今回は平成24年度 理論科目 A問題9を解説します。E電源に2つのR-L枝(S₁側・S₂側)を接続する回路で、t₁でS₁、十分時間後t₂でS₂を閉じたときの電源電流iの波形を選ぶ問題です。
RL回路の電流は時定数τ=L/Rで0からE/Rへ近づきます。S₁でE/Rへ達した後は、第1コイルが分岐点を0 Vに保つため、S₂を閉じても第2枝は励磁されず、電源電流はE/Rのままです。
平成24年度 理論科目 A問題9:問題文と選択肢
スイッチを2つ、時間差で閉じます。ところが2つ目を閉じても電流はまったく変化しません。「つながったのに流れない」——その理由を電位から読み解きます。まずは問題文を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題9
電験3種 理論科目 【電気回路(過渡現象)】 平成24年度 A問題9
図のように、直流電圧E〔V〕の電源、R〔Ω〕の抵抗、インダクタンスL〔H〕のコイル、スイッチS₁とS₂からなる回路がある。電源の内部インピーダンスは零とする。時刻t=t₁でS₁を閉じ、その後、時定数L/Rより十分に時間が経過した時刻t=t₂でS₂を閉じる。このとき、電源から流れ出る電流i〔A〕の波形を示す図として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
上の図(1)〜(5)から、電源電流iの波形として最も適切なものを一つ選べ。

出題のポイント:2つ目のスイッチを閉じても、何も起きない
スイッチが2つあり、時間差で閉じます。普通に考えれば、2つ目を閉じたときに電流が増えそう——ところが本問ではまったく変化しません。その理由を見抜けるかが問われています。
鍵は「1つ目のコイルが、分岐点の電圧を0 Vに固定してしまう」ことです。
| 時刻 | 回路の状態 | 電源電流 i |
| t=t₁(S₁投入) | 第1のR-L枝が通電を開始 | 0 から E/R へ立ち上がる(τ=L/R) |
| t₁ < t < t₂ | 第1コイルの電流が増え、コイルは短絡へ近づく | E/R に漸近 |
| t=t₂(S₂投入) | 第2枝がつながるが、両端の電圧が0 V | E/R のまま変化なし |
| t > t₂ | 第2枝に電流を流す電圧がない | E/R で一定 |

なぜ第2枝に電流が流れないのか
順を追って確認します。t₂の時点では、第1コイルはすでに定常状態に達しています。
電流が変化しなくなった
直流的には短絡と同じ
かかる電圧が0 V
励磁する起電力がない
「回路がつながった=電流が流れる」ではありません。電流を流すには電位差が必要です。第1コイルが短絡として振る舞い、分岐点を接地側と同じ0 Vに引き下げているため、第2枝の両端には電位差がまったくありません。
さらに重要なのは、この状態がすでに平衡だということです。「S₂を閉じた瞬間の状態」と「S₂を閉じて十分後の状態」がどちらも \(i_1=E/R,\;i_2=0\) で一致します。初期状態=最終状態なら、その間に過渡現象は起きません——だから波形は完全に水平のままです。
問題の解説:2段階に分けて追う
STEP1 S₁投入後の立ち上がり
第1のR-L直列回路に電圧Eが加わります。コイル電流は0から始まり、時定数 \(L/R\) で \(E/R\) へ近づきます。
数値例(E=10 V、R=5 Ω、L=1 H、τ=0.2 s)で確認しました。
| 時刻 | 電源電流 i | 最終値に対して |
| t=0 | 0 A | 0 % |
| t=τ(0.2 s) | 1.264 A | 63.2 % |
| t=2.5τ(0.5 s) | 1.836 A | 91.8 % |
| t=5τ(1.0 s) | 1.987 A | 99.3 % |
| t=10τ(2.0 s) | 2.000 A | ほぼ100 % |
STEP2 S₂投入——変化なし
問題文は「時定数 \(L/R\) より十分に時間が経過した時刻 t₂」と明記しています。つまりt₂では第1枝はすでに定常です。
S₂を閉じる前は0、閉じた直後も0
段差も第2の立上りも生じない
STEP3 波形を選ぶ



誤答の波形はどんな勘違いから生まれるか
| 描かれている波形 | 何を間違えたか | その値 |
| t₂で2段目の立上りが始まり 2E/R へ | 2つのR-L枝を独立した並列負荷と誤解 | \(2E/R\)(数値例なら4.0 A) |
| t₂で電流が段差でジャンプ | コイル電流が瞬時に飛べると誤解 | — |
| t₂から電流が減少 | 第2枝が電流を「奪う」と誤解 | — |
| t₂で一度落ちてから戻る | スイッチ操作で必ず過渡が起きると思い込んだ | — |
圧倒的に多いのが「2E/Rになる」誤りです。「同じR-L枝が2本になったのだから電流も2倍」——部品の数だけを見ると、そう考えるのが自然です。
しかし2本が並列になっているのは電源に対してではありません。第2枝は第1コイルと並列であり、そこには電圧がかかっていない。回路図の接続を、電位という観点で読み直す必要があります。
「スイッチを操作したのだから何か起きるはず」という思い込みも罠です。初期状態と最終状態が一致していれば、スイッチを閉じても何も起きません。変化がないことも立派な答えです。
見抜くための考え方:まず節点の電位を見る
この種の問題は、素子ではなく「節点の電位」から入ると一気に見通しが良くなります。
| 手順 | やること | 本問での結果 |
| ① | スイッチを閉じる直前の各節点の電位を求める | 分岐点は0 V(第1コイルが短絡) |
| ② | 新しくつながる枝の両端の電位差を計算 | 0 V − 0 V = 0 V |
| ③ | 電位差が0なら電流は流れないと判断 | 第2枝の電流は0のまま |
| ④ | 初期状態と最終状態が同じなら過渡現象なし | 波形は水平 |
②で0 Vが出た時点で答えが決まります。微分方程式も時定数も不要です。「電位差がなければ電流は流れない」——オームの法則の最も基本的な形が、そのまま決め手になります。
なおもし第2枝が電源に直接並列だったら、話はまったく変わります。その場合は第2枝にも電圧Eがかかり、電流が0から \(E/R\) へ立ち上がって、合計は \(2E/R\) になります。「どこに並列につながっているか」が結論を180度変えるのです。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① スイッチが複数ある問題は、各スイッチ操作の直前の節点電位を先に押さえる
② 定常状態のコイルは短絡——並列につながる枝の電圧を0 Vにしてしまう
③ 電位差0なら電流0。「つながった=流れる」ではない
④ 初期状態=最終状態なら過渡現象は起きない。波形は水平のまま
⑤ 「部品が2倍だから電流も2倍」と数だけで判断しない
💡 覚え方
「短絡したコイルは、その先を0 Vにする」。定常状態のコイルは導線と同じなので、両端が同電位になります。そこに何を並列につないでも電圧が0だから電流も0——スイッチを閉じても無反応です。
⚠️ よくある間違い
最頻出は「2枝あるから最終値は2E/R」とする誤りです。第2枝が電源に直接並列なのか、それとも第1コイルと並列なのかを回路図で必ず確認してください。また「スイッチを閉じたら必ず何か変化する」という思い込みも捨ててください。
まとめ
| S₁ | i:0→E/R |
| S₂ | i:E/Rのまま |
| 最終 | E/R |
| 答え | (3) |
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