今回は平成20年度 理論科目 A問題1を解説します。一辺2aの正三角形の各頂点A・B・Cに正電荷Qを置いたとき、辺BCの中点Dから距離xの点P(垂線AD上、DとGの間)における合成電界の大きさを表す式を求める問題です。
点Pでは、頂点Aの正電荷による電界は下向き、頂点B・Cの正電荷による電界の鉛直成分は上向きです。B・Cの水平成分は対称性により相殺します。PはDと重心Gの間にあるため、合成電界の大きさはAによる下向き電界からB・Cによる上向き成分を引いて求めます。
平成20年度 理論科目 A問題1:問題文と選択肢
まずは、平成20年度に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題1
電験3種 理論科目 【電磁気(静電界)】 平成20年度 A問題1
真空中において、図のように一辺が2a〔m〕の正三角形の各頂点A、B、Cに正の点電荷Q〔C〕が配置されている。点Aから辺BCの中点Dに下ろした垂線上の点Gを正三角形の重心とする。点Dからx〔m〕離れた点Pの電界〔V/m〕の大きさを表す式として、正しいのは次のうちどれか。ただし、点Pは点Dと点G間の垂線上にあるものとし、真空の誘電率をε0〔F/m〕とする。
点Dからx〔m〕離れた点Pの電界〔V/m〕の大きさを表す式として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) (Q/4πε0)〔1/(√3a−x) + 2/√(a²+x²)〕
(2) (Q/4πε0)〔1/(√3a−x)² + 2/(a²+x²)〕
(3) (Q/4πε0)〔1/(√3a−x)² − 2/(a²+x²)〕
(4) (Q/4πε0)〔1/(√3a−x)² + 2x/(a²+x²)3/2〕
(5) (Q/4πε0)〔1/(√3a−x)² − 2x/(a²+x²)3/2〕

出題のポイント:ベクトルを「縦」と「横」に分けて、横は捨てる
3つの電荷がつくる電界を足す問題です。電界はベクトルなので、単純に大きさを足してはいけません。ただしB と C は左右対称なので、横向き成分はきれいに打ち消し合います。残るのは縦向き成分だけです。

図形の整理:一辺 \(2a\) の正三角形の各点
Dを原点、ADを縦軸にとると、すべての距離が簡単に書けます。
| 点 | 位置 | Pからの距離 |
| D(BCの中点) | 原点 | — |
| B・C | Dから左右に \(a\) | \(\sqrt{a^2+x^2}\) |
| A(頂点) | Dの真上 \(\sqrt3\,a\) | \(\sqrt3\,a-x\) |
| G(重心) | Dの真上 \(\dfrac{\sqrt3\,a}{3}\) | — |
| P | Dの真上 \(x\)(DとGの間) | — |
正三角形の高さは一辺の \(\dfrac{\sqrt3}{2}\) 倍なので、一辺 \(2a\) なら高さは \(2a\times\dfrac{\sqrt3}{2}=\sqrt3\,a\) です。ここを \(\sqrt3\,a/2\) と間違えると全部ずれます。
解説:Aは下向き、B・Cは上向き
すべて正電荷なので、正の試験電荷は各電荷から遠ざかる向きに押されます。
| 電荷 | Pから見た位置 | 電界の向き | 縦成分の大きさ |
| A | 真上 | 下向き | \(\dfrac{Q}{4\pi\varepsilon_0(\sqrt3a-x)^2}\) |
| B | 左下 | 右上向き | \(\dfrac{Qx}{4\pi\varepsilon_0(a^2+x^2)^{3/2}}\)(上向き) |
| C | 右下 | 左上向き | \(\dfrac{Qx}{4\pi\varepsilon_0(a^2+x^2)^{3/2}}\)(上向き) |
B の右向き成分と C の左向き成分が相殺し、上向き成分だけが2つ分残ります。したがって合成電界は「Aによる下向き」から「B・Cによる上向き」を引いたものです。
距離は \(\sqrt3a-x\)
\(\cos\theta=x/r\) を掛けて縦成分にする
向きが逆なので引く


選択肢を「形」で振るい落とす
この問題は計算しなくても、式の形だけで4つ消せます。
| 選択肢 | 式の特徴 | 判定 |
| (1) | 分母が距離の1乗 | × それは電位の式。電界は2乗 |
| (2) | 第2項が \(2/(a^2+x^2)\) | × \(x/r\) を掛けていない=成分分解していない |
| (3) | 第2項が \(2/(a^2+x^2)\)、符号は− | × 符号は正しいが同じく分解していない |
| (4) | 形は正しいが符号が+ | × B・Cは逆向きなので足してはいけない |
| (5) | \((a^2+x^2)^{3/2}\) かつ符号が− | ◎ 正解 |
❶ 分母が2乗か(電界か電位か)/❷ \(3/2\) 乗になっているか(成分分解したか)/❸ 符号が−か(向きが逆か)——この3つのチェックだけで正解にたどり着けます。
💡 覚え方
斜めの電界を縦成分にすると、分母が \(r^2\) から \(r^3\)(= \(3/2\) 乗)に上がる。これは電験3種で繰り返し出る形です。「\(3/2\) 乗を見たら成分分解済み」と覚えてください。
決定打:重心Gで電界がゼロになることを使う
(4)と(5)は符号だけの違いです。どちらか迷ったら、重心G(\(x=\sqrt3a/3\))を代入してください。
重心は3つの電荷から等距離にあり、120°の対称位置にあります。したがって3つの電界がベクトル的に完全に打ち消し合い、電界はゼロになります。
足し算だと \(3/2a^2\) で0にならない
引き算の(5)だけがGでゼロになります。足し算の(4)では \(\dfrac{3}{2a^2}\) となり、対称性から明らかな「重心で電界ゼロ」を満たしません。これが決定打です。
深掘り:実はDとGの途中で電界の向きが反転する
この式を \(x\) の関数として調べると、興味深い性質が見えてきます。\(a=1\)、\(Q/4\pi\varepsilon_0=1\) として値を並べてみます。
| \(x\) | Aの寄与(下向き) | B・Cの寄与(上向き) | 合成 | 電界の向き |
| 0(点D) | 0.3333 | 0 | +0.3333 | 下向き |
| 0.10 | — | — | +0.1784 | 下向き |
| 0.249 | — | — | 0 | ここで反転 |
| 0.40 | — | — | −0.0767 | 上向き |
| 0.577(重心G) | 0.7500 | 0.7500 | 0 | ゼロ |
DからGへ向かう途中、\(x\approx0.249a\) で電界がいったんゼロになり、そこから先は向きが上向きに変わります。そしてGで再びゼロになります。
これは重心Gが電位の「鞍点」だからです。アーンショーの定理により、電荷のない空間に電位の極大点・極小点は存在できません。GはAD方向に沿っては極小、それと垂直な方向には極大という馬の鞍のような形をしており、その手前に電位の山ができるのです。
試験では選択肢(5)を選べば正解です。この式は「下向きを正とした成分」を表しており、Dの近くでは正の値になります。ただし \(x\) を大きくすると符号が変わる——この事実を知っておくと、静電界の理解が一段深まります。
⏱️ 本番での進め方
❶ 対称性で横成分を消す。B・Cが左右対称なら、横向きは必ず相殺する。計算する必要すらない。
❷ 分母の指数をチェック:電位なら1乗、電界なら2乗、成分分解した電界なら \(3/2\) 乗(=\(r^3\))。
❸ 符号は「向きが同じか逆か」。Aは上にあるので下向き、B・Cは下にあるので上向き。逆向き=引き算。
❹ 迷ったら特別な点を代入:重心Gで0になるか、点D(\(x=0\))で \(Q/(4\pi\varepsilon_0\cdot3a^2)\) になるか。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| 座標と範囲 | A(0,√3a)、B(−a,0)、C(a,0)、P(0,x)、0≦x≦a/√3 |
| Aの電界 | 下向き Q/[4πε0(√3a−x)2] |
| B・Cの鉛直成分 | 上向き 2Qx/[4πε0(a²+x²)3/2] |
| 合成 | E=EA−EBC |
| 検算と答え | DではEBC=0、GではE=0、答え(5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・正三角形と点電荷の関連問題:【理論】平成22年度B問題17

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