今回は平成25年度 理論科目 A問題12を解説します。30V・10Ω・スイッチS、20Ωと20mHの並列回路で、Sをt=0〜15msの間だけ閉じたときのコイルの端子電圧vの波形を選ぶ問題です。
投入直後はコイルが開放(電流0)なので分圧でv=20V、その後コイルが短絡してv→0。スイッチ開放時はコイルが電流3Aを維持しようとし、20Ωを通してv=−60Vの逆スパイクが生じます。
平成25年度 理論科目 A問題12:問題文と選択肢
スイッチを閉じて15 ms後にまた開く2段構えの問題です。山場は開いた瞬間——電源30 Vの回路に、なぜ−60 Vが現れるのか。まずは問題文を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成25年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題12
電験3種 理論科目 【電気回路(過渡現象)】 平成25年度 A問題12
図の回路において、十分に長い時間開いていたスイッチSを時刻t=0〔ms〕から時刻t=15〔ms〕の間だけ閉じた。このとき、インダクタンス20〔mH〕のコイルの端子間電圧v〔V〕の時間変化を示す図として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
上の図(1)〜(5)から、コイルの端子電圧vの波形として最も適切なものを一つ選べ。

出題のポイント:スイッチの「開」でこそ、コイルの本性が現れる
この問題はスイッチを閉じて、15 ms後にまた開くという2段構えです。そして山場は開いた瞬間にあります。
| 時刻 | 何が起きるか | コイル端子電圧 v |
| t=0(閉じた直後) | コイル電流0のまま → 開放相当 → 10 Ωと20 Ωで分圧 | +20 V |
| 0 < t < 15 ms | コイル電流が増え、コイルが短絡へ近づく | 20 V → 0 V へ減衰 |
| t=15 ms(開いた直後) | コイル電流3 Aが行き場を求めて20 Ωへ逆流 | −60 V(逆スパイク) |
| t > 15 ms | コイルのエネルギーが20 Ωで消費される | −60 V → 0 V へ減衰 |
電圧が正から負へ飛ぶのが本問の核心です。「急変できない」のはコイル電流であって、コイル電圧は自由に飛べます。ここを混同すると波形が選べません。

なぜ開いた瞬間に大きな逆電圧が出るのか
スイッチを開く直前、コイルには約3 Aが流れています。この電流は瞬時に0にできません。
コイルの絶対的な性質
電流はどこかへ流れねばならない
電源30 Vの倍以上の電圧
電源電圧30 Vしかないのに、−60 Vが発生する——ここが驚きどころです。コイルは「電流を流し続けよう」として、必要なだけの電圧を自分で作り出します。これが \(v_L=L\,di/dt\) の意味です。
もし20 Ωがなかったらどうなるか。電流の行き場が完全になくなるので \(di/dt\) が極端に大きくなり、理論上は無限大の電圧が発生します。現実にはスイッチの接点間でアーク放電(火花)が起き、そこを電流が流れて決着します。
これがリレーやモータのスイッチが焼ける原因であり、還流ダイオードを並列に入れる理由です。本問の20 Ωは、まさにその「電流の逃げ道」の役割を果たしています。
問題の解説:4つの区間を順に押さえる
STEP1 閉じた直後(t=0)
コイル電流は0のまま。電流を通さない=開放と同じなので、30 Vが10 Ωと20 Ωで分圧されます。
電源電圧30 Vそのものではない
STEP2 閉じている間(0 < t < 15 ms)
コイル電流が増えるにつれ、コイルは短絡へ近づきます。時定数は「コイルから見た抵抗」で決まります。
10 Ωと20 Ωが並列に見える
Lが短絡し20 Ωをバイパス
ここで重要な気づきがあります。スイッチを閉じている時間は15 ms——これは \(15\div3=5\) 時定数ぶんです。「5τで定常」の目安どおり、15 msの時点でコイル電流は定常値3 Aの99.3 %(2.98 A)に達します。出題者が意図的に5τに設定しているのです。
STEP3 開いた直後(t=15 ms)
定常値の99.3 %
符号が反転
閉のときの1/3=3倍速い



波形を決める4つのチェックポイント
選択肢は5つの波形です。次の4点を順に確認すれば一意に決まります。実計算の結果と合わせて示します。
| チェック | 正しい値 | 確認内容 |
| ① 最初の高さ | +20 V | 30 Vではない(分圧されている) |
| ② 閉の間の減衰 | 3 ms で0 Vへ | 15 msまでにほぼ0(実計算 0.13 V) |
| ③ 逆スパイクの深さ | −60 V | 電源電圧の2倍。−30 Vでも−20 Vでもない |
| ④ 開放後の減衰の速さ | 1 ms(閉のときより速い) | \(\tau=L/20\) で3倍速い |
③が最も差がつきます。逆スパイクの大きさは「そのときのコイル電流 × 電流が流れ込む抵抗」で決まります。電源電圧とは無関係——だから30 Vを超えた60 Vになるのです。
④も見落とされがちです。時定数が閉のとき3 ms、開のとき1 msと変わるのは、コイルから見える抵抗が \(10\parallel20=6.67\;\Omega\) から \(20\;\Omega\) へ変わるから。抵抗が大きくなると \(\tau=L/R\) は小さくなり、速く減衰します。
エネルギーで見る逆スパイク
−60 Vという大きな電圧が出ても、エネルギーが増えたわけではありません。
15 ms時点でコイルが蓄えているエネルギーは \(\frac12LI^2=\frac12\times20\times10^{-3}\times2.98^2=0.089\;\mathrm{J}\)。スイッチを開いた後、この0.089 Jがすべて20 Ωで熱になります。
電圧が高いのは、エネルギーを短時間で放出しているからです。時定数1 msという短い時間に押し込めるため、瞬間的な電力(\(v^2/R=60^2/20=180\;\mathrm{W}\))が大きくなります。同じエネルギーでも、放出時間が短いほど電圧・電力は高くなる——これが逆起電力の本質です。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① スイッチの開閉が2回ある問題は、区間ごとに回路を描き直す
② 投入直後のコイル電圧は分圧値(電源電圧そのものではない)
③ 逆スパイクの大きさ=そのときのコイル電流 × 流れ込む抵抗。電源電圧とは無関係
④ 時定数は区間ごとに変わる。コイルから見える抵抗を毎回求め直す
⑤ スイッチを閉じる時間が5τなら「ほぼ定常に達した」と判断してよい
💡 覚え方
「電流は連続、電圧は跳ぶ」。コイル電流は絶対に飛べませんが、コイル電圧は瞬時に+20 Vから−60 Vへ飛びます。飛べない量を頼りに、飛ぶ量を計算する——これが過渡現象の基本戦術です。
⚠️ よくある間違い
逆スパイクを−30 V(電源電圧)と考えるのが最頻出のミスです。大きさを決めるのはコイル電流×抵抗であって、電源電圧ではありません。また投入直後を30 Vとする誤りも多く、正しくは10 Ωと20 Ωの分圧で20 Vです。時定数が区間で変わることも忘れないでください。
まとめ
| t=0+ | v=20V |
| 定常 | v=0 |
| t=15ms | v=−60V |
| 答え | (4) |
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