い側dの電荷 | 負 | 逃げてきた電子が集まる |
| (ウ) | 現象の名称 | 静電誘導 | 導体内の自由電子の移動による |




誤答の正体:符号か用語のどちらかを外している
| 選択肢 | (ア) | (イ) | (ウ) | 何を間違えたか | 判定 |
| (1) | 正 ○ | 負 ○ | 静電遮へい × | 符号は合っているが用語が誤り | × |
| (2) | 負 × | 正 × | 静電誘導 ○ | 符号が逆(帯電体と同符号にしてしまった) | × |
| (3) | 負 × | 正 × | 分極 × | 符号も用語も誤り | × |
| (4) | 負 × | 正 × | 静電遮へい × | 符号も用語も誤り | × |
| (5) | 正 ○ | 負 ○ | 静電誘導 ○ | 正解 | ○ |
符号を先に決めれば(2)(3)(4)が一度に消えます。「近い側は帯電体と異符号」——負の帯電体なら近い側は正です。残るのは(1)と(5)で、用語だけの2択になります。
(2)を選んでしまう理由は「負の帯電体を近づけたから、導体も負になる」という発想です。しかし電子は反発されて逃げるので、近い側はむしろ電子不足=正になります。
(3)の「分極」は、対象が誘電体なら正しい用語です。導体には自由電子があるので「誘導」——対象が何かで用語が変わります。
この現象が身のまわりで使われている例
静電誘導は実用技術の基礎になっています。
| 応用 | 静電誘導の使われ方 |
| 箔検電器 | 帯電体を近づけると箔に同符号の電荷が集まり、反発して開く |
| 静電容量式タッチパネル | 指が近づくと電極の電荷分布が変わり、容量の変化を検出する |
| 接地による除電 | 誘導で現れた電荷のうち一方を接地で逃がし、導体を帯電させる |
| 高圧作業の安全 | 近接した導体に誘導電圧が生じるため、作業前に接地する |
実務では「誘導電圧」が重要です。送電線の近くにある金属体には静電誘導で電圧が生じ、触れると感電の危険があります。作業前の接地(アース)が義務づけられているのは、この誘導電荷を逃がすためです。
接地すると何が起きるかも押さえておきましょう。本問のBを接地すると、遠い側dの負電荷が大地へ逃げます。その結果、Bには正電荷だけが残り——帯電体を遠ざける前に接地を外せば、Bは正に帯電したままになります。これが「静電誘導による帯電」の原理です。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① 自由電子の動きを追う——負の帯電体なら電子は逃げる、正なら引き寄せられる
② 結論は「近い側は帯電体と異符号」(引き合う向き)
③ 導体なら静電誘導、誘電体なら誘電分極——対象で用語が変わる
④ 接地していなければ全体の電荷は0のまま
⑤ 符号を先に決めて選択肢を半分以下に絞る
💡 覚え方
「近い側は仲良し(異符号)」。帯電体と導体は引き合うので、近い側には反対の符号が現れます。負を近づければ正、正を近づければ負——覚えるのはこれだけです。
⚠️ よくある間違い
「負を近づけたから近い側も負」と考えるのが最頻出のミス(選択肢(2)(3)(4))です。電子は反発されて遠ざかるので、近い側は電子不足=正になります。また「分極」と答えるのも誤りで、それは誘電体の場合の用語です。
まとめ
| (ア)近い側c | 正(Aと異符号) |
| (イ)遠い側d | 負(Aと同符号) |
| (ウ)現象 | 静電誘導 |
| 答え | (5) |
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