静電界20【電験3種 理論】電圧一定の誘電体コンデンサの性質で誤っているものは?令和4年上期 A問題1 完全解説

電験3種 理論科目 電磁気(静電界) 令和4年度上期 A問題1 電圧を保ったまま誘電体を挿入!誤りの記述は?

今回は令和4年度上期 理論科目 A問題1を解説します。誘電率εの誘電体で満たされ、電圧Vが一定に保たれた平行板コンデンサについて、誤っている記述を選ぶ論述問題です。

電圧一定なので電界E=V/dは誘電率εに依存しません。この点を押さえれば、「電界が誘電率で変わる」とする記述が誤りだと分かります。電荷・電束密度・エネルギーはεに依存します。

目次

令和4年度上期 理論科目 A問題1:問題文と選択肢

誘電体コンデンサの問題は、「電圧一定か電荷一定か」で答えが正反対になります。本問は電圧一定——この条件が5つの記述すべてを支配します。まずは問題文を確認しましょう。

電験3種 理論科目 静電界 令和4年度上期 A問題1 問題文
令和4年度上期 理論科目 A問題1 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題1

電験3種 理論科目 【電磁気(静電界)】 令和4年度上期 A問題1

 面積がともにS〔m2〕で円形の二枚の電極板(導体平板)を、互いの中心が一致するように間隔d〔m〕で平行に向かい合わせて置いた平行板コンデンサがある。電極板間は誘電率ε〔F/m〕の誘電体で一様に満たされ、電極板間の電位差は電圧V〔V〕の直流電源によって一定に保たれている。この平行板コンデンサに関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、コンデンサの端効果は無視できるものとする。

(1) 誘電体内の等電位面は、電極板と誘電体の境界面に対して平行である。
(2) コンデンサに蓄えられる電荷量は、誘電率が大きいほど大きくなる。
(3) 誘電体内の電界の大きさは、誘電率が大きいほど小さくなる。
(4) 誘電体内の電束密度の大きさは、電極板の単位面積当たりの電荷量の大きさに等しい。
(5) 静電エネルギーは誘電体内に蓄えられ、電極板の面積を大きくすると静電エネルギーは増大する。

出題のポイント:まず「電圧一定か、電荷一定か」を確認する

誘電体コンデンサの問題は、最初に条件を見極めないと答えが正反対になります。本問は「直流電源によって一定に保たれている」——電圧一定です。

この一言があるかどうかで、各量のε依存性がまるごと入れ替わります。

電圧一定(電源につないだまま)電荷一定(電源を外した後)
電界 E\(V/d\):εに無関係\(Q/(\varepsilon S)\):εが大きいほど小
電圧 V一定(εに無関係)\(Qd/(\varepsilon S)\):εが大きいほど小
電荷 Q\(\varepsilon SV/d\):εに比例一定(εに無関係)
電束密度 D\(\varepsilon V/d\):εに比例\(Q/S\):εに無関係
静電容量 C\(\varepsilon S/d\):εに比例\(\varepsilon S/d\):εに比例
エネルギー W\(\frac12CV^2\):εに比例\(Q^2/(2C)\):εが大きいほど小

電圧一定なら電界はεに無関係——これが本問の答えに直結します。電界は \(E=V/d\) で、電圧と間隔だけで決まるからです。誘電体を入れ替えても、電圧が同じで距離が同じなら電界は変わりません。

直流電源に接続した誘電体入り平行板コンデンサで電界が誘電率に依存しないことを示す図
電源接続中は電圧一定なので、εが変わってもE=V/dは変わりません。

なぜ電圧一定だと電界がεに依存しないのか

式で確認すると当たり前ですが、直感的には意外に感じるところです。

$$V=\int_0^d E\,dx=Ed$$
❶ 電圧は電界の積分
一様電界なので単純な掛け算
$$E=\frac{V}{d}$$
❷ 変形するだけ
どこにもεが出てこない

電圧は「電界を距離で積んだもの」です。電圧と距離が決まれば、電界は自動的に決まってしまいます。誘電体が何であろうと関係ありません。

では誘電体を入れると何が変わるのか。答えは電荷です。εが大きい誘電体を入れると、同じ電圧を保つために電源がより多くの電荷を極板へ送り込みます

$$Q=CV=\frac{\varepsilon S}{d}V$$
❸ 電荷はεに比例
電源が電荷を追加供給する
$$D=\frac{Q}{S}=\frac{\varepsilon V}{d}=\varepsilon E$$
❹ 電束密度もεに比例
電界は同じでもDは増える

電界Eは変わらないが、電束密度Dは増える——この違いが本問の核心です。\(D=\varepsilon E\) なので、Eが一定でεが増えればDが増えます。

問題の解説:5つの記述を式で判定する

電圧一定の平行板コンデンサ
$$E=\frac{V}{d},\qquad D=\varepsilon E=\frac{\varepsilon V}{d},\qquad Q=DS,\qquad W=\frac12\frac{\varepsilon S}{d}V^2$$

Eだけがεを含まない。他はすべてεに比例します。

記述内容対応する式判定
(1)等電位面は極板と平行一様電界なので等電位面は極板に平行正しい
(2)電荷量はεが大きいほど大きい\(Q=\varepsilon SV/d\):εに比例正しい
(3)電界はεが大きいほど小さい\(E=V/d\):εに無関係★誤り
(4)電束密度=極板の面電荷密度\(D=Q/S\):定義どおり正しい
(5)面積を大きくすると静電エネルギー増大\(W=\frac12(\varepsilon S/d)V^2\):Sに比例正しい

記述(1)について補足します。等電位面とは「電位が等しい点を結んだ面」。一様電界では電位が距離に比例して変化するので、極板からの距離が等しい面が等電位面——つまり極板と平行な面になります。電気力線が極板に垂直であることとも整合します。

記述(4)について補足します。\(D=Q/S\) は「電束密度=単位面積あたりの電荷」という定義そのものです。誘電体があってもこの関係は変わりません(自由電荷で考えるため)。

電圧一定の平行板コンデンサにおける電界、電束密度、電荷、静電エネルギーの式と誘電率依存性の表
Eはεに無関係で、D、Q、Wはεに比例します。
答え誤っているのは選択肢(3)(電圧一定では \(E=V/d\) でεに依存しない)
誘電体入り平行板コンデンサに関する5つの記述を判定し誤りが選択肢3であることを示す図
電圧一定では電界E=V/dなので、(3)の記述が誤りです。

もし「電荷一定」だったら——記述(3)は正しくなる

ここが最も重要な注意点です。電源を外してから誘電体を入れる問題なら、記述(3)は正しい記述になります。

$$Q=\text{一定},\qquad D=\frac{Q}{S}=\text{一定}$$
❺ 電荷が固定される
電荷の逃げ場がない
$$E=\frac{D}{\varepsilon}=\frac{Q}{\varepsilon S}$$
❻ 電界はεに反比例
εが大きいほど電界が小さい

まったく同じ「誘電体を入れる」操作でも、電源をつないだままか外した後かで結論が逆転します。

電圧一定(本問)電荷一定(電源を外す)
電界E変わらないεが大きいほど小さい
電荷Qεが大きいほど大きい変わらない
エネルギーWεが大きいほど大きいεが大きいほど小さい

エネルギーの増減まで逆になるのが面白いところです。電圧一定では電源がエネルギーを供給するので増え、電荷一定では誘電体が引き込まれる仕事のぶん減ります。

問題文で「電源につながれたまま」か「電源を外した後」かを必ず確認してください。この1文が答えを180度変えます。

本番で使える時間短縮テクニック

⏱️ 本番での進め方
① 誘電体コンデンサの問題は、まず「電圧一定か電荷一定か」を丸で囲む
電圧一定 → \(E=V/d\) はεに無関係。他(C・Q・D・W)はεに比例
電荷一定 → \(D=Q/S\) が一定。E・V・Wはεに反比例
④ 「誤りを選べ」ならεを含まない式を探すのが近道
⑤ \(D=\varepsilon E\) の関係で、EとDのどちらが一定かを意識する

💡 覚え方
「電圧一定ならEが不変、電荷一定ならDが不変」。\(D=\varepsilon E\) なので、どちらか一方が固定されればもう一方がεで変わります。固定される側を最初に決めるのが解法の第一歩です。

⚠️ よくある間違い
「誘電体を入れたら電界が弱まる」と反射的に考えるのが最大の落とし穴です。それは電荷一定の場合の話。電圧一定なら \(E=V/d\) で変わりません。条件を確認せずに答えると、ちょうど反対の選択肢を選んでしまいます

まとめ

電界 EV/d(εに無関係)
電荷Q・電束密度D・エネルギーεに依存
誤りの記述(3)

▼あわせて解きたい関連問題
・誘電体コンデンサの関連問題:【理論】令和5年度下期A問題1

📚 次に解くべき関連問題
【理論】令和5年度上期A問題1(静電界14)
【理論】令和5年度下期A問題1(静電界12)
【理論】令和4年度上期B問題17(静電界23)
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