今回は平成26年度 理論科目 A問題11を解説します。E電源2個・R2個・C・スイッチS₁S₂の回路で、t₁でS₁を閉じCを充電、t₂でS₁を開きS₂を閉じたときのコンデンサ電圧vの波形を選ぶ問題です。
第1段階(S₁閉)でコンデンサは0からEへ充電されます。第2段階(S₂閉)では逆向きのE電源につながるため、コンデンサ電圧はEから−Eへ反転します。時定数はどちらもRC。
平成26年度 理論科目 A問題11:問題文と選択肢
二段階のスイッチ操作をどう扱うかが問われる、波形選択の定番問題です。まず問題文と回路を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題11
電験3種 理論科目 【電気回路(過渡現象)】 平成26年度 A問題11
図のように、直流電圧E〔V〕の電源が2個、R〔Ω〕の抵抗が2個、静電容量C〔F〕のコンデンサ、スイッチS₁とS₂からなる回路がある。S₁とS₂の初期状態は共に開いている。時刻t=t₁でS₁を閉じ、時定数CRより十分に時間が経過した時刻t=t₂でS₁を開きS₂を閉じる。このとき、コンデンサの端子電圧v〔V〕の波形を示す図として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、コンデンサの初期電荷は零とする。
上の図(1)〜(5)から、コンデンサ電圧vの波形として最も適切なものを一つ選べ。

出題のポイント:初期値・連続・最終値の3チェックで波形は決まる
波形選択問題は、微分方程式を最後まで解かなくても①初期値 ②切換え点の連続性 ③最終値の3つを確認するだけで1つに絞れます。本問なら「初期電荷零なので0から出発」「t₂でコンデンサ電圧は飛ばずEのまま」「逆極性の電源につながるので最終値は−E」——この3条件を満たす波形を探すだけです。以下、この3条件がそれぞれなぜ成り立つのかを式で確かめていきます。

問題の解説:一次遅れの一般式に「代入するだけ」

STEP1 準備:コンデンサ電圧が「飛ばない」理由
コンデンサの電荷は \(q=Cv\) で、電荷は電流の積み重ねでしか変化できません。$$i=\frac{dq}{dt}=C\frac{dv}{dt}$$もし切換えの瞬間に v が不連続にジャンプすると \(dv/dt=\infty\)、つまり無限大の電流が必要になってしまいます。有限の電流しか流せない現実の回路では、コンデンサ電圧は必ず連続——これが「切換え直後も v=E を保つ」ことの物理的な根拠です。
STEP2 第1段階(S₁閉):0からEへ充電
初期電荷は零なので \(V_0=0\)。十分時間が経つとコンデンサには電流が流れなくなり(直流に対して開放)、Rの電圧降下も0になるため、vは電源電圧そのもの、つまり \(V_\infty=E\) です。時定数は \(\tau=CR\)。一般式に代入します。
V₀=0、V∞=E、τ=CR
問題文の t₂ は「時定数CRより十分に時間が経過した時刻」なので \(e^{-t/CR}\approx 0\)。切換え直前の v はほぼ E になっています。
STEP3 第2段階(S₂閉):Eから−Eへ再充電
切換え直後の初期値は、STEP1の連続性から \(V_0=E\)。右側の電源は逆極性で接続されているので、十分時間後の最終値は \(V_\infty=-E\)。時定数は右側のRとCで、やはり \(\tau=CR\) です。切換え時刻を基準に \(t’=t-t_2\) とおいて代入します。
V₀=E、V∞=−E、τ=CR
切換え点で連続 ✓ 最終値−E ✓
式に現れる係数 2E は「変化幅」(Eから−Eまでの落差)であって、到達値ではありません。到達値はあくまで−Eです。ここを取り違えると誤答(1)(5)に誘導されます。
検算:切換え直後の電流は \(i=\{E-(-E)\}/R=2E/R\) と全期間で最大になります。波形の傾きが t₂ 直後にいちばん急なのはこのためです。十分時間が経てば \(i=0\)(コンデンサは直流を通さない)となり、傾きは0に落ち着きます。


誤答の波形はこう消す — 選択肢は「最終値」だけが違う
本問の5つの波形は、第1段階(0→E)は全て同じで、t₂後にどこへ向かうかだけが違います。つまり3チェックのうち③最終値だけで決着します。それぞれの誤答が「どんな誤解から生まれるか」まで押さえておくと、類題で同じ罠にかかりません。
| 選択肢 | t₂後の行き先 | その波形を選んでしまう誤解 |
| (1) | +2Eへ | 式の係数2E(変化幅)を到達値と取り違えた |
| (2) | +Eのまま | 逆極性電源の効果を無視(切換え後も何も起きないと誤解) |
| (3) | 0へ | 第2段階を「放電」と誤解。抵抗だけに繋がるなら0だが、本問は逆極性の電源Eがある |
| (4) | −Eへ | 正解:右の電源の向きに従って−Eへ再充電される |
| (5) | −2Eへ | 変化幅2Eと最終値−Eの混同 |

別解:微分方程式から一般式を導いておく
一般式を「暗記するだけ」にしないため、第1段階を微分方程式から解いておきます。回路一周の電圧則(KVL)と、コンデンサの電流の式から$$E=Ri+v,\qquad i=C\frac{dv}{dt}$$$$CR\frac{dv}{dt}+v=E$$
この一階線形微分方程式の解は \(v=E+Ae^{-t/CR}\)(Aは初期条件で決まる定数)。初期条件 \(v(0)=0\) から \(A=-E\) となり、STEP2で代入だけで書いた式と一致します。一般式「最終値+(初期値−最終値)e−t/τ」は、この解の形をいつでも取り出せるよう整理した結論の公式だと分かります。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 波形選択は「式より先に3チェック」
① 初期値:初期電荷零なのに0から出発していない波形は×
② 切換え点:vが飛んでいる波形は×(飛ぶには無限大の電流が必要)
③ 最終値:コンデンサを「直流で開放」とみなすと i=0 → Rの電圧降下0 → vは電源電圧そのもの。本問なら−E
この順で見れば大半の波形問題は20秒で1つに絞れます。時定数の目安(t=CRで63%、5CRでほぼ完了)もセットで。
RC過渡現象の出題履歴
「切換え直後は電圧連続・十分時間後はCを開放して読む」という本問の型は、過渡現象の全問題に共通する考え方です。あわせて解くと確実に定着します。
| 年度 | 記事 | 論点 |
| 平成26年度 A問題11 | 本問(過渡現象16) | 2電源切換えの二段階応答(波形選択) |
| 平成23年度 A問題10 | 過渡現象17 | 2電源切り換えの放電電流 |
| 令和6年度下期 A問題10 | 過渡現象4 | 投入直後と定常状態の電流比 |
| 令和2年度 A問題10 | 過渡現象9 | テブナンの定理で時定数と最終電圧 |
| 平成19年度 A問題10 | 過渡現象23 | 時定数が最も大きい回路の判別 |
💡 覚え方
RC一段の過渡は「最終値+(初期値−最終値)e−t/τ」の1本だけ。本問は(0→E)と(E→−E)の2回代入するだけ。最終値は「コンデンサを開放して回路を読む」で機械的に求まる。
⚠️ よくある間違い
第2段階の最終値を0としない(「放電」ではなく逆極性への再充電)。係数2Eは変化幅であって到達値ではない(−2Eへは行かない)。切換え点で波形を飛ばさない(無限大電流が必要になる)。時定数はどちらの段階も τ=CR。
まとめ
| 第1段 | v:0→E |
| 第2段 | v:E→−E |
| 時定数 | RC |
| 答え | (4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・2電源切り換えの放電電流:【理論】平成23年度A問題10

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