今回は令和6年度上期 理論科目 A問題1を解説します。空気(比誘電率ε1=1、上側)と固体誘電体(比誘電率ε2=6、下側)からなる平行平板電極に電圧を加えたときの、電極間の等電位線の分布として正しい断面図を(1)〜(5)から選ぶ問題です。
ポイントは直列の複合誘電体では電束密度Dが一定で、電界E=D/εは誘電率が小さい空気側で6倍大きいことです。等電位線は電界が強いほど密になるので、空気側(上側)で密、固体側(下側)で疎になります。
令和6年度上期 理論科目 A問題1:問題文と選択肢
空気と固体誘電体が上下に重なった=直列配置です。直列では電束密度が共通になり、誘電率の小さい空気側に強い電界がかかります。まずは問題文を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題1
電験3種 理論科目 【電磁気(静電界)】 令和6年度上期 A問題1
図1に示すような、空気を含む二つの誘電体からなる平行平板電極がある。この下部電極を接地し、上部電極に電圧を加えたときの電極間の等電位線の分布を示す断面図として、正しいものを下の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、誘電体の導電性及び電極と誘電体の端効果は無視できるものとする。参考までに固体誘電体を取り除いた、空気中平行平板電極の場合の等電位線の分布を図2に示す。


出題のポイント:重ねた誘電体は「直列」、電束密度が共通になる
空気と固体誘電体が上下に重なっています。この配置が何を意味するかを最初に確定させます。
| 配置 | 境界面の向き | 電気的には | 共通になる量 | εが小さい層は |
| 電極と平行に重ねる | 極板に平行 | 直列 | 電束密度 D | 電界が強い |
| 横に並べる | 極板に垂直 | 並列 | 電界 E | 電荷を受け持たない |
本問は直列です。境界面に自由電荷がなければ、電束密度Dが両層で共通になります。同じ電束が2つの層を順に通り抜けるからです。
電束が両層を貫く
空気側が6倍強い
「誘電率が大きいほど電界が強い」ではありません。直列配置では逆で、誘電率の小さい層に強い電界がかかります。ここが本問の急所です。

等電位線の間隔は電界に反比例する
等電位線は等しい電位差ΔVごとに引かれた線です。だから間隔と電界の関係が決まります。
電界が強いほど間隔が狭い=密
坂道に例えると分かりやすいです。等電位線は地図の等高線にあたります。急な斜面(強い電界)では等高線が密に、なだらかな斜面(弱い電界)では疎になります——まったく同じ理屈です。
| 層 | 比誘電率 | 電界の強さ | 等電位線 |
| 空気(上) | \(\varepsilon_{r1}=1\) | 6倍(強い) | 密(間隔が狭い) |
| 固体(下) | \(\varepsilon_{r2}=6\) | 1倍(弱い) | 疎(間隔が広い) |
問題の解説:3ステップで断面図を選ぶ
STEP1 電界の比を求める
Dが共通なので、電界の比は誘電率の逆比です。
空気側が6倍
STEP2 等電位線の密度に翻訳する
間隔は電界に反比例するので、空気側の間隔は固体側の1/6になります。
STEP3 該当する図を選ぶ
上側(空気)で線が密、下側(固体)で疎——この特徴を持つ図を探します。
| 図の特徴 | 判定 |
| 上下で密度が一様 | ×(空気だけの図2に相当。誘電体がない場合の分布) |
| 下側(固体)で密、上側で疎 | ×(誘電率が大きい側で電界が強いと誤解した図) |
| 中央付近だけ密 | ×(境界で電界が急変するわけではない) |
| 上側(空気)で密、下側(固体)で疎 | ○ 正解 |


この性質が絶縁設計で決定的に重要な理由
「誘電率の小さい層に電界が集中する」——これは試験のための知識ではなく、実務の根幹です。
仮に空気層と固体層の厚さが等しかったとすると、電圧の分担はこうなります。
空気層が全体の6/7を負担
薄い空気層が電圧の大部分を引き受けてしまうのです。しかも空気の絶縁耐力は固体誘電体よりずっと低い——「弱い材料に強い電界がかかる」という最悪の組合せになります。
| 現象 | 何が起きるか | 対策 |
| ボイド放電(部分放電) | 絶縁物内部の気泡に電界が集中し、そこで放電が始まる | 真空含浸で気泡を除去する |
| 沿面放電 | 固体絶縁物の表面に沿った空気層で放電 | ひだ(がいしの傘)で沿面距離を稼ぐ |
| ケーブルの絶縁劣化 | 微小ボイドから水トリー・電気トリーが成長 | 製造時の品質管理・部分放電試験 |
部分放電試験が高圧機器の受入検査で必ず行われるのは、この現象を検出するためです。「εの小さい所が弱点」という本問の結論が、そのまま試験項目になっています。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① まず「重ねる=直列」「横に並べる=並列」を判別する
② 直列ならDが共通 → \(E=D/\varepsilon\) でεの小さい層ほど電界が強い
③ 等電位線は等高線。電界が強いほど密(間隔=ΔV/E)
④ 並列ならEが共通——結論が正反対になるので配置を必ず確認
⑤ 実務では「空気層が弱点」。この視点は電力・法規の問題でも使える
💡 覚え方
「重ねたらDが共通、εが小さいほど電界が強い」。等電位線は等高線と同じで、急な所ほど密。空気(ε小)は急斜面——だから線が詰まって見えます。
⚠️ よくある間違い
「誘電率が大きい固体側で電界が強い」と考えるのが最頻出の誤りです。直列では \(E=D/\varepsilon\) なので逆——εが小さい空気側が強くなります。また並列(横並び)と混同すると「両側で電界が同じ」となり、密度が一様な図を選んでしまいます。
まとめ
| 接続の種類 | 直列(縦積み)→D一定 |
| 電界の比 E1:E2 | 6:1(空気:固体) |
| 等電位線の密度 | 空気側で密・固体側で疎 |
| 正しい断面図 | (5) |
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