過渡現象13【電験3種 理論】RL回路のスイッチ投入直後と定常状態の抵抗電流を求める!平成29年度 A問題10 完全解説

電験3種 理論科目 電気回路(過渡現象) 平成29年度 A問題10 コイルは急な変化を嫌う!直後と定常の電流は?

今回は平成29年度 理論科目 A問題10を解説します。E・S・R₁・R₂・コイルLの回路で、スイッチSを閉じた瞬間(t=0)にR₁に流れる電流(ア)と、定常状態でR₁に流れる電流(イ)を求める問題です。

コイルは、初期電流0でスイッチを閉じた瞬間は開放、定常状態では短絡とみなせます。各状態の回路からR₁に流れる電流を求めます。

目次

平成29年度 理論科目 A問題10:問題文と選択肢

過渡計算は一切不要です。同じ回路を「投入直後」と「定常状態」の2回、ただの抵抗回路として解くだけ。コイルの置き換えが正反対になるのがポイントです。まずは問題文を確認しましょう。

電験3種 理論科目 過渡現象 平成29年度 A問題10 問題文
平成29年度 理論科目 A問題10 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成29年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題10

電験3種 理論科目 【電気回路(過渡現象)】 平成29年度 A問題10

 図のように、電圧E〔V〕の直流電源、開いた状態のスイッチS、R₁〔Ω〕の抵抗、R₂〔Ω〕の抵抗及び電流が0Aのコイル(インダクタンスL〔H〕)を接続した回路がある。1.スイッチSを閉じた瞬間(時刻t=0s)にR₁の抵抗に流れる電流は、(ア)〔A〕となる。2.スイッチSを閉じて回路が定常状態とみなせるとき、R₁の抵抗に流れる電流は、(イ)〔A〕となる。上記の記述中の空白箇所(ア)及び(イ)に当てはまる式の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)〔A〕(イ)〔A〕
(1)E/(R₁+R₂)E/R₁
(2)R₂E/{(R₁+R₂)R₁}E/R₁
(3)E/R₁E/(R₁+R₂)
(4)E/R₁E/R₁
(5)E/(R₁+R₂)E/(R₁+R₂)
図 E・S・R₁・R₂∥LのRL回路(問題図)
図 E・S・R₁・R₂∥LのRL回路(問題図)

出題のポイント:同じ回路を「2つの時刻」で2回解く

この問題は1つの回路を2回解くだけです。難しい過渡計算はありません。時刻ごとにコイルを置き換えて、ただの抵抗回路として処理します。

時刻コイルの置き換え根拠回路の形
t=0(投入直後)開放コイル電流は0のまま急変できないR₁とR₂の直列
t=∞(定常状態)短絡電流一定なので \(v_L=L\,di/dt=0\)R₁だけ(R₂はバイパスされる)

置き換える対象はコイルであって、スイッチではありません。スイッチは閉じたまま——変わるのは「コイルがどう振る舞うか」だけです。ここを混同すると回路の描き方を間違えます。

そして「電流が0 Aのコイル」という但し書きが決定的です。もし最初から電流が流れていたなら、t=0でコイルは「電流源」のように振る舞い、開放にはなりません。この一文があるから「t=0で開放」と言い切れます。

電源E、抵抗R1、その後に抵抗R2とコイルLが並列接続された回路で、投入直後と定常状態のコイル等価回路を説明
初期コイル電流0なら投入直後はL枝が開放相当、直流定常ではL枝が短絡相当です。

なぜ t=0 で開放、t=∞ で短絡なのか

コイルの振る舞いが時刻によって正反対になるのは、同じ1本の式の別の側面を見ているからです。

$$v_L=L\frac{di}{dt}$$
❶ コイルの定義式
電圧は電流の変化率で決まる
$$i(0^-)=0\;\Rightarrow\;i(0^+)=0$$
❷ t=0:電流は飛べない
電流0=電流を通さない=開放と同じ
$$\frac{di}{dt}=0\;\Rightarrow\;v_L=0$$
❸ t=∞:変化が止まる
電圧0=抵抗0=短絡と同じ

「開放」と「短絡」は正反対ですが、どちらも同じ式から出てきます。t=0では「電流がまだ0」、t=∞では「電流が変化しない」——着目している量が違うだけです。

その間の時間では、コイル電流が0から徐々に増えていきます。コイルが「開放」から「短絡」へ連続的に変身していく過程が、まさに過渡現象です。

問題の解説:2つの回路をそれぞれ解く

使う公式:初期値・定常値法
$$t=0:\;L\to\text{開放(初期電流0のとき)},\qquad t=\infty:\;L\to\text{短絡}$$

※どちらの時刻もただの抵抗回路になります。オームの法則だけで解けます。

STEP1 t=0:コイル枝を切り離す

L枝が開放なので、電流はR₁とR₂を順番に通るしかありません。

$$R_{\text{合成}}=R_1+R_2$$
❶ 直列
L枝が使えないため迂回路がない
$$i_{R_1}(0)=\frac{E}{R_1+R_2}$$
❷ (ア)が確定
電流が最も小さい瞬間

STEP2 t=∞:コイルが短絡してR₂を飛ばす

Lが短絡すると、R₂の両端が導線で結ばれます。R₂と短絡線の並列=0 Ω——R₂は完全にバイパスされます。

$$R_2\parallel 0=0\;[\Omega]$$
❸ 短絡が勝つ
電流は抵抗0の道を通る
$$i_{R_1}(\infty)=\frac{E}{R_1}$$
❹ (イ)が確定
電流が最も大きい状態

R₂に流れる電流は最終的に0 Aになります。両端が同電位(0 V)だからです。R₂を流れていた電流は、時間とともにすべてコイル側へ移っていきます。

STEP3 組合せを選ぶ

コイルから見たテブナン等価回路を求め、時定数とコイル電流、R2電流、R1電流の過渡式を導く解説
テブナン等価から時定数L割るR1並列R2を求めると、R1電流が初期値から定常値へ増える過程まで説明できます。
答え(ア)\(=\dfrac{E}{R_1+R_2}\)、(イ)\(=\dfrac{E}{R_1}\) → 選択肢(1)

妥当性の確認:\(R_1+R_2>R_1\) なので、必ず(ア)<(イ)。つまりR₁の電流は増えていく——コイルが「開放」から「短絡」へ変わるのだから、電流の通り道が増えて電流も増える。方向が物理と一致しています ✓

投入直後はR1とR2の直列、定常ではR2がコイルの短絡枝にバイパスされる等価回路からR1電流を求める解説
投入直後のR1電流はE割るR1たすR2、定常値はE割るR1です。
コイル電流、R2電流、R1電流の三つの時間変化を別々のグラフと端点表で説明
R2電流が減る一方でコイル電流が増え、その合計であるR1電流は定常値E割るR1へ増加します。

誤答の正体:5つの選択肢が「時刻の扱い」を網羅している

E=100 V、R₁=10 Ω、R₂=40 Ω として全選択肢を数値化しました。正解の(ア)=2.00 A、(イ)=10.00 A です。

選択肢(ア)値 [A](イ)値 [A]どんな誤解か判定
(1)E/(R₁+R₂)2.00E/R₁10.00正解
(2)R₂E/{(R₁+R₂)R₁}8.00E/R₁10.00(ア)で分流則を誤用した×
(3)E/R₁10.00E/(R₁+R₂)2.00(ア)と(イ)を入れ替えた×
(4)E/R₁10.00E/R₁10.00Lを最初から短絡と誤解×
(5)E/(R₁+R₂)2.00E/(R₁+R₂)2.00Lを最後まで開放と誤解×

(4)と(5)が対になっているのが分かります。(4)は「コイルはいつも短絡」、(5)は「コイルはいつも開放」——時間で変わることを見落とした2つの誤りです。どちらも(ア)と(イ)が同じ値になるので、「2つの答えが同じ選択肢は怪しい」と身構えられます。

(3)は最も惜しい誤りです。2つの値は正しく計算できているのに、順番が逆。「投入直後は勢いよく流れそう」という直感に引っ張られると、大きいほうの \(E/R_1\) を(ア)に置いてしまいます。コイルは電流を「妨げる」側——最初は小さい、と覚えてください。

その間の時間で何が起きているか

(ア)から(イ)へ移る過程を追うと、3つの電流が同時に動いています

電流t=0t=∞動き
R₁の電流(問題が聞いている)E/(R₁+R₂)E/R₁増える
R₂の電流E/(R₁+R₂)0減る
コイルの電流0E/R₁増える

R₁の電流は、R₂とコイルの電流の合計です(分岐点でのKCL)。R₂の分が減っていく一方で、コイルの分がそれ以上に増えるため、合計であるR₁の電流は増えていきます。

この過程の速さを決める時定数は、テブナン等価抵抗を使って求めます。コイルから見た抵抗は、電源を短絡すればR₁とR₂の並列——したがって、

$$\tau=\frac{L}{R_1\parallel R_2}=\frac{L(R_1+R_2)}{R_1R_2}$$
❺ この回路の時定数
R₁単独でもR₂単独でもない

時定数を聞かれる出題もあるため、「コイルから見た抵抗」=電源を短絡して端子から覗いた抵抗という手順も押さえておくと安心です。

本番で使える時間短縮テクニック

⏱️ 本番での進め方
① 「投入直後」と「定常状態」を聞かれたら、回路図を2枚描く。1枚に詰め込まない
② コイルはt=0で開放(初期電流0のとき)、t=∞で短絡
短絡は並列相手を完全に消す(\(R\parallel0=0\))。R₂はバイパスされる
(ア)<(イ) になるか向きを確認。コイルは電流を妨げる側なので初期が小さい
2つの答えが同じ選択肢((4)(5))は「時間変化を見落とした」誤答の定番

💡 覚え方
「最初は開放、最後は短絡」——コイルはだんだん通りやすくなると覚えます。だからR₁の電流は小 → 大。コンデンサはその逆で「最初は短絡、最後は開放」=だんだん通りにくくなる

⚠️ よくある間違い
(ア)と(イ)を逆にするのが最頻出(選択肢(3))です。次に時間で変わることを忘れて両方同じ式にする誤り(選択肢(4)(5))。また「Lが短絡だからR₂も残る」と考えるのも誤りで、短絡線と並列になったR₂は完全にバイパスされ、電流0になります。

まとめ

t=0L開放→R₁+R₂直列
(ア)E/(R₁+R₂)
t=∞L短絡→R₁のみ
(イ)E/R₁ …(1)

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