今回は平成24年度 理論科目 A問題11を解説します。半導体集積回路(IC)に関する5つの記述のうち、誤っているものを選ぶ問題です。
MOS IC・CMOS IC・モノリシック/ハイブリッドIC・アナログICなどの用語を整理します。CMOS(相補型MOS)はnチャネルとpチャネルの両方のMOSFETを組み合わせる点がポイントで、『nチャネルのみ』という記述が誤りです。
平成24年度 理論科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題11
電験3種 理論科目 【電子理論(半導体等)】 平成24年度 A問題11
半導体集積回路(IC)に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)MOS ICは、MOSFETを中心としてつくられたICである。
(2)ICを構造から分類すると、モノリシックICとハイブリッドICに分けられる。
(3)CMOS ICは、nチャネルMOSFETのみを用いて構成されるICである。
(4)アナログICには、演算増幅器やリニアICなどがある。
(5)ハイブリッドICでは、絶縁基板上に、ICチップや抵抗、コンデンサなどの回路素子が組み込まれている。
出題のポイント:CMOS の C は Complementary(相補型)
集積回路(IC)に関する5つの記述から、誤りを1つ選ぶ問題です。急所は(3)のCMOS——「nチャネルのみ」という記述が誤りです。
CMOSの C は Complementary(相補的)の頭文字です。nチャネルとpチャネルを組み合わせて相補的に動作させる——名前そのものが答えになっています。
相補的に動くとは「一方がオンのとき他方がオフ」ということです。だから定常状態では電流が流れず、消費電力が極めて小さい——これがCMOSの最大の利点です。

解説:5つの記述を1つずつ検証する
| 選択肢 | 内容 | 判定 | 根拠 |
| (1) | MOS ICはMOSFET中心のIC | ○ | 名前どおり |
| (2) | 構造で分けるとモノリシックICとハイブリッドIC | ○ | 標準的な分類 |
| (3) | CMOS ICはnチャネルのみで構成 | × | nとpの両方を使う(★誤り) |
| (4) | アナログICには演算増幅器やリニアIC | ○ | 正しい分類 |
| (5) | ハイブリッドICは絶縁基板上に素子を組み込む | ○ | ハイブリッドICの定義 |
(2)の「モノリシック」と「ハイブリッド」は覚えておきましょう。モノリシックは1枚のシリコン上にすべてを作り込む、ハイブリッドは基板上に複数の部品を載せる——作り方の違いです。
(4)のリニアICは「アナログ信号を連続的に扱うIC」です。演算増幅器(オペアンプ)が代表格——デジタルIC(論理回路)と対になる分類です。


誤答の正体:ICの分類用語を知っているか
(3)以外の4つは、いずれもICの標準的な分類です。用語を知らないと「合っているのか誤っているのか」判断できません。
| 用語 | 意味 |
| モノリシックIC | 1枚のシリコンチップ上にすべての素子を作り込んだIC |
| ハイブリッドIC | 絶縁基板上にICチップや抵抗・コンデンサを実装したもの |
| MOS IC | MOSFETを主体としたIC |
| バイポーラIC | バイポーラトランジスタを主体としたIC |
| リニアIC | アナログ信号を扱うIC(オペアンプなど) |
「モノ(1つの)+リシック(石)」=1つの石——1枚のチップという意味です。「ハイブリッド」は混成——いろいろな部品を混ぜて載せるという意味になります。
⚠️ よくある間違い
CMOSは「nチャネルとpチャネルの両方」です。C=Complementary(相補的)——頭文字を思い出せば即座に判定できます。用語の略称の意味を知っておくと強いです。
☝️ ひっかけの作り方:「nチャネルのみを用いる」ICも実在します。NMOS ICと呼ばれ、CMOS以前の主流でした。ただし常に電流が流れるので消費電力が大きく、CMOSに置き換わりました。
深掘り①:モノリシックICとハイブリッドIC
ICを「どう作るか」で分けたのが、この2つです。それぞれの長所と短所を押さえておきましょう。
| モノリシックIC | ハイブリッドIC | |
| 作り方 | 1枚のシリコン上に一括形成 | 基板上に個別部品を実装 |
| 量産性 | 非常に高い(大量生産で安価) | やや低い |
| 大きな素子 | 作れない(大容量コンデンサなど) | 載せられる |
| 高精度抵抗 | 苦手(誤差が大きい) | 得意(外付けできる) |
| 用途 | CPU・メモリ・汎用IC | 電源モジュール・高周波回路 |
モノリシックICが圧倒的多数ですが、大電力や高精度が必要な用途ではハイブリッドICが今も使われます。両者は競合ではなく棲み分けです。
「1枚の石にすべて」というモノリシックの発想が、集積度の爆発的な向上を可能にしました。ムーアの法則(2年で2倍)も、この製法があってこそです。
深掘り②:CMOSが消費電力を抑えるしくみ
CMOSインバータ(NOT回路)を例に、なぜ電力を食わないかを見てみましょう。
| 入力 | pチャネル | nチャネル | 出力 | 電流 |
| 0(低) | オン | オフ | 1(高) | 流れない |
| 1(高) | オフ | オン | 0(低) | 流れない |
| 切り替わる瞬間 | 両方わずかにオン | — | 遷移中 | 流れる |
どちらの状態でも、必ず一方がオフです。電源からグラウンドまでの経路が必ず途切れている——だから定常電流はゼロになります。
電力を食うのは切り替わる瞬間だけです。だから消費電力は動作周波数に比例——高速に動かすほど熱くなるのがCMOSの性質です。
CPUの発熱が周波数とともに増えるのも、この理由です。クロックを上げると比例して消費電力が増える——だから近年は周波数を上げずにコア数を増やす方向に進んでいます。
深掘り③:アナログICとデジタルIC
(4)に出てきた「アナログIC」について、デジタルICとの違いを整理しておきましょう。
| アナログIC(リニアIC) | デジタルIC | |
| 扱う信号 | 連続的に変化する量 | 0と1の2値 |
| 代表例 | 演算増幅器・電源IC・センサIC | 論理ゲート・CPU・メモリ |
| 求められる性能 | 精度・直線性・雑音の少なさ | 速度・集積度 |
| 設計の難しさ | 素子ばらつきの影響が大きい | 比較的自動化しやすい |
演算増幅器(オペアンプ)はアナログICの代表です。増幅・加算・積分・比較など、アナログ信号処理の万能素子——電験でも回路計算の問題としてよく出題されます。
実際の製品では両方が1チップに入ることも増えました。「ミックスドシグナルIC」と呼ばれ、センサからの微弱信号を増幅してデジタル処理する——スマートフォンのチップはこの塊です。
深掘り④:ICの略称を意味から覚える
半導体分野は略称が多いのですが、元の英語を知れば意味が分かります。正誤問題の判定に直結します。
| 略称 | 元の英語 | 意味 |
| IC | Integrated Circuit | 集積回路 |
| MOS | Metal-Oxide-Semiconductor | 金属・酸化膜・半導体の3層 |
| CMOS | Complementary MOS | 相補型(nとp両方) |
| FET | Field Effect Transistor | 電界効果トランジスタ |
| LSI | Large Scale Integration | 大規模集積回路 |
「MOS」が構造をそのまま表しているのが分かりやすい例です。金属(ゲート電極)・酸化膜(絶縁層)・半導体(基板)——3層を上から並べた名前です。
「FET」の Field Effect = 電界効果です。電流ではなく電界で制御するという動作原理が名前になっています——「電圧制御形」という性質も、ここから読み取れます。
⏱️ 本番での進め方
❶ CMOS の C は Complementary(相補型)——nとpの両方を使う。
❷ モノリシック=1枚のチップ、ハイブリッド=基板に実装。
❸ 略称は元の英語から意味を取る——正誤判定に直結。
❹ アナログIC=リニアIC=オペアンプなど——デジタルICと対。
💡 覚え方
「CMOS の C は Complementary」——相補的、つまり2種類です。1種類しか使わないなら NMOS か PMOS——頭文字が答えを教えてくれます。
出題履歴:ICの分類は数年に一度出る
集積回路の分類を問う出題は、計算不要の知識問題です。モノリシック/ハイブリッド、MOS/バイポーラ、アナログ/デジタル——3つの軸で整理しておけば確実に得点できます。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
あわせて解いておきたい記事:【理論】平成23年度A問題11(MOSFETの動作原理)
まとめ
| (3)誤り | CMOSはnチャネル+pチャネル両方 |
| (1)(2) | MOS IC・モノリシック/ハイブリッド(正) |
| (4)(5) | アナログIC・ハイブリッドIC(正) |
| 答え | (3) |
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