静電界13【電験3種 理論】糸でつり下げた帯電導体球に働く静電力と接触後の変化!令和5年下期 A問題2 完全解説

電験3種 理論科目 電磁気(静電界) 令和5年度下期 A問題2 つり下げた2つの帯電球!接触後に力はどうなる?

今回は令和5年度下期 理論科目 A問題2を解説します。点Oから軽い糸でつり下げた2つの導体球A、Bに電荷Q、3Qを与えたときの静電力・張力・重力の釣合いと、接触させて電荷を等分した後の距離の変化を問う空欄補充問題です。

静電力F・重力mg・張力Tの三力のつり合いと三平方の定理を使います。接触後は電荷が等分され(Q,3Q→2Q,2Q)、電荷の積が3Q2→4Q2と増えるため力が増し、距離dは大きくなります。

🔁 この問題は繰り返し出題されています
ほぼ同じ問題が 【理論】平成30年度A問題1 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
目次

令和5年度下期 理論科目 A問題2:問題文と選択肢

空欄が4つありますが、(ア)と(エ)は計算不要です。この2つで選択肢を絞ってから残りを確認するのが速い進め方です。まずは問題文を確認しましょう。

電験3種 理論科目 静電界 令和5年度下期 A問題2 問題文
令和5年度下期 理論科目 A問題2 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題2

電験3種 理論科目 【電磁気(静電界)】 令和5年度下期 A問題2

 真空中で導体球A及びBが軽い絶縁体の糸で固定点Oからつり下げられている。真空の誘電率をε0〔F/m〕、重力加速度をg〔m/s2〕とする。A及びBは同じ大きさと質量m〔kg〕をもつ。糸の長さは各導体球の中心点が点Oから距離l〔m〕となる長さである。

 まず、導体球A及びBにそれぞれ電荷Q〔C〕、3Q〔C〕を与えて帯電させたところ、静電力による(ア)が生じ、A及びBの中心点間がd〔m〕離れた状態で釣り合った。このとき、個々の導体球において、静電力F=(イ)〔N〕、重力mg〔N〕、糸の張力T〔N〕の三つの力が釣り合っている。三平方の定理よりF2+(mg)2=T2が成り立ち、張力の方向を考えるとF/Tはd/2lに等しい。これらよりTを消去し整理すると、k(d/2l)3=√(1-(d/2l)2)が導かれる。ただし、係数k=(ウ)である。

 次に、AとBとを一旦接触させたところAB間で電荷が移動し、同電位となった。そしてAとBとが力の釣合いの位置に戻った。接触前に比べ、距離dは(エ)した。

(ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)反発力3Q2/(4πε0d2)16πε0l2mg/(3Q2)増加
(2)吸引力Q2/(4πε0d2)4πε0l2mg/Q2増加
(3)反発力3Q2/(4πε0d2)4πε0l2mg/Q2増加
(4)反発力Q2/(4πε0d2)16πε0l2mg/(3Q2)減少
(5)吸引力Q2/(4πε0d2)4πε0l2mg/Q2減少
図 点Oからつり下げた2つの帯電導体球A・B(問題図)
図 点Oからつり下げた2つの帯電導体球A・B(問題図)

出題のポイント:空欄4つのうち、2つは計算せずに決まる

空欄が4つある問題ですが、(ア)と(エ)は計算不要です。この2つで選択肢を絞ってから、残りを確認するのが効率的な進め方です。

空欄問われていること決め方答え
(ア)静電力の向き同符号か異符号かを見るだけ反発力
(イ)静電力の大きさクーロンの法則に代入\(3Q^2/(4\pi\varepsilon_0d^2)\)
(ウ)係数k三力のつり合いを整理\(16\pi\varepsilon_0l^2mg/(3Q^2)\)
(エ)接触後の距離電荷の積が増えるか減るか増加

(ア)で「反発力」と決まれば、吸引力とする選択肢が消えます。Qと3Qはどちらも正なので、反発するのは明らかです。

点Oからつり下げた電荷Qと3Qの導体球に働く張力、重力、反発力を示す図
三力のつり合いとsinθ=d/(2l)の幾何関係を用います。

(エ)が本問の山場——接触で電荷の積はどう変わるか

接触させると電荷が等分されます。ここまでは知っている人も多いのですが、その結果として力が増えるのか減るのかまで詰める必要があります。

前提起きること
大きさが等しい導体球どうし電荷が等分される\(q_1’=q_2’=\dfrac{q_1+q_2}{2}\)
なぜ等分か接触すると1つの導体になり全体が等電位。同じ大きさなら電荷も同じ\(V=Q/C\)、Cが同じ → Qも同じ
大きさが違う場合容量の比で分かれる(等分ではない)\(q\propto C\propto r\)
$$\text{接触前の積}=Q\times3Q=3Q^2$$
❶ 元の状態
$$\text{接触後の電荷}=\frac{Q+3Q}{2}=2Q\;(\text{両方とも})$$
❷ 等分される
$$\text{接触後の積}=2Q\times2Q=4Q^2$$
❸ 積が増えた
\(3Q^2\to4Q^2\)

電荷の総和は \(4Q\) のまま変わりませんが、積は \(3Q^2\) から \(4Q^2\) へ増えます。クーロン力は積に比例するので、力が強くなり、球はより離れます——だから距離dは増加します。

なぜ積が増えるのか——和が一定のとき、2つの数が等しいときに積が最大になるからです。\(Q\) と \(3Q\) のような偏った組合せより、\(2Q\) と \(2Q\) の均等な組合せのほうが積は大きくなります。

$$a+b=\text{一定}\;\Rightarrow\;ab\;\text{は}\;a=b\;\text{のとき最大}$$
❹ 相加相乗平均の関係
接触後は必ず積が増える(または等しい)

この性質は一般的に成り立ちます。同符号の電荷を持つ同じ大きさの球を接触させると、電荷の積は必ず増えるか変わらない——最初から等しければ変わらず、偏っていれば増えます。「接触させたら距離は増える(または変わらない)」と覚えておけます。

問題の解説:(イ)(ウ)を式で確認する

使う公式:クーロンの法則と三力のつり合い
$$F=\frac{q_1q_2}{4\pi\varepsilon_0d^2},\qquad F^2+(mg)^2=T^2,\qquad \frac{F}{T}=\frac{d}{2l}$$

糸の傾きが \(F/T=d/(2l)\) を与えます。球は糸の長さ \(l\) の位置にあり、水平距離は \(d/2\) です。

STEP1 (イ)静電力の大きさ

$$F=\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\cdot\frac{Q\times3Q}{d^2}=\frac{3Q^2}{4\pi\varepsilon_0d^2}\;[\mathrm{N}]$$
❺ 代入するだけ
分子に3が付く

STEP2 (ウ)係数kを導く

三力のつり合いから、張力Tを消去します。

$$\frac{F}{T}=\frac{d}{2l},\qquad \frac{mg}{T}=\sqrt{1-\left(\frac{d}{2l}\right)^2}$$
❻ 三平方の定理から
水平成分と鉛直成分
$$\frac{F}{mg}=\frac{d/(2l)}{\sqrt{1-(d/2l)^2}}$$
❼ Tを消去
$$\sqrt{1-\left(\frac{d}{2l}\right)^2}=\frac{16\pi\varepsilon_0l^2mg}{3Q^2}\left(\frac{d}{2l}\right)^3$$
❽ Fを代入して整理
\(d=2l\cdot(d/2l)\) を使う

係数kには \(3Q^2\) が分母に入ります。(イ)で求めた力の分子の3が、ここでは分母に移っている——この対応を確認すると転記ミスを防げます

sをd/(2l)と置いて力のつり合いから係数kを導出する図
係数kは16πε₀l二乗mgを3Q二乗で割った式です。
答え(ア)反発力、(イ)\(3Q^2/(4\pi\varepsilon_0d^2)\)、(ウ)\(16\pi\varepsilon_0l^2mg/(3Q^2)\)、(エ)増加 → 選択肢(1)
電荷Qと3Qの球を接触させ2Qずつに等分した前後を比較する図
電荷積が3Q二乗から4Q二乗へ増え、釣合い距離も増加するため正解は(1)です。

誤答の正体:2段階で絞り込める

選択肢(ア)(イ)(ウ)(エ)判定
(1)反発力\(3Q^2/(4\pi\varepsilon_0d^2)\)\(16\pi\varepsilon_0l^2mg/(3Q^2)\)増加
(2)吸引力 ×\(Q^2/(\cdots)\)増加×
(3)反発力\(3Q^2/(\cdots)\)分母に3がない ×増加×
(4)反発力\(Q^2\)(3を落とした)×減少 ××
(5)吸引力 ×\(Q^2/(\cdots)\)減少×

(ア)だけで(2)(5)が消えます。正電荷どうしは反発する——これは一瞬で判断できます。

次に(エ)で(4)が消えます。接触後は積が増えるので距離も増加。この時点で(1)と(3)の2択になり、あとは(ウ)の係数を確認するだけです。

(3)は(ウ)の分母から3が抜けた形です。(イ)で \(3Q^2\) と正しく書けていても、(ウ)へ引き継ぐときに落としてしまう——係数の中に前の答えが埋まっていることを意識してください。

(4)の「減少」を選ぶのは、「電荷が均されたから力が弱まる」と考えた場合です。しかし均されたことで積は増えています。和ではなくが力を決めることを押さえてください。

本番で使える時間短縮テクニック

⏱️ 本番での進め方
① 空欄補充は計算不要の欄から埋める(本問なら(ア)と(エ))
同符号なら反発、異符号なら吸引——一瞬で2つ消せる
接触=電荷の等分。和は不変、積は増える(または不変)
④ 積が増える → 力が増す → 距離は増加
⑤ 係数の欄には前の欄の答えが埋まっている——3などの数字を落とさない

💡 覚え方
「接触すると均されて、積が増える」。和が同じなら均等なほうが積は大きい(相加相乗平均)。だから接触後は必ず力が強まり、距離は広がります。

⚠️ よくある間違い
接触後の電荷をQと3Qのままにするのが最頻出のミスです。等分されて2Qと2Qになります。また「均されたから弱まる」と考えて減少を選ぶのも誤りで、積は3Q²から4Q²へ増えます

この問題は過去問と完全に同じ内容で再出題されています

本問は平成30年度 理論科目 A問題1同一の問題です。問題文・図・5つの選択肢の内容も正答(1)も、すべて同一です。

電験3種では数年おきに同じ問題がそのまま再出題されます。特に「クーロン力と三力のつり合い」という定番テーマは繰り返し問われるため、過去問演習の効果が非常に高い分野です。

ただし選択肢の番号で覚えるのは危険です。再出題の際に並び順が変わることもあります。解き方の手順ごと身につけてください。

あわせて解いておきたい記事:平成30年度 理論科目 A問題1

まとめ

(ア)静電力反発力
(イ)力F3Q2/(4πε0d2)
(ウ)係数k16πε0l2mg/(3Q2)
(エ)接触後の距離増加 …(1)

▼あわせて解きたい関連問題
・クーロンの法則・力の釣合いの関連問題:【理論】令和7年度上期B問題17

📚 次に解くべき関連問題
【理論】令和4年度下期B問題17(静電界19)
【理論】令和7年度上期B問題17(静電界6)
【理論】令和5年度上期A問題2(静電界15)
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