今回は平成27年度 理論科目 A問題10を解説します。RL回路とRC回路で、スイッチ投入後の電流i・抵抗電圧vR・コイル/コンデンサ電圧の波形の組合せを選ぶ問題です。
RL回路は電流が0から増加(vRも増加、vLは減少)、RC回路は電流がE/Rから減少(vRも減少、vCは増加)。各波形の立ち上がり・立ち下がりを見分けます。
平成27年度 理論科目 A問題10:問題文と選択肢
6つの波形を選ぶ問題ですが、指数関数の計算は一切不要です。t=0とt=∞の2点だけで全ての波形の向きが決まります。まずは問題文を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成27年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題10
電験3種 理論科目 【電気回路(過渡現象)】 平成27年度 A問題10
図のように、直流電圧E〔V〕の電源、抵抗R〔Ω〕、インダクタンスL〔H〕のコイルまたは静電容量C〔F〕のコンデンサ、スイッチSからなる2種類の回路(RL回路、RC回路)がある。各回路で時刻t=0でスイッチSを閉じたとき、電流i、抵抗の端子電圧vR、コイルの端子電圧vL、コンデンサの端子電圧vCの波形の組合せを示す図として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、電源の内部インピーダンス及びコンデンサの初期電荷は零とする。
上の図(1)〜(5)から、RL回路・RC回路それぞれの i・vR・vL(vC)波形の組合せとして正しいものを一つ選べ。

出題のポイント:波形問題は計算不要、初期値と定常値だけで解ける
6つの波形を見比べる問題ですが、指数関数を計算する必要は一切ありません。必要なのは2つの時刻だけです。
| 見る時刻 | 根拠になる法則 | 分かること |
| t=0(投入直後) | コイル電流とコンデンサ電圧は急変できない | 波形の出発点 |
| t=∞(十分後) | 定常状態ではLは短絡・Cは開放 | 波形の到達点 |
出発点と到達点が決まれば、あとは指数関数がその2点を滑らかに結ぶだけ。上がるか下がるかが確定するので、正しいグラフが選べます。
この「初期値・定常値法」は過渡現象のあらゆる問題に効きます。むしろ微分方程式を解くのは、途中の値を数値で聞かれたときだけです。

2つの法則の正体:なぜ「急変できない」のか
「Lは電流を、Cは電圧を急変させない」——これは覚えるルールではなく、式から必然的に出てくる帰結です。
電流が瞬時に飛ぶと \(di/dt=\infty\) → 無限大の電圧が必要
電圧が瞬時に飛ぶと \(dv/dt=\infty\) → 無限大の電流が必要
現実の回路に無限大の電圧・電流は存在しません。だから連続にしか変化できないのです。これが「急変できない」の中身です。
そしてLとCはきれいな双対(そうつい)関係にあります。片方を覚えれば、電流と電圧を入れ替えるだけでもう片方が出ます。
| コイル L | コンデンサ C | |
| 急変できない量 | 電流 i | 電圧 v |
| t=0 での振る舞い | 開放と同じ(電流0を保つ) | 短絡と同じ(電圧0を保つ) |
| t=∞ での振る舞い | 短絡(電圧0) | 開放(電流0) |
| 時定数 | \(\tau=L/R\) | \(\tau=RC\) |
| 蓄積エネルギー | \(\frac12LI^2\) | \(\frac12CV^2\) |
t=0とt=∞で役割が正反対に入れ替わるのがポイントです。コイルは最初「開放」で最後「短絡」、コンデンサは最初「短絡」で最後「開放」。
問題の解説:RL・RCそれぞれの3波形を確定させる
STEP1 RL回路の3波形
| 量 | t=0 | t=∞ | 波形の向き | 理由 |
| 電流 i | 0 | E/R | ↑ 上昇 | コイルが電流の立ち上がりを妨げる |
| 抵抗電圧 v_R | 0 | E | ↑ 上昇 | \(v_R=iR\) なので電流と相似 |
| コイル電圧 v_L | E | 0 | ↓ 下降 | \(v_L=E-v_R\) |
t=0でコイルに電源電圧の全部がかかるのが特徴的です。電流が0なので抵抗の電圧降下も0、残り全部がコイルに——KVLからそうなるしかありません。
STEP2 RC回路の3波形
| 量 | t=0 | t=∞ | 波形の向き | 理由 |
| 電流 i | E/R | 0 | ↓ 下降 | 空のコンデンサは短絡と同じ |
| 抵抗電圧 v_R | E | 0 | ↓ 下降 | \(v_R=iR\) なので電流と相似 |
| コンデンサ電圧 v_C | 0 | E | ↑ 上昇 | \(v_C=E-v_R\) |
RLとRCは完全に裏返しです。RLは電流が0から立ち上がり、RCは最大値から落ちる。この対比を頭に入れておけば、6つの波形の向きが一瞬で決まります。
STEP3 組合せを選ぶ
RL(i↑・v_R↑・v_L↓)とRC(i↓・v_R↓・v_C↑)を同時に満たす図は1つだけです。



波形が正しいことの検算:足したらEになるか
グラフを選んだ後、1秒でできる検算があります。同じ時刻で2つの電圧を足して、電源電圧Eになるかを見るのです。
E=100 V、R=10 Ω で数値化して確かめました(RLはL=1 H、RCはC=0.01 Fとしてτを揃えています)。
| 時刻 | RL:v_R | RL:v_L | 和 | RC:v_R | RC:v_C | 和 |
| t=0 | 0 V | 100 V | 100 V | 100 V | 0 V | 100 V |
| t=τ | 63.2 V | 36.8 V | 100 V | 36.8 V | 63.2 V | 100 V |
| t=∞ | 100 V | 0 V | 100 V | 0 V | 100 V | 100 V |
いつでも和はE——これはKVLそのものなので、例外はありません。つまり2つの電圧波形は「上下対称に交差する」形になり、交点はちょうど \(E/2\) の高さです(交点の時刻は \(t=\tau\ln2\approx0.693\tau\))。
選択肢のグラフで2つの電圧曲線が \(E/2\) で交差していなかったら、その図は誤りです。これは非常に強力な足切り条件になります。
誤答はどう作られているか
この種の波形選択問題で用意される誤答は、ほぼ次の4パターンです。
| 誤答のパターン | 見た目の特徴 | 見破り方 |
| RLとRCを入れ替えた | RL側の電流が最大値から下降している | t=0の電流を見る。RLは必ず0 |
| v_Lとv_Rを入れ替えた | 抵抗電圧が最初にEから始まっている | \(v_R=iR\) は電流と同じ形のはず |
| 片方だけ正しい | RLは合っているがRCが逆 | 両方を確認してから決める |
| 直線で描かれている | 指数曲線でなく一次関数 | 過渡応答は必ず指数関数 |
最も速い絞り込みは「t=0の電流」です。RL回路の電流が0から始まっていない図は、他をどう描いてあっても即座に消せます。逆にRC回路の電流が0から始まっていたらそれも誤り。グラフの左端だけを見て2〜3個は落とせます。
実務での意味:突入電流とサージ電圧
この2つの回路の性質は、そのまま電気機器の設計課題になります。
RC回路の「t=0で電流最大」は突入電流そのものです。大容量コンデンサを持つ電源装置の電源投入時には、瞬間的に定格の何倍もの電流が流れます。これがブレーカーを落とす原因になるため、実務では突入電流制限抵抗やサーミスタを直列に入れます。
RL回路の「t=0でコイルに全電圧」の裏返しがサージ電圧です。逆に電流が流れているコイルを急に遮断すると、\(v_L=L\,di/dt\) が巨大な値になり、スイッチの接点に火花が飛びます。だからリレーやソレノイドには還流ダイオードを並列に付けて、電流の逃げ道を作ります。
「急変できない」量を無理に急変させようとすると事故が起きる——この問題の法則は、そのまま安全設計の根拠になっています。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① 波形問題は計算しない。t=0とt=∞の2点だけで決める
② 最初に見るのは電流のt=0。RLは0、RCはE/R——ここで大半が落とせる
③ \(v_R\) は電流と相似(\(v_R=iR\))。電流と逆向きの \(v_R\) は必ず誤り
④ 2つの電圧の和は常にE。\(E/2\) で交差していない図は誤り
⑤ 組合せ問題なのでRL・RC両方を確認してから決める
💡 覚え方
「コイルは出遅れ、コンデンサは先走り」。RLの電流は0から出遅れて増え、RCの電流はいきなり最大で先走ってから減る。電流の初期値さえ覚えれば、残りはKVLで自動的に決まります。
⚠️ よくある間違い
RLとRCの電流を逆に覚えるのが最大のミスです。「Lは電流を妨げる=最初は流れない」「Cは電圧が0=短絡=いきなり流れる」と、理由とセットで覚えてください。もう一つはv_Rの向きを電流と逆にしてしまう誤り。\(v_R=iR\) は比例なので、電流が上がれば必ず一緒に上がります。
まとめ
| RL | i↑・vR↑・vL↓ |
| RC | i↓・vR↓・vC↑ |
| 答え | 両方満たす …(2) |
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