半導体14【電験3種 理論】半導体素子(ダイオード・LED・MOSFET・バリキャップ・サイリスタ)の正誤を判定する!平成30年度 A問題11 完全解説

電験3種 理論科目 電子理論(半導体等) 平成30年度 A問題11 LED・MOSFET・サイリスタ!素子の説明で誤りは?

今回は平成30年度 理論科目 A問題11を解説します。ダイオード・LED・MOSFET・可変容量ダイオード・サイリスタの5つの記述のうち、正しいものを選ぶ問題です。

各素子の動作原理・端子数・順逆バイアスを整理すれば判別できます。MOSFETがゲート電圧でドレーン電流を制御する電圧制御形である、という記述が正しい選択肢です。

目次

平成30年度 理論科目 A問題11:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 理論科目 半導体等 平成30年度 A問題11 問題文
平成30年度 理論科目 A問題11 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成30年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題11

電験3種 理論科目 【電子理論(半導体等)】 平成30年度 A問題11

 半導体素子に関する記述として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)pn接合ダイオードは、それに順電圧を加えると電子が素子中をアノードからカソードへ移動する2端子素子である。
(2)LEDは、pn接合領域に逆電圧を加えたときに発光する素子である。
(3)MOSFETは、ゲートに加える電圧によってドレーン電流を制御できる電圧制御形の素子である。
(4)可変容量ダイオード(バリキャップ)は、加えた逆電圧の値が大きくなるとその静電容量も大きくなる2端子素子である。
(5)サイリスタは、p形半導体とn形半導体の4層構造からなる4端子素子である。

出題のポイント:5つの素子の特徴を1つずつ検証する

ダイオード・LED・MOSFET・可変容量ダイオード・サイリスタ——5つの素子について1つずつ記述があり、正しいものを選びます

それぞれに「誤りのポイント」が仕込まれていますキャリヤの向き、バイアスの向き、制御方式、容量の増減、端子の数——細部を正確に覚えているかが問われます

正解の記述
$$\text{MOSFET:ゲート電圧で }I_D\text{ を制御}\ \Rightarrow\ \text{電圧制御形}$$

MOSFETのゲートは酸化膜で絶縁されているので、ゲート電流はほぼゼロ——純粋な電圧制御です。

残る4つは、どこか1か所ずつが違っています「惜しい誤り」ばかりなので、1つずつ丁寧に確認していきましょう。

平成30年度理論A問題11の五つの半導体素子について、電子の向き、発光条件、電圧制御、容量変化、端子数を比較し正解3を示す解説
向き、バイアス、制御量、増減、端子数を順に確認すると、正しい記述はMOSFETの(3)だけです。

解説:5つの記述を1つずつ検証する

選択肢内容判定正しくは
(1)順電圧で電子がアノード→カソードへ移動×電子はカソード→アノード(電流とは逆向き)
(2)LEDは逆電圧で発光×順電圧で発光する
(3)MOSFETはゲート電圧でドレーン電流を制御する電圧制御形正しい
(4)可変容量ダイオードは逆電圧が大きいほど容量も大きい×逆電圧が大きいほど容量は小さくなる
(5)サイリスタは4層構造の4端子素子×4層構造の3端子素子

(1)は「電子の向き」と「電流の向き」の取り違えです。電流はアノード(p形)からカソード(n形)へ流れますが、電子は負電荷なので逆向き——カソードからアノードへ移動します。

(4)は最も出題されやすいポイントです。逆電圧を大きくすると空乏層が広がる——\(C=\varepsilon S/d\) の \(d\) が増えるので容量は【減る】 のです。

(5)は「4層3端子」が正しいです。p-n-p-nの4層構造で、端子はアノード・カソード・ゲートの3つ——「4層だから4端子」ではありません

pn接合ダイオードでは慣用電流がAからK、電子がKからAへ進み、LEDは順方向で再結合して発光することを示す断面図
電流の向きと電子の移動方向は逆で、LEDは順電圧による電子と正孔の再結合で発光します。
nチャネルMOSFETがゲートソース間電圧でドレーン電流を制御する仕組みと、バリキャップの逆電圧増加で空乏層が広がり容量が減る導出
MOSFETはVGSでIDを制御する電圧制御形です。バリキャップはVR増加でWが広がり、Cjは小さくなります。
答え正しいのは「MOSFETは電圧制御形の素子」 → 選択肢(3)

誤答の正体:どれも「1か所だけ」違う

4つの誤りは、いずれも1語だけ入れ替えられていますどこが差し替えられたかを意識して読むと、見つけやすくなります。

選択肢差し替えられた語正しい語
(1)アノードからカソードへカソードからアノードへ
(2)逆電圧順電圧
(4)大きくなる小さくなる
(5)4端子3端子

正誤問題では「向き」「大小」「数」が狙われます用語が正しくても、この3つのどれかが逆になっていれば誤り——読み飛ばさずに確認してください。

⚠️ よくある間違い
電流の向きと電子の向きは常に逆です。電流の向きは「正電荷が動く向き」と定義されているため——実際に動いているのが電子なら、その逆が電流の向きになります。

☝️ ひっかけの作り方:サイリスタの「4層3端子」は語呂が悪く覚えにくいところです。「p-n-p-nの4層、端子はA・K・Gの3つ」——トランジスタ(3層3端子)と対比して覚えるとよいでしょう。

深掘り①:電流の向きと電子の向き

(1)の誤りは、電気を学ぶ人が必ず一度は混乱するところです。歴史的な経緯から整理しておきましょう。

向き備考
電流アノード(p形)→ カソード(n形)正電荷が動く向きと定義
電子カソード → アノード負電荷なので電流と逆
正孔アノード → カソード電流と同じ向き

電流の向きが決まったのは、電子が発見される前でした。「正の電気が流れている」と仮定して定義——後から実際に動いているのは電子だと分かったのです。

今さら定義を変えると混乱するので、そのまま使われています「電流の向き=正孔の向き=電子の逆」——この3つの関係を押さえておけば大丈夫です。

深掘り②:サイリスタの構造と動作

サイリスタ(SCR)は電力制御の主役だった素子です。4層3端子という独特の構造を持ちます。

項目内容
構造p-n-p-n の4層
端子アノード(A)・カソード(K)・ゲート(G) の3つ
ターンオンゲートにパルス電流を流すと導通
ターンオフゲートでは切れない。電流をゼロにする必要がある
用途整流器・調光器・電動機制御

サイリスタの最大の特徴は「ゲートで切れない」ことです。一度オンにすると、主電流がゼロになるまで導通し続けます——だから交流回路での位相制御に向いています

ゲートでオフにできるようにしたのがGTO(ゲートターンオフサイリスタ)です。現在は IGBT に置き換わりつつあります——機械科目のパワーエレクトロニクスで詳しく問われます

深掘り③:可変容量ダイオードの容量が減る理由

(4)の誤りは、空乏層の性質を理解していれば即座に分かりますコンデンサの式に当てはめてみましょう

空乏層をコンデンサとみる
$$C=\frac{\varepsilon S}{d}\qquad(d:\text{空乏層の幅})$$

逆電圧を大きくすると \(d\) が広がります分母が大きくなるので \(C\) は小さくなる——これが答えです。

逆電圧空乏層の幅静電容量同調周波数
小さい(1 V程度)狭い大きい低い
大きい(10 V程度)広い小さい高い

「電圧を上げると周波数も上がる」——\(f_0=\dfrac{1}{2\pi\sqrt{LC}}\) で \(C\) が減れば \(f_0\) は上がるからです。直感的にも分かりやすい関係になっています。

この「逆電圧↑ → 容量↓」は毎年のように問われます「大きくなる」と書いてあったら誤り——反射的に判定できるようにしておきましょう

深掘り④:主な半導体素子の端子数と制御方式

素子の端子数と制御方式は、正誤問題で頻繁に狙われます一覧で押さえておきましょう。

素子端子数構造制御方式
ダイオード2端子pn(2層)制御なし
バイポーラトランジスタ3端子pnp/npn(3層)電流制御
FET・MOSFET3端子電圧制御
サイリスタ3端子pnpn(4層)電流トリガ(切れない)
IGBT3端子複合電圧制御

「サイリスタだけ4層」——ほかは2層か3層です。端子数はダイオードだけ2つで、あとは3つ——この2点だけ覚えれば、端子数の誤りは見抜けます

制御方式は「バイポーラだけ電流制御」です。FET・MOSFET・IGBTはすべて電圧制御——だから駆動回路が簡単で、現代の主流になっています。

⏱️ 本番での進め方
❶ 電流はアノード→カソード、電子はその逆——向きの取り違えが(1)。
❷ LEDは順電圧で発光——逆電圧では光らない。
❸ 可変容量:逆電圧↑ → 容量↓——毎年問われる定番。
❹ サイリスタは4層【3】端子——「4端子」は誤り。

💡 覚え方
「正誤問題では向き・大小・数を疑え」——用語が正しくても、この3つのどれかが逆にされていることがほとんどです。本問の4つの誤りは、すべてこのパターンでした。

出題履歴:素子の正誤問題は毎年出る

半導体素子の性質を問う正誤問題は、理論科目でほぼ毎年出題されています。素子ごとに「構造・端子数・制御方式・バイアスの向き」を整理しておけば、どの組合せでも対応できます。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

あわせて解いておきたい記事:【理論】令和4年度上期A問題11(FETは電圧制御形)【理論】平成19年度A問題11(各種ダイオードのバイアス)

まとめ

(3)MOSFET電圧制御形(正)
(1)ダイオード電子はカソード→アノード
(2)LED順電圧で発光
(4)(5)逆電圧↑で容量↓/サイリスタは3端子
答え(3)

▼あわせて解きたい関連問題
・接合形FETの動作(半導体9):【理論】令和4年度上期 A問題11

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