磁気・電磁力12【電験3種 理論】直線導体と正方形ループ導体の間に働く電磁力を求める!令和5年下期 A問題4 完全解説

電験3種 理論科目 電磁気(磁気・電磁力) 令和5年度下期 A問題4 直線電流とループの間!働く力の向きと大きさは?

今回は令和5年度下期 理論科目 A問題4を解説します。無限長直線導体Aと、距離d離れた1辺aの正方形ループ導体Bに電流を流したとき、Bに加わる電磁力の大きさと向きを求める問題です。

導体Aが作る磁束密度と、導体Bの4辺に働く力を整理します。近い鉛直辺には+x、遠い鉛直辺には−x方向の力が働き、距離の近い辺の方が大きいため差が+x方向に残ります。上辺と下辺にも力は働きますが、大きさが等しく向きが逆なので相殺します。

🔁 この問題は繰り返し出題されています
ほぼ同じ問題が 【理論】平成25年度A問題4 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
目次

令和5年度下期 理論科目 A問題4:問題文と選択肢

まずは、令和5年度下期に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

電験3種 理論科目 磁気・電磁力 令和5年度下期 A問題4 問題文
令和5年度下期 理論科目 A問題4 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題4

電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 令和5年度下期 A問題4

 図のように、透磁率μ0〔H/m〕の真空中に、無限に長い直線状導体Aと1辺a〔m〕の正方形のループ状導体Bが距離d〔m〕を隔てて置かれている。AとBはxz平面上にあり、Aはz軸と平行、Bの各辺はx軸又はz軸と平行である。A、Bには直流電流IA〔A〕、IB〔A〕が、それぞれ図示する方向に流れている。このとき、Bに加わる電磁力として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。なお、xyz座標の定義は、破線の枠内の図で示したとおりとする。

(1) 0N つまり電磁力は生じない
(2) μ0IAIBa2/{2πd(a+d)} 〔N〕の+x方向の力
(3) μ0IAIBa2/{2πd(a+d)} 〔N〕の−x方向の力
(4) μ0IAIBa(a+2d)/{2πd(a+d)} 〔N〕の+x方向の力
(5) μ0IAIBa(a+2d)/{2πd(a+d)} 〔N〕の−x方向の力

図 無限長直線導体Aと1辺aの正方形ループ導体B、距離d(問題図)
図 無限長直線導体Aと1辺aの正方形ループ導体B、距離d(問題図)

出題のポイント:近い辺と遠い辺の「差」が残る

正方形ループの4辺のうち、力が残るのは直線導体Aと平行な2辺だけです。この2辺は電流の向きが逆なので受ける力も逆向き——ところが距離が違うので大きさが釣り合わず、差が残ります

「対称だから打ち消し合う」と考えると選択肢(1)に着地します。しかし直線導体がつくる磁界は距離に反比例して弱くなるので、近い辺のほうが強い力を受けます。ここが本問の核心です。

直線電流がつくる磁界と、そこに置かれた導体が受ける力
$$B=\frac{\mu_0 I_A}{2\pi r}\qquad F=B I_B a=\frac{\mu_0 I_A I_B a}{2\pi r}$$

\(r\) は直線導体からの距離です。近い辺は \(r=d\)、遠い辺は \(r=d+a\)——この違いが答えを生みます。

直線導体Aと正方形ループBの各辺に働く電磁力の方向を外積で示す図
近い鉛直辺の+x方向の力が遠い鉛直辺の−x方向の力より大きく、水平2辺は相殺します。

4辺を1つずつ調べる

Aとの関係距離受ける力向き
近い鉛直辺平行\(d\)\(\dfrac{\mu_0I_AI_Ba}{2\pi d}\)+x(大きい)
遠い鉛直辺平行\(d+a\)\(\dfrac{\mu_0I_AI_Ba}{2\pi(d+a)}\)−x(小さい)
上辺直交場所により変化z 方向下辺と打ち消す
下辺直交場所により変化z 方向上辺と打ち消す

上辺と下辺は直線導体Aと直交しています。この2辺には z 方向の力が働きますが、ループを一周する電流の向きの関係で、上下がちょうど逆向きになります。辺に沿って積分しても大きさが等しいので、完全に相殺します。

残るのは鉛直2辺の差だけです。近い辺のほうが距離が小さいぶん力が大きいので、合力は近い辺が受ける向き(+x方向)になります。

差を計算する

$$F=\frac{\mu_0I_AI_Ba}{2\pi}\left(\frac{1}{d}-\frac{1}{d+a}\right)$$
❶ 差を取る
近い辺 − 遠い辺
$$\frac{1}{d}-\frac{1}{d+a}=\frac{(d+a)-d}{d(d+a)}=\frac{a}{d(d+a)}$$
❷ 通分する
分子に \(a\) が出てくる
$$F=\frac{\mu_0I_AI_Ba^2}{2\pi d(d+a)}\;\;(\text{+x 方向})$$
❸ まとめる
\(a\) が2乗になる

答えの分子が \(a^2\) になるのがポイントです。もとの式の \(a\)(辺の長さ)と、通分で出てきた \(a\)(距離の差)が掛かるからです。

距離dとdプラスaにある二つの鉛直辺の電磁力と水平2辺の相殺を示す計算図
B=μ₀I_A/(2πx)より、鉛直2辺の力は距離に反比例し、その差だけが+x方向に残ります。
答え\(F=\dfrac{\mu_0I_AI_Ba^2}{2\pi d(a+d)}\)〔N〕の+x方向の力 → 選択肢(2)
近い辺と遠い辺の電磁力を差し引いて正答2を得る式変形図
1/d−1/(d+a)=a/{d(d+a)}より、合力はμ₀I_A I_B a²/{2πd(d+a)}の+x方向です。

誤答の正体:分子の形で「差」か「和」かが見分けられる

分子この式が意味すること判定
(1)0力は生じない× 距離が違うので差が残る
(2)\(a^2\)\(\dfrac1d-\dfrac1{d+a}\)(差)◎ 正解(+x)
(3)\(a^2\)同じ式だが向きが逆× 向きが誤り
(4)\(a(a+2d)\)\(\dfrac1d+\dfrac1{d+a}\)(和)× 足し算してしまった
(5)\(a(a+2d)\)同じく和、向きも逆×

\(\dfrac1d+\dfrac1{d+a}=\dfrac{(d+a)+d}{d(d+a)}=\dfrac{a+2d}{d(d+a)}\)——(4)(5)の分子 \(a(a+2d)\) は、まさに和を取った形です。分子を見るだけで、差か和かが判別できます

この見分け方は本番で有効です。途中計算に自信がなくても、\(a^2\) なら差、\(a+2d\) なら和——2辺の力は逆向きだから引き算と分かっていれば、\(a^2\) の肢に絞れます。

⚠️ よくある間違い
選択肢(1)の「電磁力は生じない」を選ぶ誤解は、「正方形なので対称」という思い込みから来ます。対称なのはループの形であって、磁界は対称ではありません直線導体に近いほど磁界が強いので、必ず差が残ります。

💡 覚え方
「近いほうが勝つ」——これだけ覚えておけば向きは決まります。近い辺が受ける向きが合力の向きです。電流の向きによって引力か斥力かは変わりますが、「近いほうが勝つ」という関係は常に成り立ちます

★この問題は過去問とまったく同じ内容で再出題されています

本問は【理論】平成25年度A問題4完全に同一の問題です。問題文・図・選択肢の並びまですべて同じで、答えもどちらも(2)です。

この問題は「計算はやや面倒だが、考え方は一本道」という良問です。だからこそそのまま再出題されました一度解いておけば、次に出たときは確実に得点できます

ただし選択肢の番号で覚えるのは危険です。同じ内容でも並び順が変わる例を、当サイトでは複数確認しています。「分子が \(a^2\) なら差、+x 方向」という中身で覚えてください

あわせて解いておきたい記事:【理論】平成25年度A問題4

⏱️ 本番での進め方
❶ 4辺を分類する。平行な2辺だけが x 方向の力を受ける。直交する2辺は相殺。
❷ 差を取る。近い辺 − 遠い辺。距離が違うので釣り合わない。
❸ 分子の形で確認。\(a^2\) なら差、\(a+2d\) なら和。
❹ 向きは「近いほうが勝つ」。近い辺が受ける向きが合力の向き。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

まとめ

近い辺(距離d)反発 +x
遠い辺(距離d+a)引力 −x
合力μ0IAIBa2/{2πd(a+d)}
向き/答+x、答(2)

▼あわせて解きたい関連問題
・平行導体・ループの力の関連問題:【理論】令和6年度下期A問題4

📚 次に解くべき関連問題
【理論】令和6年度上期A問題4(磁気・電磁力10)
【理論】令和5年度上期A問題4(磁気・電磁力15)
【理論】令和5年度下期A問題14(磁気・電磁力13)
◀ 磁気・電磁力11:【理論】令和5年度下期A問題3磁気・電磁力13:【理論】令和5年度下期A問題14
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