今回は平成19年度 理論科目 A問題10を解説します。RとCの組合せが異なる5種類の回路の中で、スイッチを閉じたときに時定数が最も大きい回路を選ぶ問題です。
RC回路の時定数はτ=RC。抵抗を並列にすると合成抵抗は半分、コンデンサを並列にすると合成容量は2倍。τ=(合成R)×(合成C)が最大になる組合せを探します。
平成19年度 理論科目 A問題10:問題文と選択肢
時定数を大きくしたいとき、抵抗とコンデンサではやるべきことが正反対です。この「あべこべ」を押さえれば、5つの回路は1分で比較できます。まずは問題文を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題10
電験3種 理論科目 【電気回路(過渡現象)】 平成19年度 A問題10
抵抗RとコンデンサCの組合せが異なる5種類の回路がある。各回路のスイッチSを閉じたとき、時定数が最も大きい回路を次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)R・C各1個:τ=CR (2)C直列2個:τ=CR/2 (3)R並列2個:τ=CR/2 (4)C並列2個:τ=2CR (5)R並列2個・C並列2個:τ=CR
出題のポイント:RとCで「並列にしたときの変化」が逆向き
時定数を大きくしたいとき、抵抗とコンデンサではやるべきことが正反対です。ここが本問の全てです。
| 直列にすると | 並列にすると | τへの影響(並列時) | |
| 抵抗 R | \(R_1+R_2\)(増える) | \(\dfrac{R_1R_2}{R_1+R_2}\)(減る) | τは小さくなる |
| コンデンサ C | \(\dfrac{C_1C_2}{C_1+C_2}\)(減る) | \(C_1+C_2\)(増える) | τは大きくなる |
表の対角線が同じ形になっているのが分かります。抵抗の直列とコンデンサの並列がどちらも「足し算」、抵抗の並列とコンデンサの直列がどちらも「積÷和」。RとCは合成則が入れ替わっているのです。
なぜかというと、コンデンサの「電流の通りやすさ」が容量に比例するからです。抵抗で言えば容量はコンダクタンス(\(1/R\))に対応する量。だから抵抗のルールを裏返した形になります。

なぜ並列で容量が足し算になるのか
公式として覚えるだけでなく、理由まで押さえると忘れません。
同じ電圧で電荷を分担して蓄える→足し算
同じ電荷で電圧を分担する→逆数の和
並列は「極板の面積を増やす」のと同じ——だから容量が足し算になります。直列は「極板の間隔を広げる」のと同じで、容量が減ります。物理的なイメージを持てば、直列と並列を取り違えません。
問題の解説:5つの回路の R_eq・C_eq を順に出す
STEP1 5つの回路を1行ずつ処理する
各回路について、合成抵抗と合成容量を別々に出してから掛けるだけです。
| 回路 | 構成 | R_eq | C_eq | τ | 基準(1)との比 |
| (1) | R 1個・C 1個 | R | C | RC | 1倍 |
| (2) | C を直列に2個 | R | C/2 | RC/2 | 0.5倍 |
| (3) | R を並列に2個 | R/2 | C | RC/2 | 0.5倍 |
| (4) | C を並列に2個 | R | 2C | 2RC | 2倍 |
| (5) | R 並列2個・C 並列2個 | R/2 | 2C | RC | 1倍 |
STEP2 大小を比較する
比は 4 : 2 : 1
最大は(4)ただ一つ
STEP3 数値でも確認する
文字のままでは不安なときは、R=100 Ω、C=1000 μFと具体的な値を入れてみるのが確実です。
| 回路 | R_eq [Ω] | C_eq [μF] | τ [s] |
| (1) | 100 | 1000 | 0.10 |
| (2) | 100 | 500 | 0.05 |
| (3) | 50 | 1000 | 0.05 |
| (4) | 100 | 2000 | 0.20 |
| (5) | 50 | 2000 | 0.10 |




誤答の正体:(5) は「両方いじって元に戻った」回路
5つの選択肢の設計意図を整理すると、作問者の狙いがはっきりします。
| 選択肢 | τ | どんな受験者が選ぶか | 判定 |
| (1) | RC | 基準。何も変えていない回路 | × |
| (2) | RC/2 | 「コンデンサを増やせばτが増える」と思い、直列に増やした | × |
| (3) | RC/2 | 「抵抗を増やせばτが増える」と思い、並列に増やした | × |
| (4) | 2RC | 正解:容量を2倍にする唯一の構成 | ○ |
| (5) | RC | 「素子が一番多いから一番大きい」と数で判断した | × |
(2)と(3)は「増やす方向を間違えた」ペアです。素子を追加したこと自体は正しい発想ですが、つなぎ方が逆。どちらもτが半分に減ってしまいます。
(5)が最も巧妙です。素子が4個で最も豪華に見えますが、抵抗の並列(×1/2)とコンデンサの並列(×2)が打ち消し合って、結局τは基準の(1)と同じRC。「素子数=時定数の大きさ」ではないことを突いています。
なお「最も小さい回路を選べ」と問われたら、(2)と(3)が同点で並びます。この場合は問題として成立しないので、出題は必ず「最も大きい」——単独の最大値を持つ(4)が用意されているからです。選択肢の構造そのものが答えのヒントになっています。
τを大きくしたいときの実際の手段
この問題は「時定数を大きくするには何を増やせばよいか」という設計の問いでもあります。整理すると次の通りです。
| やりたいこと | 抵抗でやるなら | コンデンサでやるなら |
| τを大きくする | 抵抗を直列に追加 | コンデンサを並列に追加 |
| τを小さくする | 抵抗を並列に追加 | コンデンサを直列に追加 |
実務では抵抗を大きくするほうが手軽です。抵抗は安く小型で、値の選択肢も豊富。一方コンデンサは容量を増やすと体積とコストが一気に増えます。
ただし抵抗を大きくすると電流が小さくなるという副作用があります。負荷に必要な電流が確保できなくなるため、電源回路では容量側で調整することも多いです。「τだけを見て決めない」のが実際の設計です。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① R_eq と C_eq を別々に出してから掛ける。同時に考えると混乱する
② 「Rは並列で半分、Cは並列で2倍」——向きが逆であることを最初に確認
③ 同じ値2個なら結果は×2 か ×1/2 のどちらか。細かい計算は不要
④ 文字式で迷ったらR=1、C=1と置いて数値化する
⑤ 素子の数が多い=時定数が大きい、ではない(選択肢(5)の罠)
💡 覚え方
「RとCは合成則があべこべ」。抵抗の直列=コンデンサの並列(どちらも足し算)、抵抗の並列=コンデンサの直列(どちらも積÷和)。片方だけ覚えて、もう片方は入れ替えると記憶量が半分になります。
⚠️ よくある間違い
「コンデンサを直列に増やせば容量が増える」という誤解が選択肢(2)を選ばせます。直列では容量が減ります(抵抗とは逆)。もう一つは選択肢(5)を「素子が多いから最大」と直感で選ぶミス。R/2と2Cが打ち消し合って、実際は基準と同じRCです。
まとめ
| (4)C並列 | 2C→τ=2CR |
| (2)(3) | τ=CR/2 |
| (1)(5) | τ=CR |
| 答え | (4) |
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