今回は令和7年度上期 理論科目 A問題2を解説します。真空中にQ〔C〕の電荷をもつ半径r〔m〕の球状導体があり、周囲の空間を比誘電率2の絶縁体の液体で満たしたときに、電位・電界・電束密度・電気力線・静電容量がどう変化するかを問う論述問題です。
誘電率εが2倍になると、電位V=Q/(4πεr)や電界E=Q/(4πεr2)は1/2に、電束密度Dと電気力線(電束)はQで決まるため変化の仕方が異なります。一方、静電容量C=4πεrはεに比例して2倍になります。
令和7年度上期 理論科目 A問題2:問題文と選択肢
孤立した導体球なので電荷Qは固定されています。この条件で誘電率を2倍にすると、2倍になるのは静電容量だけ——他は1/2倍か不変です。まずは問題文を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題2
電験3種 理論科目 【電磁気(静電界)】 令和7年度上期 A問題2
真空中にQ〔C〕の電荷をもつ半径r〔m〕の球状導体がある。ここで、真空の空間を比誘電率2の絶縁体の液体で満たしたとすると、静電気に関する記述として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、無限遠点の電位を零電位とする。
(1) 球状導体表面の電位は、液体を満たす前の2倍になった。
(2) 球状導体表面の電界の強さは、液体を満たす前の2倍になった。
(3) 球状導体表面の電束密度は、液体を満たす前の2倍になった。
(4) 球状導体から出る電気力線の本数は、液体を満たす前の2倍になった。
(5) 球状導体の静電容量は、液体を満たす前の2倍になった。
出題のポイント:この問題は「電荷一定」——電圧一定と混同しない
孤立した導体球に電荷Qを与え、周囲を誘電体で満たします。電荷Qは固定されたままです(電源につながっていないので、電荷の出入りがありません)。
電荷一定の条件下では、誘電率を2倍にすると各量は次のように変わります。
| 量 | 式 | εへの依存 | εが2倍になると | 選択肢 |
| 電位 V | \(\dfrac{Q}{4\pi\varepsilon r}\) | 反比例 | 1/2倍 | (1)「2倍」→ 誤り |
| 電界 E | \(\dfrac{Q}{4\pi\varepsilon r^2}\) | 反比例 | 1/2倍 | (2)「2倍」→ 誤り |
| 電束密度 D | \(\dfrac{Q}{4\pi r^2}\) | 含まない | 変わらない | (3)「2倍」→ 誤り |
| 電気力線の本数 | \(\dfrac{Q}{\varepsilon}\) | 反比例 | 1/2倍 | (4)「2倍」→ 誤り |
| 静電容量 C | \(4\pi\varepsilon r\) | 比例 | 2倍 | (5)「2倍」→ ★正しい |
5つの量のうち、2倍になるのは静電容量だけです。他は1/2倍か不変——増えるものと減るものが混在しているのが本問の面白いところです。

なぜ電束密度Dだけが変わらないのか
表の中でDだけが特別です。式に \(\varepsilon\) が入っていません。理由はガウスの法則の2つの形にあります。
右辺に \(\varepsilon\) がない
右辺に \(\varepsilon\) がある
Dは「自由電荷だけ」で決まる量です。誘電体を入れると分極電荷が現れますが、Dはそれを勘定に入れません。だから誘電体を入れてもDは変わらないのです。
一方Eは分極の影響を受けます。誘電体が分極して元の電界を打ち消すので、Eは小さくなります。この関係が \(D=\varepsilon E\) ——Dが一定でεが2倍なら、Eは1/2です。
| 電気力線 | 電束線(電束) | |
| 対応する量 | 電界 E | 電束密度 D |
| 電荷Qから出る本数 | \(Q/\varepsilon\) | \(Q\) |
| 誘電率を大きくすると | 本数が減る | 変わらない |
| 誘電体を入れると | 分極で電界が弱まるため減る | 自由電荷だけで決まるため不変 |
選択肢(3)と(4)がこの区別を突いています。(3)は「電束密度が2倍」、(4)は「電気力線の本数が2倍」——どちらも誤りですが、正しい変化は「Dは不変、電気力線は1/2倍」と正反対の方向です。
問題の解説:Qとrを固定して各量を追う
STEP1 εに反比例する量を確認する
VとEは分母に \(\varepsilon\) があります。誘電率が2倍になれば、どちらも1/2倍です。
半分に下がる
半分に下がる
STEP2 電気力線の本数を確認する
Eに比例する量だから
電気力線はEの可視化なので、Eが半分になれば本数も半分です。「本数が減る」という表現に違和感があるかもしれませんが、電界が弱まったことを線の本数で表していると考えてください。
STEP3 静電容量だけが増える
唯一「2倍」になる量
Cが2倍になる意味:同じ電荷Qを蓄えたときの電位が半分になった——つまり「同じ電位で2倍の電荷を蓄えられる」ということです。\(C=Q/V\) で、Qが同じでVが半分なら、Cは2倍。STEP1の結果と整合しています ✓


「電荷一定」と「電圧一定」で結論がどう変わるか
本問は電荷一定でした。同じ「誘電体を入れる」操作でも、電源につないだままなら結論が変わります。
| 量 | 電荷一定(本問) | 電圧一定 |
| 電荷 Q | 変わらない | 2倍 |
| 電位 V | 1/2倍 | 変わらない |
| 電界 E | 1/2倍 | 変わらない |
| 電束密度 D | 変わらない | 2倍 |
| 静電容量 C | 2倍 | 2倍 |
静電容量だけが、どちらの条件でも同じ「2倍」になります。当然で、Cは形状と誘電率だけで決まる量——電荷や電圧の状態によりません。
それ以外はきれいに逆になっています。電荷一定ではQとDが不変、電圧一定ではVとEが不変——固定された側が不変、もう一方が変化するという構造です。
問題文で「電源につながれているか」を必ず確認してください。本問は「孤立した導体球」なので電荷一定です。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① まず「電荷一定か電圧一定か」を判定する(孤立=電荷一定)
② \(D=Q/(4\pi r^2)\) だけが \(\varepsilon\) を含まない——電荷一定なら不変
③ \(C=4\pi\varepsilon r\) は必ず \(\varepsilon\) に比例——条件によらず2倍
④ 電気力線(\(Q/\varepsilon\))は減り、電束線(\(Q\))は不変
⑤ 「増えるものはどれか」と聞かれたらCを真っ先に疑う
💡 覚え方
「Dは誘電体を無視する」。電束密度は自由電荷だけで決まるので、誘電体を入れても変わりません。一方Eは分極に負けて弱まる——\(D=\varepsilon E\) でDが一定なら、εが増えればEは減ります。
⚠️ よくある間違い
電界Eと電束密度Dを混同するのが本問最大の狙いです(選択肢(2)と(3))。Eは1/2倍、Dは不変。また電気力線と電束線の区別(選択肢(4))も同じ根の問題で、電気力線は \(Q/\varepsilon\) 本なので減ります。
まとめ
| 電位V・電界E | 1/2(εに反比例) |
| 電束密度D | 不変(Qで決まる) |
| 電気力線の本数 | 1/2(Q/ε) |
| 静電容量C | 2倍(εに比例)…(5) |
▼あわせて解きたい関連問題
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