今回は平成21年度 理論科目 A問題2を解説します。静電界に関する記述(1)〜(5)のうち、正しいものを1つ選ぶ論述問題です。クーロン力・点電荷の電界・電気力線・等電位面の基本を確認します。
正しいのは(3)「電気力線上の接線の方向は、その点の電界の方向に一致する」です。クーロン力と点電荷の電界はどちらも距離の2乗に反比例します。(4)で0なのは等電位面に沿う力の成分であり、力全体ではありません。(5)では、誘電体を入れても電界が誘電率に比例して増大することはありません。
平成21年度 理論科目 A問題2:問題文と選択肢
誤答は基本公式の1語だけを入れ替えて作られています。「和か積か」「1乗か2乗か」——公式を正確に書ければ即座に判定できます。まずは問題文を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題2
電験3種 理論科目 【電磁気(静電界)】 平成21年度 A問題2
静電界に関する記述として、正しいのは次のうちどれか。
(1) 二つの小さな帯電体の間に働く力の大きさは、それぞれの帯電体の電気量の和に比例し、その距離の2乗に反比例する。
(2) 点電荷が作る電界は点電荷の電気量に比例し、距離に反比例する。
(3) 電気力線上の任意の点での接線の方向は、その点の電界の方向に一致する。
(4) 等電位面上の正電荷には、その面に沿った方向に正のクーロン力が働く。
(5) コンデンサの電極板間にすき間なく誘電体を入れると、静電容量と電極板間の電界は、誘電体の誘電率に比例して増大する。
出題のポイント:誤答は「1語だけ」を入れ替えて作られている
静電界の記述から正しいものを1つ選ぶ問題です。誤答の作り方にははっきりしたパターンがあります。
| 記述 | 変えられている語 | 正しくは | 判定 |
| (1) | 電気量の和に比例 | 電気量の積 \(|q_1q_2|\) に比例 | × |
| (2) | 距離に反比例(1乗) | 距離の2乗に反比例 | × |
| (3) | — | 電気力線の定義そのもの | ○ |
| (4) | 面に沿った方向に力が働く | 面に沿う成分は0 | × |
| (5) | 静電容量と電界がεに比例 | Cは比例するがEは比例しない | × |
(1)と(2)は基本公式の1語を変えただけです。式を正確に書ければ即座に判定できます。

2つの基本公式を正確に書く
記述(1)の「和」は明確な誤りです。もし和に比例するなら、片方の電荷が0でも力が働くことになってしまいます(\(q_1+0=q_1\ne0\))。積なら片方が0で力も0——物理的に正しい振る舞いです。
記述(2)の「距離に反比例」も誤りです。距離に反比例するのは電位(\(V=kQ/r\))——電界と電位を取り違えています。
| 量 | 距離への依存 | 式 |
| クーロン力 F | \(1/r^2\) | \(k|q_1q_2|/r^2\) |
| 電界 E | \(1/r^2\) | \(k|Q|/r^2\) |
| 電位 V | \(1/r\) | \(kQ/r\) |
「力と電界は2乗、電位は1乗」——この3つをセットで覚えておくと、(2)のような入れ替えに惑わされません。
記述(4):等電位面に沿う力はなぜ0なのか
(4)は「等電位面上の正電荷には、面に沿った方向にクーロン力が働く」という記述です。0であるべき——理由を確認します。
電位が変わる方向を向く
面に沿った力は働かない
もし面に沿う力があったら、電荷は仕事をされずに動いてしまいます。等電位面上を移動しても電位は変わらない=仕事は0——だから沿う方向の力は存在しません。
力が働くのは面に垂直な方向だけです。これが「電気力線は等電位面に直交する」という性質の別の言い方になります。
記述(5):CとEをひとまとめにしてはいけない
(5)は「静電容量と電界が、誘電率に比例して増大する」という記述です。Cは正しいがEは誤り——2つを混ぜたところに罠があります。
| 量 | 誘電率を大きくすると | 条件 |
| 静電容量 C | εに比例して増える | 条件によらず常に |
| 電界 E(電圧一定) | 変わらない(\(E=V/d\)) | 電源につないだまま |
| 電界 E(電荷一定) | εに反比例して減る(\(E=Q/(\varepsilon S)\)) | 電源を外した後 |
どちらの条件でも「εに比例して増大」にはなりません。電圧一定なら不変、電荷一定なら減少——増えることはないのです。
静電容量が増える理由は、同じ電圧でより多くの電荷を蓄えられるようになるからです。誘電体が分極することで極板の電荷を部分的に打ち消し、電源がさらに電荷を送り込めます。電界を強くしているのではなく、電荷を増やしている——ここを区別してください。


正しい記述(3)は「定義」なので必ず正しい
(3)は電気力線の定義そのものです。「各点で電界ベクトルに接するように描いた曲線」——それが電気力線なので、接線の方向が電界の方向に一致するのは当たり前です。
定義を述べた記述は誤りになりようがありません。論述問題では「定義そのものを述べている選択肢」を探すのが有効な戦略になります。
| 電気力線の性質 | 根拠の種類 |
| 接線の方向=電界の方向 | 定義(そう描くと決めた) |
| 密度=電界の強さ | 定義(そう決めた) |
| 本数 = \(Q/\varepsilon\) | ガウスの法則から |
| 交差・分岐しない | 電界の一意性から(背理法) |
| 等電位面と直交する | \(\vec{E}=-\mathrm{grad}\,V\) から |
「定義」か「導かれる性質」かを区別しておくと、記述の正誤判定が速くなります。定義は疑う余地がなく、導かれる性質は理由を説明できる——どちらも正しい記述として出題されます。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① 公式を余白に書いてから読み始める(\(F=k|q_1q_2|/r^2\)、\(E=kQ/r^2\)、\(V=kQ/r\))
② 「和」か「積」か、「1乗」か「2乗」か——1語の入れ替えを探す
③ 力と電界は2乗、電位は1乗——セットで覚える
④ 等電位面に沿う力は0(電界は面に垂直)
⑤ 「CとEが両方εに比例」は誤り——Cだけが比例する
💡 覚え方
「力は積、距離は2乗」。クーロンの法則は2つの電荷の積に比例します。片方が0なら力も0——「和」ではこの当たり前が成り立ちません。
⚠️ よくある間違い
電界と電位の距離依存を取り違えるのが(2)の狙いです。電界は \(1/r^2\)、電位は \(1/r\)。また(5)のようにCとEをまとめて「εに比例」とするのも典型で、比例するのはCだけです。
まとめ
| (1) | F∝|q1q2|/r2であり、和ではない → 誤り |
| (2) | E∝|Q|/r2であり、距離の1乗ではない → 誤り |
| (3) | 電気力線の接線方向=電界の方向 → 正しい |
| (4) | 等電位面に沿う力成分は0 → 誤り |
| (5) | Cはεに比例するが、Eはεに比例して増大しない → 誤り |
| 答え | (3) |
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