磁気・電磁力16【電験3種 理論】電流が変化するコイルの端子電圧の最大値を求める!令和5年上期 A問題10 完全解説

電験3種 理論科目 電磁気(磁気・電磁力) 令和5年度上期 A問題10 電流が急に変わる瞬間!コイルの電圧は最大何V?

今回は令和5年度上期 理論科目 A問題10を解説します。L=5Hのコイルに、図2のように時間変化する電流i〔mA〕を流したときの、コイルの端子電圧|v|の最大値〔V〕を求める問題です。

コイルの端子電圧はv=L(di/dt)です。問題は電圧の大きさを尋ねているため、|v|=L|di/dt|として電流波形の各区間の傾きの絶対値を比較します。

目次

令和5年度上期 理論科目 A問題10:問題文と選択肢

まずは、令和5年度上期に実際に出題された問題文と選択肢を確認しましょう。

電験3種 理論科目 磁気・電磁力 令和5年度上期 A問題10 問題文
令和5年度上期 理論科目 A問題10 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題10

電験3種 理論科目 【電磁気(磁気・電磁力)】 令和5年度上期 A問題10

 図1のように、インダクタンスL=5Hのコイルに直流電流源Jが電流i〔mA〕を供給している回路がある。電流i〔mA〕は図2のような時間変化をしている。このとき、コイルの端子間に現れる電圧の大きさ|v|の最大値〔V〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)0.25 (2)0.5 (3)1 (4)1.25 (5)1.5

図1 L=5Hのコイルと電流源/図2 電流iの時間変化(問題図)
図1 L=5Hのコイルと電流源/図2 電流iの時間変化(問題図)

出題のポイント:電流の「大きさ」ではなく「傾き」で決まる

コイルの端子電圧は、そのとき流れている電流の大きさとは無関係です。決めるのは電流の変化の速さ、つまりグラフの傾き——ここを取り違えると、電流が最大の区間を選んでしまいます。

この問題はグラフを区間ごとに区切って、傾きを全部計算して比べるだけです。計算そのものは小学生の算数レベルですが、「どこを見ればよいか」が分かっているかどうかを問われています。

コイルの端子電圧
$$v=L\frac{di}{dt}\qquad\Longrightarrow\qquad |v|=L\left|\frac{di}{dt}\right|$$

電流が一定なら、どんなに大きな電流が流れていても電圧はゼロです。コイルは変化にだけ反応します。

コイルの電流波形を5区間に分け最後の20から22ミリ秒で傾きの絶対値が最大になることを示す図
電流が最大の区間ではなく、|di/dt|が最大となる20〜22 msで電圧の大きさが最大です。

下準備:mA/ms は A/s にそのまま読み替えられる

グラフの縦軸は mA、横軸は ms です。一見ややこしそうですが、この組み合わせは数値をそのまま使えます

$$1\;\mathrm{mA/ms}=\frac{10^{-3}\;\mathrm{A}}{10^{-3}\;\mathrm{s}}=1\;\mathrm{A/s}$$
分子と分母で \(10^{-3}\) が約分
数値を変えずに単位だけ読み替えられる

「0.5 mA を 2 ms で」なら、そのまま「0.25 A/s」です。単位換算で悩む必要はありません。これを知らないと、\(10^{-3}\) の掛け割りで混乱して時間を失います

各区間の傾きを表にする

区間電流の変化 \(\Delta i\)時間 \(\Delta t\)\(|di/dt|\)\(|v|=L|di/dt|\)
0〜5 ms\(+1.0\;\mathrm{mA}\)5 ms\(0.20\;\mathrm{A/s}\)1.00 V
5〜10 ms05 ms00 V
10〜15 ms\(-0.5\;\mathrm{mA}\)5 ms\(0.10\;\mathrm{A/s}\)0.50 V
15〜20 ms05 ms00 V
20〜22 ms\(-0.5\;\mathrm{mA}\)2 ms\(0.25\;\mathrm{A/s}\)1.25 V(最大)

最後の区間が最大になる理由に注目してください。電流の変化量そのものは 0.5 mA で、最初の区間(1.0 mA)の半分しかありません。しかし変化にかかった時間が 2 ms と短い——「短時間で変わる」ほど傾きは急になります

水平な区間では電圧がゼロです。電流が流れていても、変化していなければコイルは電圧を生みません。直流に対してコイルが単なる導線として振る舞うのは、まさにこの理由です。

$$\left|\frac{di}{dt}\right|_{\max}=\frac{0.5\times10^{-3}}{2\times10^{-3}}=0.25\;\mathrm{A/s}$$
❶ 最大の傾き
20〜22 ms の区間
$$|v|_{\max}=L\left|\frac{di}{dt}\right|_{\max}=5\times0.25=1.25\;\mathrm{V}$$
❷ \(L\) を掛ける
\(\mathrm{H\cdot A/s=V}\) ✓
ミリアンペア毎ミリ秒をアンペア毎秒に換算し各区間の傾きとコイル電圧を比較する表
1 mA/ms=1 A/sです。全区間を比べると20〜22 msの|di/dt|=0.25 A/sが最大です。
答え\(|v|_{\max}=1.25\;\mathrm{V}\) → 選択肢(4)
コイルの最大電圧を5ヘンリー掛ける毎秒0.25アンペアから1.25ボルトと求め選択肢4を示す図
|v|max=5×0.25=1.25 Vとなるため、公式正答は(4)です。

誤答の正体:「変化量が最大」と「傾きが最大」は別物

誤り方見た区間計算選択肢
変化量が最大の区間を選ぶ0〜5 ms\(5\times0.20\)1.00 V(3)
中間の区間を選ぶ10〜15 ms\(5\times0.10\)0.50 V(2)
\(\Delta t\) を全区間で取る\(5\times0.05\)0.25 V(1)
正しい計算20〜22 ms\(5\times0.25\)1.25 V(4) ◎

(3)の 1.00 V が最も引っかかりやすい誤答です。電流の変化が最も大きい区間を選んでしまうと、この値になります。しかし問われているのは変化の「速さ」——時間で割ることを忘れてはいけません。

💡 覚え方
グラフを見たら、まず「最も急な坂」を探す——これが鉄則です。高さの差ではなく、傾きの急さを見ます。短い時間で変わっている場所ほど、坂は急になります。

⚠️ よくある間違い
「電流が最大のときに電圧も最大」と考えるのは、抵抗の感覚です。抵抗なら \(v=Ri\) なので電流に比例しますが、コイルは \(v=L\,di/dt\)——まったく別の関係です。抵抗・コイル・コンデンサで電圧と電流の関係が違うことを、常に意識してください。

深掘り:なぜコイルは「変化」に反応するのか

コイルに電流が流れると磁束ができます。電流が変化すれば磁束も変化し、ファラデーの法則によって起電力が生じます。この起電力が端子電圧として現れているわけです。

$$\varPhi\propto i\;\Rightarrow\;N\varPhi=Li$$
❶ 磁束は電流に比例
\(L\) はその比例定数(自己インダクタンス)
$$v=N\frac{d\varPhi}{dt}=L\frac{di}{dt}$$
❷ ファラデーの法則に代入
だから「変化」にだけ反応する

この式から、コイルの実務上の性質がすべて説明できます。直流では \(di/dt=0\) なので電圧ゼロ(=短絡と同じ)。高周波では \(di/dt\) が大きくなるので電圧が大きい(=通しにくい)。コイルが「低周波は通し、高周波は通さない」のは、この一本の式の帰結です。

電流を急に遮断すると危険な理由も同じです。\(\Delta t\) を極端に小さくすると \(|v|\) が跳ね上がり、数百ボルトのサージ電圧が発生します。リレーやソレノイドに還流ダイオード(フリーホイールダイオード)を付けるのは、この電圧から回路を守るためです。

⏱️ 本番での進め方
❶ グラフを区間に区切る。直線の折れ点で切って、傾きを1つずつ書き出す。
❷ mA/ms=A/s。数値をそのまま使える。単位換算で悩まない。
❸ 最も急な坂を探す。変化量ではなく傾き。時間の短い区間が狙い目。
❹ 単位で検算。\(\mathrm{H}\times\mathrm{A/s}=\mathrm{V}\)。5 H × 0.25 A/s = 1.25 V。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

まとめ

0〜5 ms|di/dt|=0.20 A/s → |v|=1.00 V
5〜10 ms0 → 0 V
10〜15 ms0.10 A/s → 0.50 V
15〜20 ms0 → 0 V
20〜22 ms0.25 A/s → 1.25 V(最大)
答え(4)

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