今回は平成23年度 理論科目 A問題1を解説します。静電界に関する記述(1)〜(5)のうち、誤っているものを1つ選ぶ論述問題です。導体・電気力線・電束の基本性質を確認します。
ポイントは、電験でいう電束の数はDの閉曲面フラックスであり、Qに等しく誘電率εに無関係という点です。均一な誘電体ではD=εEなので、Eのフラックス、すなわち電気力線の総数はQ/εとなります。両方がεに依存するとした記述(3)が誤りです。
平成23年度 理論科目 A問題1:問題文と選択肢
争点は「電束の数」と「電気力線の数」の区別です。電束はQ本で誘電率に無関係、電気力線は \(Q/\varepsilon\) 本で依存します。まずは問題文を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題1
電験3種 理論科目 【電磁気(静電界)】 平成23年度 A問題1
静電界に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 電気力線は、導体表面に垂直に出入りする。
(2) 帯電していない中空の球導体Bが接地されていないとき、帯電した導体Aを導体Bで包んだとしても、導体Bの外部に電界ができる。
(3) Q〔C〕の電荷から出る電束の数や電気力線の数は、電荷を取り巻く物質の誘電率ε〔F/m〕によって異なる。
(4) 導体が帯電するとき、電荷は導体の表面にだけ分布する。
(5) 導体内部は等電位であり、電界は零である。
出題のポイント:「電束の数」と「電気力線の数」は別物
5つの記述から誤りを1つ選ぶ問題です。争点は記述(3)——電束と電気力線を同じものとして扱っている点が誤りです。
| 電気力線 | 電束線(電束) | |
| 対応する量 | 電界 E | 電束密度 D |
| 閉曲面を貫く総数 | \(\Phi_E=Q/\varepsilon\) | \(\Phi_D=Q\) |
| 誘電率への依存 | 依存する(εが大きいと減る) | 依存しない |
| ガウスの法則 | \(\oint\vec{E}\cdot d\vec{S}=Q/\varepsilon\) | \(\oint\vec{D}\cdot d\vec{S}=Q\) |
ガウスの法則には2つの形があります。どちらを使うかで、誘電率が現れたり消えたりします。
右辺に \(\varepsilon\) がない
右辺に \(\varepsilon\) がある
電束の総数はQそのもの——誘電率がいくつであろうと変わりません。一方電気力線の総数は \(Q/\varepsilon\)——誘電体を入れると減ります。
記述(3)は「電束の数も電気力線の数も、εによって異なる」と述べています。電気力線については正しいが、電束については誤り——「両方」としたところが誤りです。

なぜ電束は誘電率に依存しないのか
電束密度Dは「自由電荷だけ」を見る量だからです。
誘電体を入れると分極電荷が現れ、電界を弱めます。電界Eはこの分極電荷の影響を受けるので、誘電率が大きいほど弱くなります。
一方電束密度Dは分極電荷を勘定に入れません。極板に置いた自由電荷Qだけで決まる——だから誘電体を入れても変わらないのです。
| 電界 E | 電束密度 D | |
| 見る電荷 | 自由電荷+分極電荷 | 自由電荷だけ |
| 誘電体を入れると | 分極で弱まる | 変わらない |
| 関係式 | \(E=D/\varepsilon\) | \(D=\varepsilon E\) |
この区別が静電界の論述問題では繰り返し問われます。「εを含むのはE側、含まないのはD側」——迷ったらガウスの法則の2つの形を思い出してください。
問題の解説:残る4つの記述も確認する
| 記述 | 内容 | 判定 | 根拠 |
| (1) | 電気力線は導体表面に垂直に出入りする | 正しい | 静電平衡では表面の接線方向電界が0 |
| (2) | 非接地の中空導体Bで包んでも外部に電界ができる | 正しい | Bの外面に \(+Q\) が誘導される |
| (3) | 電束の数も電気力線の数もεによって異なる | ★誤り | \(\Phi_D=Q\) はεに無関係 |
| (4) | 導体が帯電すると電荷は表面にだけ分布 | 正しい | 空洞がある場合は内面・外面とも「表面」 |
| (5) | 導体内部は等電位で電界は零 | 正しい | 導体材料内部の話 |


記述(2):包むだけでは遮へいにならない
(2)は「静電遮へいには接地が必要」という重要な事実を述べています。丁寧に確認しておきます。
| 段階 | 何が起きるか |
| ① | 中空導体Bの中に、電荷 \(+Q\) の導体Aを入れる |
| ② | Bの内面に \(-Q\) が静電誘導で現れる |
| ③ | Bは全体として中性なので、外面に \(+Q\) が現れる |
| ④ | 外面の \(+Q\) が外部に電界をつくる |
「金属で囲めば電界を遮れる」わけではありません。囲んだだけでは、外面に電荷が現れて外部に電界が漏れます。
接地すると外面の \(+Q\) が大地へ逃げます。すると外部に電界をつくる電荷がなくなり、初めて遮へいが成立します。
逆向きの遮へい(外部の電界から内部を守る)は接地なしでも成立します。外部の電界で導体表面に電荷が誘導され、内部の電界を打ち消すからです。「内→外」の遮へいには接地が要り、「外→内」には要らない——この非対称性が(2)の背景にあります。
記述(5):「導体内部」が指す範囲
(5)は正しい記述ですが、読み方に注意が必要です。
「導体内部は電界0」というのは、導体という材料の中の話です。中空導体の空洞部分は「導体内部」ではありません。
| 場所 | 電界 | 理由 |
| 導体の材料の中 | 必ず0 | 静電平衡(自由電子が動いて打ち消す) |
| 空洞の中(電荷なし) | 0 | 囲まれているので外部の影響を受けない |
| 空洞の中(帯電体あり) | 0ではない | 中の電荷がつくる電界が存在する |
記述(2)の状況(中にAがある)では、空洞内に電界があります。それでも(5)は正しい——(5)が言っているのは導体材料の中だけだからです。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① ガウスの法則を2つの形で書く:\(\oint D\cdot dS=Q\) と \(\oint E\cdot dS=Q/\varepsilon\)
② 電束はεに無関係、電気力線はεに依存——記述に「両方」とあれば疑う
③ 静電遮へい(内→外)には接地が必要。包むだけでは漏れる
④ 「導体内部」は材料の中。空洞は含まない
⑤ 「電束線」と「電気力線」を同じものとして扱う記述は誤りの定番
💡 覚え方
「Dは自由電荷だけ、Eは分極も見る」。電束(D由来)は誘電体を無視するのでQ本のまま。電気力線(E由来)は分極で弱まるので\(Q/\varepsilon\) 本に減ります。
⚠️ よくある間違い
電束線と電気力線を同じものとして扱うのが本問の狙いです。εを含むのは電気力線だけ。また「金属で包めば遮へい完了」と考えるのも誤りで、内→外の遮へいには接地が必要です。
まとめ
| (1) | 静電平衡では電気力線は導体表面に垂直 → 正しい |
| (2) | 非接地中空導体の外面に+Qが誘導され外部電界が残る → 正しい |
| (3) | 「電束も電気力線もεに依存する」は誤り。正しくはΦD=Qはεに無関係、ΦE=Q/εはεに依存 |
| (4) | 静電平衡時の余剰電荷は導体表面に分布 → 正しい |
| (5) | 導体材料内部は等電位でE=0 → 正しい |
| 答え | (3) |
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