過渡現象19【電験3種 理論】2電源切り換え後のコンデンサ放電電流の波形を求める!平成23年度 A問題10 完全解説

電験3種 理論科目 電気回路(過渡現象) 平成23年度 A問題10 電源を切り換えるとどうなる?放電電流の波形は?

今回は平成23年度 理論科目 A問題10を解説します。2E電源でCを充電後、t=0でE電源側へ切り換えたときのコンデンサから流れ出る電流iの波形を選ぶ問題です。

切り換え直後、コンデンサは2Eに充電されています。E側の回路でキルヒホッフより初期電流i(0)=(2E−E)/R=E/R。定常でコンデンサ開放となり電流は0へ指数関数的に減衰します。

目次

平成23年度 理論科目 A問題10:問題文と選択肢

2電源の切り換え問題は、切り換え直前のコンデンサ電圧さえ確定できれば道が開けます。そして「放電=0 Vまで下がる」とは限らないことにも注意が必要です。まずは問題文を確認しましょう。

電験3種 理論科目 過渡現象 平成23年度 A問題10 問題文
平成23年度 理論科目 A問題10 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題10

電験3種 理論科目 【電気回路(過渡現象)】 平成23年度 A問題10

 図のように、2種類の直流電源、R〔Ω〕の抵抗、静電容量C〔F〕のコンデンサ及びスイッチSからなる回路がある。この回路において、スイッチSを①側に閉じて回路が定常状態に達した後に、時刻t=0〔s〕でスイッチSを①側から②側に切り換えた。②側への切り換え以降の、コンデンサから流れ出る電流i〔A〕の時間変化を示す図として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

上の図(1)〜(5)から、コンデンサから流れ出る電流iの波形として最も適切なものを一つ選べ。

図 2E・E電源・R・C・スイッチSの回路(問題図)
図 2E・E電源・R・C・スイッチSの回路(問題図)

出題のポイント:切り換え直前のコンデンサ電圧が全てを決める

2つの電源を切り換える問題です。難しく見えますが、手順は3ステップに固定されています。

手順やること本問での答え
切り換え直前のコンデンサ電圧を求める\(v_C(0^-)=2E\)
その電圧は急変できないので、切り換え直後にそのまま持ち込む\(v_C(0^+)=2E\)
切り換え後の回路で初期値と最終値を出す\(i(0)=E/R\)、\(i(\infty)=0\)

①で「2E」と確定できるかどうかが最初の関門です。①側で十分時間が経つと、定常状態のコンデンサは開放になります。電流が流れない → 抵抗Rでの電圧降下が0 V → だからコンデンサには電源電圧2Eがそのままかかっています。

スイッチ①側の定常回路を正確に描き、コンデンサが2Eボルトに充電される理由を開放回路、電流0、抵抗電圧降下0の順に説明
切換え直前のコンデンサ電圧は2E [V]で、この初期条件が切換え後の電流を決めます。

見落としやすい事実:コンデンサは0 Vまで放電しない

「放電」と聞くと、電圧が0 Vまで下がる様子を思い浮かべがちです。しかし本問では違います

コンデンサ電圧 \(v_C\)電流 iRにかかる電圧
t=0(切換え直後)2EE/R\(2E-E=E\)
t=τ\(E+E/e\approx1.37E\)0.368 E/R0.368 E
t=∞(新しい定常)E(0 Vではない)00

コンデンサは②側の電源電圧Eに落ち着きます。2EからEへ——差の分だけ放電して止まるのです。「放電=0 Vになる」と決めつけると、初期電流も最終値も間違えます。

正確に言えば、電流を流す原動力は「コンデンサ電圧と電源電圧の差」です。差がEのときに電流がE/R、差が0になったら電流も0。この差が指数関数で消えていく——それがこの問題の全体像です。

$$v_C(t)=E+(2E-E)e^{-t/RC}=E+E\,e^{-t/RC}$$
❶ 電圧の式
最終値E+減っていく差分E
$$i(t)=\frac{v_C-E}{R}=\frac{E}{R}e^{-t/RC}$$
❷ 電流の式
差分だけが電流を作る

問題の解説:初期値・最終値・向きの3点で波形を決める

使う公式:切り換え問題の初期条件
$$v_C(0^+)=v_C(0^-)\;(\text{急変しない}),\qquad i(0^+)=\frac{v_C(0^+)-E_{\text{新}}}{R},\qquad \tau=RC$$

電流のほうは急変してかまいません。急変できないのはコンデンサの電圧です。

STEP1 切り換え直前の電圧を確定する

$$i(0^-)=0\;\Rightarrow\;v_R=0$$
❶ ①側の定常状態
Cが開放なので電流0、Rでの降下も0
$$v_C(0^-)=2E\;[\mathrm{V}]$$
❷ 電源電圧がそのままかかる
ここが全ての出発点

STEP2 切り換え直後の電流を求める

t=0で②側へ切り換えても、コンデンサ電圧は2Eのままです。②側の電源はEなので、差の分がすべて抵抗にかかります。

$$v_R(0^+)=v_C(0^+)-E=2E-E=E\;[\mathrm{V}]$$
❸ KVL
2EでもE/2でもなくE
$$i(0^+)=\frac{E}{R}\;[\mathrm{A}]$$
❹ オームの法則
問題の矢印の向き(正)に流れる

STEP3 最終値と減衰の様子

$$i(\infty)=0\;[\mathrm{A}]$$
❺ 新しい定常状態
Cが開放になり電流が止まる
$$i(t)=\frac{E}{R}e^{-t/RC}$$
❻ 波形
常に正のまま0へ指数減衰
$$i(\tau)=0.368\times\frac{E}{R}$$
❼ 1時定数後
初期値の36.8 %
スイッチ②側へ切り換えた直後の回路とコンデンサ電圧の連続性を示し、2EとEの電位差から初期電流E毎Rを導出
切換え直後はコンデンサ電圧が2E [V]のままなので、抵抗Rには差E [V]がかかり、i(0+)=E/Rです。
答え初期値 \(E/R\)、正の向きのまま0へ指数減衰、時定数 \(RC\) → 選択肢(3)
抵抗電流とコンデンサ電流を等置し、最終値Eからの偏差を用いて電圧と電流の指数減衰式を段階的に導出
最終値E [V]からの余分な電圧だけが時定数RCで減衰し、電流はE/Rから0へ指数関数的に減少します。
電流がE毎Rから正のまま0へ指数減衰するグラフと、時定数RC、各時刻の値、電圧とエネルギーの物理的意味を説明
電流は常に正で、t=0のE/Rから0へ指数関数的に近づきます。RC後には初期値の約36.8%です。
公式の五つの波形選択肢を初期値、符号、最終値、曲線形状で比較し、選択肢3だけがE毎Rから0への正の指数減衰に一致すると判定
初期値E/R、正方向、0への指数減衰をすべて満たす公式正答は選択肢(3)です。

誤答の波形はどんな勘違いから生まれるか

選択肢は電流波形の図です。どこを間違えるとどんな図になるかを整理しました。初期値については実際に計算して確認しています。

描かれている波形何を間違えたかその値
初期値 2E/R から減衰切換え先の電源Eを引き忘れた(コンデンサ電圧だけ見た)2E/R
初期値 E/(2R) から減衰電圧差ではなく抵抗を2倍と勘違いE/(2R)
0から増える波形充電と放電を取り違えた(RL回路の形)
負の向きの電流電流の向きを逆に取った
0まで一気に落ちる「切り換えたら電流0」と考えた

最も多いのは初期値を2E/Rとする誤りです。「コンデンサは2Eに充電されている」までは正しいのですが、②側にも電源Eがあることを忘れて、コンデンサ電圧をそのまま抵抗にかけてしまいます。

電流を作るのは「差」——この一点さえ意識すれば防げます。もし②側が短絡(0 V)だったなら初期電流は確かに2E/Rですが、本問はE Vの電源につながっています。

「0から増える」波形も要注意です。RC回路の充電では電流は最大値から減るのが基本形。0から増えるのはRL回路の電流(またはRC回路のコンデンサ電圧)です。何のグラフかを必ず確認してください。

エネルギーで検算する:熱になるのは3分の1だけ

波形が正しいことは、エネルギーの収支からも確かめられます。E=10 V、R=100 Ω、C=100 μFとして計算しました。

$$W_C(0)=\tfrac12C(2E)^2=2CE^2,\qquad W_C(\infty)=\tfrac12CE^2$$
❽ コンデンサの蓄積
\(2E\to E\) で \(\tfrac32CE^2\) 放出
$$W_R=\int_0^{\infty}\!\!\left(\tfrac{E}{R}\right)^2\!\!Re^{-2t/RC}dt=\tfrac12CE^2$$
❾ 抵抗での発熱
放出分の3分の1
$$W_{\text{電源}}=\Delta Q\cdot E=C(2E-E)\cdot E=CE^2$$
❿ ②電源へ戻る分
放出分の3分の2

合計すると \(\tfrac12CE^2+CE^2=\tfrac32CE^2\) ——コンデンサが放出した分とぴったり一致します ✓(数値では 0.005 J+0.010 J=0.015 J)

興味深いのは放出エネルギーの2/3が電源へ回収されることです。抵抗を通した単純な放電(令和元年度A問題10)では100 %が熱になりましたが、行き先に電源があると、その電源を充電する形でエネルギーが戻ります

これは回生ブレーキと同じ考え方です。電車がブレーキをかけるとき、運動エネルギーを熱として捨てる代わりに発電機として使い、架線へ電力を戻す。「捨てるか、戻すか」は行き先に電源があるかどうかで決まります

本番で使える時間短縮テクニック

⏱️ 本番での進め方
① 切り換え問題は「直前の電圧」を最初に確定する。ここが出発点
② 定常状態でCは開放 → 抵抗の電圧降下は0 → コンデンサ電圧=電源電圧
③ 初期電流は(コンデンサ電圧)−(新しい電源電圧)を R で割る。差がすべて
④ 最終値は新しい電源電圧。0 Vとは限らない
⑤ 波形は初期値・最終値・向きの3点で決まる。指数関数の計算は不要

💡 覚え方
「電圧は引き継ぎ、電流は差で決まる」。コンデンサ電圧は切り換えをまたいでそのまま持ち越し、電流はその電圧と新しい電源のから生まれます。2E − E = E ——引き算を一つ入れるだけです。

⚠️ よくある間違い
最頻出は初期電流を 2E/R とする誤りです。②側の電源E分を引き忘れています。次に「最終的に0 Vまで放電する」という思い込み。落ち着く先は②側の電源電圧Eです。また電流が0から増える波形を選ぶのも定番のミスで、これはRL回路の形です。

まとめ

vC(0)2E
i(0)(2E−E)/R=E/R
最終0
答え(3)

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