磁気・電磁力27【電験3種 理論】点磁荷のクーロンの法則で棒磁石がつくる磁界を求める!平成30年 A問題3 完全解説

電験3種 理論科目 電磁気(磁気・電磁力) 平成30年度 A問題3 棒磁石の両極を点磁荷とみなす!中点の磁界は?

今回は平成30年度 理論科目 A問題3を解説します。長さ2mの棒磁石(N極1×10-4Wb、S極−1×10-4Wb)を正三角形の辺BCに置いたときの、頂点Aにおける磁界の大きさ〔A/m〕を求める問題です。

点磁荷(磁極の強さm〔Wb〕)が距離rの点につくる磁界はH=m/(4πμ0r2)です。点Aは両磁極から等距離なので2つの磁界は同じ大きさです。N極から遠ざかる向きとS極へ向かう向きを点Aから描き、120°でベクトル合成します。

目次

平成30年度 理論科目 A問題3:問題文と選択肢

まずは、平成30年度に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

電験3種 理論科目 磁気・電磁力 平成30年度 A問題3 問題文
平成30年度 理論科目 A問題3 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成30年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題3

電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 平成30年度 A問題3

 長さ2mの直線状の棒磁石があり、その両端の磁極は点磁荷とみなすことができ、その強さは、N極が1×10-4Wb、S極が−1×10-4Wbである。図のように、この棒磁石を点BC間に置いた。このとき、点Aの磁界の大きさの値〔A/m〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、点A、B、Cは、一辺を2mとする正三角形の各頂点に位置し、真空中にあるものとする。真空の透磁率をμ0=4π×10-7H/mとする。また、N極、S極の各点磁荷以外の部分から点Aへの影響はないものとする。

(1)0 (2)0.79 (3)1.05 (4)1.58 (5)3.16

図 一辺2mの正三角形の頂点B(N極)・C(S極)に棒磁石、頂点A(問題図)
図 一辺2mの正三角形の頂点B(N極)・C(S極)に棒磁石、頂点A(問題図)

出題のポイント:2つの磁界のなす角は60°ではなく「120°」

正三角形の問題なので、つい60°で合成してしまいます。しかし実際に矢印を描いてみると、2つの磁界がなす角は120°です。ここを間違えると答えが1.7倍ずれます。

なぜ120°になるのか——N極からは「遠ざかる向き」、S極へは「近づく向き」だからです。片方は外向き、もう片方は内向きなので、2本の矢印は「同じ側」を向きません。図に描いて確かめるのが確実です。

点磁荷がつくる磁界
$$H=\frac{m}{4\pi\mu_0 r^2}\;\mathrm{[A/m]}$$

電界の \(E=\dfrac{Q}{4\pi\varepsilon_0r^2}\) とまったく同じ形です。\(\varepsilon_0\) が \(\mu_0\) に置き換わっただけ——電界の知識がそのまま使えます。

正三角形の点AでN極とS極による等しい磁界を120度で合成するベクトル図
各磁極による磁界は1.58 A/m。等しい2ベクトルを120°で合成すると、合成磁界も1.58 A/mです。

まず1つぶんの磁界を計算する

点Aは、N極(点B)からもS極(点C)からも距離2 mです。正三角形なので当然ですが、この「等距離」が計算を簡単にしています。2つの磁界の大きさが同じになるからです。

$$4\pi\mu_0=4\pi\times4\pi\times10^{-7}=16\pi^2\times10^{-7}\approx1.579\times10^{-5}$$
❶ 分母の定数をまとめる
先に計算しておくと速い
$$H=\frac{1\times10^{-4}}{1.579\times10^{-5}\times2^2}=\frac{1\times10^{-4}}{6.32\times10^{-5}}=1.58\;\mathrm{A/m}$$
❷ 数値を代入
N極・S極とも同じ大きさ

\(4\pi\mu_0\) の中に \(\pi\) が2つ入る点に注意してください。\(\mu_0=4\pi\times10^{-7}\) なので、それにさらに \(4\pi\) を掛けます。\(16\pi^2\times10^{-7}\approx1.58\times10^{-5}\) という値を先に出しておくと、計算が一気に楽になります。

向きを図に描いて、なす角を確かめる

ここが本問の山場です。磁界の向きは「正のN極からは出ていく向き、負のS極には入っていく向き」——つまりN極からは遠ざかり、S極へは近づく向きになります。

磁極点Aから見た向き磁界の向き
N極(点B)左下B→A の延長方向(右上向き)
S極(点C)右下A→C の方向(右下向き)

一方は右上、もう一方は右下を向いています。この2本のなす角は120°です。「正三角形だから60°」と早合点しないでください——三角形の内角と、磁界ベクトルのなす角は別物です。

$$H_{\text{合成}}=2H\cos\frac{120^\circ}{2}=2H\cos60^\circ=2H\times0.5=H$$
❸ 等しい2力の合成
120°で合成すると、結果は1つぶんと同じ大きさ
$$H_{\text{合成}}=1.58\;\mathrm{A/m}$$
❹ 答え
向きはN極からS極へ(B→C)と平行

「120°で合成すると1つぶんと同じ大きさになる」——これは覚えておく価値のある性質です。\(2\cos60^\circ=1\) だからです。正三角形が絡む問題では頻繁に登場します

点磁荷の磁界を計算し方向を決めて120度で合成する3段階の解説図
1極分の大きさ、N極・S極による方向、120°のベクトル合成の順に整理します。
答え\(H=1.58\;\mathrm{A/m}\) → 選択肢(4)
平成30年度理論問3の磁界計算と正答4を示す解答図
H=H₀=1.58 A/mとなるため、公式正答は(4)です。

誤答の正体:向きの取り違えが全部に効く

誤り方考え方値〔A/m〕選択肢
打ち消し合うと考える「N極とS極だから相殺」0(1)
1つぶんの半分0.79(2)
正しい計算\(2H\cos60^\circ=H\)1.58(4) ◎
単純に2倍する向きを考えず足す3.16(5)

(1)の「0」を選ぶ誤解が最も根深いものです。「N極とS極だから打ち消し合うはず」という思い込みですが、2つの磁極は別の位置にあるので、点Aから見た向きも違います。打ち消し合うのは、同じ位置に正負が重なっている場合だけです。

(5)の3.16 は「向きを考えずに2倍した」答えです。ベクトルの合成では、必ず角度を考える——大きさを足してよいのは、向きが完全に一致しているときだけです。

⚠️ よくある間違い
なす角を60°としてしまうと \(2H\cos30^\circ=1.73H=2.74\) となり、選択肢のどれにも当てはまりません選択肢に無い値が出たら、角度の取り方を疑ってください

💡 覚え方
「等しい2つのベクトルを角 \(\theta\) で合成すると \(2H\cos(\theta/2)\)」——60°なら \(\sqrt3H\)、90°なら \(\sqrt2H\)、120°なら \(H\)。この3つは暗記してしまうと速いです。

⏱️ 本番での進め方
❶ まず矢印を図に描く。N極からは外向き、S極へは内向き。ここを飛ばすと必ず間違える。
❷ \(4\pi\mu_0\approx1.58\times10^{-5}\) を先に出す。\(\pi\) が2つ入ることに注意。
❸ 120°なら合成は1つぶんと同じ。\(2\cos60^\circ=1\)。
❹ 選択肢に無い値が出たら角度を疑う。60°と120°の取り違えが最多。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

まとめ

点磁荷の磁界H=m/(4πμ0r2)
H0≒1.58A/m
合成120°→H0
答え≒1.58A/m …(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・正三角形と点磁荷の関連問題:【理論】平成22年度B問題17

📚 次に解くべき関連問題
【理論】平成30年度A問題14(磁気・電磁力29)
【理論】令和2年度A問題4(磁気・電磁力24)
【理論】令和2年度A問題3(磁気・電磁力23)
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