単相交流62【電験3種 理論】RL直列回路の電流が電圧に対してもつ位相を求める!平成18年度 A問題9 完全解説

電験3種 理論科目 電気回路(単相交流) 平成18年度 A問題9 RL回路の電流は電圧より遅れる!何度遅れる?

今回は平成18年度 理論科目 A問題9を解説します。抵抗RとインダクタンスLを直列接続した回路に角周波数ωの交流電圧Ėを加えたとき、電圧に対する電流İの位相を求める問題です。

RL直列回路は誘導性なので、電流は電圧より遅れます。インピーダンスの偏角φ=tan⁻¹(ωL/R)がその遅れ角です。

目次

平成18年度 理論科目 A問題9:問題文と選択肢

平成18年度の公式問題を収録した下の問題画像で、RL直列接続、電流方向、5つの位相表現を確認しながら進めます。公式問題画像と既存の問題図は原資料として保持します。電気技術者試験センターの現在の第三種過去問題一覧と照合方針も確認しています。

電験3種 理論科目 単相交流 平成18年度 A問題9 問題文
平成18年度 理論科目 A問題9 問題文

電験3種 理論科目 【電気回路(単相交流)】 平成18年度 A問題9

 抵抗R〔Ω〕とインダクタンスL〔H〕を直列に接続した回路に、角周波数ω〔rad/s〕の正弦波交流電圧Ė〔V〕を加えた。このとき、電源電圧に対する回路の電流İ〔A〕の位相として、正しいのは次のうちどれか。

(1)sin⁻¹(R/ωL) 進む (2)cos⁻¹(R/ωL) 遅れる (3)cos⁻¹(ωL/R) 進む (4)tan⁻¹(R/ωL) 遅れる (5)tan⁻¹(ωL/R) 遅れる

図 Ė電源とR・Lの直列回路(問題図・自作)
図 Ė電源とR・Lの直列回路(問題図・自作)

出題のポイント:向きを先に決めれば、5択が2択になる

RL直列回路は誘導性なので、電流は電圧より遅れますこの一点だけで「進む」と書かれた選択肢が消えます残るのは式の形の判断だけです。

位相角はインピーダンスの偏角で、\(\tan\phi=\omega L/R\) です。リアクタンスが分子、抵抗が分母——ここを逆にすると選択肢(4)に着地します。

RL直列回路のインピーダンス
$$\dot Z=R+j\omega L\qquad|\dot Z|=\sqrt{R^2+(\omega L)^2}\qquad\phi=\tan^{-1}\frac{\omega L}{R}$$

電流は電圧より \(\phi\) だけ遅れますインピーダンス三角形で「縦 ÷ 横」が \(\tan\phi\) です。

平成18年度理論科目A問題9の出題ポイント。RとLの直列回路、電流を基準に抵抗電圧を右、コイル電圧を上、電源電圧を右上へ合成し、電流が電圧より遅れることを示す図
RL直列回路ではコイル電圧が電流より90°進むため、電源電圧が電流より先行します。電流はtan⁻¹(ωL/R)遅れです。

2段階で選択肢を絞る

向き判定
(1)\(\sin^{-1}(R/\omega L)\)進む ×向きが誤り
(2)\(\cos^{-1}(R/\omega L)\)遅れる式が誤り(分母が \(|\dot Z|\) でない)
(3)\(\cos^{-1}(\omega L/R)\)進む ×2か所誤り
(4)\(\tan^{-1}(R/\omega L)\)遅れる分子分母が逆(最も惜しい)
(5)\(\tan^{-1}(\omega L/R)\)遅れる◎ 正解

まず「遅れる」で(1)(3)が消えます次に \(\tan^{-1}\) の中身で(2)(4)が消えます——実質2ステップで正解にたどり着きます。

(2)(3)の \(\cos^{-1}\) は式として成立しません\(\cos\phi=R/|\dot Z|\) であって、分母は \(\omega L\) ではなく \(|\dot Z|\) だからです。三角比の分母は必ず斜辺——ここを確認すれば見抜けます。

インピーダンスZ=R+jωLの偏角φを求め、電圧を基準にI=E/Zの偏角が-φとなるため電流が遅れることを示す図
フェーザの割り算では偏角を引きます。Zの偏角が+φなので、電流の相対位相は-φとなります。
答え\(\tan^{-1}\dfrac{\omega L}{R}\) だけ遅れる → 選択肢(5)
平成18年度理論科目A問題9の解説1枚目。RL直列回路で抵抗電圧とコイル電圧を電流基準のベクトルへ対応させ、電源電圧を合成する図
問題の解説1/3。共通電流を基準に抵抗電圧・コイル電圧・電源電圧の方向を対応させます。
平成18年度理論科目A問題9の解説2枚目。インピーダンス三角形からφ=tan⁻¹(ωL/R)を導き、電流偏角が負になることと極限挙動を検算する図
問題の解説2/3。三角形の向かい側ωLと隣り側Rから位相角を求め、低周波・誘導性支配の極限でも検算します。

インピーダンス三角形を描いて確認する

横軸に \(R\)、縦軸に \(\omega L\)、斜辺が \(|\dot Z|\)——この直角三角形を描けば、3つの三角比がすべて読み取れます。

三角比分母は何か
\(\tan\phi\)\(\dfrac{\omega L}{R}\)抵抗(横)
\(\sin\phi\)\(\dfrac{\omega L}{|\dot Z|}\)インピーダンス(斜辺)
\(\cos\phi\)\(\dfrac{R}{|\dot Z|}\)インピーダンス(斜辺)

\(\tan\) だけが斜辺を使いませんだから \(|\dot Z|\) を計算しなくても位相角が求まる——位相を聞かれたら \(\tan\) を使うのが定石です。

\(\cos\phi\) は力率そのものです。位相角と力率は表裏一体——片方が分かればもう片方も決まります

⚠️ よくある間違い
「\(\tan^{-1}(R/\omega L)\)」も一見もっともらしく見えますこれは「電圧が電流より進む角」を表しているようにも読めますが、値そのものが違います\(\tan^{-1}(R/\omega L)\) は \(90^\circ-\phi\)——補角です。

深掘り:ELI と ICE で向きを覚える

コイルとコンデンサで、電圧と電流のどちらが先行するか——これを覚える語呂が広く使われています。

語呂意味覚えること
ELI\(E\)(電圧)→ \(L\) → \(I\)(電流)コイルでは電圧が先=電流が遅れる
ICE\(I\)(電流)→ \(C\) → \(E\)(電圧)コンデンサでは電流が先=電流が進む

「ELI the ICE man」と続けて覚えるのが定番です。\(L\) の左に \(E\)、右に \(I\)——左が先行すると読みます。

物理的にも説明できますコイルは電流の変化を妨げるので、電圧をかけてもすぐには電流が流れません——だから電流が遅れますコンデンサは電圧が上がる前に充電電流が流れ込む——だから電流が進みます

💡 覚え方
「コイルは腰が重い、コンデンサはせっかち」——このイメージでも十分です。向きさえ決まれば、あとは \(\tan^{-1}\) の中身を確認するだけになります。

⏱️ 本番での進め方
❶ 向きを先に決める。RL なら遅れる。これで2肢消える。
❷ インピーダンス三角形を描く。\(\tan\phi\) の分子はリアクタンス。
❸ \(\cos^{-1}\) の分母は斜辺。\(R\) や \(\omega L\) が分母の \(\cos^{-1}\) はあり得ない。
❹ ELI the ICE man で向きを即断する。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

位相角から回路の姿を読み取る

位相角 \(\phi\) が分かると、回路の中身がどうなっているかが見えてきます\(\tan\phi=\omega L/R\) という関係は、抵抗とリアクタンスの比を表しているからです。

位相角 \(\phi\)\(\omega L/R\)力率 \(\cos\phi\)回路の姿
01純抵抗(\(L\) がない)
30°0.5770.866抵抗が優勢
45°10.707\(R=\omega L\)
60°1.7320.5リアクタンスが優勢
90°0純リアクタンス(\(R\) がない)

実際の電動機は力率0.8前後(位相差約37°)です。コイル成分が抵抗成分より少し小さいくらいの構成になります。位相角が分かれば、回路の性格がつかめるわけです。

位相角が45°を超えると、リアクタンスのほうが大きい——「無効分のほうが多い」状態です。力率が0.707 を下回るので、実務では改善の対象になります。

位相角の求め方を式で確認する

複素数で書くと、位相角は偏角そのものです。\(\dot Z=R+j\omega L\) の偏角を求める作業になります。

$$\dot Z=R+j\omega L=|\dot Z|\,e^{j\phi}$$
❶ 極形式に直す
\(\phi\) が偏角
$$\phi=\arg(\dot Z)=\tan^{-1}\frac{\text{虚部}}{\text{実部}}=\tan^{-1}\frac{\omega L}{R}$$
❷ 偏角の定義
虚部が分子、実部が分母

「虚部 ÷ 実部」という形を覚えておけば、RC回路でも同じように使えます\(\dot Z=R-jX_C\) なら \(\phi=\tan^{-1}(-X_C/R)\)——負の角=電流が進むことを表します。

電流の位相は電圧より \(\phi\) だけ「遅れる」のが誘導性、「進む」のが容量性です。インピーダンスの偏角が正なら電流が遅れる——符号と向きの対応も押さえておいてください

💡 覚え方
「インピーダンスの偏角=電流の遅れ角」——符号がそのまま向きを表します正なら遅れ、負なら進み。複素数で扱えるようになると、交流回路の問題は一気に楽になります。

まとめ

ZR+jωL
偏角tan⁻¹(ωL/R)
電流電圧より遅れ
答えtan⁻¹(ωL/R)遅れる …(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・力率・位相の関連問題:【理論】令和5年度上期A問題9

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