半導体8【電験3種 理論】可変容量・定電圧・レーザダイオードの使い方を判別する!令和4年度下期 A問題11 完全解説

電験3種 理論科目 電子理論(半導体等) 令和4年度下期 A問題11 用途で選ぶダイオード!同じ問題がまた出題された

今回は令和4年度下期 理論科目 A問題11を解説します。可変容量ダイオード・定電圧ダイオード・レーザダイオードについて、pn接合に加える電圧が順方向か逆方向かを判別する穴埋め問題です。

ポイントは各ダイオードの動作原理です。可変容量ダイオードは逆方向電圧で空乏層の幅(=静電容量)を変える。定電圧ダイオード(ツェナー)は逆方向の降伏現象を利用する。レーザダイオードは順方向で電子と正孔を再結合させて発光します。

目次

令和4年度下期 理論科目 A問題11:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 理論科目 半導体等 令和4年度下期 A問題11 問題文
令和4年度下期 理論科目 A問題11 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度下期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題11

電験3種 理論科目 【電子理論(半導体等)】 令和4年度下期 A問題11

 次の文章は、それぞれのダイオードについて述べたものである。

a. 可変容量ダイオードは、通信機器の同調回路などに用いられる。このダイオードは、pn接合に(ア)電圧を加えて使用するものである。

b. pn接合に(イ)電圧を加え、その値を大きくしていくと、降伏現象が起きる。この降伏電圧付近では、流れる電流が変化しても接合両端の電圧はほぼ一定に保たれる。定電圧ダイオードは、この性質を利用して所定の定電圧を得るようにつくられたダイオードである。

c. レーザダイオードは光通信や光情報機器の光源として利用され、pn接合に(ウ)電圧を加えて使用するものである。

上記の記述中の空白箇所(ア)〜(ウ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

(ア)(イ)(ウ)
(1)逆方向順方向逆方向
(2)順方向逆方向順方向
(3)逆方向逆方向逆方向
(4)順方向順方向逆方向
(5)逆方向逆方向順方向

出題のポイント:「光るものだけ順方向」

3種類のダイオードに、順方向と逆方向のどちらの電圧を加えるかを問う問題です。それぞれが何の現象を使っているかを考えれば、迷わず決まります

いちばん簡単な覚え方は「光るものだけ順方向」です。レーザダイオードとLEDは順方向可変容量ダイオードとツェナーダイオードは逆方向——これで3つとも決まります

バイアスの向きと働き
$$\text{順方向}:\text{電流が流れる}\ \Rightarrow\ \text{再結合して発光}\qquad\text{逆方向}:\text{空乏層が広がる}$$

逆方向で使うのは「電流を流さずに何かをしたい」とき——容量を変える、電圧を一定に保つです。

可変容量ダイオードは、空乏層をコンデンサの誘電体として使います逆電圧を大きくすると空乏層が広がり、容量が小さくなる——平行平板コンデンサの \(C=\varepsilon S/d\) と同じ理屈です。

可変容量ダイオードは逆方向、定電圧ダイオードは逆方向、レーザダイオードは順方向で使う理由を、空乏層、降伏、キャリア再結合の図で示した解説
使う向きは、可変容量が逆方向、定電圧が逆方向、レーザが順方向です。各素子で利用する物理現象が異なります。

解説:3つのダイオードを順に判定する

ダイオードバイアス理由
a可変容量ダイオード逆方向空乏層の幅を電圧で変え、容量として使う
b定電圧ダイオード逆方向降伏領域で電圧がほぼ一定になる性質を使う
cレーザダイオード順方向電流を流して電子と正孔を再結合させ発光

aの可変容量ダイオードは「バリキャップ」とも呼ばれますラジオの同調回路で、つまみを回す代わりに電圧で周波数を変える——電子同調を可能にした素子です。

bの定電圧ダイオードは、逆電圧をどんどん上げていくと、ある電圧で急に電流が流れ始めますこの「降伏」が起きると、電流が変わっても電圧はほぼ一定——基準電圧源として使えます

cのレーザダイオードは順方向です。電流を流して電子と正孔をぶつけ、そのエネルギーを光として取り出します——LEDと同じ原理です。

可変容量ダイオードで逆方向電圧を大きくすると空乏層幅が広がり、接合容量が小さくなることをCイコールイプシロンS割るdから導く解説
可変容量ダイオードは、逆方向電圧で空乏層幅を変え、接合容量を調整します。したがって(ア)は逆方向です。
ツェナーダイオードを逆方向の降伏領域で使う定電圧回路、電流分配、直列抵抗の役割、電流電圧特性を示した解説
定電圧ダイオードは逆方向の降伏領域を利用します。直列抵抗で電流を制限し、出力電圧をほぼツェナー電圧に保ちます。
レーザダイオードを順方向で使い、電子と正孔の注入、再結合、誘導放出、共振を経てレーザ光を得る流れと、選択肢5への照合を示す解説
レーザダイオードは順方向でキャリアを注入して発光します。(ア)逆・(イ)逆・(ウ)順に一致する正答は選択肢(5)です。
答え(ア) 逆方向、(イ) 逆方向、(ウ) 順方向 → 選択肢(5)

誤答の正体:どれを順方向にしてしまうか

選択肢(ア)(イ)(ウ)判定
(1)逆方向順方向逆方向×((イ)(ウ)が逆)
(2)順方向逆方向順方向×((ア)が誤り)
(3)逆方向逆方向逆方向×((ウ)が誤り)
(4)順方向順方向逆方向×(全部逆)
(5)逆方向逆方向順方向

(3)が最も惜しい誤答です。(ア)(イ)は正しいのに、(ウ)まで逆方向にしてしまった——「ダイオードといえば逆方向で特殊な使い方」という思い込みでしょう。

(4)は3つとも逆になっています。「整流ダイオードは順方向」というイメージから、特殊なダイオードも順方向だと考えたケースかもしれません。

⚠️ よくある間違い
「発光するものは順方向」——電流を流さないと発光しないからです。逆方向では電流が流れないので、光りようがありませんこの一点で(ウ)が決まります

☝️ ひっかけの作り方:フォトダイオードは逆方向です。「光」がつくから順方向と早合点しないでください。光を【出す】のがLED・LD(順方向)、光を【受ける】のがフォトダイオード(逆方向)——向きが逆です。

深掘り①:主なダイオードを一覧で整理する

ダイオードは種類が多く、それぞれ使うバイアスが違います「何をさせたいのか」で分類すると覚えやすくなります。

ダイオードバイアス使う現象用途
整流ダイオード順方向で通す整流作用電源回路
可変容量ダイオード逆方向空乏層の幅=静電容量同調回路・PLL
定電圧ダイオード逆方向降伏(ツェナー・なだれ)基準電圧・保護
発光ダイオード(LED)順方向再結合による発光照明・表示
レーザダイオード(LD)順方向誘導放出光通信・光ディスク
フォトダイオード逆方向光生成キャリヤ光検出

順方向なのは「電流を流して仕事をさせるもの」逆方向なのは「電流を流さずに性質を使うもの」——この2分類ですべて整理できます。

ほかにもショットキーバリアダイオード(金属と半導体の接合・高速・低順電圧)、トンネルダイオード(負性抵抗)などがあります。いずれも過去に出題例があります。

深掘り②:降伏現象で電圧が一定になる理由

定電圧ダイオードの \(V\)-\(I\) 特性を見ると、降伏領域でグラフがほぼ垂直になっています。これが「電圧一定」の意味です。

領域電圧電流特性
順方向約0.7 V大きく流れる普通のダイオードと同じ
逆方向(降伏前)0〜降伏電圧ほぼゼロ絶縁
逆方向(降伏後)ほぼ一定急激に増える定電圧特性 ✓

電流が10倍になっても電圧はほとんど変わりませんだから電源電圧が変動しても、ツェナーダイオードの両端は一定——基準電圧として使えます

必ず直列に抵抗を入れて使います抵抗がないと電流が無制限に流れて壊れる——降伏そのものは壊れる現象ではありませんが、電流を制限しないと熱で破壊されます

深掘り③:可変容量ダイオードが同調回路を変える

LC共振回路の周波数は \(f_0=\dfrac{1}{2\pi\sqrt{LC}}\) です。\(C\) を電圧で変えられれば、周波数も電圧で変えられます

$$C\ \downarrow\ \Rightarrow\ f_0=\frac{1}{2\pi\sqrt{LC}}\ \uparrow$$
❶ 容量が減ると周波数は上がる
$$\text{逆電圧}\ \uparrow\ \Rightarrow\ \text{空乏層}\ \uparrow\ \Rightarrow\ C\ \downarrow\ \Rightarrow\ f_0\ \uparrow$$
❷ つなげると
電圧で選局できる

昔のラジオは可変コンデンサ(バリコン)をつまみで回して選局していました。可変容量ダイオードなら、電圧を変えるだけ——ボタン1つで局を切り替えられます

さらにPLL(位相同期ループ)と組み合わせれば、周波数をデジタルで正確に制御できます。現代の無線機器は、ほぼすべてこの方式です。

深掘り④:pn接合の応用を俯瞰する

本問に出てきた3つはすべてpn接合の応用です。同じ接合が、使い方次第でまったく違う素子になります。

使い方利用する性質素子
順方向で電流を流す整流作用整流ダイオード
順方向で再結合させる発光LED・レーザダイオード
逆方向で空乏層を広げる静電容量可変容量ダイオード
逆方向で降伏させる定電圧特性定電圧ダイオード
逆方向で光を当てる光起電力・光電流フォトダイオード・太陽電池

1つの構造から5種類の素子が生まれる——これがpn接合の懐の深さです。「どの性質を使うか」で名前が変わるだけだと理解しておけば、暗記量が大きく減ります。

太陽電池とフォトダイオードは、実は同じものです。発電に使うか、光の検出に使うかの違い——回路の使い方が違うだけです。

⏱️ 本番での進め方
❶ 「光るものだけ順方向」——3つとも一瞬で決まる。
❷ 逆方向=電流を流さずに性質を使う——容量・降伏・光検出。
❸ 可変容量:逆電圧↑ → 容量↓——頻出の出題ポイント。
❹ ツェナーは必ず直列抵抗と一緒に使う——電流制限が必要。

💡 覚え方
「pn接合は1つ、使い方は5通り」——整流・発光・可変容量・定電圧・光検出どの性質を使うかで名前が変わるだけだと押さえておけば、個別に暗記する必要がありません。

★重要:平成19年度A問題11とまったく同じ問題

平成19年度A問題11は、本問と完全に同一の問題です。3つの記述も、選択肢の並びも、正答番号(5)まですべて同じ——15年の時を経ての再出題でした。

平成19年度 A問題11本問(令和4年度下期 A問題11)
a可変容量ダイオード → 逆方向完全に同一
b定電圧ダイオード → 逆方向完全に同一
cレーザダイオード → 順方向完全に同一
正答番号(5)(5)

問題文の言い回しがわずかに整理されているだけで、問われている内容は寸分違わず同じです。当サイトで確認している「完全同一ペア」はこれで8組目になります。

⚠️ よくある間違い
「15年前の問題は古すぎる」という判断は危険です。半導体の用語問題は出題パターンが限られるため、過去問がそのまま再利用されやすいのです。

出題履歴:ダイオードのバイアスは定番中の定番

「どのダイオードにどちら向きの電圧を加えるか」は、半導体分野で最も繰り返し問われるテーマです。一覧表で覚えれば、確実な得点源になります。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

あわせて解いておきたい記事:【理論】平成19年度A問題11(完全に同一の問題)【理論】平成30年度A問題11(半導体素子の正誤)

★重要:令和7年度下期にも出題され、正答番号が変わった

この問題は平成19年度・本問(令和4年度下期)・令和7年度下期と3回出題されています。内容はまったく同じで、選択肢の並びだけが変えられました

年度答えの中身正答番号
平成19年度 A11逆・逆・順(5)
本問(令和4年度下期 A11)逆・逆・順(同じ)(5)
令和7年度下期 A11逆・逆・順(同じ)(2)

3年度とも答えの中身は同じなのに、令和7年度下期だけ正答番号が(2)です。選択肢の順序が入れ替えられたためで、番号暗記では対応できません

⚠️ よくある間違い
同じ問題が3回出るということは、それだけ基本的で重要なテーマだということです。「光るものだけ順方向」という覚え方で、いつ出ても確実に得点しましょう。

あわせて解いておきたい記事:【理論】令和7年度下期A問題11(同じ問題・正答(2))

まとめ

可変容量D逆方向(空乏層で容量可変)
定電圧D逆方向(ツェナー降伏)
レーザD順方向(再結合で発光)
答え(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・同型のダイオード問題(半導体1):【理論】令和7年度下期 A問題11

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