今回は平成30年度 理論科目 A問題7を解説します。定電圧源E=10 V、定電流源I=2 A、抵抗r=1 Ω、未知抵抗Rを含む回路で、スイッチSを閉じると抵抗Rの電流IRが2倍になるときのRを求めます。S開とS閉で電流の経路がどう変わるかを整理し、節点方程式で解きます。
S開では定電圧源側の枝が開放され、定電流源の2 AがすべてRへ流れるためIR=2 Aです。条件よりS閉ではIR=4 Aとなります。S閉時の節点Aへ流れ込む二つの電流と、Rへ流れ出す電流をそろえるのが解法の中心です。
平成30年度 理論科目 A問題7:問題文と選択肢
電気技術者試験センター公表の公式問題PDF(理論 問7)と公式解答PDFを確認しながら進めます。下の問題文画像・選択肢・回路図は元のまま保持しています。

電験3種 理論科目 【電気回路(直流回路)】 平成30年度 A問題7
図のように、直流電圧E=10Vの定電圧源、直流電流I=2Aの定電流源、スイッチS、r=1ΩとR〔Ω〕の抵抗からなる直流回路がある。この回路において、スイッチSを閉じたとき、R〔Ω〕の抵抗に流れる電流IRの値〔A〕がSを閉じる前に比べて2倍に増加した。Rの値〔Ω〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)2 (2)3 (3)8 (4)10 (5)11〔Ω〕

出題のポイント:S開でも定電流源は2 Aを流し続ける
この問題最大の落とし穴が「Sを開いたらIR=0」と考えてしまうことです。スイッチが切れるのは定電圧源側の枝であって、定電流源は健在。定電流源は何があっても決まった電流を流し続ける素子なので、2 Aはどこかへ流れなければなりません。
そして帰り道はRしかない——だからS開のときIR=2 Aです。ここが確定すれば、「2倍」という条件からS閉のときIR=4 Aと決まります。
もう一点、rとRは単純な直列ではありません。両者の間に定電流源の分岐があるので、rを流れる電流とRを流れる電流は別物です。だから「\(E/(r+R)\)」のような式は使えず、節点で電流を足し合わせる必要があります。

問題の解説:節点Aで流入と流出をそろえる
STEP1 S開のときの電流を確定する
左枝が開放されても、定電流源の2 Aの帰り道はRだけ。
電流源の全電流がRへ
問題文の条件から
STEP2 S閉のときの節点方程式を立てる
節点Aの電位を \(V_A\) とすると、左枝からの流入は \((10-V_A)/1\)、電流源からの流入は2 A、Rへの流出は4 Aです。
未知数はV_Aだけ
rでの電圧降下は2 V

STEP3 Rを求めて検算する
両状態での検算:R=2 Ωなら、S開では \(V=2\times2=4\;\mathrm{V}\)、\(I_R=2\;\mathrm{A}\)。S閉では \(V_A=8\;\mathrm{V}\)、\(I_R=4\;\mathrm{A}\) ——確かに2倍です ✓
電力収支での検算(S閉):定電圧源は \(10\times2=20\;\mathrm{W}\)、定電流源は \(8\times2=16\;\mathrm{W}\) を供給。消費は \(r\) が \(2^2\times1=4\;\mathrm{W}\)、\(R\) が \(4^2\times2=32\;\mathrm{W}\)。合計36 W同士で一致します ✓

選択肢を回路に戻して検算する
各選択肢のRについて、S開とS閉のIRを計算し、倍率がちょうど2になるかを確かめます。S閉の節点電位は \(V_A=(E/r+I)/(1/r+1/R)\) で求まります。
| 選択肢 | R [Ω] | S開の IR [A] | S閉の VA [V] | S閉の IR [A] | 倍率 | 判定 |
| (1) | 2 | 2.00 | 8.00 | 4.00 | 2.00 | ○ |
| (2) | 3 | 2.00 | 9.00 | 3.00 | 1.50 | × |
| (3) | 8 | 2.00 | 10.67 | 1.33 | 0.67 | × |
| (4) | 10 | 2.00 | 10.91 | 1.09 | 0.55 | × |
| (5) | 11 | 2.00 | 11.00 | 1.00 | 0.50 | × |
興味深いのは、Rが大きいと倍率が1を下回ることです。R=8 Ω以上ではSを閉じるとIRが減ってしまいます。理由は、Rが大きいとS開時の電圧 \(2R\) が電源の10 Vを超えてしまい、Sを閉じると左枝が電流を吸い込む側に回るから。「スイッチを閉じれば必ず電流が増える」わけではない——定電流源を含む回路ならではの現象です。
定電圧源と定電流源の性格の違い
2種類の電源が同居する回路では、それぞれの「譲らないもの」を意識すると混乱しません。
| 定電圧源 | 定電流源 | |
| 決まっているもの | 両端の電圧(本問は10 V) | 流す電流(本問は2 A) |
| 外部が決めるもの | 流れる電流 | 両端の電圧 |
| 内部抵抗 | 0(理想) | 無限大(理想) |
| 等価回路を作るとき | 短絡に置き換える | 開放に置き換える |
| この回路での役割 | 節点電位を10 V側へ引っ張る | 2 Aを押し込み続ける |
本問でS閉のとき節点電位が8 Vに落ち着くのは、「10 Vに引っ張る力」と「2 Aを押し込む力」が釣り合う点だからです。節点方程式 \((10-V_A)/1+2=V_A/R\) は、まさにこの綱引きを式にしたものになっています。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① 定電流源はスイッチに関係なく電流を流し続ける。S開でIR=0としない
② 定電流源の分岐を挟む抵抗は直列にまとめられない。節点方程式を使う
③ 節点方程式は「流入=流出」。定電流源はそのまま項として足す
④ 検算は両状態のIRを出して倍率を確認+電力収支
定電流源を含む回路の出題履歴
同じ考え方を使う直流回路の問題です。あわせて解くと解法が定着します。
| 年度 | 記事 | 問われ方 |
| 平成30年度 A問題7 | 本問(直流回路35) | 定電圧源と定電流源を含む回路で抵抗R |
| 令和5年度上期 A問題6 | 直流回路19 | 電圧源と電流源を含む回路で3 Ωの電流 |
| 平成24年度 A問題5 | 直流回路52 | 電圧源をノートン等価(電流源)に変換 |
| 令和6年度上期 A問題5 | 直流回路10 | 2電源はしご回路を節点法で解く |
| 令和7年度上期 A問題7 | 直流回路7 | スイッチで全電流が3倍になる抵抗R |
💡 覚え方
定電流源はスイッチに関係なく流し続ける。S開でIR=2 A → 2倍条件でS閉は4 A → 節点方程式 \((10-V_A)/1+2=4\) から \(V_A=8\;\mathrm{V}\) → \(R=8/4=2\;\Omega\)。
⚠️ よくある間違い
S開でIR=0としない(電流源の帰り道はRだけ)。S閉の節点電圧を電源と同じ10 Vにしない(rで2 V降下します)。rとRは直列ではありません(間に電流源の分岐があります)。
まとめ
| 確認項目 | 結果 |
| S開のR電流 | IR=2 A |
| S開のR電圧 | V=2R=4 V |
| S閉のR電流 | IR=4 A |
| S閉の節点方程式 | (10−VA)/1+2=4 |
| S閉の節点電圧 | VA=8 V |
| 抵抗rの電流・電圧降下 | 2 A、2 V |
| 未知抵抗 | R=8/4=2 Ω |
| 電力収支(S閉) | 供給36 W=消費36 W |
| 正答 | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・定電流源・重ね合わせの関連問題:【理論】令和5年度上期A問題6

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