今回は平成28年度 理論科目 A問題5を解説します。内部抵抗r=0.1 Ω、起電力E=9 Vの同一電池4個を並列にし、負荷R=0.5 Ωを接続したときの負荷の消費電力〔W〕を求めます。並列電池の等価化、回路電流、負荷電力の順に整理します。
同じ電池を同じ極性でn個並列にすると、等価起電力はEのまま、等価内部抵抗はr/nです。本問ではEeq=9 V、req=0.025 Ωとなります。内部抵抗を無視せず負荷0.5 Ωと直列に加え、正確な電流と端子電圧から負荷電力を確認します。
平成28年度 理論科目 A問題5:問題文と選択肢
電気技術者試験センター公表の公式問題PDF(理論 問5)と公式解答PDFを確認しながら進めます。下の問題文画像・選択肢・回路図は元のまま保持しています。

電験3種 理論科目 【電気回路(直流回路)】 平成28年度 A問題5
図のように、内部抵抗r=0.1Ω、起電力E=9Vの電池4個を並列に接続した電源に抵抗R=0.5Ωの負荷を接続した回路がある。この回路において、抵抗R=0.5Ωで消費される電力の値〔W〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)50 (2)147 (3)253 (4)820 (5)4050〔W〕

出題のポイント:電池の「直列」と「並列」で増えるものが違う
同じ電池を複数つないだとき、直列と並列で何が変わるかは正反対です。ここを取り違えると答えが桁ごとずれます。
| つなぎ方 | 起電力 | 内部抵抗 | 得られるもの |
| 直列 n個 | nE(n倍) | nr(n倍) | 高い電圧 |
| 並列 n個 | E(そのまま) | r/n(1/n) | 大きな電流を取り出せる |
並列では起電力は増えません。同じ電圧の電源を横に並べただけなので、端子電圧は9 Vのまま。増えるのは電流を流す能力——内部抵抗が1/4になるぶん、電圧降下が小さくなって大電流を取り出せます。
そしてもう一点、内部抵抗を無視してはいけません。0.025 Ωと聞くとつい省きたくなりますが、負荷が0.5 Ωと小さいので比率としては無視できず、実際に約0.43 Vも降下します。

問題の解説:等価電源にまとめてから計算する
STEP1 4個並列を1個の等価電源にまとめる
並列なので変わらない
同じ0.1 Ωが4本並列=1/4
STEP2 回路電流を求める
等価内部抵抗と負荷は直列です。
内部抵抗を忘れない
17 A以上の大電流

STEP3 負荷の消費電力を2通りで求める
9 Vより0.43 V低い
一致 ✓
電力収支での検算:電池が供給するのは \(9\times17.143=154.29\;\mathrm{W}\)。内訳は負荷が146.94 W、内部抵抗での損失が \(17.143^2\times0.025=7.35\;\mathrm{W}\)。合計154.29 Wでぴったり一致します ✓

誤答はどんな勘違いから生まれるか
選択肢の値を逆算すると、それぞれが典型的な誤解に対応していることが分かります。
| 選択肢 | P [W] | その値が出る考え方 | 判定 |
| (1) | 50 | — | × |
| (2) | 147 | 正解:\(I=9/0.525=17.14\;\mathrm{A}\)、\(P=I^2R\) | ○ |
| (3) | 253 | — | × |
| (4) | 820 | 4個直列と誤解:\(36/(0.4+0.5)=40\;\mathrm{A}\)、\(P=800\;\mathrm{W}\) に近い | × |
| (5) | 4050 | 内部抵抗0.025 Ωだけで計算:\(9^2/0.025=3240\;\mathrm{W}\) 相当 | × |
特に(4) 820 Wは「並列を直列と読み違えた」場合の値に近く、意図的に用意された誤答です。「電池を4個つないだから電圧も4倍」——この直感が最大の罠になっています。
なお、内部抵抗を無視して \(9^2/0.5=162\;\mathrm{W}\) とすると選択肢のどれとも一致しません。「近い値がない=どこかが間違っている」というサインなので、その場で見直せます。
なぜ電池を並列にするのか
実用面での意味を考えると、並列接続の役割がはっきりします。電池1個だけで0.5 Ωの負荷をつなぐと、\(I=9/(0.1+0.5)=15\;\mathrm{A}\)、負荷電力は \(15^2\times0.5=112.5\;\mathrm{W}\)。4個並列にすると146.9 W——約30%増えます。
さらに1個あたりの負担が軽くなるのも重要です。電池1個なら15 Aが1本に集中しますが、4個並列なら \(17.14/4=4.29\;\mathrm{A}\) ずつ。電池内部での発熱は電流の2乗に比例するので、1個あたりの発熱は \(15^2\times0.1=22.5\;\mathrm{W}\) から \(4.29^2\times0.1=1.84\;\mathrm{W}\) へと大幅に減ります。寿命の観点でも並列化は有利です。
ただし起電力の異なる電池を並列にしてはいけません。電圧の高い電池から低い電池へ循環電流が流れ、発熱・劣化の原因になります。実務では同一型式・同一ロットで揃えるのが鉄則です。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① 電池は直列でnE・nr、並列でE・r/n。増えるものが正反対
② 内部抵抗は小さくても無視しない。負荷が小さいと比率で効いてくる
③ 電力は\(I^2R\) と \(V^2/R\) の2通りで出して照合
④ 選択肢に近い値がない=どこか間違っているサイン。その場で見直す
電池・内部抵抗の出題履歴
同じ考え方を使う直流回路の問題です。あわせて解くと解法が定着します。
| 年度 | 記事 | 問われ方 |
| 平成28年度 A問題5 | 本問(直流回路39) | 電池4個並列で負荷の消費電力 |
| 令和3年度 A問題7 | 直流回路28 | 電池n個直列で消費電力最大のときの電流 |
| 平成18年度 A問題5 | 直流回路67 | 内部抵抗を含む電池の起電力 |
| 令和7年度下期 A問題6 | 直流回路2 | 2条件から起電力Eを求める |
| 令和6年度上期 A問題7 | 直流回路12 | 最大電力の条件(テブナン抵抗) |
💡 覚え方
電池の並列は起電力そのまま・内部抵抗1/n(直列はnE・nr)。等価電源にしてから \(I=E/(r_{\text{eq}}+R)\)、\(P=I^2R\)。本問は 9 V・0.025 Ω → 17.14 A → 147 W。
⚠️ よくある間違い
並列の起電力を4E=36 Vとしないこと(誤答(4)の正体)。内部抵抗0.025 Ωを無視しない(負荷電圧は9 Vではなく8.57 V)。電力は電流の2乗に比例するので、小さな電圧差でも結果に効きます。
まとめ
| 確認項目 | 計算結果 |
| 等価起電力 | Eeq=9 V |
| 等価内部抵抗 | req=0.1/4=0.025 Ω |
| 全抵抗 | 0.025+0.5=0.525 Ω |
| 回路電流 | I=9/0.525=17.1429 A |
| 負荷端子電圧 | VR=8.5714 V |
| 負荷電力 | PR=146.94 W |
| 内部損失 | I²req=7.35 W |
| 正答 | 147 W、(2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・電池の直列・並列の関連問題:【理論】令和3年度A問題7

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