今回は平成27年度 理論科目 A問題11を解説します。半導体レーザ(レーザダイオード)の3層構造図をもとに、p形層とn形層に挟まれた層の名称・流す電流の向き・コヒーレント光を生む放出現象を問う穴埋め問題です。
レーザダイオードはp形層とn形層で活性層を挟んだ構造です。順電流を流すと活性層で電子と正孔が再結合して発光し、二つの反射鏡(へき開面)の間で誘導放出が繰り返されて、位相のそろったコヒーレントなレーザ光が得られます。
平成27年度 理論科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成27年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題11
電験3種 理論科目 【電子理論(半導体等)】 平成27年度 A問題11
次の文章は、半導体レーザ(レーザダイオード)に関する記述である。
レーザダイオードは、図のような3層構造を成している。p形層とn形層に挟まれた層を(ア)層といい、この層は上部のp形層及び下部のn形層とは性質の異なる材料で作られている。前後の面は半導体結晶による自然な反射鏡になっている。
レーザダイオードに(イ)を流すと、(ア)層の自由電子が正孔と再結合して消滅するとき光を放出する。
この光が二つの反射鏡の間に閉じ込められることによって、(ウ)放出が起き、同じ波長の光が多量に生じ、外部にその一部が出力される。光の特別な波長だけが共振状態となって(ウ)放出が誘起されるので、強い同位相のコヒーレントな光が得られる。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)及び(ウ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (1) 空乏 逆電流 二次 (2) 活性 逆電流 誘導 (3) 活性 順電流 二次 (4) 活性 順電流 誘導 (5) 空乏 順電流 二次

出題のポイント:活性層・順電流・誘導放出の3語
半導体レーザの構造と動作を問う問題です。3つの空欄はいずれも専門用語——意味を知っていれば即答、知らなければ手も足も出ません。
いちばんの急所は(ウ)の「誘導放出」です。LEDとレーザダイオードを分けるのが、まさにこの誘導放出——これがあるからレーザになります。
(ア)の「活性層」は、発光が起きる中央の層です。p形とn形に挟まれ、キャリヤと光の両方を閉じ込める——だから効率よく発光します。

解説:3つの空欄を順に埋める
| 空欄 | 答え | 根拠 |
| (ア) | 活性 | p形とn形に挟まれ、電子と正孔が再結合して発光する層 |
| (イ) | 順電流 | 発光させるには電流を流す=順方向バイアス |
| (ウ) | 誘導 | 反射鏡で光を閉じ込め、同じ光子を次々に生む |
(ア)で「空乏層」を選ばないでください。空乏層は逆バイアスでできる、キャリヤのない領域——キャリヤがなければ発光しません。活性層はその逆で、キャリヤを集める層です。
(ウ)の「二次放出」は電子をぶつけて電子を出す現象(二次電子放出)です。光電子増倍管などで使われる現象で、レーザとは無関係です。


誤答の正体:「空乏層」と「二次放出」
| 選択肢 | (ア) | (イ) | (ウ) | 判定 |
| (1) | 空乏 | 逆電流 | 二次 | ×(全部誤り) |
| (2) | 活性 | 逆電流 | 誘導 | ×((イ)が誤り) |
| (3) | 活性 | 順電流 | 二次 | ×((ウ)が誤り) |
| (4) | 活性 | 順電流 | 誘導 | ◎ |
| (5) | 空乏 | 順電流 | 二次 | × |
(3)が最も惜しい誤答です。(ア)(イ)は正しいのに、(ウ)が「二次放出」——レーザの語源を知っていれば防げます。
(2)の「逆電流」も要注意です。逆方向では電流が流れない=再結合が起きない=発光しない——「発光するものは順方向」という原則で判定できます。
⚠️ よくある間違い
「空乏層」と「活性層」は正反対です。空乏層はキャリヤがない領域(逆バイアスで広がる)、活性層はキャリヤを集めて再結合させる層(順バイアスで注入)——役割が逆です。
☝️ ひっかけの作り方:問題文の「前後の面は半導体結晶による自然な反射鏡」という記述に注目してください。反射鏡=共振器があるからレーザになります。共振器がなければただのLEDです。
深掘り①:LEDとレーザダイオードの決定的な違い
どちらも順方向で発光しますが、光の性質がまったく違います。違いを生むのは「共振器の有無」です。
| LED | レーザダイオード(LD) | |
| 発光のしくみ | 自然放出 | 誘導放出 |
| 共振器 | なし | あり(両端の反射鏡) |
| 光の位相 | ばらばら | そろっている(コヒーレント) |
| 波長の広がり | 広い(数十 nm) | 狭い(単色に近い) |
| 指向性 | 広がる | 細く絞られる |
| 用途 | 照明・表示 | 光通信・光ディスク・測距 |
自然放出は「勝手に光る」——光子が出る向きも位相もばらばらです。誘導放出は「入ってきた光子と同じ光子を生む」——向きも位相も波長もそっくり同じになります。
反射鏡で光を往復させると、誘導放出が繰り返されて光が増幅されます。特定の波長だけが共振条件を満たすので、波長がそろった強い光になります。
深掘り②:ダブルヘテロ構造という工夫
問題文の「性質の異なる材料で作られている」という記述が、レーザダイオードの核心です。これを「ダブルヘテロ構造」と呼びます。
| 層 | 材料の例 | 役割 |
| p形層 | バンドギャップが広い材料 | キャリヤと光を閉じ込める壁 |
| 活性層 | バンドギャップが狭い材料 | キャリヤが集まり再結合して発光 |
| n形層 | バンドギャップが広い材料 | 反対側の壁 |
両側をバンドギャップの広い材料で挟むと、キャリヤが活性層から逃げられなくなります。電子も正孔も狭い層に閉じ込められる——だから再結合が集中して起き、効率よく光ります。
しかも屈折率も活性層のほうが大きいので、光も閉じ込められます。キャリヤと光の両方を同じ場所に閉じ込める——この二重の閉じ込めが高効率の秘密です。
この構造を発明した功績で、2000年にノーベル物理学賞が贈られました。半導体レーザの実用化を可能にした技術です。
深掘り③:半導体レーザが支える技術
レーザダイオードは、現代の情報社会の基盤です。どこで使われているかを見ておきましょう。
| 用途 | 波長 | 求められる性質 |
| 光ファイバ通信 | 1.31/1.55 µm | 単色性(分散を抑える) |
| CD | 780 nm(赤外) | 集光性 |
| DVD | 650 nm(赤) | より短い波長=高密度 |
| ブルーレイ | 405 nm(青紫) | さらに短波長=さらに高密度 |
| レーザポインタ・測距 | 650 nm など | 指向性 |
光ディスクの記録密度は波長で決まります。光は波長より小さく絞れない——だから短波長のレーザほど細かく記録できます。CD→DVD→BDの進化は、まさに短波長化の歴史です。
青色レーザの実用化には窒化ガリウム(GaN)が必要でした。2014年のノーベル物理学賞(青色LED)——日本人研究者の功績です。
深掘り④:光通信の波長が決まる理由
光ファイバ通信で1.31 µmと1.55 µmが使われるのには、物理的な理由があります。
| 波長 | 特徴 | 使われ方 |
| 0.85 µm | 短距離向け・安価 | 構内LAN |
| 1.31 µm | 分散が最小 | 中距離 |
| 1.55 µm | 損失が最小 | 長距離・海底ケーブル |
石英ガラスの損失が最も小さいのが1.55 µmです。だから長距離伝送にはこの波長——光増幅器(EDFA)もこの帯域で働きます。
分散が最小なのは1.31 µmです。分散があるとパルスが広がって信号が崩れる——だから中距離ではこちらが有利になります。
波長を正確に作れるのはレーザダイオードだけです。LEDでは波長が広がりすぎて長距離では使えません——誘導放出の単色性が不可欠なのです。
⏱️ 本番での進め方
❶ LASER の SE = Stimulated Emission = 誘導放出——語源が答え。
❷ 発光するものは順方向——「逆電流」は即消し。
❸ 活性層と空乏層は正反対——キャリヤを集める層と、ない領域。
❹ 反射鏡(共振器)があるからレーザ——なければLED。
💡 覚え方
「レーザ=誘導放出+共振器」——LEDに反射鏡を付けて誘導放出を起こさせたものがレーザです。語源の \(\mathrm{LASER}\) に「誘導放出」が入っているので、(ウ)は迷いません。
出題履歴:発光素子は繰り返し問われる
LED・レーザダイオードの原理は、半導体分野の定番テーマです。「順方向で再結合して発光」「レーザは誘導放出と共振器」——この2点を押さえれば確実に得点できます。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
あわせて解いておきたい記事:【理論】平成19年度A問題11(各種ダイオードのバイアス)/【理論】平成29年度A問題11(pn接合による現象)
まとめ
| (ア) | 活性層(発光) |
| (イ) | 順電流 |
| (ウ) | 誘導放出→コヒーレント光 |
| 答え | (4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・各種ダイオードのバイアス(半導体8):【理論】令和4年度下期 A問題11

コメント