今回は令和元年度 理論科目 A問題10を解説します。1kVに充電された100μFのコンデンサを1kΩの抵抗で放電させたとき、電流の時定数τと、抵抗で消費されるエネルギーWの組合せを求める問題です。
時定数τ=RC。抵抗で消費される総エネルギーは、最初にコンデンサに蓄えられていたエネルギー½CV²がすべて抵抗で熱として消費されます。
令和元年度 理論科目 A問題10:問題文と選択肢
放電の「速さ」と「熱の総量」は、別々の原理で決まります。しかも熱の総量は抵抗の値によらない——この意外な事実が本問の核心です。まずは問題文を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和元年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題10
電験3種 理論科目 【電気回路(過渡現象)】 令和元年度 A問題10
図のように、電圧1kVに充電された静電容量100μFのコンデンサ、抵抗1kΩ、スイッチからなる回路がある。スイッチを閉じた直後に過渡的に流れる電流の時定数τの値〔s〕と、スイッチを閉じてから十分に時間が経過するまでに抵抗で消費されるエネルギーWの値〔J〕の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
τ〔s〕 W〔J〕 (1) 0.1 0.1 (2) 0.1 50 (3) 0.1 1000 (4) 10 0.1 (5) 10 50

出題のポイント:「速さ」と「エネルギー」は別々に決まる
この問題はτとWの組合せを選びます。2つは全く独立で、それぞれ別の原理で決まります。
| 問われている量 | 決めるもの | 式 | 本問の値 |
| 時定数 τ | 放電の速さ | \(\tau=RC\) | 0.1 s |
| 消費エネルギー W | 放電で出る熱の総量 | \(W=\frac12CV_0^2\) | 50 J |
そして本問の核心は、Wの式に抵抗Rが入っていないことです。1 kΩでも1 Ωでも1 MΩでも、抵抗で発生する熱の総量は50 Jで変わりません。変わるのは「どれだけの時間をかけて出るか」だけ。
直感的にはこうです。コンデンサに蓄えられていたエネルギーには、抵抗を熱にする以外の行き先がない——だから全部そこへ行きます。抵抗が大きければちょろちょろ長時間、小さければ一気に短時間。合計は同じです。

本当に抵抗が消えるのか——積分して確かめる
「Rによらない」は暗記ではなく、計算で確認できる事実です。実際に電力を時間積分してみます。
初期値 \(V_0/R\) から指数減衰
2乗するので指数の肩も2倍
\(\int_0^\infty e^{-at}dt=1/a\) を使う
Rが約分で消えた
❹でRがきれいに消えるのが見どころです。分母のRと、τ=RCのRが打ち消し合う。これが「抵抗値によらない」ことの数学的な正体です。
エネルギー保存の観点からも同じ結論になります。放電後のコンデンサの電圧は0 V、つまり蓄積エネルギーは0。減った分の \(\frac12CV_0^2\) は、回路内で唯一の消費要素である抵抗へ行くしかありません。
問題の解説:単位を揃えてから2つを別々に計算する
STEP0 単位換算を先に済ませる
| 問題文の表記 | SI単位に直すと | 注意 |
| 1 kV | \(1\times10^{3}\) V | 2乗すると \(10^{6}\) になる |
| 100 μF | \(100\times10^{-6}=1\times10^{-4}\) F | μは \(10^{-6}\) |
| 1 kΩ | \(1\times10^{3}\) Ω | kは \(10^{3}\) |
STEP1 時定数を求める
\(3+(-4)=-1\)
指数の足し算で暗算できます。\(10^3\times10^{-4}=10^{-1}\)。係数は \(1\times1=1\) なので0.1秒。
STEP2 消費エネルギーを求める
kVの2乗を忘れない
50 J
STEP3 組合せを選ぶ
τ=0.1 s と W=50 J の両方を満たす行は1つだけです。

検算:初期電流 \(i(0)=1000/1000=1.0\;\mathrm{A}\)、初期電力 \(p(0)=1000\;\mathrm{W}\)。もし初期電力が最後まで続いたなら \(1000\times0.1=100\;\mathrm{J}\)——実際はそのちょうど半分の50 Jです。指数関数を \(0\sim\infty\) で積分すると「初期値×τ/2」になるという関係が、そのまま出ています ✓


誤答の正体:4つとも「この回路で実際に計算できる別の量」
組合せ問題では、どちらか片方だけ合っている選択肢が必ず用意されます。実際に各値がどこから来るかを計算しました。
| 選択肢 | τ [s] | W [J] | その値の正体 | 判定 |
| (1) | 0.1 ○ | 0.1 × | 0.1は電荷 \(Q=CV_0=0.1\;\mathrm{C}\)。クーロンとジュールの取り違え | × |
| (2) | 0.1 ○ | 50 ○ | 正解:\(\tau=RC\)、\(W=\frac12CV_0^2\) | ○ |
| (3) | 0.1 ○ | 1000 × | 1000は初期電力 \(V_0^2/R=1000\;\mathrm{W}\)。ワットとジュールの取り違え | × |
| (4) | 10 × | 0.1 × | 10は減衰定数 \(1/\tau=10\)(\(i=e^{-10t}\) の10)。0.1は電荷 | × |
| (5) | 10 × | 50 ○ | τの逆数を答えた。Wは正しい | × |
驚くのは、誤答の値がすべてこの回路に実在することです。0.1 Cという電荷も、1000 Wという初期電力も、10という減衰定数も、どれも本当に存在する量。計算はできているのに、聞かれた量と違うものを答えてしまう——これが組合せ問題の怖さです。
単位で防げます。Wはジュール〔J〕であって、クーロン〔C〕でもワット〔W〕でもありません。\(\frac12CV^2\) の単位は \([\mathrm{F}][\mathrm{V}^2]=[\mathrm{C/V}][\mathrm{V}^2]=[\mathrm{CV}]=[\mathrm{J}]\) ——確かにジュールです。
また(4)(5)の「10」は τ の逆数で、電流の式 \(i(t)=e^{-10t}\) の肩に現れます。この10を見て「時定数10秒」と早合点しないこと。時定数は指数の肩の分母、つまり \(1/10=0.1\) 秒です。
充電のときはどうなるか——「必ず半分が捨てられる」法則
放電では蓄積エネルギーの100 %が抵抗で熱になりました。では充電のときはどうでしょうか。
電荷 \(Q=CE\) を電圧Eで押し込む
供給のちょうど半分
これもRによらない
抵抗を通してコンデンサを充電すると、必ず供給エネルギーの半分が熱として捨てられます。効率50 %——抵抗をどんなに小さくしても改善しません。この事実は電源回路の設計で重要で、だからこそ高効率が必要な場面では抵抗ではなくコイルを使ったスイッチング方式が選ばれます。
本問の放電(100 %が熱)と充電(50 %が熱)をセットで覚えておくと、関連問題に強くなります。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① 組合せ問題は片方を計算した時点で選択肢を絞る。τ=0.1で(4)(5)が消え、3択になる
② 単位換算を最初にまとめて済ませる。kV・μF・kΩを指数表記に直してから代入
③ \(W=\frac12CV^2\) のVは2乗——kVなら \(10^6\) 倍。ここが最大の桁ミス要因
④ 総消費エネルギーはRに無関係。式にRが出てきたら間違い
⑤ 検算は「初期電力×τ÷2」:\(1000\times0.1\div2=50\;\mathrm{J}\) と一致
💡 覚え方
「速さはRC、熱は½CV²」。時定数の式に電圧はなく、エネルギーの式に抵抗はありません。互いに相手の主役を含まないと覚えれば、組合せを取り違えません。
⚠️ よくある間違い
最頻出は「抵抗が大きいほど熱も多い」という思い込みです。抵抗は速さだけを変え、総量は変えません。次に多いのが電力〔W〕とエネルギー〔J〕の混同(選択肢(3)の1000)と、τとその逆数の混同(選択肢(4)(5)の10)。単位を書けばすべて防げます。
まとめ
| τ | RC=1k×100μ=0.1s |
| W | ½CV²=½×100μ×1000² |
| W | =50J |
| 答え | 0.1s・50J …(2) |
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