静電界15【電験3種 理論】静電界と電気力線の性質で誤っているものは?令和5年上期 A問題2 完全解説

電験3種 理論科目 電磁気(静電界) 令和5年度上期 A問題2 電気力線は交わらない!静電界の記述で誤りは?

今回は令和5年度上期 理論科目 A問題2を解説します。静電界に関する記述のうち誤っているものを選ぶ論述問題です。電気力線の本数・交差・等電位面との関係・密度、そして導体内部の電界について問われます。

電気力線の性質(本数=Q/ε、交差しない、等電位面と直交、密度=電界の強さ)を確認します。最大のポイントは静電平衡にある導体内部の電界は零で、表面の電界とは等しくないことです。

目次

令和5年度上期 理論科目 A問題2:問題文と選択肢

電気力線の基本性質が4つ、導体内部の電界が1つ。「導体の中は電界ゼロ」という静電平衡の必然を押さえれば、誤りは一目で分かります。まずは問題文を確認しましょう。

電験3種 理論科目 静電界 令和5年度上期 A問題2 問題文
令和5年度上期 理論科目 A問題2 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題2

電験3種 理論科目 【電磁気(静電界)】 令和5年度上期 A問題2

 静電界に関する次の記述のうち、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 媒質中に置かれた正電荷から出る電気力線の本数は、その電荷の大きさに比例し、媒質の誘電率に反比例する。
(2) 電界中における電気力線は、相互に交差しない。
(3) 電界中における電気力線は、等電位面と直交する。
(4) 電界中のある点の電気力線の密度は、その点における電界の強さ(大きさ)を表す。
(5) 電界中に置かれた導体内部の電界の強さ(大きさ)は、その導体表面の電界の強さ(大きさ)に等しい。

出題のポイント:電気力線の4つの性質と、導体内部のふるまい

5つの記述のうち4つは電気力線の基本性質、残る1つは導体内部の電界についてです。前者を確認したうえで、後者を判定します。

性質内容根拠
① 本数正電荷Qから出る本数は \(Q/\varepsilon\)ガウスの法則。電荷に比例し誘電率に反比例
② 交差しない2本の力線が交わることはない交点で電界の向きが2つになり矛盾する
③ 等電位面と直交力線は等電位面に垂直に交わる沿う成分があればその方向に電位差が生じてしまう
④ 密度=電界の強さ単位面積あたりの本数が電界の大きさ定義(そう決めてある)

この4つはいずれも「そう決めた」か「矛盾するから」で説明できます。丸暗記ではなく理由とセットにすると、記述の正誤判定が速くなります。

電気力線の本数、非交差、等電位面との直交、線密度と電界の関係を示す図
電気力線の4つの基本性質を、向きと密度に注意して整理します。

なぜ導体内部の電界はゼロなのか

記述(5)を判定する鍵です。これは「たまたまそうなる」のではなく、静電平衡の定義から必然的に導かれます

段階起きること
もし導体内部に電界があったとする
導体には自由電子がある。電界から力を受けて動く
電子が移動して元の電界を打ち消す向きに分布が変わる
内部の電界が0になるまで移動は止まらない
止まった状態=静電平衡。そのとき内部の電界は必ず0

「電界が0だから電子が動かない」のではなく、「電子が動いた結果、電界が0になる」——因果の向きが逆です。ここを押さえると忘れません。

$$E_{\text{内部}}=0\;\Rightarrow\;V=\text{一定}$$
❶ 内部は等電位
電界0なら電位差も0
$$E_{\text{表面}}=\frac{\sigma}{\varepsilon_0}\neq0$$
❷ 表面の外側には電界がある
\(\sigma\) は表面電荷密度

導体全体が1つの等電位体になり、電荷はすべて表面に分布します。そして表面のすぐ外側には電界があり、その大きさは表面電荷密度で決まります。

したがって内部(0)と表面(一般に0でない)は等しくありません——記述(5)が誤りである理由です。

問題の解説:5つの記述を順に判定する

記述内容判定根拠
(1)力線の本数は電荷に比例し誘電率に反比例正しい本数 \(=Q/\varepsilon\)
(2)力線は相互に交差しない正しい交点で電界の向きが定まらなくなる
(3)力線は等電位面と直交する正しい沿う成分があれば電位差が生じる
(4)力線の密度は電界の強さを表す正しい定義
(5)導体内部の電界=導体表面の電界★誤り内部は0、表面は一般に0でない
静電平衡にある導体の内部電界が零で表面直外の電界が表面に垂直であることを示す図
導体内部に電界があれば自由電荷が移動するため、静電平衡では内部電界は零です。
答え誤っているのは選択肢(5)(静電平衡では導体内部の電界は0で、表面の電界とは等しくない)
静電界に関する5つの記述を正誤判定し誤りが選択肢5であることを示す図
導体内部と表面の電界が等しいとする(5)が誤りです。

記述(1)の「誘電率に反比例」を正しく理解する

(1)は正しい記述ですが、「なぜ誘電率で本数が変わるのか」が分かりにくいところです。

$$\oint\vec{E}\cdot d\vec{S}=\frac{Q}{\varepsilon}$$
❸ ガウスの法則(電界の形)
右辺がそのまま力線の本数
$$\oint\vec{D}\cdot d\vec{S}=Q$$
❹ ガウスの法則(電束密度の形)
こちらはεを含まない

電気力線(E由来)は誘電率で本数が変わり、電束線(D由来)は変わりません。誘電体を入れると分極によって電界が弱まるので、電気力線の本数は減ります。一方、電束線は自由電荷だけで決まるので影響を受けません。

電気力線電束線
対応する量電界 E電束密度 D
Qから出る本数\(Q/\varepsilon\)(誘電率で変わる)\(Q\)(変わらない)
誘電体を入れると減る変わらない

2種類の「線」があることを区別しておくと、記述の正誤判定で迷いません。問題文が「電気力線」と言っているのか「電束線」と言っているのかを確認してください。

導体の静電平衡から導かれる4つの結論

記述(5)の背景にある性質は、まとめて覚えておくと応用が効きます

結論内容理由
① 内部の電界は0導体内のどこでも \(E=0\)自由電子が動いて打ち消すまで平衡しない
② 内部は等電位導体全体が同じ電位電界0なら電位差も0
③ 電荷は表面だけ内部に正味の電荷はない内部に電荷があればガウスの法則から電界が生じる
④ 表面に垂直表面の電界は面に垂直沿う成分があれば表面電荷が動いてしまう

静電遮蔽(シールド)はこの性質の応用です。導体で囲めば内部の電界が0になるため、外部の電界の影響を受けません。電子機器の金属ケース同軸ケーブルの外部導体が果たしている役割です。

本番で使える時間短縮テクニック

⏱️ 本番での進め方
① 電気力線の4性質(本数 \(Q/\varepsilon\)・交差しない・等電位面と直交・密度=電界)を先に書き出す
導体内部の電界は必ず0——静電平衡の定義から導かれる絶対的な性質
③ 「内部と表面が等しい」という記述はほぼ確実に誤り
電気力線(\(Q/\varepsilon\))と電束線(\(Q\))を区別する
⑤ 論述問題は4つ正しいものを探すより、1つ確実に誤りと言えるものを探すほうが速い

💡 覚え方
「導体の中は電界ゼロ・電位一定・電荷は表面」。3点セットで覚えます。理由は「自由電子が動けるから」——動ける限り電界は残れません。

⚠️ よくある間違い
「内部にも表面と同じ電界がある」と考えるのが本問の狙いです。内部は0が正解。また記述(1)の「誘電率に反比例」を誤りだと思ってしまう人もいますが、電気力線の本数は \(Q/\varepsilon\) なので正しい記述です。

まとめ

(1)〜(4)すべて正しい記述
(5)導体内部の電界常に零(表面とは等しくない)→誤り
答え(5)

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