静電界17【電験3種 理論】電気力線の本数から未知の電荷量を求める!令和4年下期 A問題1 完全解説

電験3種 理論科目 電磁気(静電界) 令和4年度下期 A問題1 電気力線の本数がヒント!電荷は何Cある?

今回は令和4年度下期 理論科目 A問題1を解説します。2つの導体球A、Bの周囲に描かれた電気力線の図から、電気量QA=16ε0のときの導体球Bの電気量QBを求める計算問題です。

電気力線の本数は電荷量に比例し、1本=ε0分の電荷に対応します。Aから出る本数、無限遠へ向かう本数、Bへ入る本数を数えて電荷を求めます。

目次

令和4年度下期 理論科目 A問題1:問題文と選択肢

電気力線は絵のための補助線ではなく、電荷と厳密に結びついた「数えられる」量です。図の本数を数えれば、未知の電荷が求まります。まずは問題文を確認しましょう。

電験3種 理論科目 静電界 令和4年度下期 A問題1 問題文
令和4年度下期 理論科目 A問題1 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度下期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題1

電験3種 理論科目 【電磁気(静電界)】 令和4年度下期 A問題1

 図に示すように、誘電率ε0〔F/m〕の真空中に置かれた二つの静止導体球A及びBがある。電気量はそれぞれQA〔C〕及びQB〔C〕とし、図中にその周囲の電気力線が描かれている。電気量QA=16ε0〔C〕であるとき、電気量QB〔C〕の値として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)16ε0 (2)8ε0 (3)-4ε0 (4)-8ε0 (5)-16ε0

図 2つの導体球A・Bの周囲に描かれた電気力線(問題図)
図 2つの導体球A・Bの周囲に描かれた電気力線(問題図)

出題のポイント:電気力線は「数えられる」量

電気力線は絵を描くための補助線ではなく、電荷の量と厳密に結びついた数えられる量です。

電気力線の本数(真空中)
$$N=\frac{Q}{\varepsilon_0}\;[\text{本}]$$

電荷 \(\varepsilon_0\) あたり1本。正電荷から出て、負電荷へ入ります。

本問はこの関係を逆向きに使います。図に描かれた本数を数えて、そこから電荷を求めるのです。

数えるもの対応する電荷本問での値
Aから出る本数\(Q_A/\varepsilon_0\)16本(\(Q_A=16\varepsilon_0\) より)
系全体から無限遠へ出る本数\((Q_A+Q_B)/\varepsilon_0\)8本(図から数える)
Bへ入る本数\(|Q_B|/\varepsilon_0\)16 − 8 = 8本
正電荷Aから出る16本の電気力線が無限遠への8本と負電荷Bへ入る8本に分かれることを示す図
描かれた代表線ではなく、問題図の本数を16本=8本+8本として数えます。

「無限遠へ出る本数=正味の電荷」がなぜ成り立つのか

本問の鍵は2つ目の行です。なぜ「系全体から外へ出る本数」が正味の電荷を表すのでしょうか。

ガウスの法則を、A と B の両方を囲む大きな閉曲面に適用すると分かります。

$$\oint\vec{E}\cdot d\vec{S}=\frac{Q_{\text{内部}}}{\varepsilon_0}=\frac{Q_A+Q_B}{\varepsilon_0}$$
❶ 両方を囲む面でガウスの法則
閉曲面を貫く正味の本数

AからBへ入る力線は、この閉曲面を出入りしません(内部で完結するため)。だから外へ抜けていく本数だけが残り、それが正味の電荷を表します

この考え方は「途中で消える力線はない」という電気力線の性質そのものです。Aから出た16本は、必ずどこかへ行き着きます——Bへ入るか、無限遠へ去るかの二択です。

問題の解説:本数の収支を式にする

STEP1 Aから出る本数を求める

$$N_A=\frac{Q_A}{\varepsilon_0}=\frac{16\varepsilon_0}{\varepsilon_0}=16\;[\text{本}]$$
❷ 単位が約分される
\(\varepsilon_0\) が消えて純粋な本数になる

問題が \(Q_A=16\varepsilon_0\) という書き方をしているのは親切な設計です。\(\varepsilon_0\) で割ると16という整数になり、図の力線の本数と直接対応します。

STEP2 無限遠へ向かう本数から正味電荷を求める

$$\frac{Q_A+Q_B}{\varepsilon_0}=8\;[\text{本}]$$
❸ 図から8本と数える
系全体を囲む面を貫く本数
$$Q_A+Q_B=8\varepsilon_0$$
❹ 両辺に \(\varepsilon_0\) を掛ける

STEP3 \(Q_B\) を求める

$$Q_B=8\varepsilon_0-Q_A=8\varepsilon_0-16\varepsilon_0=-8\varepsilon_0\;[\mathrm{C}]$$
❺ 引き算するだけ
負電荷になる

符号が負になることが答えの妥当性を裏づけます。図ではBに力線が入っているので、Bは負電荷でなければなりません。

電荷QAから電気力線16本を求め無限遠とBへの8本ずつに分ける数量フロー図
系外へ出る8本は系全体の正味電荷に対応し、Bへ入る8本は負電荷に対応します。
答え\(Q_B=-8\varepsilon_0\;[\mathrm{C}]\) → 選択肢(4)

収支の確認:Aから出た16本のうち、8本が無限遠へ、8本がBへ。合計16本で辻褄が合います ✓

電気力線の本数から導体球Bの電荷をマイナス8ε0クーロンと求める3段階の解説図
Q_B=8ε₀-16ε₀=-8ε₀ Cなので、正答は(4)です。

誤答の正体:仮定すると図と矛盾する

各選択肢が正しいと仮定したとき、無限遠へ向かう本数がいくつになるかを計算しました。図は8本なので、それ以外は矛盾します。

選択肢\(Q_B\)\(Q_A+Q_B\)無限遠への本数判定
(1)\(16\varepsilon_0\)\(32\varepsilon_0\)32本図の8本と矛盾 ×
(2)\(8\varepsilon_0\)\(24\varepsilon_0\)24本図の8本と矛盾 ×
(3)\(-4\varepsilon_0\)\(12\varepsilon_0\)12本図の8本と矛盾 ×
(4)\(-8\varepsilon_0\)\(8\varepsilon_0\)8本図と一致 ○
(5)\(-16\varepsilon_0\)00本図の8本と矛盾 ×

(5)は「Aから出た16本が全部Bへ入る」と考えた場合です。その場合、正味の電荷が0になり、無限遠へ向かう力線が1本もなくなります。しかし図には外へ抜ける力線が描かれているので矛盾します。

(2)の \(+8\varepsilon_0\) は符号のミスです。「無限遠へ8本だから8ε₀」と早合点すると選んでしまいます。8本が表すのは\(Q_A+Q_B\) という和であって、\(Q_B\) 単体ではありません。

この検算法は非常に強力です。選択肢を代入して図と照合するだけなので、解法を忘れていても正解にたどり着けます。

電気力線を「数える」ときの約束ごと

電気力線の本数を扱う問題では、いくつかの約束を押さえておく必要があります。

約束内容注意点
本数の定義\(Q/\varepsilon\) 本(真空なら \(Q/\varepsilon_0\))誘電体中では \(\varepsilon\) で割る(本数が減る)
向き正電荷から出て、負電荷へ入る途中で消えたり生まれたりしない
行き先負電荷へ入るか、無限遠へ去るかこの二択しかない
電束線との違い電束線は \(Q\) 本(\(\varepsilon\) で割らない)問題文がどちらを指すか確認

「行き先は二択」という点が本問の解法そのものです。16本の行き先を「無限遠へ8本」と「Bへ8本」に振り分けることで、Bの電荷が決まりました。

なお図に描かれる力線は代表的な数本だけという場合もあります。本問は「16本」「8本」と実際に数えられるよう作図されているので、図の本数をそのまま使えます。問題によっては本数が象徴的に描かれていることもあるため、与えられた電荷量と整合するか確認してください。

本番で使える時間短縮テクニック

⏱️ 本番での進め方
真空中は電荷 \(\varepsilon_0\) あたり力線1本。\(Q/\varepsilon_0\) で本数になる
系全体から外へ出る本数=正味電荷 \((Q_A+Q_B)/\varepsilon_0\)
③ 力線の行き先は「負電荷へ入る」か「無限遠へ去る」の二択
④ 検算は選択肢を代入して無限遠への本数を計算し、図と照合
力線が入っている=負電荷。符号が合わない選択肢は即消去

💡 覚え方
「出た本数=入る本数+逃げる本数」。Aから出た16本は必ずどこかへ行きます。逃げた8本が正味の電荷を教えてくれる——残りがBへ入った本数です。

⚠️ よくある間違い
「Aから出た16本が全部Bへ入る」と考えて \(-16\varepsilon_0\) を選ぶのが最頻出です(選択肢(5))。それなら無限遠へ抜ける力線が0本になり、図と矛盾します。また無限遠への8本をそのまま \(Q_B\) とするのも誤りで、8本が表すのは\(Q_A+Q_B\) です。

この問題は過去問と完全に同じ内容で再出題されています

本問は平成19年度 理論科目 A問題3同一の問題です。「電荷A・B」と「導体球A・B」という表現の違いだけで、数値も5つの選択肢も正答(4)もすべて同一です。

電験3種では数年おきに同じ問題がそのまま再出題されます。特に電気力線の本数を数えるテーマは繰り返し問われるため、過去問演習の効果が非常に高い分野です。

ただし「答えは(4)」のように選択肢番号で覚えるのは危険です。再出題の際に並び順が変わることもあります。解き方の手順ごと身につけてください。

あわせて解いておきたい記事:平成19年度 理論科目 A問題3

まとめ

Aから出る力線QA0=16本
無限遠への力線8本=(QA+QB)/ε0
Bへ入る力線8本
QB-8ε0 …(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・電気力線・電荷の関連問題:【理論】令和4年度下期A問題2

📚 次に解くべき関連問題
【理論】令和4年度下期A問題2(静電界18)
【理論】令和5年度上期A問題2(静電界15)
【理論】令和5年度上期A問題1(静電界14)
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