今回は令和6年度下期 理論科目 A問題3を解説します。巻数30のコイルを貫通する磁束が0.1秒間に1Wbの割合で直線的に変化するとき、コイルに発生する起電力の大きさ〔V〕を求める計算問題です。
ファラデーの電磁誘導の法則はe=−N dΦ/dtです。負号はレンツの法則による向きを表し、本問で問われる大きさは|e|=N|ΔΦ/Δt|で求めます。磁束の変化率は1Wb/0.1s=10Wb/sです。
令和6年度下期 理論科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、令和6年度下期に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度下期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題3
電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 令和6年度下期 A問題3
巻数30のコイルを貫通している磁束が0.1秒間に1Wbの割合で直線的に変化するとき、コイルに発生する起電力の大きさ〔V〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)250 (2)300 (3)350 (4)400 (5)450
出題のポイント:ファラデーの法則に代入するだけ。落とし穴は「巻数」
計算そのものは一瞬です。気をつけるのは巻数 \(N\) を掛け忘れないこと——それだけです。

解説:変化率を先に出してから巻数を掛ける
1回巻きなら10 Vにあたる量
30回巻いてあるので30倍
「直線的に変化する」と書いてあるので、変化率は一定です。だから微分を考える必要はなく、\(\Delta\varPhi/\Delta t\) の割り算1回で済みます。


なぜ巻数を掛けるのか
コイルの1巻きごとに起電力が発生し、それが直列につながっているからです。乾電池を30個直列につないだのと同じ——だから30倍になります。
コイル全体を貫く磁束の合計(鎖交磁束)という言い方もします。\(\varPsi=N\varPhi\) と書き、\(e=-d\varPsi/dt\) と表せば巻数は式の中に含まれます。
💡 覚え方
単位で確かめるのが確実です。Wb/s = V——これはSI組立単位の問題(\(\mathrm{Wb}=\mathrm{V}\cdot\mathrm{s}\))でも繰り返し問われる関係です。10 Wb/s は 10 V、それが30巻きで 300 V——単位まで含めて筋が通ります。
誤答の正体:どれも選択肢に存在しない
| 誤り方 | 計算 | 値 | 選択肢との対応 |
| 巻数を掛け忘れる | \(1/0.1\) | 10 V | 選択肢になし |
| 時間で割り忘れる | \(30\times1\) | 30 V | 選択肢になし |
| 時間を掛けてしまう | \(30\times1\times0.1\) | 3 V | 選択肢になし |
| 正しい計算 | \(30\times1/0.1\) | 300 V | (2) に一致 |
選択肢は250・300・350・400・450と等間隔に並んでいます。つまり典型的な誤りをした人はどこにも着地できません。300以外の値が出たら、必ず手順のどこかを間違えています。
⚠️ よくある間違い
「0.1秒間に1Wb」を「0.1 Wb」と読み違えるミスに注意してください。変化した量は1 Wb、かかった時間が0.1秒です。分子と分母を取り違えると \(0.1/1=0.1\) となり、答えが3 Vになってしまいます。
レンツの法則:負号は何を意味するか
負号は「磁束の変化を妨げる向きに電流を流そうとする」ことを表します。
| 磁束の変化 | 誘導起電力が作ろうとする磁束 | 結果 |
| 増えている | 減らす向き(逆向きの磁束) | 増加を妨げる |
| 減っている | 増やす向き(同じ向きの磁束) | 減少を妨げる |
これはエネルギー保存則の現れです。もし変化を助ける向きに起電力が生じたら、わずかな変化が際限なく増幅されて、エネルギーが無から生まれてしまいます。
大きさだけを聞かれる問題では負号を無視してよいですが、「電流の向きを答えよ」という問題では負号(レンツの法則)が主役になります。
⏱️ 本番での進め方
❶ 変化率を先に計算する。\(\Delta\varPhi/\Delta t\) を出してから巻数を掛ける。順序を決めておくとミスが減る。
❷ 巻数の掛け忘れが最頻出。\(N\) を丸で囲んでおく。
❸ 単位で検算する。Wb/s = V。10 Wb/s × 30巻き = 300 V。
❹ 選択肢の間隔を見る。等間隔なら、典型的な誤りは選択肢に現れない設計になっている。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
同じ法則の別の顔:\(e=Blv\) との関係
電磁誘導の式には2つの表し方があり、どちらもファラデーの法則から出てきます。
| 式 | 使う場面 | 考え方 |
| \(e=-N\dfrac{d\varPhi}{dt}\) | コイルを貫く磁束が変化するとき | 本問。磁石を近づける、電流を変化させる など |
| \(e=Blv\) | 導体が磁界を横切るとき | 発電機。長さ \(l\) の導体が速度 \(v\) で動く |
この2つは同じものです。導体が \(v\) で動けば、囲む面積が \(lv\) の割合で増えるので、磁束の変化率は \(B\times lv\)。つまり \(d\varPhi/dt=Blv\) となります。
\(e=-d\varPhi/dt\) に代入すると \(e=Blv\)
「磁束が変わればよい」のであって、その理由は問わない——これがファラデーの法則の懐の深さです。磁石を動かしても、コイルを動かしても、電流を変化させても、同じ式で扱えます。
実際の交流はどうなるか:正弦波の場合
本問は「直線的に変化」なので変化率が一定でしたが、実際の発電機では磁束が正弦波状に変化します。
余弦波になる=位相が90°ずれる
\(2\pi/\sqrt2=4.44\)
\(E=4.44fN\varPhi_m\) ——これは変圧器の起電力の式として機械科目でも頻出です。本問の \(e=N\,d\varPhi/dt\) がその出発点になっています。
💡 覚え方
4.44 という数字は \(2\pi/\sqrt2\) です。\(\omega=2\pi f\) を掛けて、最大値を \(\sqrt2\) で割っただけ——覚えるのではなく作れる数字です。
まとめ
| 法則 | e=−N dΦ/dt(負号は向き) |
| 変化率の大きさ | 1Wb/0.1s=10Wb/s |
| 巻数 | N=30回 |
| 起電力の大きさ | 30×10=300V |
| 答え | (2) |
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