直流回路48【電験3種 理論】降圧チョッパ(スイッチング電源)の動作と出力電圧を求める!平成26年度 B問題18 完全解説

電験3種 理論科目 パワーエレクトロニクス・降圧チョッパ 平成26年度 B問題18 降圧チョッパの出力電圧!通流率で決まる仕組み

今回は平成26年度 理論科目 B問題18を解説します。代表的な降圧チョッパについて、動作説明の誤りを選ぶ(a)と、コイル電流の増加量ΔI₁・出力電圧Voの式を選ぶ(b)を、電流経路とボルト秒バランスから丁寧に確認します。

オン時はvL=E-Voで電流が増え、オフ時はvL=-Voで減ります。定常周期では増加量と減少量の大きさが等しく、同じ内容を「コイルの1周期のボルト秒が0」として表せます。

目次

平成26年度 理論科目 B問題18:問題文と選択肢

電気技術者試験センター公表の公式問題PDF(理論・問18、PDF 24~25ページ)と公式解答PDFを確認しながら進めます。下の3枚は公式内容を学習用に再構成した既存画像として保持しています。ただし、再構成波形図では軸のIとtが欠け、問題全体画像では公式(b)の前提段落が省略されています。本解説は、連続電流・周期定常・理想S/L/C・ダイオード順方向0 V・E一定・Vo一定近似・各区間でIが直線変化、という公式条件に基づきます。

電験3種 理論科目 直流回路 平成26年度 B問題18 問題文
平成26年度 理論科目 B問題18 問題文

電験3種 理論科目 【パワーエレクトロニクス・降圧チョッパ】 平成26年度 B問題18

 図1は、代表的なスイッチング電源回路の原理図を示している。次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a)回路の説明として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)コイルLはSオンで電磁エネルギーを蓄え、Sオフで放出する。
(2)ダイオードDは、Sオンで電流が流れず、Sオフで電流が流れる。
(3)コンデンサCは出力電圧Voを平滑化し、Cが大きいほどリプル電圧が小さい。
(4)L・Cを小さくするには、スイッチング周期を長くする。
(5)スイッチには、バイポーラトランジスタや電界効果トランジスタが使える。

(b)ΔI₁とVoを表す式の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

ΔI₁Vo
(1)(E−Vo)TON/LTOFFE/(TON+TOFF)
(2)(E−Vo)TON/LTONE/(TON+TOFF)
(3)(E−Vo)TON/L(TON+TOFF)E/TOFF
(4)(Vo−E)TON/L(TON+TOFF)E/TON
(5)(Vo−E)TON/L(TON+TOFF)E/TOFF
図1 降圧チョッパ(スイッチング電源)の原理回路(問題図)
図1 降圧チョッパ(スイッチング電源)の原理回路(問題図)
図2 コイル電流Iの変化(ΔI₁・ΔI₂)(問題図)
図2 コイル電流Iの変化(ΔI₁・ΔI₂)(問題図)

出題のポイント:コイル電圧の「ボルト秒バランス」が全ての鍵

降圧チョッパ(バックコンバータ)は、スイッチのON/OFFを高速で繰り返して入力電圧Eより低い出力電圧Vo を作る回路です。動作を理解する軸はコイルにかかる電圧——ここさえ押さえれば式は自然に出てきます。

区間電流の経路コイル電圧 vLコイル電流
S オン電源 → S → L → 負荷 → 電源E − Vo(正)増える
S オフL → 負荷 → D → L(循環)−Vo(負)減る

定常状態では、1周期でコイル電流が元に戻ります(増えっぱなし・減りっぱなしなら発散してしまいます)。つまり増加量=減少量——これを式にしたものがボルト秒バランスです。$$(E-V_o)T_{ON}+(-V_o)T_{OFF}=0$$「コイル電圧の1周期平均が0」とも言えます。この1本から出力電圧が決まります。

降圧チョッパについて、Sオン時は電源からLと負荷へ流れてDがオフ、Sオフ時はDを上向きに通る循環電流がLを左から右へ流れる二つの経路とコイル電圧を示す出題のポイント図
ON時はvL=E-Voで電流が増加し、OFF時はvL=-Voで減少します。高周波化では周期を短くします。

(a)の解説:動作説明の誤りを見つける

5つの記述を、電流経路と設計の考え方から順に検証します。

記述内容検証判定
(1)LはSオンで蓄え、Sオフで放出ON中は \(v_L=E-V_o>0\) で電流増(蓄積)、OFF中は減(放出)
(2)DはSオンで流れず、Sオフで流れるON中Dは逆バイアス、OFF中はコイル電流の帰り道になる
(3)Cが大きいほどリプル電圧が小さい同じ電荷変動なら \(\Delta V=\Delta Q/C\) で反比例
(4)L・Cを小さくするには周期を長くする逆。周期を短く(高周波化)すればL・Cを小さくできる×(誤り)
(5)スイッチにBJTやFETが使える実際のスイッチング電源で標準的に使われる

(4)が誤りです。理由は電流リプルの式を見れば明らかで、$$\Delta I=\frac{(E-V_o)T_{ON}}{L}$$TON(周期)を短くすればΔIが小さくなるので、同じリプルを許すならLを小さくできます。だから小型化したいなら高周波化——これがスイッチング電源が数十kHz〜MHzで動作する理由です。

答え(a) 誤っているのは選択肢(4) — L・Cを小さくするには周期を短くする
連続電流モードの三角波について、TON中の増加量ΔI1とTOFF中の正の減少量ΔI2、OFF中の符号付き変化が負であることを示すポイント解説図
ΔI₁=(E-Vo)TON/L、減少量の大きさΔI₂=VoTOFF/Lです。OFF中の符号付き電流変化は負になります。

(b)の解説:電流変化とボルト秒バランス

使う公式:コイルの基本式とボルト秒バランス
$$v_L=L\frac{dI}{dt}\;\Rightarrow\;\Delta I=\frac{v_L}{L}\Delta t$$$$(E-V_o)T_{ON}=V_oT_{OFF}\qquad(\text{定常状態})$$

コイル電圧×時間=電流変化×L。ONで増えた分とOFFで減った分が等しい、が定常条件です。

STEP1 ON中の電流増加量

$$\Delta I_1=\frac{E-V_o}{L}\,T_{ON}$$
❶ ON区間
\(v_L=E-V_o\) が \(T_{ON}\) の間かかる

STEP2 OFF中の電流減少量

OFF中はコイル電圧が \(-V_o\) なので電流は減ります。減少量の大きさは次のとおりです。

$$\Delta I_2=\frac{V_o}{L}\,T_{OFF}$$
❷ OFF区間
符号付きなら \(-V_oT_{OFF}/L\)

STEP3 定常条件から出力電圧を求める

$$\Delta I_1=\Delta I_2\;\Rightarrow\;(E-V_o)T_{ON}=V_oT_{OFF}$$
❸ ボルト秒バランス
1周期で電流が元に戻る
$$ET_{ON}=V_o(T_{ON}+T_{OFF})$$
❹ 整理
V_oでまとめる
$$V_o=\frac{T_{ON}}{T_{ON}+T_{OFF}}\,E=DE$$
❺ 完成
D=通流率(デューティ比)

\(V_o=DE\)——通流率Dをそのまま掛けるだけという、非常にきれいな結果です。\(0<D<1\) なので必ず \(V_o<E\)、つまり降圧になります。

答え(b) \(\Delta I_1=\dfrac{(E-V_o)T_{ON}}{L}\)、\(V_o=\dfrac{T_{ON}E}{T_{ON}+T_{OFF}}\) → 選択肢(2)
コイルのボルト秒バランスからVoイコールTON割るTONプラスTOFFかけるEイコールDEを導き、aの正答4とbの正答2を示す解説図
1周期のコイル電圧平均を0とするとVo=DEです。正答は(a)-(4)、(b)-(2)です。

選択肢を「降圧かどうか」で振るう

(b)の選択肢はVoとEの大小を見るだけで3つ落とせます。降圧チョッパなのだから、\(V_o<E\) でなければなりません。

選択肢Vo の式D=TON/(TON+TOFF) で書くと判定
(1)TOFFE/(TON+TOFF)\((1-D)E\) — ON時間を長くすると出力が下がる×(ONとOFFが逆)
(2)TONE/(TON+TOFF)\(DE<E\) ✓ 降圧
(3)(TON+TOFF)E/TOFF\(E/(1-D)>E\) — 昇圧になってしまう×
(4)(TON+TOFF)E/TON\(E/D>E\) — 昇圧×(ΔI₁の符号も逆)
(5)(TON+TOFF)E/TOFF\(E/(1-D)>E\) — 昇圧×(ΔI₁の符号も逆)

(3)(4)(5)はいずれもE以上の出力を主張しており、降圧チョッパという前提に反します。残る(1)と(2)の違いはTONとTOFFのどちらが分子か——スイッチを長く入れるほど出力が上がるのが自然なので(2)です。

さらにΔI₁の符号でも絞れます。ON中は電流が増えるので \(\Delta I_1>0\)、つまり \((E-V_o)\) が分子でなければなりません。\((V_o-E)\) としている(4)(5)はこの時点で誤りです。

なぜ高周波化すると小型になるのか

スイッチング電源が数百kHzで動作する理由は、周波数を上げるとLとCを小さくできるからです。

電流リプルは \(\Delta I=(E-V_o)T_{ON}/L\)。周波数を2倍にすると \(T_{ON}\) が半分になるので、同じLならリプルが半分——逆に言えば同じリプルを許すならLを半分にできます。コンデンサも同様で、電圧リプルは \(\Delta V=\Delta Q/C\)、\(\Delta Q\) は時間に比例するので周波数を上げれば小さくできます。

インダクタとコンデンサは電源回路で最も大きく重い部品なので、これを小さくできる効果は絶大です。ACアダプタが昔のトランス式に比べて劇的に小型軽量になったのは、まさにこの高周波スイッチング化によるもの。ただし周波数を上げすぎるとスイッチング損失(ON/OFFの切り替え時の損失)が増えるので、小型化と効率のトレードオフで最適点が決まります。

本番で使える時間短縮テクニック

⏱️ 本番での進め方
① チョッパはON時とOFF時のコイル電圧を書き出す(\(E-V_o\) と \(-V_o\))
② 定常条件はボルト秒バランス(増加量=減少量)。ここから \(V_o=DE\) が出る
降圧なら \(V_o<E\)。E以上になる選択肢は即座に消せる
④ 小型化=高周波化(周期を短くする)。「周期を長く」は誤り

パワーエレクトロニクス・スイッチングの出題履歴

同じ考え方を使う直流回路の問題です。あわせて解くと解法が定着します。

年度記事問われ方
平成26年度 B問題18本問(直流回路48)降圧チョッパの動作と出力電圧
令和3年度 A問題6直流回路27安定化電源のCC/CV切換と電流波形
平成26年度 A問題11過渡現象16スイッチ切換で電圧が反転する波形
平成29年度 A問題6直流回路37定常状態のコイル・コンデンサの蓄積エネルギー
令和7年度上期 A問題5直流回路5RLC回路でRが消費する総エネルギー

💡 覚え方
降圧チョッパはON時 \(v_L=E-V_o\)、OFF時 \(v_L=-V_o\)ボルト秒バランス(増加量=減少量)から \(V_o=DE\)(Dは通流率)。小型化には高周波化

⚠️ よくある間違い
周期を長くしてもL・Cは小さくなりません(逆に大きくなる)。降圧回路なのでVoがEを超える選択肢は誤り。ΔI₁は\((E-V_o)\) が分子(ON中は電流が増えるので正)です。

まとめ

(a)誤り(4)「周期を長くする」―正しくは同じ許容リプル条件で周期を短くする
ONvL=E-Vo、ΔI1=(E-Vo)TON/L
OFFvL=-Vo、減少量ΔI2=VoTOFF/L
定常・出力ΔI1=ΔI2、Vo=TONE/(TON+TOFF)=DE
正答(a)-(4)、(b)-(2)

▼あわせて解きたい関連問題
・チョッパ・パワエレの関連問題:【理論】令和3年度A問題6

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