静電界52【電験3種 理論】静電界の記述で誤りはどれ?電束の数は誘電率に依存しない!平成23年 A問題1 完全解説

電験3種 理論科目 電磁気(静電界) 平成23年度 A問題1 電束の数は誘電率に無関係!静電界の誤りは?

今回は平成23年度 理論科目 A問題1を解説します。静電界に関する記述(1)〜(5)のうち、誤っているものを1つ選ぶ論述問題です。導体・電気力線・電束の基本性質を確認します。

ポイントは、電験でいう電束の数はDの閉曲面フラックスであり、Qに等しく誘電率εに無関係という点です。均一な誘電体ではD=εEなので、Eのフラックス、すなわち電気力線の総数はQ/εとなります。両方がεに依存するとした記述(3)が誤りです。

目次

平成23年度 理論科目 A問題1:問題文と選択肢

争点は「電束の数」と「電気力線の数」の区別です。電束はQ本で誘電率に無関係、電気力線は \(Q/\varepsilon\) 本で依存します。まずは問題文を確認しましょう。

電験3種 理論科目 静電界 平成23年度 A問題1 問題文
平成23年度 理論科目 A問題1 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題1

電験3種 理論科目 【電磁気(静電界)】 平成23年度 A問題1

 静電界に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 電気力線は、導体表面に垂直に出入りする。
(2) 帯電していない中空の球導体Bが接地されていないとき、帯電した導体Aを導体Bで包んだとしても、導体Bの外部に電界ができる。
(3) Q〔C〕の電荷から出る電束の数や電気力線の数は、電荷を取り巻く物質の誘電率ε〔F/m〕によって異なる。
(4) 導体が帯電するとき、電荷は導体の表面にだけ分布する。
(5) 導体内部は等電位であり、電界は零である。

出題のポイント:「電束の数」と「電気力線の数」は別物

5つの記述から誤りを1つ選ぶ問題です。争点は記述(3)——電束と電気力線を同じものとして扱っている点が誤りです。

電気力線電束線(電束)
対応する量電界 E電束密度 D
閉曲面を貫く総数\(\Phi_E=Q/\varepsilon\)\(\Phi_D=Q\)
誘電率への依存依存する(εが大きいと減る)依存しない
ガウスの法則\(\oint\vec{E}\cdot d\vec{S}=Q/\varepsilon\)\(\oint\vec{D}\cdot d\vec{S}=Q\)

ガウスの法則には2つの形があります。どちらを使うかで、誘電率が現れたり消えたりします。

$$\oint\vec{D}\cdot d\vec{S}=Q$$
❶ 電束密度の形
右辺に \(\varepsilon\) がない
$$\oint\vec{E}\cdot d\vec{S}=\frac{Q}{\varepsilon}$$
❷ 電界の形
右辺に \(\varepsilon\) がある

電束の総数はQそのもの——誘電率がいくつであろうと変わりません。一方電気力線の総数は \(Q/\varepsilon\)——誘電体を入れると減ります。

記述(3)は「電束の数も電気力線の数も、εによって異なる」と述べています。電気力線については正しいが、電束については誤り——「両方」としたところが誤りです

異なる誘電率の媒質中で点電荷Qから出るDの全電束とEのフラックスを比較する図
ΦD=Qはεに無関係ですが、均一媒質ではΦE=Q/εとなりεに依存します。

なぜ電束は誘電率に依存しないのか

電束密度Dは「自由電荷だけ」を見る量だからです。

誘電体を入れると分極電荷が現れ、電界を弱めます。電界Eはこの分極電荷の影響を受けるので、誘電率が大きいほど弱くなります。

一方電束密度Dは分極電荷を勘定に入れません。極板に置いた自由電荷Qだけで決まる——だから誘電体を入れても変わらないのです。

電界 E電束密度 D
見る電荷自由電荷+分極電荷自由電荷だけ
誘電体を入れると分極で弱まる変わらない
関係式\(E=D/\varepsilon\)\(D=\varepsilon E\)

この区別が静電界の論述問題では繰り返し問われます。「εを含むのはE側、含まないのはD側」——迷ったらガウスの法則の2つの形を思い出してください

問題の解説:残る4つの記述も確認する

記述内容判定根拠
(1)電気力線は導体表面に垂直に出入りする正しい静電平衡では表面の接線方向電界が0
(2)非接地の中空導体Bで包んでも外部に電界ができる正しいBの外面に \(+Q\) が誘導される
(3)電束の数も電気力線の数もεによって異なる★誤り\(\Phi_D=Q\) はεに無関係
(4)導体が帯電すると電荷は表面にだけ分布正しい空洞がある場合は内面・外面とも「表面」
(5)導体内部は等電位で電界は零正しい導体材料内部の話
帯電体を包む非接地中空導体の内面電荷と外面電荷および導体内外の電界を示す断面図
中空導体Bには内面−Q、外面+Qが誘導され、金属内部はE=0でも外部電界は残ります。
答え誤っているのは選択肢(3)(電束の数は電荷Qに等しく、誘電率に無関係)
静電界に関する五つの記述を正誤判定し記述3を誤りと示す一覧図
(1)(2)(4)(5)は正しく、電束と電気力線の両方がεに依存するとした(3)が誤りです。

記述(2):包むだけでは遮へいにならない

(2)は「静電遮へいには接地が必要」という重要な事実を述べています。丁寧に確認しておきます。

段階何が起きるか
中空導体Bの中に、電荷 \(+Q\) の導体Aを入れる
Bの内面に \(-Q\) が静電誘導で現れる
Bは全体として中性なので、外面に \(+Q\) が現れる
外面の \(+Q\) が外部に電界をつくる

「金属で囲めば電界を遮れる」わけではありません。囲んだだけでは、外面に電荷が現れて外部に電界が漏れます。

接地すると外面の \(+Q\) が大地へ逃げます。すると外部に電界をつくる電荷がなくなり、初めて遮へいが成立します。

逆向きの遮へい(外部の電界から内部を守る)は接地なしでも成立します。外部の電界で導体表面に電荷が誘導され、内部の電界を打ち消すからです。「内→外」の遮へいには接地が要り、「外→内」には要らない——この非対称性が(2)の背景にあります。

記述(5):「導体内部」が指す範囲

(5)は正しい記述ですが、読み方に注意が必要です。

「導体内部は電界0」というのは、導体という材料の中の話です。中空導体の空洞部分は「導体内部」ではありません

場所電界理由
導体の材料の中必ず0静電平衡(自由電子が動いて打ち消す)
空洞の中(電荷なし)0囲まれているので外部の影響を受けない
空洞の中(帯電体あり)0ではない中の電荷がつくる電界が存在する

記述(2)の状況(中にAがある)では、空洞内に電界があります。それでも(5)は正しい——(5)が言っているのは導体材料の中だけだからです。

本番で使える時間短縮テクニック

⏱️ 本番での進め方
ガウスの法則を2つの形で書く:\(\oint D\cdot dS=Q\) と \(\oint E\cdot dS=Q/\varepsilon\)
電束はεに無関係、電気力線はεに依存——記述に「両方」とあれば疑う
静電遮へい(内→外)には接地が必要。包むだけでは漏れる
「導体内部」は材料の中。空洞は含まない
⑤ 「電束線」と「電気力線」を同じものとして扱う記述は誤りの定番

💡 覚え方
「Dは自由電荷だけ、Eは分極も見る」。電束(D由来)は誘電体を無視するのでQ本のまま。電気力線(E由来)は分極で弱まるので\(Q/\varepsilon\) 本に減ります

⚠️ よくある間違い
電束線と電気力線を同じものとして扱うのが本問の狙いです。εを含むのは電気力線だけ。また「金属で包めば遮へい完了」と考えるのも誤りで、内→外の遮へいには接地が必要です。

まとめ

(1)静電平衡では電気力線は導体表面に垂直 → 正しい
(2)非接地中空導体の外面に+Qが誘導され外部電界が残る → 正しい
(3)「電束も電気力線もεに依存する」は誤り。正しくはΦD=Qはεに無関係、ΦE=Q/εはεに依存
(4)静電平衡時の余剰電荷は導体表面に分布 → 正しい
(5)導体材料内部は等電位でE=0 → 正しい
答え(3)

▼あわせて解きたい関連問題
・静電界・導体の関連問題:【理論】令和5年度上期A問題2

📚 次に解くべき関連問題
【理論】平成19年度A問題3(静電界64)
【理論】平成28年度A問題1(静電界38)
【理論】平成24年度B問題15(静電界51)
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次