静電界61【電験3種 理論】正三角形の頂点に置いた3点電荷が垂線上につくる合成電界!平成20年 A問題1 完全解説

電験3種 理論科目 電磁気(静電界) 平成20年度 A問題1 正三角形の3電荷がつくる電界!合成すると何V/m?

今回は平成20年度 理論科目 A問題1を解説します。一辺2aの正三角形の各頂点A・B・Cに正電荷Qを置いたとき、辺BCの中点Dから距離xの点P(垂線AD上、DとGの間)における合成電界の大きさを表す式を求める問題です。

点Pでは、頂点Aの正電荷による電界は下向き、頂点B・Cの正電荷による電界の鉛直成分は上向きです。B・Cの水平成分は対称性により相殺します。PはDと重心Gの間にあるため、合成電界の大きさはAによる下向き電界からB・Cによる上向き成分を引いて求めます。

目次

平成20年度 理論科目 A問題1:問題文と選択肢

まずは、平成20年度に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

電験3種 理論科目 静電界 平成20年度 A問題1 問題文
平成20年度 理論科目 A問題1 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題1

電験3種 理論科目 【電磁気(静電界)】 平成20年度 A問題1

 真空中において、図のように一辺が2a〔m〕の正三角形の各頂点A、B、Cに正の点電荷Q〔C〕が配置されている。点Aから辺BCの中点Dに下ろした垂線上の点Gを正三角形の重心とする。点Dからx〔m〕離れた点Pの電界〔V/m〕の大きさを表す式として、正しいのは次のうちどれか。ただし、点Pは点Dと点G間の垂線上にあるものとし、真空の誘電率をε0〔F/m〕とする。

点Dからx〔m〕離れた点Pの電界〔V/m〕の大きさを表す式として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) (Q/4πε0)〔1/(√3a−x) + 2/√(a²+x²)〕
(2) (Q/4πε0)〔1/(√3a−x)² + 2/(a²+x²)〕
(3) (Q/4πε0)〔1/(√3a−x)² − 2/(a²+x²)〕
(4) (Q/4πε0)〔1/(√3a−x)² + 2x/(a²+x²)3/2
(5) (Q/4πε0)〔1/(√3a−x)² − 2x/(a²+x²)3/2

図 一辺2aの正三角形の頂点A・B・Cの点電荷Qと、点D・重心G・点P(自作図)
図 一辺2aの正三角形の頂点A・B・Cの点電荷Qと、点D・重心G・点P(自作図)

出題のポイント:ベクトルを「縦」と「横」に分けて、横は捨てる

3つの電荷がつくる電界を足す問題です。電界はベクトルなので、単純に大きさを足してはいけません。ただしB と C は左右対称なので、横向き成分はきれいに打ち消し合います。残るのは縦向き成分だけです。

点電荷の電界と、その成分分解
$$E=\frac{Q}{4\pi\varepsilon_0 r^2}\qquad\text{縦成分}=E\times\frac{x}{r}=\frac{Qx}{4\pi\varepsilon_0 r^3}$$

分母が \(r^3\)(=\((a^2+x^2)^{3/2}\))になるのが成分分解の目印です。\(r^2\) のままなら分解していない証拠。

正三角形ABCの垂線上にある点Pの座標と各頂点の正電荷が作る電界の向きを示す図
Aからの電界は下向き、B・Cからの電界は水平成分が相殺して上向き成分だけが残ります。

図形の整理:一辺 \(2a\) の正三角形の各点

Dを原点、ADを縦軸にとると、すべての距離が簡単に書けます。

位置Pからの距離
D(BCの中点)原点
B・CDから左右に \(a\)\(\sqrt{a^2+x^2}\)
A(頂点)Dの真上 \(\sqrt3\,a\)\(\sqrt3\,a-x\)
G(重心)Dの真上 \(\dfrac{\sqrt3\,a}{3}\)
PDの真上 \(x\)(DとGの間)

正三角形の高さは一辺の \(\dfrac{\sqrt3}{2}\) 倍なので、一辺 \(2a\) なら高さは \(2a\times\dfrac{\sqrt3}{2}=\sqrt3\,a\) です。ここを \(\sqrt3\,a/2\) と間違えると全部ずれます。

解説:Aは下向き、B・Cは上向き

すべて正電荷なので、正の試験電荷は各電荷から遠ざかる向きに押されます。

電荷Pから見た位置電界の向き縦成分の大きさ
A真上下向き\(\dfrac{Q}{4\pi\varepsilon_0(\sqrt3a-x)^2}\)
B左下右上向き\(\dfrac{Qx}{4\pi\varepsilon_0(a^2+x^2)^{3/2}}\)(上向き)
C右下左上向き\(\dfrac{Qx}{4\pi\varepsilon_0(a^2+x^2)^{3/2}}\)(上向き)

B の右向き成分と C の左向き成分が相殺し、上向き成分だけが2つ分残ります。したがって合成電界は「Aによる下向き」から「B・Cによる上向き」を引いたものです。

$$E_A=\frac{Q}{4\pi\varepsilon_0(\sqrt3a-x)^2}\quad(\text{下向き})$$
❶ Aの寄与
距離は \(\sqrt3a-x\)
$$E_{BC}=2\times\frac{Q}{4\pi\varepsilon_0(a^2+x^2)}\times\frac{x}{\sqrt{a^2+x^2}}=\frac{2Qx}{4\pi\varepsilon_0(a^2+x^2)^{3/2}}$$
❷ B・Cの寄与(上向き)
\(\cos\theta=x/r\) を掛けて縦成分にする
$$E=\frac{Q}{4\pi\varepsilon_0}\left[\frac{1}{(\sqrt3a-x)^2}-\frac{2x}{(a^2+x^2)^{3/2}}\right]$$
❸ 引き算で合成
向きが逆なので引く
点Bと点Cによる電界を水平成分と鉛直成分に分解して合成する図
B・Cの水平成分は相殺し、鉛直成分の和は2Qx/[4πε₀(a²+x²)^(3/2)]です。
答え\(E=\dfrac{Q}{4\pi\varepsilon_0}\left[\dfrac{1}{(\sqrt3a-x)^2}-\dfrac{2x}{(a^2+x^2)^{3/2}}\right]\) → 選択肢(5)
正三角形の三つの点電荷が点Pに作る合成電界を求め選択肢5を導く計算図
下向きE_Aから上向きE_BCを引くと選択肢(5)となり、重心Gでは0になります。

選択肢を「形」で振るい落とす

この問題は計算しなくても、式の形だけで4つ消せます

選択肢式の特徴判定
(1)分母が距離の1乗× それは電位の式。電界は2乗
(2)第2項が \(2/(a^2+x^2)\)× \(x/r\) を掛けていない=成分分解していない
(3)第2項が \(2/(a^2+x^2)\)、符号は−× 符号は正しいが同じく分解していない
(4)形は正しいが符号が+× B・Cは逆向きなので足してはいけない
(5)\((a^2+x^2)^{3/2}\) かつ符号が−◎ 正解

❶ 分母が2乗か(電界か電位か)/❷ \(3/2\) 乗になっているか(成分分解したか)/❸ 符号が−か(向きが逆か)——この3つのチェックだけで正解にたどり着けます。

💡 覚え方
斜めの電界を縦成分にすると、分母が \(r^2\) から \(r^3\)(= \(3/2\) 乗)に上がる。これは電験3種で繰り返し出る形です。「\(3/2\) 乗を見たら成分分解済み」と覚えてください。

決定打:重心Gで電界がゼロになることを使う

(4)と(5)は符号だけの違いです。どちらか迷ったら、重心G(\(x=\sqrt3a/3\))を代入してください。

重心は3つの電荷から等距離にあり、120°の対称位置にあります。したがって3つの電界がベクトル的に完全に打ち消し合い、電界はゼロになります。

$$\sqrt3a-\frac{\sqrt3a}{3}=\frac{2\sqrt3a}{3}\;\Rightarrow\;\frac{1}{(\cdots)^2}=\frac{3}{4a^2}$$
第1項をGで評価
$$a^2+\frac{a^2}{3}=\frac{4a^2}{3}\;\Rightarrow\;\frac{2x}{(\cdots)^{3/2}}=\frac{2a/\sqrt3}{(4a^2/3)^{3/2}}=\frac{3}{4a^2}$$
第2項をGで評価
$$\frac{3}{4a^2}-\frac{3}{4a^2}=0\quad\text{◎}$$
引き算なら0になる
足し算だと \(3/2a^2\) で0にならない

引き算の(5)だけがGでゼロになります。足し算の(4)では \(\dfrac{3}{2a^2}\) となり、対称性から明らかな「重心で電界ゼロ」を満たしません。これが決定打です。

深掘り:実はDとGの途中で電界の向きが反転する

この式を \(x\) の関数として調べると、興味深い性質が見えてきます。\(a=1\)、\(Q/4\pi\varepsilon_0=1\) として値を並べてみます。

\(x\)Aの寄与(下向き)B・Cの寄与(上向き)合成電界の向き
0(点D)0.33330+0.3333下向き
0.10+0.1784下向き
0.2490ここで反転
0.40−0.0767上向き
0.577(重心G)0.75000.75000ゼロ

DからGへ向かう途中、\(x\approx0.249a\) で電界がいったんゼロになり、そこから先は向きが上向きに変わります。そしてGで再びゼロになります。

これは重心Gが電位の「鞍点」だからです。アーンショーの定理により、電荷のない空間に電位の極大点・極小点は存在できません。GはAD方向に沿っては極小、それと垂直な方向には極大という馬の鞍のような形をしており、その手前に電位の山ができるのです。

試験では選択肢(5)を選べば正解です。この式は「下向きを正とした成分」を表しており、Dの近くでは正の値になります。ただし \(x\) を大きくすると符号が変わる——この事実を知っておくと、静電界の理解が一段深まります。

⏱️ 本番での進め方
❶ 対称性で横成分を消す。B・Cが左右対称なら、横向きは必ず相殺する。計算する必要すらない。
❷ 分母の指数をチェック:電位なら1乗、電界なら2乗、成分分解した電界なら \(3/2\) 乗(=\(r^3\))。
❸ 符号は「向きが同じか逆か」。Aは上にあるので下向き、B・Cは下にあるので上向き。逆向き=引き算。
❹ 迷ったら特別な点を代入:重心Gで0になるか、点D(\(x=0\))で \(Q/(4\pi\varepsilon_0\cdot3a^2)\) になるか。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

まとめ

座標と範囲A(0,√3a)、B(−a,0)、C(a,0)、P(0,x)、0≦x≦a/√3
Aの電界下向き Q/[4πε0(√3a−x)2]
B・Cの鉛直成分上向き 2Qx/[4πε0(a²+x²)3/2]
合成E=EA−EBC
検算と答えDではEBC=0、GではE=0、答え(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・正三角形と点電荷の関連問題:【理論】平成22年度B問題17

📚 次に解くべき関連問題
【理論】平成20年度B問題17(静電界63)
【理論】平成21年度A問題2(静電界58)
【理論】平成19年度A問題3(静電界64)
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