今回は令和7年度下期 理論科目 A問題1を解説します。一辺l〔m〕の正方形電極を間隔d〔m〕で配置した平行板コンデンサに、比誘電率εr=5の誘電体を挿入した状態(図1)と、その誘電体を電極面積の半分だけ引き出した状態(図2)の静電容量の比C1:C2を求める計算問題です。
ポイントは、図2を「誘電体で満たされた部分」と「真空の部分」が横に並んだ2つのコンデンサの並列接続とみなすことです。平行板コンデンサの静電容量C=εrε0S/dを、面積を分けて足し合わせれば答えが求まります。
令和7年度下期 理論科目 A問題1:問題文と選択肢
誘電体を半分引き出した状態は、誘電体部分と真空部分の並列です。「半分引き出したから容量も半分」ではありません。まずは問題文を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題1
電験3種 理論科目 【電磁気(静電界)】 令和7年度下期 A問題1
真空中において、一辺l〔m〕の正方形電極を間隔d〔m〕で配置した平行板コンデンサがある。図1はこのコンデンサの電極板間に比誘電率εr=5の誘電体を挿入した状態、図2は図1の誘電体を電極面積の1/2だけ引き出した状態を示している。図1及び図2の二つのコンデンサの静電容量C1〔F〕及びC2〔F〕の比(C1:C2)として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、l≫dであり、コンデンサの端効果は無視できるものとする。
(1)2:1 (2)3:2 (3)5:2 (4)5:3 (5)5:4

出題のポイント:誘電体を「半分引き出す」と並列になる
誘電体を電極面積の半分だけ引き出した状態(図2)をどう扱うかが本問の全てです。
| 状態 | 構成 | 電気的には | 計算方法 |
| 図1 | 全面が誘電体 | 単一のコンデンサ | \(C_1=\varepsilon_r\varepsilon_0l^2/d\) |
| 図2 | 半分が誘電体、半分が真空 | 2つのコンデンサの並列 | それぞれ計算して足す |
なぜ並列なのか——誘電体部分と真空部分が横に並んでいるからです。境界面が極板に垂直なので、両方に同じ電圧がかかります。これが並列の定義です。
「重ねる=直列、横に並べる=並列」——この判別が静電界の複合誘電体問題の出発点になります。本問は面積で分かれているので並列です。

問題の解説:面積を分けて足し合わせる
STEP1 図1の静電容量
面積は \(l^2\)(正方形)
STEP2 図2を2つに分けて計算する
誘電体が残っている部分と、真空になった部分——それぞれ面積は \(l^2/2\) です。
\(\varepsilon_r=5\)
\(\varepsilon_r=1\)
STEP3 比を求める
\(\varepsilon_0l^2/d\) は約分される


式の妥当性を極限で確認する
導いた関係 \(C_1:C_2=\varepsilon_r:\dfrac{\varepsilon_r+1}{2}\) が正しいかを、比誘電率を変えて確かめました。
| \(\varepsilon_r\) | \(C_1\)(相対値) | \(C_2\)(相対値) | 比 | 意味 |
| 1 | 1.0 | 1.0 | 1 : 1 | 誘電体が真空と同じ → 引き出しても変わらない ◎ |
| 2 | 2.0 | 1.5 | 4 : 3 | — |
| 5(本問) | 5.0 | 3.0 | 5 : 3 | — |
| 10 | 10.0 | 5.5 | 20 : 11 | — |
\(\varepsilon_r=1\) のとき比が 1:1 になります。比誘電率1は真空そのものなので、「誘電体を引き出しても何も変わらない」——物理的に正しい結果です ✓
この確認は式の検算として有効です。もし \(\varepsilon_r=1\) を入れて 1:1 にならなければ、どこかで間違えています。
誤答の正体:直列と混同するか、単純に半分にするか
| 誤り方 | 計算 | 得られる比 | 何が問題か |
| 直列と誤解 | \(1/C_2=1/2.5+1/0.5\) | \(5:0.42\) | 境界が極板に垂直なら並列 |
| 「半分だから半分」 | \(C_2=C_1/2=2.5\) | \(2:1\) | 真空部分の寄与を無視している |
| 真空部分を数え忘れ | \(C_2=2.5\) のみ | \(2:1\) | 同上 |
| 正しい計算 | \(C_2=2.5+0.5\) | \(5:3\) | — |
「半分引き出したから容量も半分」という直感が最大の落とし穴です。誘電体がなくなった部分も真空のコンデンサとして働き続けます——容量はゼロになりません。
真空部分の寄与は \(0.5\)、つまり全体の \(3.0\) のうち約17 %を占めます。無視できない大きさです。
直列と誤解した場合は、比が \(5:0.42\) と極端に小さくなります。直列合成は最小の容量よりさらに小さくなるので、真空部分の \(0.5\) より小さい値が出てしまい、明らかに不自然です。
誘電体を引き出すと何が起きるか
容量が \(5\to3\) へ減るということは、実際の回路では何を意味するでしょうか。条件によって答えが変わります。
| 条件 | 容量が減ると | その他の変化 |
| 電圧一定(電源につないだまま) | \(Q=CV\) より電荷が減る | 電荷が電源へ戻る。エネルギーも減少 |
| 電荷一定(電源を外した後) | \(V=Q/C\) より電圧が上がる | エネルギー \(Q^2/2C\) は増加 |
電荷一定の場合、引き出すのに力が要ります。誘電体は電界に引き込まれる向きの力を受けるので、外へ引き出すには仕事が必要——その仕事がエネルギーの増加分になります。
この「誘電体が引き込まれる力」は、可変容量コンデンサやセンサの原理として使われています。液面計では、液体(誘電体)が電極間に入る量で容量が変わることを利用して液位を測ります——本問の図1と図2の中間状態を連続的に読むのと同じ発想です。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① 面積で分かれる=並列(境界が極板に垂直)、厚さで分かれる=直列(境界が極板に平行)
② 並列ならそれぞれの容量を計算して足す
③ 誘電体がなくなった部分も真空のコンデンサ——容量はゼロにならない
④ 比を聞かれたら共通因子 \(\varepsilon_0l^2/d\) は書かずに係数だけで計算
⑤ 検算は\(\varepsilon_r=1\) を代入して 1:1 になるか
💡 覚え方
「横に並べば足し算」。面積で分かれた誘電体は並列——それぞれの容量を計算して足すだけです。抜けた部分は真空のコンデンサとして残ることを忘れないでください。
⚠️ よくある間違い
「半分引き出したから容量も半分」と考えるのが最頻出のミスです。真空部分も容量を持つので、\(5\to2.5\) ではなく \(5\to3\) です。また直列と混同すると極端に小さい値になり、不自然さで気づけます。
まとめ
| 図1(全体に誘電体) | C1=5ε0l2/d |
| 図2(半分引き出し) | C2=3ε0l2/d(並列合成) |
| 比 C1:C2 | 5:3 …(4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・平行板コンデンサと誘電体の関連問題:【理論】令和7年度下期B問題17

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