今回は令和4年度下期 理論科目 A問題1を解説します。2つの導体球A、Bの周囲に描かれた電気力線の図から、電気量QA=16ε0のときの導体球Bの電気量QBを求める計算問題です。
電気力線の本数は電荷量に比例し、1本=ε0分の電荷に対応します。Aから出る本数、無限遠へ向かう本数、Bへ入る本数を数えて電荷を求めます。
令和4年度下期 理論科目 A問題1:問題文と選択肢
電気力線は絵のための補助線ではなく、電荷と厳密に結びついた「数えられる」量です。図の本数を数えれば、未知の電荷が求まります。まずは問題文を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度下期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題1
電験3種 理論科目 【電磁気(静電界)】 令和4年度下期 A問題1
図に示すように、誘電率ε0〔F/m〕の真空中に置かれた二つの静止導体球A及びBがある。電気量はそれぞれQA〔C〕及びQB〔C〕とし、図中にその周囲の電気力線が描かれている。電気量QA=16ε0〔C〕であるとき、電気量QB〔C〕の値として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)16ε0 (2)8ε0 (3)-4ε0 (4)-8ε0 (5)-16ε0

出題のポイント:電気力線は「数えられる」量
電気力線は絵を描くための補助線ではなく、電荷の量と厳密に結びついた数えられる量です。
本問はこの関係を逆向きに使います。図に描かれた本数を数えて、そこから電荷を求めるのです。
| 数えるもの | 対応する電荷 | 本問での値 |
| Aから出る本数 | \(Q_A/\varepsilon_0\) | 16本(\(Q_A=16\varepsilon_0\) より) |
| 系全体から無限遠へ出る本数 | \((Q_A+Q_B)/\varepsilon_0\) | 8本(図から数える) |
| Bへ入る本数 | \(|Q_B|/\varepsilon_0\) | 16 − 8 = 8本 |

「無限遠へ出る本数=正味の電荷」がなぜ成り立つのか
本問の鍵は2つ目の行です。なぜ「系全体から外へ出る本数」が正味の電荷を表すのでしょうか。
ガウスの法則を、A と B の両方を囲む大きな閉曲面に適用すると分かります。
閉曲面を貫く正味の本数
AからBへ入る力線は、この閉曲面を出入りしません(内部で完結するため)。だから外へ抜けていく本数だけが残り、それが正味の電荷を表します。
この考え方は「途中で消える力線はない」という電気力線の性質そのものです。Aから出た16本は、必ずどこかへ行き着きます——Bへ入るか、無限遠へ去るかの二択です。
問題の解説:本数の収支を式にする
STEP1 Aから出る本数を求める
\(\varepsilon_0\) が消えて純粋な本数になる
問題が \(Q_A=16\varepsilon_0\) という書き方をしているのは親切な設計です。\(\varepsilon_0\) で割ると16という整数になり、図の力線の本数と直接対応します。
STEP2 無限遠へ向かう本数から正味電荷を求める
系全体を囲む面を貫く本数
STEP3 \(Q_B\) を求める
負電荷になる
符号が負になることが答えの妥当性を裏づけます。図ではBに力線が入っているので、Bは負電荷でなければなりません。

収支の確認:Aから出た16本のうち、8本が無限遠へ、8本がBへ。合計16本で辻褄が合います ✓

誤答の正体:仮定すると図と矛盾する
各選択肢が正しいと仮定したとき、無限遠へ向かう本数がいくつになるかを計算しました。図は8本なので、それ以外は矛盾します。
| 選択肢 | \(Q_B\) | \(Q_A+Q_B\) | 無限遠への本数 | 判定 |
| (1) | \(16\varepsilon_0\) | \(32\varepsilon_0\) | 32本 | 図の8本と矛盾 × |
| (2) | \(8\varepsilon_0\) | \(24\varepsilon_0\) | 24本 | 図の8本と矛盾 × |
| (3) | \(-4\varepsilon_0\) | \(12\varepsilon_0\) | 12本 | 図の8本と矛盾 × |
| (4) | \(-8\varepsilon_0\) | \(8\varepsilon_0\) | 8本 | 図と一致 ○ |
| (5) | \(-16\varepsilon_0\) | 0 | 0本 | 図の8本と矛盾 × |
(5)は「Aから出た16本が全部Bへ入る」と考えた場合です。その場合、正味の電荷が0になり、無限遠へ向かう力線が1本もなくなります。しかし図には外へ抜ける力線が描かれているので矛盾します。
(2)の \(+8\varepsilon_0\) は符号のミスです。「無限遠へ8本だから8ε₀」と早合点すると選んでしまいます。8本が表すのは\(Q_A+Q_B\) という和であって、\(Q_B\) 単体ではありません。
この検算法は非常に強力です。選択肢を代入して図と照合するだけなので、解法を忘れていても正解にたどり着けます。
電気力線を「数える」ときの約束ごと
電気力線の本数を扱う問題では、いくつかの約束を押さえておく必要があります。
| 約束 | 内容 | 注意点 |
| 本数の定義 | \(Q/\varepsilon\) 本(真空なら \(Q/\varepsilon_0\)) | 誘電体中では \(\varepsilon\) で割る(本数が減る) |
| 向き | 正電荷から出て、負電荷へ入る | 途中で消えたり生まれたりしない |
| 行き先 | 負電荷へ入るか、無限遠へ去るか | この二択しかない |
| 電束線との違い | 電束線は \(Q\) 本(\(\varepsilon\) で割らない) | 問題文がどちらを指すか確認 |
「行き先は二択」という点が本問の解法そのものです。16本の行き先を「無限遠へ8本」と「Bへ8本」に振り分けることで、Bの電荷が決まりました。
なお図に描かれる力線は代表的な数本だけという場合もあります。本問は「16本」「8本」と実際に数えられるよう作図されているので、図の本数をそのまま使えます。問題によっては本数が象徴的に描かれていることもあるため、与えられた電荷量と整合するか確認してください。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① 真空中は電荷 \(\varepsilon_0\) あたり力線1本。\(Q/\varepsilon_0\) で本数になる
② 系全体から外へ出る本数=正味電荷 \((Q_A+Q_B)/\varepsilon_0\)
③ 力線の行き先は「負電荷へ入る」か「無限遠へ去る」の二択
④ 検算は選択肢を代入して無限遠への本数を計算し、図と照合
⑤ 力線が入っている=負電荷。符号が合わない選択肢は即消去
💡 覚え方
「出た本数=入る本数+逃げる本数」。Aから出た16本は必ずどこかへ行きます。逃げた8本が正味の電荷を教えてくれる——残りがBへ入った本数です。
⚠️ よくある間違い
「Aから出た16本が全部Bへ入る」と考えて \(-16\varepsilon_0\) を選ぶのが最頻出です(選択肢(5))。それなら無限遠へ抜ける力線が0本になり、図と矛盾します。また無限遠への8本をそのまま \(Q_B\) とするのも誤りで、8本が表すのは\(Q_A+Q_B\) です。
この問題は過去問と完全に同じ内容で再出題されています
本問は平成19年度 理論科目 A問題3と同一の問題です。「電荷A・B」と「導体球A・B」という表現の違いだけで、数値も5つの選択肢も正答(4)もすべて同一です。
電験3種では数年おきに同じ問題がそのまま再出題されます。特に電気力線の本数を数えるテーマは繰り返し問われるため、過去問演習の効果が非常に高い分野です。
ただし「答えは(4)」のように選択肢番号で覚えるのは危険です。再出題の際に並び順が変わることもあります。解き方の手順ごと身につけてください。
あわせて解いておきたい記事:平成19年度 理論科目 A問題3
まとめ
| Aから出る力線 | QA/ε0=16本 |
| 無限遠への力線 | 8本=(QA+QB)/ε0 |
| Bへ入る力線 | 8本 |
| QB | -8ε0 …(4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・電気力線・電荷の関連問題:【理論】令和4年度下期A問題2

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