今回は平成29年度 理論科目 A問題1を解説します。電界を仮想的な線で表した電気力線の性質について、(1)〜(5)の記述のうち誤っているものを1つ選ぶ論述問題です。
電気力線は電界を表す仮想的な線で、矢印は正電荷から出て負電荷へ入る向きです。選択肢(2)はこれが逆なので誤りです。線は交差・分岐せず、疎密は電界の強弱を表し、各点の矢印方向の接線が電界の向きになります。
平成29年度 理論科目 A問題1:問題文と選択肢
争点は向きだけです。「その場所に正の試験電荷を置いたらどちらへ動くか」——この定義に戻れば、誤りは一目で分かります。まずは問題文を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成29年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題1
電験3種 理論科目 【電磁気(静電界)】 平成29年度 A問題1
電界の状態を仮想的な線で表したものを電気力線という。この電気力線に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 同じ向きの電気力線同士は反発し合う。
(2) 電気力線は負の電荷から出て、正の電荷へ入る。
(3) 電気力線は途中で分岐したり、他の電気力線と交差したりしない。
(4) 任意の点における電気力線の密度は、その点の電界の強さを表す。
(5) 任意の点における電界の向きは、電気力線の接線の向きと一致する。
出題のポイント:電気力線の向きは「正の試験電荷が受ける力」
5つの記述から誤りを1つ選ぶ問題です。争点は向き——記述(2)だけが逆を述べています。
電気力線の向きは、「その場所に正の試験電荷を置いたら、どちらへ動くか」で決まります。
力の向き=電界の向き
正の試験電荷は、正電荷からは遠ざかり、負電荷には引き寄せられます。したがって電気力線は正電荷から出て、負電荷へ入る——これが唯一の正しい向きです。
記述(2)は「負の電荷から出て、正の電荷へ入る」と述べており、完全に逆です。

残る4つの記述はなぜ正しいのか
誤りを1つ選ぶ問題では、他の4つが正しいことの理由も押さえておくと、類題に対応できます。
| 記述 | 内容 | なぜ正しいか |
| (1) | 同じ向きの電気力線同士は反発し合う | 同符号電荷の電界を描くと、力線が互いに離れる形になるという作図上の性質。線そのものが物理的に押し合うわけではない |
| (3) | 途中で分岐・交差しない | 交点では電界の向きが2つになってしまい矛盾する。電界は各点で一意に決まる |
| (4) | 密度は電界の強さを表す | そう定義してある(単位面積を貫く本数=電界の大きさ) |
| (5) | 電界の向きは接線の向きと一致 | そう定義してある(電界の向きを連ねた線が電気力線) |
(1)は表現に注意が必要です。「反発し合う」というのは比喩であって、電気力線という実体が力を及ぼしているわけではありません。同符号の電荷が反発する様子を、力線の描かれ方で表現していると理解してください。
(3)の根拠は背理法です。もし2本の力線が交差したら、その交点では電界が2つの向きを同時に持つことになります。電界はベクトル場なので各点で1つの向きしか持てません——だから交差しません。
(4)と(5)は定義そのものなので、正誤を問われれば必ず「正しい」です。定義を述べた記述は誤りになりようがない——この視点は選択肢を絞るときに役立ちます。
問題の解説:定義に立ち返って判定する
| 選択肢 | 記述 | 判定 |
| (1) | 同じ向きの電気力線同士は反発し合う | 正しい |
| (2) | 負の電荷から出て、正の電荷へ入る | ★誤り(向きが逆) |
| (3) | 途中で分岐したり交差したりしない | 正しい |
| (4) | 密度はその点の電界の強さを表す | 正しい |
| (5) | 電界の向きは接線の向きと一致する | 正しい |


向きを絶対に忘れないための考え方
「正から出て負へ入る」は暗記でも構いませんが、導けるようにしておくと確実です。
| 問い | 答え | そこから分かること |
| 正の試験電荷を正電荷のそばに置くと? | 反発して遠ざかる | 力線は正電荷から外向き |
| 正の試験電荷を負電荷のそばに置くと? | 引かれて近づく | 力線は負電荷へ内向き |
試験電荷は「正」と決まっている——ここが出発点です。もし負の試験電荷で考えたら向きが逆になってしまうので、約束として正の電荷を使うと決められています。
水の流れに例えるのも有効です。正電荷は湧き出し口(源泉)、負電荷は吸い込み口(排水口)。水が湧き出し口から出て排水口へ流れるように、電気力線も正から負へ向かいます。
この「湧き出しと吸い込み」のイメージは、ガウスの法則の理解にも直結します。閉曲面から出る正味の本数は、内部に湧き出し口がどれだけあるか——つまり内部の電荷量で決まります。
誤答が仕込まれる典型パターン
電気力線の論述問題では、誤りの作り方がほぼ決まっています。パターンを知っておくと、探す場所が絞れます。
| パターン | 誤りの例 | 見破り方 |
| 向きの反転 | 「負から出て正へ入る」(本問) | 正の試験電荷で考える |
| 交差・分岐を認める | 「電気力線は交差することがある」 | 交点で電界の向きが定まらなくなる |
| 密度と本数の混同 | 「密度は電荷の大きさを表す」 | 密度は電界の強さ、総数が電荷に対応 |
| 電束線との混同 | 「本数はQ本である」 | 電気力線は\(Q/\varepsilon\) 本 |
| 導体内部との混同 | 「導体内部にも電気力線がある」 | 静電平衡では内部の電界は0 |
最も多いのは向きの反転です。本問もこのパターン。選択肢を読むときは、まず「向き」に言及しているものを探すと効率的です。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① 「正から出て負へ入る」——向きに言及した記述を最初にチェック
② 迷ったら正の試験電荷を置いてどちらへ動くかを考える
③ 定義を述べた記述(密度・接線)は正しいことが多い
④ 交差・分岐を認める記述は必ず誤り
⑤ 本数を問う記述は電気力線(\(Q/\varepsilon\))か電束線(\(Q\))かを確認
💡 覚え方
「正は湧き出し、負は吸い込み」。水が源泉から出て排水口へ流れるのと同じです。試験電荷は必ず正と約束されているので、正電荷から遠ざかり負電荷へ引かれる向き——それが電気力線の向きです。
⚠️ よくある間違い
向きを逆に覚えるのが唯一にして最大のミスです(選択肢(2))。「正の試験電荷が受ける力の向き」という定義に戻れば必ず正しく判定できます。また記述(1)の「反発し合う」を力線が実体だと誤解して「誤り」と判定してしまう人もいますが、これは作図上の性質を述べたもので正しい記述です。
まとめ
| 正しい向き | 正電荷→負電荷 |
| (2)の記述 | 負→正(逆)で誤り |
| その他(1)(3)(4)(5) | すべて正しい |
| 答え | (2) |
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