今回は平成30年度 理論科目 A問題11を解説します。ダイオード・LED・MOSFET・可変容量ダイオード・サイリスタの5つの記述のうち、正しいものを選ぶ問題です。
各素子の動作原理・端子数・順逆バイアスを整理すれば判別できます。MOSFETがゲート電圧でドレーン電流を制御する電圧制御形である、という記述が正しい選択肢です。
平成30年度 理論科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成30年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題11
電験3種 理論科目 【電子理論(半導体等)】 平成30年度 A問題11
半導体素子に関する記述として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)pn接合ダイオードは、それに順電圧を加えると電子が素子中をアノードからカソードへ移動する2端子素子である。
(2)LEDは、pn接合領域に逆電圧を加えたときに発光する素子である。
(3)MOSFETは、ゲートに加える電圧によってドレーン電流を制御できる電圧制御形の素子である。
(4)可変容量ダイオード(バリキャップ)は、加えた逆電圧の値が大きくなるとその静電容量も大きくなる2端子素子である。
(5)サイリスタは、p形半導体とn形半導体の4層構造からなる4端子素子である。
出題のポイント:5つの素子の特徴を1つずつ検証する
ダイオード・LED・MOSFET・可変容量ダイオード・サイリスタ——5つの素子について1つずつ記述があり、正しいものを選びます。
それぞれに「誤りのポイント」が仕込まれています。キャリヤの向き、バイアスの向き、制御方式、容量の増減、端子の数——細部を正確に覚えているかが問われます。
残る4つは、どこか1か所ずつが違っています。「惜しい誤り」ばかりなので、1つずつ丁寧に確認していきましょう。

解説:5つの記述を1つずつ検証する
| 選択肢 | 内容 | 判定 | 正しくは |
| (1) | 順電圧で電子がアノード→カソードへ移動 | × | 電子はカソード→アノード(電流とは逆向き) |
| (2) | LEDは逆電圧で発光 | × | 順電圧で発光する |
| (3) | MOSFETはゲート電圧でドレーン電流を制御する電圧制御形 | ◎ | 正しい |
| (4) | 可変容量ダイオードは逆電圧が大きいほど容量も大きい | × | 逆電圧が大きいほど容量は小さくなる |
| (5) | サイリスタは4層構造の4端子素子 | × | 4層構造の3端子素子 |
(1)は「電子の向き」と「電流の向き」の取り違えです。電流はアノード(p形)からカソード(n形)へ流れますが、電子は負電荷なので逆向き——カソードからアノードへ移動します。
(4)は最も出題されやすいポイントです。逆電圧を大きくすると空乏層が広がる——\(C=\varepsilon S/d\) の \(d\) が増えるので容量は【減る】 のです。
(5)は「4層3端子」が正しいです。p-n-p-nの4層構造で、端子はアノード・カソード・ゲートの3つ——「4層だから4端子」ではありません。


誤答の正体:どれも「1か所だけ」違う
4つの誤りは、いずれも1語だけ入れ替えられています。どこが差し替えられたかを意識して読むと、見つけやすくなります。
| 選択肢 | 差し替えられた語 | 正しい語 |
| (1) | アノードからカソードへ | カソードからアノードへ |
| (2) | 逆電圧 | 順電圧 |
| (4) | 大きくなる | 小さくなる |
| (5) | 4端子 | 3端子 |
正誤問題では「向き」「大小」「数」が狙われます。用語が正しくても、この3つのどれかが逆になっていれば誤り——読み飛ばさずに確認してください。
⚠️ よくある間違い
電流の向きと電子の向きは常に逆です。電流の向きは「正電荷が動く向き」と定義されているため——実際に動いているのが電子なら、その逆が電流の向きになります。
☝️ ひっかけの作り方:サイリスタの「4層3端子」は語呂が悪く覚えにくいところです。「p-n-p-nの4層、端子はA・K・Gの3つ」——トランジスタ(3層3端子)と対比して覚えるとよいでしょう。
深掘り①:電流の向きと電子の向き
(1)の誤りは、電気を学ぶ人が必ず一度は混乱するところです。歴史的な経緯から整理しておきましょう。
| 向き | 備考 | |
| 電流 | アノード(p形)→ カソード(n形) | 正電荷が動く向きと定義 |
| 電子 | カソード → アノード | 負電荷なので電流と逆 |
| 正孔 | アノード → カソード | 電流と同じ向き |
電流の向きが決まったのは、電子が発見される前でした。「正の電気が流れている」と仮定して定義——後から実際に動いているのは電子だと分かったのです。
今さら定義を変えると混乱するので、そのまま使われています。「電流の向き=正孔の向き=電子の逆」——この3つの関係を押さえておけば大丈夫です。
深掘り②:サイリスタの構造と動作
サイリスタ(SCR)は電力制御の主役だった素子です。4層3端子という独特の構造を持ちます。
| 項目 | 内容 |
| 構造 | p-n-p-n の4層 |
| 端子 | アノード(A)・カソード(K)・ゲート(G) の3つ |
| ターンオン | ゲートにパルス電流を流すと導通 |
| ターンオフ | ゲートでは切れない。電流をゼロにする必要がある |
| 用途 | 整流器・調光器・電動機制御 |
サイリスタの最大の特徴は「ゲートで切れない」ことです。一度オンにすると、主電流がゼロになるまで導通し続けます——だから交流回路での位相制御に向いています。
ゲートでオフにできるようにしたのがGTO(ゲートターンオフサイリスタ)です。現在は IGBT に置き換わりつつあります——機械科目のパワーエレクトロニクスで詳しく問われます。
深掘り③:可変容量ダイオードの容量が減る理由
(4)の誤りは、空乏層の性質を理解していれば即座に分かります。コンデンサの式に当てはめてみましょう。
| 逆電圧 | 空乏層の幅 | 静電容量 | 同調周波数 |
| 小さい(1 V程度) | 狭い | 大きい | 低い |
| 大きい(10 V程度) | 広い | 小さい | 高い |
「電圧を上げると周波数も上がる」——\(f_0=\dfrac{1}{2\pi\sqrt{LC}}\) で \(C\) が減れば \(f_0\) は上がるからです。直感的にも分かりやすい関係になっています。
この「逆電圧↑ → 容量↓」は毎年のように問われます。「大きくなる」と書いてあったら誤り——反射的に判定できるようにしておきましょう。
深掘り④:主な半導体素子の端子数と制御方式
素子の端子数と制御方式は、正誤問題で頻繁に狙われます。一覧で押さえておきましょう。
| 素子 | 端子数 | 構造 | 制御方式 |
| ダイオード | 2端子 | pn(2層) | 制御なし |
| バイポーラトランジスタ | 3端子 | pnp/npn(3層) | 電流制御 |
| FET・MOSFET | 3端子 | — | 電圧制御 |
| サイリスタ | 3端子 | pnpn(4層) | 電流トリガ(切れない) |
| IGBT | 3端子 | 複合 | 電圧制御 |
「サイリスタだけ4層」——ほかは2層か3層です。端子数はダイオードだけ2つで、あとは3つ——この2点だけ覚えれば、端子数の誤りは見抜けます。
制御方式は「バイポーラだけ電流制御」です。FET・MOSFET・IGBTはすべて電圧制御——だから駆動回路が簡単で、現代の主流になっています。
⏱️ 本番での進め方
❶ 電流はアノード→カソード、電子はその逆——向きの取り違えが(1)。
❷ LEDは順電圧で発光——逆電圧では光らない。
❸ 可変容量:逆電圧↑ → 容量↓——毎年問われる定番。
❹ サイリスタは4層【3】端子——「4端子」は誤り。
💡 覚え方
「正誤問題では向き・大小・数を疑え」——用語が正しくても、この3つのどれかが逆にされていることがほとんどです。本問の4つの誤りは、すべてこのパターンでした。
出題履歴:素子の正誤問題は毎年出る
半導体素子の性質を問う正誤問題は、理論科目でほぼ毎年出題されています。素子ごとに「構造・端子数・制御方式・バイアスの向き」を整理しておけば、どの組合せでも対応できます。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
あわせて解いておきたい記事:【理論】令和4年度上期A問題11(FETは電圧制御形)/【理論】平成19年度A問題11(各種ダイオードのバイアス)
まとめ
| (3)MOSFET | 電圧制御形(正) |
| (1)ダイオード | 電子はカソード→アノード |
| (2)LED | 順電圧で発光 |
| (4)(5) | 逆電圧↑で容量↓/サイリスタは3端子 |
| 答え | (3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・接合形FETの動作(半導体9):【理論】令和4年度上期 A問題11

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