静電界21【電験3種 理論】正三角形に置いた点電荷に働く力の比!令和4年上期 A問題2 完全解説

電験3種 理論科目 電磁気(静電界) 令和4年度上期 A問題2 正三角形の頂点の電荷!働く力の比はいくつ?

今回は令和4年度上期 理論科目 A問題2を解説します。一辺1mの正三角形の各頂点に+1C、+1C、-1Cの点電荷を置いたとき、正の点電荷に働く力F1と負の点電荷に働く力F2の比F2/F1を求める計算問題です。

各ペア間の力の大きさはすべて等しく(距離1m)、ベクトルとして合成します。負電荷は2つの正電荷から引かれて力が加算的に、正電荷は引力と斥力が部分的に打ち消し合います。

目次

令和4年度上期 理論科目 A問題2:問題文と選択肢

3組すべての距離も電荷も等しいので、2体間に働く力の大きさはどれも同じです。差がつくのは向きだけ——60°と120°の違いが答えを決めます。まずは問題文を確認しましょう。

電験3種 理論科目 静電界 令和4年度上期 A問題2 問題文
令和4年度上期 理論科目 A問題2 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題2

電験3種 理論科目 【電磁気(静電界)】 令和4年度上期 A問題2

 真空中において、図に示すように一辺の長さが1mの正三角形の各頂点に1C又は-1Cの点電荷がある。この場合、正の点電荷に働く力の大きさF1〔N〕と、負の点電荷に働く力の大きさF2〔N〕の比F2/F1の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)√2 (2)1.5 (3)√3 (4)2 (5)√5

図 一辺1mの正三角形の各頂点に置いた点電荷(問題図)
図 一辺1mの正三角形の各頂点に置いた点電荷(問題図)

出題のポイント:力は「大きさ」ではなく「向き」で差がつく

正三角形の3頂点に電荷を置く問題です。3組すべての距離が1 m、電荷の大きさもすべて1 Cなので、2体間に働く力の大きさはどれも同じです。

$$F=\frac{|q_1q_2|}{4\pi\varepsilon_0r^2}=\frac{1\times1}{4\pi\varepsilon_0\times1^2}=k$$
❶ どのペアも同じ大きさ
距離も電荷も等しいから

では何が違うのか——向きです。同符号なら反発、異符号なら引き合う。この違いによって、合成した結果が変わります。

注目する電荷受ける2つの力2力のなす角合成後の大きさ
負電荷 −1C(頂点)両方とも引力(2つの正電荷へ引かれる)60°\(\sqrt3\,k\)
正電荷 +1C(底辺)引力+斥力(負電荷へ引かれ、正電荷から反発)120°\(k\)

角度が60°か120°かで結果が大きく変わります。狭い角度なら強め合い、広い角度なら打ち消し合う——これが本問の全てです。

正三角形の頂点に置いた2つの正電荷と1つの負電荷に働く引力と斥力の向きを示す図
負電荷には60°をなす2引力、正電荷には120°をなす引力と斥力が働きます。

120°の2力を合成すると、元の1力と同じ大きさになる

正電荷側の結果 \(F_1=k\) は、一見不思議です。2つの力を受けているのに、1つ分の大きさにしかならない——なぜでしょうか。

$$|\vec{a}+\vec{b}|^2=a^2+b^2+2ab\cos\theta$$
❷ 合成のたすき掛け
余弦定理と同じ形
$$=k^2+k^2+2k^2\cos120^\circ=2k^2-k^2=k^2$$
❸ θ=120°を代入
\(\cos120^\circ=-1/2\)
$$|\vec{a}+\vec{b}|=k$$
❹ 元の1力と同じ大きさ
3分の1が打ち消された

「大きさの等しい2力が120°をなすとき、合成は元の1力と同じ」——これは覚えておく価値のある性質です。3相交流のベクトル図でも同じ関係が現れます。

一方、負電荷側は60°です。同じ計算をすると \(2k^2+2k^2\times\frac12=3k^2\)、つまり \(\sqrt3\,k\)。角度が狭いぶん強め合います

問題の解説:成分に分けて確認する

使う公式:クーロンの法則とベクトル合成
$$F=\frac{|q_1q_2|}{4\pi\varepsilon_0r^2},\qquad |\vec{F}_1+\vec{F}_2|=\sqrt{F_1^2+F_2^2+2F_1F_2\cos\theta}$$

力はベクトル。単純に足し算してはいけません。

STEP1 負電荷に働く力 F₂

頂点の−1Cは、底辺の2つの+1Cからそれぞれ引力を受けます。2力は左下向きと右下向き——水平成分が打ち消し合い、鉛直成分が加算されます。

$$F_2=2\times k\cos30^\circ=2k\times\frac{\sqrt3}{2}=\sqrt3\,k$$
❺ 鉛直成分の和
各力の鉛直成分は \(k\cos30^\circ\)

STEP2 正電荷に働く力 F₁

底辺左の+1Cは、頂点の−1Cから引力(右上向き)、底辺右の+1Cから斥力(左向き)を受けます。この2力のなす角が120°です。

$$F_1=\sqrt{k^2+k^2+2k^2\cos120^\circ}=\sqrt{k^2}=k$$
❻ 120°の合成
打ち消し合って1力分

STEP3 比を求める

$$\frac{F_2}{F_1}=\frac{\sqrt3\,k}{k}=\sqrt3\approx1.73$$
❼ kが約分で消える
比なので \(\varepsilon_0\) も不要

成分計算でも確認しました。座標を \(A(0,0),\;B(1,0),\;C(0.5,\sqrt3/2)\) と置いて実際にベクトルを足すと、負電荷には \((0,-1.732)k\)、正電荷には \((-0.5,+0.866)k\)(大きさ1.000k)——手計算の結果と一致します

負電荷と正電荷に働く2力の角度から合力F2とF1を求める計算図
F₂=√3k、F₁=kとなる角度の違いを整理します。
答え\(\dfrac{F_2}{F_1}=\sqrt3\approx1.73\) → 選択肢(3)
正三角形上の点電荷に働く力の比F2対F1をルート3と求める3段階の解説図
F₂/F₁=√3≒1.73なので、正答は(3)です。

誤答の正体:単純に足すと2になる

選択肢その値が出る考え方判定
(1)\(\sqrt2\approx1.41\)2力が90°をなすと誤解した場合×
(2)1.5自然な計算では再現できず(散らし)×
(3)\(\sqrt3\approx1.73\)正解:\(F_2=\sqrt3k\)、\(F_1=k\)
(4)2\(F_2\) を単純に \(2k\) と足し算した(角度を無視)×
(5)\(\sqrt5\approx2.24\)自然な計算では再現できず(散らし)×

(4)の「2」が最大の落とし穴です。「負電荷は2つの力を受けるから2倍、正電荷は打ち消して1倍、だから比は2」——大きさだけで考えると、ちょうどこの値になります

しかし2つの引力は同じ向きではありません。60°ずれているので、単純な足し算にはなりません。\(2k\cos30^\circ=\sqrt3k\) と、余弦の分だけ目減りします。

(1)の \(\sqrt2\) は、2力が直交すると考えた場合の値です。正三角形の内角は60°なので直交はしません。図に角度を書き込むだけで防げるミスです。

向きを間違えないための描き方

この種の問題は矢印を正しく描けるかがすべてです。手順を決めておくと安定します。

手順やること本問での例
注目する電荷を1つ決めるまず頂点の−1C
他の電荷1つずつとの関係を見る左の+1C、右の+1C
同符号→反発(遠ざかる向き)、異符号→引力(近づく向き)どちらも異符号なので引力
矢印を実際に描き、なす角を測る60°
対称性を使って成分に分ける水平は打ち消し、鉛直が残る

⑤の対称性の利用が計算量を大きく減らします。負電荷は左右対称な位置にあるので、水平成分が必ず打ち消し合う——この見通しが立てば、鉛直成分だけ計算すれば済みます。

なお底辺の2つの正電荷は互いに対称なので、どちらに働く力も大きさは同じ \(k\) です(向きだけが鏡像)。実際に成分計算すると \((-0.5,+0.866)k\) と \((+0.5,+0.866)k\)——大きさはどちらも1.000k です。

本番で使える時間短縮テクニック

⏱️ 本番での進め方
① 距離と電荷が等しければ2体間力の大きさはすべて同じ。違うのは向きだけ
同符号は反発、異符号は引力——矢印を実際に描く
大きさの等しい2力が120°なら合成は元の1力と同じ(覚える価値あり)
60°なら \(\sqrt3\) 倍(\(2\cos30^\circ\))
⑤ 対称な配置は片方の成分が打ち消し合う——計算量が半分になる

💡 覚え方
「60°は√3倍、120°は1倍」。大きさの等しい2力の合成は、なす角で決まります。60°→\(\sqrt3\)、90°→\(\sqrt2\)、120°→1、180°→0——この4つを覚えておけば、たいていの配置に対応できます。

⚠️ よくある間違い
力を単純に足し算するのが最頻出のミスで、選択肢(4)の「2」がそれを待ち構えています。力はベクトル——向きが違えば目減りします。また引力と斥力の区別を間違えると正電荷側の角度を60°としてしまい、\(F_1=\sqrt3k\) となって比が1になります。

まとめ

各ペアの力k(距離1mで等しい)
負電荷 F2√3・k(鉛直成分が加算)
正電荷 F1k(引力+斥力の合成)
比 F2/F1√3 …(3)

▼あわせて解きたい関連問題
・クーロンの法則・力の合成の関連問題:【理論】令和7年度下期A問題2

📚 次に解くべき関連問題
【理論】令和4年度下期B問題17(静電界19)
【理論】令和3年度A問題2(静電界25)
【理論】令和4年度下期A問題2(静電界18)
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